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第2話 改革の第一歩(2-7世界の一端を知る1)

 食堂に入ると、木製のテーブルと椅子が整然と並び、かすかに漂うスープの香りが二人を迎えた。


 レイラは一番奥の席を指さし、「ここに座りましょう」と促した。

 レイラは慎重に言葉を選びながら話し始めた。


 二人が腰を下ろすと、一人の店員が笑顔を浮かべながら二人の席に近づいてきた。

 彼はエプロンを身に着けた30代半ばの男性で、柔らかな物腰が印象的だった。


「お二人とも、お疲れ様でした。今日は特に混み合っていたようですが、お飲み物や食べ物は、どうしましょうか?」


 シロウは一瞬考え、店員に微笑み返した。

 「ありがとうございます。では、温かい飲み物をお願いします。何かおすすめはありますか?」


 店員は少し考えるように顔を上げた後、提案した。

 「そうですね。こちらの特製ハーブティーはいかがでしょうか?リラックス効果がありますよ。」


「いいですね、それをお願いします。」


 レイラも軽く微笑みながら頷いた。

「私も同じものをいただけますか?それと、何か軽く食べられるものがあれば嬉しいです。」


「かしこまりました。今日のスープは村の新鮮な野菜を使った特製スープです。少しですがパンも付いています。」


「それをお願いします。」

 レイラは感謝の気持ちを込めて微笑んだ。


店員が注文を確認し、足早に厨房の方へ戻っていくと、シロウは再びレイラに向き直った。


「さっきの提案に戻るけど、この世界の情勢についてもっと詳しく教えてもらえるかな?」


 レイラは頷き、穏やかな表情で話し始めた。

 「もちろんよ、シロウ。この世界について知ることが、これから何をすべきか考える手助けになると思うわ。」

 

「この世界はエルディアと呼ばれているわ。エルディアにはいくつもの国が点在していて、それぞれが独立していて、大陸全体を統治する強力な国のような存在はないの。だから、国ごとに異なるルールや政治があって、国同士の関係も複雑なの。」


シロウは真剣な表情で耳を傾けた。

 

「ふむ、なるほど。各国の特徴はどうなっているんですか?」

 シロウの問いかけに、レイラは真剣な表情で話を続けた。


「まず、北西に位置するリヴィオネ王国。ここはエルディアでも屈指の経済力を誇る国で、鉱山資源が豊富なの。鉱石や金属加工品の輸出がこの国の主な産業で、隣国との交易も盛んよ。なにより、リヴィオネ王国は、特に鉄鉱石が特に多いわ。それと銅鉱石も豊富で、それらを加工して武器や道具を製造しているわ。」

 シロウは興味深そうに頷き、尋ねた。


「それで、その国は安定しているんですか?」


「表向きはね。国王グレゴール3世が絶対的な権力を持っていて国内を統治しているわ。」

 

 レイラは一瞬目を伏せ、指先でスカートの縁をつまむようにしながら、少し躊躇した様子を見せた。

 しかし、すぐに顔を上げ、真剣な表情で続けた。

 その瞳には、この国の複雑な事情に対する諦めと、それをどうにかしたいという希望が混じっていた。


 「でも、国の内部では問題が多いの。貴族たちが鉱山の利権を巡って激しく争っていて、派閥同士の対立が絶えないの。特に鉱山地帯に近い貴族たちは、自分たちの利益を守るために国王に従うふりをしながら、独自の権力基盤を築いているのよ。」

 

 レイラは話しながら、無意識に手を握りしめていた。

 その心には、この国がもっと良い方向に変わってくれればという思いが渦巻いていた。

 

「貴族間の派閥争いか……その争いは経済にも影響しているんだろうな。」


 シロウは一瞬眉間に皺を寄せ、厳しい表情で考え込んだ。

 彼の目はテーブルの一点を見つめており、その奥には複雑な思考が渦巻いているようだった。

 (内部での争いが経済を停滞させる……それはどの世界でも同じ課題だな。でも、この状況に具体的にどう介入できるだろうか?)


 ふと、シロウは自分の考えに集中しすぎていることに気づき、軽く頭を振った。

 そして、表情をやや和らげ、レイラに向き直った。


「……その争いがどれだけ広がっているのか、もっと詳しく知りたいな。」

 と、慎重に言葉を選びながら尋ねた。


 レイラは少し言葉を濁すように視線を逸らし、手元のスカートの裾を軽く握り直した。

 その仕草には微かなためらいが感じられた。


「それが……。正直、私にも詳しくは分からないの。だけど、派閥の影響で商取引が滞っているのは確かだわ。」


 彼女の声には不安と葛藤が混じっており、彼女自身もこの問題をどうにかしたいと願っているのが伝わった。

 

「ええ。しかも、リヴィオネ王国は運搬方法が発展していなくて、鉱石が重くて効率的に他国に届けることができないの。そのため、国内外への鉱石の運搬は滞りがちで、商人たちが頭を抱えているわ。」


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