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四章 三

「お客さん?着きましたよ」

眠そうなタクシー運転手の声で、目を覚ました。窓の外を見ると、雨の降る暗い森だった。

「本当にここであってるんですか?」

そんな運転手の問いかけを無視し、私は淡々と財布からお札を取り出す。運転手はしばらく「あのー」などと声をかけてきたが、私がドアに手をかけたところで、言葉を発するのをやめた。

タクシーを降りてしばらく森を歩いていくと、目の前に崖が見えてきた。いつの間にか雨はかなり強くなり、目の前の崖もかなりの水を吸い込んでいた。これなら、土砂崩れが起きてもおかしくないだろう。

雨の当たらない木陰に移動してから、上着のポッケットに入れておいたスマホを取り出す。自動的にディスプレイが明るくなり、ロック画面が現れる。公園の巨木を背景に二人で並んでいる男女。六年前からこのロック画面は変えていない。

ロックを解除し、GPSアプリを起動する。GPSは三キロメートルほど離れた場所をこちらに向かって移動してきていた。

「よかった、間に合った…」

タクシー運転士に全速で走ってもらえたおかげで、なんとか先回りすることができた。

安堵から、その場に座り込む。緊張はあるが、不安は感じられない。神様は自分に味方してくれている。そんな根拠のない自信があった。

少し待つと、GPSは一キロ近くまで迫ってきていた。私は、左手で小さなスイッチを取り出しながら、スマホでメッセージアプリを開く。普段通り、親友に対して送るメッセージを打つ。

『紲那〜次の試験の内容教えて〜』

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