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第2話 改革の第一歩(2−3:異世界の村へ)

 村の入口には風化した木製の看板が立っていた。

 そこにはかろうじて「アルビオン村」と読める文字が彫られている。

 看板の脇には季節ごとに村人たちが植えた花々が彩りを添えていた。


 今は春の季節で、ラベンダーやマーガレットが咲き誇り、その鮮やかな色彩が新緑の背景に映えて、その周りには小さな石が円形に並べられている。


 看板の前で年配の女性が花に水をやりながら、子供たちにこの村の歴史について語る姿も見られ、村人たちがこの看板を単なる目印ではなく、村の誇りとして大切にしていることが伝わってきた。

 

「この看板はね、私たちの祖先が村を築いた時に作ったものなんだよ」

 と語る彼女の声は優しく、子供たちは目を輝かせて耳を傾けている。


 かつてこの地は広大な森に覆われ、人々は木々を一本一本切り倒し、大地を耕して農地を作り始めた。

 その作業には何十年もの時間がかかり、厳しい自然環境や飢えに耐えながらも村人たちは協力し合って生活の基盤を築いたという。


 初めての収穫時には村中で祭りが開かれ、自然への感謝と共に、新たな生活への希望を祝ったそうだ。

 看板に刻まれた文字は、その時代のリーダーが記念として残したものであり、現在でも村の団結の象徴として大切にされている。


 毎年、村人たちはこの看板の周りに花を植え、祖先への敬意と感謝の意を示しているのだと、彼女は微笑みながら語った。

 看板に刻まれた文字はその時代の名残であり、村人たちはこれを誇りとして受け継ぎ、花を植えることで感謝の気持ちを表していた。


 村の中に足を踏み入れると、石造りの家々が整然と並び、その壁は年季の入った苔やひび割れが所々に見られたが、村人たちの手によってしっかりと修繕されているようだった。

 屋根は藁や木材で覆われ、太陽の光を受けると、麦わらの柔らかな黄金色や木材の深みのある茶色がまるで絵画のように映え、温かみのある輝きを放っていた。


シロウは村の静かで落ち着きながら、どこか活気に満ちたこの村の雰囲気を感じ取り、日常の営みの温かさが彼の心に染み渡り、徐々にその緊張が解けていくようだった。


 村の中を歩き進んで行き、市場の近くに差し掛かると、さらに賑やかな声が耳に届いた。

 近くでは新鮮なトマトや大根、手作りの陶器、織物などが露店に並べられ、買い手と売り手が熱心に交渉している。


 野菜を包む藁の擦れる音や、陶器が触れ合う硬質な音が響き渡る中、甘い果物の香りや焼きたてのパンの香ばしい匂いが風に乗って漂ってくる。

 子供たちは店先で何かを指差しながら無邪気に笑い、行商人たちは大きな声で商品の魅力をアピールしていた。

 その活気に満ちた光景を目の当たりにしたシロウは、少し安心した表情を浮かべたが、同時にこれから自分がどうするべきなのか、不安にも襲われていた。


(自分はこの村で何をすべきなのか?自分のやりたいことをやるには、どうすればいいのだろう?)


彼の中では期待と不安が入り混じり、次の一歩をどう進めるべきか思案を巡らせていた。

 しかし、目の前の活気に満ちた市場の風景が、彼の迷いを少しだけ和らげたようだった。

 


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