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第2話 改革の第一歩(2−4:レイラとの出会い)

 シロウが村の大通り的な場所に足を踏み入れると、目の前には大量の荷物を積んだ馬車が長蛇の列をなしていた。

 列は村の中央広場から外れた道にまで続いており、馬車の車列は動かず、道端では商人や村人たちが苛立ちと疲れの色を見せている。

 

「こんな状態じゃ市場に着く前に日が暮れてしまう!」

 と嘆く声が響き、荷物を確認しながらため息をつく商人の姿もあちこちに見られる。


 列の一部では、商人同士が小声で口論を始めている。

「お前の馬が邪魔で通れない!」という抗議に、

「そっちが勝手に前に割り込んだからだ!」と反論が返され、

 緊張感が漂っていた。

 

 一方、親たちが列の隙間で遊び始めた子供を急いで制止する様子や、座り込んで疲れ果てた老人の姿も見える。

 気まずい空気の中で、馬のいななきや荷車の軋む音、商人たちの愚痴が重なり合い、独特の喧騒が広がっていた。


「これは……何が起こっているんだ?」


 シロウは立ち止まり、目の前の状況を見つめた。

 馬車の荷台には木箱や麻袋が乱雑に積まれており、その中身は穀物、果物、陶器、織物といった様々な物資だった。


 しかし、多くの荷物は砂埃をかぶり、放置されてから相当時間が経っていることを物語っていた。

 シロウは列全体を観察しながら、村の物流が完全に停滞していることを瞬時に理解した。


 列の先頭では、数人の商人が荷物を降ろそうとしているものの、集荷場の入口にはすでに山積みの物資が置かれ、作業はほとんど進んでいなかった。

 

 近くの馬車の馬が苛立ち、蹄で地面を叩く音が耳に入り、商人たちの顔には焦燥と苛立ちが浮かび、列の後方からは「これじゃ商売にならない!」という怒りの声が響いてくる。


 シロウの中に自然と問題解決への意欲が湧き上がった。

 しかし、目の前に広がる混乱した状況を前にして、彼の心には戸惑いと焦りが交錯していた。

「これほど多くの馬車が詰まっているなんて……」と内心でつぶやきながら、列の先頭に向かい、一番前の馬車の商人に声をかけた。


「どうして、こんなに列ができているんですか?」


 商人は困惑した顔でシロウを見上げた後、疲れた声で答えた。

「市場に物を運ぼうとしてるんだが、荷物を降ろす場所がいっぱいで動けないんだ。村には荷物を集めるための集荷場が一つしかなくて、そこがもう物で溢れ返って、この有様さ。」


 商人の説明を聞きながら、シロウは列全体を改めて観察した。

 荷物の種類や量が管理されておらず、集荷場は完全にキャパシティを超えている。

 さらに、商人たちは個別に対応しようとするあまり、全体の動きが滞っていた。

 近くに止められていた馬車の一台では、馬が退屈そうに地面を引っ掻いている。


「なるほど、これは典型的な倉庫の荷待ち状態か。その原因が物の置き場不足というわけだ。」


 シロウは素早く状況を把握し、次に何をすべきか考えを巡らせた。

 列を見回しながら、荷物の整理方法を頭の中で組み立てていく。

 そして、商人に向き直り、自信を持って提案した。


「荷物を効率よく降ろす方法があります。まず、今置いてある荷物を整理して、種類別や用途別に分けましょう。例えば、食品は鮮度が落ちやすいから最優先で処理し、それ以外の物資は日用品や医薬品などに応じて置き場所を調整するんです。その際、人や馬車が通れる通路を確保することが重要です。それから、一時的に荷物を置ける仮設のスペースを設け、急ぎの物から順に処理しよう。また、荷物の状況を把握するために簡単な記録を取れば、次の段取りがさらにスムーズになります。」


 シロウの提案は理にかなっていたが、商人たちはすぐには動かなかった。

 彼の現代的なスーツ姿は村の雰囲気とはかけ離れており、その異質さが彼への不信感を生み出していた。

 彼の黒い革靴は、周囲の土埃でくすんで見え、ネクタイは村の緩やかな空気とは正反対の堅苦しさを醸し出していた。


「おい、そもそもお前、何者なんだ? なんでそんな変わった格好でここにいるんだ?」


「確かに、どこの出身かも分からん奴の言うことなんて聞けるか?」


 商人たちは次々と疑念を口にし、周囲の村人たちも困惑した表情でシロウを見つめた。

 シロウはその場の不穏な空気を感じながらも焦らず、冷静に対応しようとした。

 しかし、彼を信じる者はいまだ現れなかった。

 目の前の列の後方では、年配の商人が他の商人たちに不満を漏らしている声が聞こえる。


「こんな奴に従う必要があるのか?」


その時、後方から柔らかいが力強い声が響いた。

「ちょっと待って! この人は悪い人じゃないわ。彼が何を考えているのかは分からないけど、真剣に私たちを助けようとしているのは明らかよ。ちゃんと話を聞いてみて。」

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