間章 三
『ガリッ』と音がして指先に激痛が走った。
「こんな形で邪魔が入るなんてね…」
割れた爪を見つめながらそんなことを呟く。最近は気をつけていたのだが、無意識で噛んでしまっていたらしい。このクセも早く治したいと思うが、今はこれに構っている暇は無かった。
目の前の画面に映る棒グラフを見る。縦軸は人数、横軸は話数だ。右肩上がりに伸びていっているそのグラフの、一番右端を見る。
「五百万人、か」
この手の企画の中では上位の人数だろう。だが、天国の総人口は千億人はいる。その中の特定の一人に見て欲しいとなると、これだけでは到底足りない。
目線を横にずらし、別の画面を見る。最新話を編集している画面だ。この調子では、尺は足りてしまいそうだ。
最新話は、確かに新キャラ登場のインパクトもあるし、貴重な日常回枠にすることもできるただ、誰の退場もないのだ。
最新話は、幽霊の状態で更に『死ぬ』とどうなるのかという話にする予定だった。いかにもネットで話題になりそうな内容だ。この話で知名度を一気に上げるつもりだった。
「どーしよう。戸田を新キャラってことにして掘り下げるか?いや、そんな時間もないし…」
予期せぬ戸田の介入によって、大野が死ぬ展開が変えられてしまった。このままだと、クライマックスにも影響が出るかもしれない。
不安ばかりが頭を埋め尽くす。だが、最新話の投稿期限は明日。仕方なく、再び編集作業に取り掛かることにした。
総人口に比べれば少ないと言っても、『ゲームアフターデス』は五百万人に見られている人気ドキュメンタリーだ。ゲームマスターとして、視聴者の期待には応えなければならない。
そう思いながら、翼のない方の腕で画面を操作する。




