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二章 一

「おい!明智」

俺は先を歩いていくそいつを追いかける。

「なんだい?レオ」

「なんだい?じゃねぇーよ!どこ行こうとしてんだよ」

ようやく立ち止まったそいつは俺の方を振り返る。

「別に何処かに行こうとしてる訳じゃないよ」

「はぁ?」

「このゲームは、罪を償ったら勝ちなんだろう?罪を償う方法として考えられるのは二つ。一つは、自分が犯した罪によって被害を受けた人に謝罪をし、許してもらうこと。もう一つは、その罪に釣り合うだけの善行をすること」

「はぁ…」

「自分が犯した罪がなんなのか分からない以上、前者の方法は今実践することは難しい。だったら後者の方法に賭けて、自分の過去の罪を打ち消してくれる程の善行ができる機会を、探していくしかないだろ」

「それで、渋谷の街をぶらぶらしてると…」

「そう言う言うこと!」

そう言うと明智はまた歩き始め、人混みの中に入っていく。

「ちょ!」

俺は明智を見失いそうになりながらも追いかけていく。明智は渋谷の街をなんの迷いもなく進んでいっている。


歩き始めて数時間、俺たちは同じ場所を行ったり来たりしていた。

「なぁ、なんで同じ場所をずっとぐるぐる回ってるんだ?もっと別の場所を探したりしないのか?」

「いや、堕天使が渋谷から離れるなって言ってただろ。もし変に移動したらどうなるか分かんらないから、これ以上は範囲を広くできない」

明智はコンビニで水を買った。受け取られないと分かっていてもお金を払っているのは、この世界に慣れていないのか、それとも敢えてそうしているのかは分からない。

「大丈夫だよ。二駅くらいはね」

「え?」

突然聞こえてきた声に驚き、声のした方向を見てみると、一昨日俺たちを渋谷に集めた堕天使が右肩の翼を大きく広げ、そこに浮いていた。

「堕天使…何しにきたんだよ?」

そう言って明智が堕天使の方向を睨みつける。

「冷たいなーせっかく大切な情報を教えにきたのになー」

「大切な情報?」

「天利涼音がゲームクリアしたよ」

「は?」

「もうクリア者が出たのか…早いな」

堕天使の言葉を聞いても動揺することなく落ち着いた面持ちでそう言っている。

「いや、もうちょっと焦れよ!もうクリア者が出たんだぞ。俺らもこんな悠長なことしてる場合じゃないんじゃないか?」

「落ち着け。そうやって俺らを焦らせて混乱させるのが堕天使の狙いだ」

俺はもう一度堕天使のいた方向を見る。そこにはすでに誰もいなかった。

「天利って昨日の夜にホテルに帰って来なかったよな。その時もうゲークリアしてたってことか?」

「そうだろうね。ただ、気になるのはなぜそれを昨日だはなく1日たった今伝えたのか…」

「確かに。昨日のうちに伝えてくれてれば、お姉さんの方もあんなに取り乱さなかったのにな…」

「何か考えがあるのか、それともただ単に堕天使の気まぐれか…」

明智はコンビニの前でそんな二択に対して悩み始めた。

「明智ってさ、物事を二択にして考えんの好きだよな…」

そんな嫌味を言ったてみたが、自分の世界に入り込んだ明智には俺の言葉は聞こえていないようだ。俺は明智を置いて先にホテルに向かうことにした。

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