回転木馬
誰にも見つかることなくその回転木馬に乗ることができたなら一周ごとに一年をさかのぼることができる、という噂があった。晴れた無風の日でないといけないとか、万霊節の前々夜でないといけないとか、条件は他にも様々ある。
人目に触れずに遊具を動かすだけでも難条件だ。そのためだけに就いた警備員の仕事は面白くもなんともなかった。噂は真実だと確信があるから続いただけだ。
木馬が動き始めたのを確認してから台座に乗り、黒装束の使者を待つ。日中には聞かない軋み音とともにやってきた使者は愉しそうに笑っていた。
やあ、人間。凝りもせずまた若返りにきたのかい。いいとも、何度でも乗せてやろう。その魂に残された時間の限り。
久々に書いた~!
第20回 毎月300字小説企画、お題は「回る」でした。