四章 四
「端的に言うなら、あの男は冤罪だった」
目の前でそう告げる堕天使を見ながら、天利美鈴は事態を飲み込む事ができずに困惑していた。確かに数年前に裁判に参加したような記憶はある。だが、それが今の状況とどのように紐付いているのかが分からなかった。
「冤罪と言っても…防犯カメラの映像もありましたし、彼が犯人なのは明白でした」
そう言ったのは明智さんだった。手には青いバインダーを広げている。
「ああ、確かに証拠があった。路地裏で彼が突然相手に飛びかかり、殺してしまった瞬間を捉えた映像が。だから誰もが彼を凶悪な殺人犯だと思った」
堕天使は、何かを勿体ぶるような態度で話を続ける。
「けど一人だけ、最後まで彼の潔白を信じようとした人がいた」
少しずつ、あの時の記憶が蘇ってくる。
防犯カメラの映像は私も見た。路地裏で楽しそうに話している男性二人の映像。しばらく話していたかと思うと、突然画面の奥にいた男性が、手前にいた男性を殴ったかと思うと、そのまま取っ組み合いになり、最終的に片方が動かなくなってしまった。そして、動いている方は、画面外へと逃げていった。
正直、ドラマの映像のようにしか見えなかった。現実に起きたことを捉えたものだとは受け取れなかった。
確か、その映像の後には証人が出てきたと思う。背の低い女性だ。その人は必死に被告の無罪を訴えていた。
「樋口香苗」
彼女の必死さに打たれ、私は無罪と判断したんだ。




