表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

一場 凡才の憂鬱

 夏への扉を開くには、乗り越えなければならない壁がある。そう、一学期の期末試験だ。しかも、今年は受験を控えた高三。志望大学を受けるには内申点がギリギリっぽいから、正直、焦ってもいる。

 内申点を上げるにはどうしたらいいか? 単純だ。テストでいい点を取ればいい。ただし、実行できればの話だが。

 中学ではそこそこ優等生だったものの、高校から凡才の仲間入りした俺にとって、テストでいい点を取るコツはひとつしか存在しない。級友の秀才に頼み込んで、テスト範囲の要点を個人レクチャーしてもらうことだ。

(あーあ、古豪の名門校になんて入るんじゃなかったな。まさか、文系コースでこんなにみっちり理系教科をやらにゃならんとは)

 俺は典型的な文系人間だ。理数系の教科は教科書に触れることすら勘弁願いたい。

 しかし、嫌だ嫌だで対策を怠れば、赤点を喰らって内申点を大きく落とすハメになるのは、火を見るより明らかだ。

 試験準備期間に入ると、大抵の部活は休みになる。そこで早朝に登校し、教室で自習やら個人レクチャーやらを繰り広げるのが我が校の風物詩だ。

 そんなわけで、早朝から活気にざわめく十葉中央高校の校門を、俺はくぐった。

 生徒昇降口で自分のゲタ箱を開けたら、上履きの上に手紙が一通、置いてあった。

 普通の白い縦長封筒に、丁寧な字で「灰塚冬也様」。紛うことなき、俺の名前。隣近所の奴と間違えたわけではなさそうだ。

 差出人は誰かと思い、裏に返してみると、心持ち小さな字で、「伏見初」と書いてあった。

(フシミ・ハジメ?)

 そんな名前に覚えは無い。

(入れ間違いか? この学校で俺と同姓同名の奴と? 下の「冬也」の方はともかく、「灰塚」なんて名字はゴロゴロ転がってるわけじゃあるまいに)

 取り敢えず、推理の真似事は中断し、その手紙をバッグの中に放り込んで何喰わぬ顔で教室へ向かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ