8.アーネストの決意
第8話です。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
辺境伯はメルヴィンの決意を聞いた後、執務室にアーネストを呼んだ。
「アーネスト、お前の努力は素晴らしいものだし、それによって身につけたことも誇っていい。
しかし、その力の大きさに周りがお前を扱いあぐねていることはわかっているな?」
「…はい、父上」
「今のままでは同じ年頃の友人ができることはないだろう。
それどころか、大人でもお前と交流できる者は少ないと思う。相手の能力が高くても、子どものお前を受け入れるかと言えば」
「…きっと嫌がるでしょうね。俺は…気味が悪いから」
「わかっていても鍛錬をやめる気はないか」
「ありません」
アーネストは即答した。
1度目の最期を思い返せば、鍛錬をやめることなどできないことは明白だった。
自分たちがステラに敗れておそらく命を落とした時。
あの後、国は混乱に陥り、立ち行かなくなっただろう。国の中心にいた貴族たちはステラの魔眼への恐怖で正常な判断が下せず、政治は乱れ、他国からの干渉や侵略を免れなかったと予想される…あの状態の国を手に入れようとする国があればだが。
では、あの時父の率いる辺境の軍があの場に駆けつけなかったら?…同じだ。国を治めるべき人々が正常でなければ王都から徐々に衰退する。
王都へ行かなかった伯爵家は生き残ったかもしれないが、その場合は民から『国を守りきれなかった家』として蔑まれただろう。または弱体化につけ込み攻め込んできた他国に下ることになったはずだ。
しかし全ては、子どもになってしまった自分一人がわかっていることだ。2度目の人生ではあんなことはまだ起きていない。そして、再びあれが起きるような状況を作ってはならないと彼は決心していた。
国のため、自分のため、父のため、辺境の仲間のため、ステラのため。そう誓って努力してきた彼だった。
もちろん小さな身体で吐くほど厳しい鍛錬を続けていれば、身体も精神もつらいことがたくさんあった。だが、そんな時、アーネストはいつだってあの時に見たステラの姿を思い出した。
自身の力を利用され、愛されず、涙と魔力をその瞳から流し続けるステラ。それは血の涙のようで。
何度も何度も思い返しては、あれを再び起こしてはならないと、何度も何度も決意した。
だがそのための努力を重ねた結果、8歳を前にして気付けば彼に並ぶ者はおらず、膨大な魔力を身に纏い、他者から恐れられる存在になっていた。
その結果の、今だ。
父親に呼ばれ、『このまま人々から恐れられ、嫌われる人生を送る覚悟はあるのか』と訊かれている。
答えは決まっている。
「ありません。俺はこの先もずっと自分を鍛え続けます」
即答した息子の顔を見て、父親は訊いた。
「理由を言う気は?」
アーネストはハッとした。見れば、父親は黙っていたものの自分が何かを隠しながら生きていることに気付いていたとわかった。
「…いつか…必要な時が来たら、話します」
と答えた。
「そうか。ならば待とう」
「…ありがとうございます」
アーネストは頭を深く下げた。
お読みくださりどうもありがとうございました!
法事や風邪ひきで間があいてしまいました。
次回は明日7日の夜の更新を目指しています。




