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一章 五

昔から、叱られるのが嫌いだった。

父と母は普段優しい分、怒るとそれこそ鬼のように怖く、そんな状態で育った私は人一倍怒られる事を恐れていた。ただそれでも、子供の無知な頭では怒られる事、怒られない事の判別を付けるのは難しかった。

だから、私は姉について行く事にした。

お姉ちゃんの言う事を無条件で信じる妹、それを演じ始めると途端に生きやすくなった。怒ろうとする人自体減ったし、怒られそうになるとお姉ちゃんが庇ってくれた。私のやりたい事は随分と出来なくなったしまったけど、自分で考えなくて良いのは楽で、私はお姉ちゃんに全てを任せるようになった。

そんな回想を一瞬でしながら、涼音は空手道場の中を窓越しに見ていた。通学路の横にある空手道場。登校する時、この道場の横を自転車で通り過ぎるほんの3秒程度、窓から中を覗くのが涼音の楽しみだった。道場を通り過ぎ、ふと前を向く。

「あ…」

角の店から出てきたのだろうか、目の前には5歳ほどと思われる男の子がいた。急いで自転車にブレーキをかける。自転車はギリギリのところで止まったが、驚いた男の子は、昨日の雨でできた水たまりに足を滑らせ、道路に上半身を出して転んでしまった。自動車の走行音が、もうすぐそこまで聞こえていた。

叱られたくない。その一心で涼音は自転車を走らせた。一つ前の信号まで戻って学校の方向かう。その日、夜のニュースで自分について触れられてないことを確認するまで、生きた心地がしなかった。

その日以降涼音は、通学路を変えてその道を通らないようにし、その日のことを思い出さないようにした。


ガッ

体が蹴られるような感覚で目を覚ます。急いで目を開けると、道路に倒れていく男の子の姿が見えた。

(まさか、私の体につまずいて…)

霊体を普通の人が避けるのは(お姉ちゃんの考えが正しければ)反射神経によって。走っていて急につまずいたなら、反応できないこともあるかもしれない。


どうする?


このまま知らないふりをすれば、怒られることはないだろう。他の人からしたら、男の子がただつまずいただけに見えただろうし、お姉ちゃんも私が関係しているとは思わないだろう。でも…

ずっと前の、記憶の奥にしまっていたことを思い出す。あの日、あの場所から逃げてから自分自身で事件のことを忘れるまで、周りの人に隠し続けるのがどれだけ辛かったか。

でも…

「運転してる人は居眠りしてるっぽいね」

「え?」

上を見てみると、堕天使が昨日と同じように、嘲笑うような表情を浮かべながら飛んでいた。

「右の道から来る車だよ。周りの通行人が助けに入ろうとしても、今からじゃ間に合うかどうかは分からないね」

「そんな…」

「君が行くしかないよ」

また、吐き気がしてきた。今行かないと後悔する。そう分かっていても、起き上がれない。

車のエンジン音が近づいてくる。

男の子の顔が恐怖に染まるのが遠くからでもよく分かった。

私が…行くしかない。

覚悟を決めたのと同時か、それより先か、足が強く地を蹴った。こんな時だけ、体が軽くなる。男の子のそばに着地して右を見る、近づいてくる車が見えた。

無駄だと分かっていても、車を止めようと男の子と車の間に立つ。


『止まって!』


体が車にぶつかる。昨日より痛かったけど、苦痛ではなかった。

「天利涼音」まさか彼女が最初にクリアするなんて驚きだねー。まさか二日でクリアするとは…え?三十日も要らないんじゃないかって?まぁまぁ、彼女は運が良かっただけだよ。

それじゃあコレからも「ゲームアフターデス」をよろしくね!。

バイバーイ

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