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勇者の友達  作者: パン太
プロローグ
9/10

第九話 あなただけには

『あんたじゃ足手まといだっつってんだよ!早いとこ勇者と合流してあの娘の憂いを晴らしてやりな』


 逃げる、逃げる。

 けれども走る脚は重く、迷いが霧のように思考を阻んだ。

 これが正しい。

 あの場に残っても足を引っ張るだけ。相手の思う壺だ。

 けれど……


――あなたは考えたことはないんですか?自分が勇者様の足手まといになるのではないのか、と。


――今できることを精一杯やるだけ……確かに耳障りの良い言葉です。親が聞いたらさぞや子供を褒めてやることでしょうねぇ。物語の主人公が言えばまさに名言だ。だが、これは戦争ですよ?物語に語られるような英雄譚ではない。敵は勇者の弱点を容赦なく突いてくるでしょう。無能な友人とくれば尚更だ。人質にとって勇者の命を要求することだって考えられる。


 スネイルさんの言う通りだった。

 僕は威勢の良い言葉を語っておきながら、結局実力が足りず、足手まといにならないように逃げることしかできない。



 ……本当に?

 足が止まった。

 できない、じゃない。していないだけだ。正しさを言い訳に、逃げているだけだ。


 『ウィルはどうしたいの?』


 ルナの声が、聞こえた気がした。


「僕は……」









「僕は、逃げない」


 炎の奇跡の影響で皮膚が焼けて爛れていた。空気が触れるだけで、まるでそこに短剣を何度も突き立たれたような激痛が走った。こんな痛みは、彼との戦いでも経験したことがない。もう気絶してしまいたくなるような痛みだった。

 このわずかな(ダメージ)だけでも、スネイルさんとの能力(レベル)差は明白だ。そのあまりに大きな差に膝が恐怖で震えていた。

 けれど。


「今ここで逃げたら、僕は一生ルナの側に居ることができなくなる」

「結局、自分のためか。くだらないな」

「ええそうです。悔しいけどあなたの言う通りでしたいます」

「!……」

「たとえこの先魔王から逃げることがあったとしても、あなたの前からは逃げる訳にはいかない。同じ勇者の友達だったあなただけには」


 剣を抜き、構える。炎に照らされて剣が輝いた。

 彼らから譲り受けた剣が、僕の決意に応えてくれたような気がして、少しだけ心が暖かくなった。

 震えが、止まった。


「だから、今ここであなたに打ち勝って証明します。僕は勇者の友達でいていいんだってことを!」






()()()()()、だと……お前!」


 イラつく、イラつく。

 その現実を分かっていない子供な考えも。燃えるような意志を灯した瞳も。覚悟に満ちた表情も、何もかもが。

 

 壊す、壊してやる。

 その甘えた考えも、理想も、大切な勇者も何もかも全てを。


「ふふっ、ふふふふふふ。あーはっはっは」


 その時、気が触れたように先生が高らかに笑い出した。

 そのあまりの声の大きさにウィルがぎょっと振り返っていた。


「いいね、できるできないではなく己が選んだ道を突き進む。若い奴はこうでなきゃ」

「それに巻き込まれる方はたまったものではないでしょうがね」

「良いんだよ、それで。失敗するのが子供の特権さ。そして失敗したとしてもそれを手助けしてやるのが大人の役割さ」

「ババア……!」


 先生がウィルを引き寄せる。


「いいかい、アタシにはもうろくに補助するだけの力は残っちゃいない。けれど、策はある」


 何か耳元で囁いている。

 良いだろう、その希望ごと打ち砕いてやる。





 

「……できるかい?」

「はい」


 剣を構える。

 作戦は教わった。覚悟は決めた。あとは、踏み出すだけだ。


「素人だな」

「!?」


 その覚悟に水を差すようにスネイルさんは言った。

 冷ややかな目だった。


「見りゃわかる。剣を構えただけで重心がブレてる。構えだけは練習したが、実戦ではまともに剣を振ったこともないだろ」

「えっと、……はい。そうです」

「馬鹿正直に答えてんじゃないよ!」

「すみません。けど!」


 剣を突き出し、槍のように突進する。

 これならば、振り慣れていない剣でもまだ攻撃ができる。

 スネイルさんは力が回復していないのか、避けるしかない。

 いける……!


「はああああ!!!」


 気迫とともに何度も何度も剣を突き出した。

 だか、当たらない。当たりそうなのに紙一重で躱される。


「ハァッハァッ……!」


 たった数回剣を突き出しただけで、手足が重くなり呼吸が乱れた。

 腕が鉛のように重く、心臓が肋骨を痛いくらいに叩き、肺が空気を求めて喘いでいた。

 戦う戦わない以前の完全な修行不足だった。


「まずは基礎体力から鍛え直して来い、クソガキ」

「がっ」


 腹を蹴り飛ばされ、勢いよく吹き飛ぶ。

 背中を地面に強打し肺の中の空気が一度に抜け、空気を求めて咳き込んだ。

 慌てて剣を確認する。

 良かった、剣は手放していない。その安堵と共にルナとの記憶が蘇った。





 ――数日前


「ウィルはダメダメだね」


 転がされた僕を覗き込みながら、ルナが言った。

 顔が近い。髪が頬や頸にかかってくすぐったい。花の蜜のように甘い香りが鼻腔をくすぐった。

 距離を取りたかったが、すでに何十回も転がされてしまったせいでもう指一本も動かすことができなかった。

 天然なのか、わざとなのかルナはよく年頃の少女らしからぬ言動が多かった。もうちょっと、男の気持ちを考えて欲しい。

 

「何がダメなの?」


 恥ずかしさを誤魔化すように聞いた。

 

「ん?全部」

「……全部、か」

「まず剣を抜くどころか帯剣してるだけで重心がぶれぶれ。剣を振ったら剣の重みに振り回されて手足が言うことを聞いていない。数回振っただけで息が上がってる。うん、剣技の修行以前の問題だね」


 ルナの指摘は的確で、容赦がない。いつもはお転婆というか、子供で馬鹿みたいな発言が多いのに、こういうところだけ妙に鋭い。

 体力が少し戻ったので、剣を拾いながら立ち上がった。効いてない振りをするけど、実際は恥ずかしくて顔から火が出そうだった。戦力になりたいからと、ルナに我儘を言って付き合ってもらったのにこのザマだ。


 ゴブリンとの戦いを経験し、少しは戦えるようになったと密かに自信を深めていたのに、あっという間に打ちのめされてしまった。何より、ルナに情けない姿を見られたのが恥ずかしかった。


「ウィルにやっぱり剣は早いよ。その剣を気に入っているのはわかるけどさ。やるとしても、短剣のほうが合ってるんじゃないかな?聖都に着いたら買いに行こうよ」

「……」

「嫌なの?」

「嫌じゃ、ないけど」

「剣に何か拘りがあるの?」


 言われて、脳裏に浮かび上がるのはルナが敵に立ち向かう姿だ。聖剣を自在に振るい、物語の英雄のように敵を切り捨て味方を守り抜く。その姿、剣技は夜空を駆ける流星のようにとても美しく、月の光のように輝いて見えて。


「ルナの剣がとても綺麗だと思ったんだ」

「っ……!?」

「?……どうしたの?」

「ねぇ……わざと言ってる?」

「何が?」

「天然かよ……」


 ルナが頭を抱えた。

 指の隙間から覗く頬が少しだけ赤く見えた。


「……しょうがない。なら、剣を握ってみて」

「う、うん」

「違う。剣の握り方は……」


 ルナが後ろに回り込んで握り方を矯正してきた。密着されると、ルナの体温や息遣いを肌で感じてこう……くすぐったい。

 こういったことをすると、勘違いされるし良くないと思う。


「よし、これで大丈夫」

「ありがとう」


 すごい。

 先ほどは少しの間構えるだけでブレていた剣先が、ピタリと静止していた。握り方が変わっただけで剣の安定感がまるで違った。

 ここまで変わるものなのか。

 僕の驚きを尻目にルナが言った。


「ウィルがさっき一番ダメだったことは、剣を手放したことだよ」


 ルナの声の温度が下がった。それは氷のように冷えていて、先ほどまでの修行の火照りや興奮が一気になくなった。正しく多くの実戦を経験した者からくる言葉だった。

 気持ちが、剣を握る手が引き締まった。


「剣は相手を打ち破る矛であり、自分の命を守る盾でもある。それを手放すことは、剣士にとって命を手放すことと同じこと。だから、手放すことなんてあっちゃいけない」


 ルナが落ちていた枝を拾い上げ、木刀の代わりにして構える。隻腕になっても、その構えは美しく、少しの揺らぎも見えなかった。

 

 そのあまりの美しさに束の間、見惚れた。

 

 聖剣に選ばれた勇者だから強いんじゃない。聖剣に選ばれるほどの才能と修行を積んでいたから、勇者に選ばれたのだということが、今ならばはっきりと理解できた。


「本当なら、剣を触る前に最低半年は走り込みをして下半身を鍛えて欲しいところだけど、時間がないからね。今から私が百回打ち込むから、防御して。そして、絶対に剣を手放さないで」

「もし手放したら?」

「え?その時はもう百回、できるまで何度も打ち込むよ」


 大丈夫、見捨てたりしないから。

 その声は、どことなく弾んで聞こえた。

 その頬は、少しだけ上気して見えて。

 その瞳は爛々と輝いていた。

 

 少しだけ、頬が引き攣った。

 それから何度も何度も、剣を落とすたびに、「しょうがないなぁ」と呟く声とは裏腹にとても楽しそうに笑顔で何度も打ち込んでくる彼女に僕は初めて、加虐趣味という言葉の意味を知った。





 


「そんなに剣を手放さなかったことが嬉しいのかよ、気持ち悪ぃ」


 どうやら、剣を見て笑っていたらしい。けれど、嬉しいのは事実だ。ルナが僕に費やしてくれた時間は、決して無駄ではなかったのだから。


「ふぅ……」


 呼吸を整えて、剣を構え直した。

 落ち着け、冷静になれ。相手と自分の長所と短所を分析しろ。

 

 スネイルさんは、奇跡を使えるし、体術も修行しているのかもしれない。けれど、今は力の消耗が激しいから奇跡は無闇に連発できないはずだ。今は距離を取って体勢を立て直しつつ――


「遠距離の攻撃は使えないはず――とか考えてるだろ」

「!?」

「甘いな。今からお前の弱点を教えてやる」


 スネイルさんが何かを投げる仕草をした。

 夜の闇に、何かが光った。


「っ……!」


 頬を何かが掠める。固く、けれど同時に鋭い刃物のようなものが頬を掠めた。

 これは……投石だ。


「お前程度に奇跡を使うまでもない」


 単純だけど、灯りの乏しい夜にはかなり有効な手段だ。こちらも石を拾いたいが、暗闇で足下が見えなにくいしそもそもそんな隙が見当たらない。


「うおぉぉぉぉぉ!」


 だったら、一か八か突っ込むしかない。

 この時の僕は焦るあまり、自分と相手の戦力分析などすっかり頭から抜け落ちていた。いや正確には、そんな暇など与えられなかった。


「そう、お前は距離を詰めるしかない。なぜなら、遠距離への攻撃手段がないから。これが一つ目の弱点。そして、これが二つ目の弱点だ。女神の錫杖!」


 スネイルさんの手に先端に突起のついた光の錫杖が現れる。

 杖……あんなもので何を、というかどう戦えば。見る限り殺傷力は低そうだけど、と思考が割かれた間に杖が横なぎに叩きつけられた。

 

 慌てて剣で防ぐ。

 ビイィィン、と鉄とは異なる衝撃が掌に伝わった。指が麻痺するような感触に、剣を握る力が上手く入らない。だが、ここで負ける訳にはいかないと決死の力を込めた。頬に当たるその寸前で何とか杖が止まる。

 

 よかった、何とか間に合った。


「二つ目の弱点。それは、戦闘経験の少なさ」


 防いだ杖の突起に剣を引っ掛けられて前へとふらつく。その隙を突かれて再び蹴り飛ばされた。胃袋への衝撃に地面に蹲って胃の中身を全てぶちまけた。地面に散らばる吐瀉物。その臭いに辟易する間もなく、スネイルさんはゆっくりと距離を詰めてきた。


「戦闘経験が足りないから、焦って突進することしか頭に浮かばない。投石が接近戦を誘発していることに気づかず、杖術への対処方もわからない」

「まだ、だぁ!」


 何とか体勢を立て直し、スネイルさんへ突進した。幾つものダメージにより、足が震えてその勢いはまるでない。まるで酔っ払いの千鳥足だ。けれど、どれだけ惨めで不恰好でも、立ち向かっていくしかなかった。今なら、何とか剣が届く。


「三つ目にして最も致命的な弱点。それは――」


 剣があと少しでスネイルさんの心臓に届く。スネイルさんは何もしない。防御も回避も、反撃も。時間がやけにゆっくりに感じた。彼との戦いの時に

 届く。届いて、しまう。


「あっ――」


 剣を出す手が鈍り、力が抜けていく。力が抜けた剣は速度を落として、やがてスネイルさんの直前で完全に停止した。


「敵を殺す覚悟がないことだ」

「っ……」


 動け、動け、動け。

 ゴブリンと戦った時は殺せただろう!

 そう自分を叱咤し、何度念じるが、両手が石になったかのように剣は動かなかった。

 

 考えてみれば当たり前だ。言葉の通じない魔物は、いわば獣に近い。物言わぬ彼らと同じ言葉の通じる人間とでは、殺すために必要な覚悟がまるで違うのは当たり前のことだった。


 そんな自分の浅はかさに苛立ち、この差別的な思考に、戦闘中にも関わらず嫌悪感が湧いた。

 

 そしてそんな隙をスネイルさんが見逃すはずもなく、気づいた時には胸に今まで感じたことのない痛みが走っていた。


 「がはっ……」

 「俺はできてる」


 胸に短剣が突き刺さっていた。ポタポタッと、床に水を蒔いたように血が傷口や口から溢れ出し、地面に赤い花を咲かせた。意識がぼんやりとし始め、地面に倒れ伏しかけて、慌てて肘をついたが、足に全く力が入らず、視界がチカチカと明滅し始めた。


 空気を取り込もうとしたが、吸っても吸っても、上手く肺に集まらない。呼吸が、できなかった。


「ウィル!」

「苦しいか?肺を刺したからな。勇者の助けになろうなんて身の程知らずの勘違いをした報いだ。安心しろ。失血して意識を失ったら回復してやる。重要な人質だからな」



 




 

 終わったか。

 思ったより粘られ、時間を取られたことに苛立ったが、まあいい。

 殆ど魔力を消費せず、それどころか先生との戦いで失った魔力も徐々に回復してきた。

 

 先生はもう疲労と魔力切れで動けない。

 あとはあのむかつくガキを回収し、イルゾーストと合流すれば俺の勝ちだ。

 そう思い、回収に向かおうとして――


「まだ、だ。僕はまだ、終われない……!」


 血溜まりの中、奴は再び立ち上がっていた。


「は……?」


 何故だ、あの深さの傷だぞ。アスラ国の戦士ならばともかく、訓練も碌に積んでいないガキに耐えられる傷じゃない。


「いい加減にしろ!!!お前が何度立ちあがろうと勇者の邪魔でしかないんだ!奴は世界を守る英雄でお前は何の力もない凡人でしかないんだぞ!!」

「世界を……守るのが、勇者なら……その勇者を、英雄を誰が守るんだよ!」


 ふらつきながら、奴は問いかけた。

 剣を杖の代わりにして、斃れそうになる身体を必死に支えて。

 

 けれど、その目は……心は、まるで死んでいない。むしろ戦う前よりも強い光を宿していた。


「ルナは……皆が思ってるほど、強くない。弱いところも沢山あります。本当は、怖がり、なんだと思います。なのにずっと我慢してます。自分が思っている、以上にきっと無理を、してます」


 目の焦点が合っていない。今にも斃れそうだ。だというのに、奴の体からは信じられないほどの圧力を感じる。トドメを刺したいのに、動けない。

 

 震えているのか、俺が。

 こんなガキに。


「だから僕が守ります。ルナが一人にならないように」

「どうしてだ?どうしてお前はそんなに勇者の助けになりたいと思うんだ?」

「あなたと同じです。友達だから。あなたのその力だってそうでしょう?その力は、アンナさんを助けるために磨き上げた力だ!」

「っ……!?」


 奴の言葉に刹那の間、思考が止まる。その隙を突いて、剣を構えて突進してきた。先程までとは比較にならない。必ず勇者を守り抜くという強い覚悟が剣に宿っていた。


「女神の錫杖!」


 剣から身を守るために杖を生成する。そして剣を弾こうとして――宙を舞う剣に目を奪われた。


「しまっ……」

「はあああああああ!!!」


 奴が拳を構えて突っ込んで来た。

 あれはまずい。直感で分かった。構えは素人そのもの。度重なるダメージで身体はボロボロ。だが、その拳には奴の覚悟の全てが宿っていた。喰らえば、ただでは済まないだろう。

 

 くそ、くそ、くそ。あいつ、あんなに手放さなかった剣を……まさか今までのはこの一瞬の隙を作るため?いや、そんなことより迎撃を!

 

 既に接近されていて、杖では間に合わない。

 どうする?一旦距離を――いや。


「女神の聖光!」


 奇跡の効果範囲を絞り、傷ついた奴の胸部を避けて狙う。たとえ温存していた力全てを使い果たしたとしても、奴だけからは逃げるわけにはいかない。


 同じ勇者の友達である、奴だけからは。


「認めてやるよ、お前は大した奴だ」


 人質などという甘い考えは捨てる。奇跡の光が奴へと降り注ぐ。


「だからここで殺してやる!」


 右か、左か。

 避けたところを仕留めて――


「馬鹿な、突っ込んでくるだと――!?」









「ククッ――敵の技の弱点なんて馬鹿正直に全部言うわけないだろう?」


 一人、老婆は笑う。

 弱点を喋ったのは体力を回復させる時間稼ぎ。人は自分が考え、一度答えにたどり着くとそれ以上は思考を止めやすい。確かにそれも間違いではないが、最も致命的な弱点を隠すというブラフでもあった。


「過剰回復によって相手を攻撃する女神の聖光は確かに強力な技さ。けど、それを喰らったアタシは痛みこそあったが、死にはしなかった」


 奇跡の効果に恐怖し、足を止める者には確かに致命的な技だろう。だが、裏を返せば足を止めない者には致命的にはなりえない。即効性に欠ける――いや、最もこの状況に即した言葉に言い換えるならば。


「たとえ傷ついても、前に進む勇気ある者には効かない。これが最も致命的な弱点さ」


亜麻色の髪の少年に存りし日の誰かの面影を重ねながら、決着を見届けた老婆は一人、そう呟いた。


※女神の錫杖


 奇跡の光を錫杖の形に圧縮・具現化したもの。実体がないため、剣よりも圧倒的に軽量で扱いやすく、使い手の技量により強度も上がる。ただし、錫杖の名から分かるように殺傷力は低く、基本的には神官が敵に接近された際の緊急手段である。ただし、スネイルは独自に杖術の訓練も積んでおり、本職の戦士までは及ばないものの、白兵戦も可能となっている。

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