「カーテシー」という言葉を使わないカーテシーの表現
なろう小説でよく出てくるらしいですね。「カーテシー」という言葉。
「カーテシー」とは、
『西洋で、伝統的な女性の作法の一。相手への敬意を表すため、ひざを折って片足を後ろに引き、身を低くするおじぎ。カーツィー。』(コトバンク内『デジタル大辞泉』)
だそうです。
自分の中でなんとなく「お姫様のポーズ」というイメージがありましたが、この仕草を表す「カーテシー」という言葉を知ったのは結構最近でした。
なろうだと西洋風の世界観で上流階級の女性が出てくる作品が多いので、カーテシーをする場面も頻繁にあり、「カーテシー」と言う言葉もよく使われるのでしょう。一方で、なろう以外の小説では「カーテシー」という言葉をあまり見たことがありません。しかし、この仕草自体は昔からあるものです。カーテシーをする場面が出てくる小説も当然あったはずです。
では、「カーテシー」という言葉が使われない場合は、どのように文章で表現されていたのでしょうか?
そんな疑問が浮かんだので、青空文庫から用例を探してみました。少ししか見つけられませんでしたが、以下に引用します。前後の文脈からカーテシーをしている場面だろうと判断しましたが、誤っている場合はご指摘ください。
・セエラは羞しそうにもじもじしていましたが、やがて裾をつまんで、優雅な礼をしました。(『小公女』バーネット フランシス・ホジソン・エリザ 菊池寛訳)
・アッシェンプッテルはまず顔と手をあらってから、王子さまのまえにあらわれました。スカートのへりをつまみ、ひざをまげ、あいさつをしました。(『アッシェンプッテル―灰かぶり姫のものがたり―』グリム兄弟 大久保ゆう訳)
・彼女は、彼が自分などよりはずっとずっと経験もあり智慮もある方だと自分が思っているということを、彼に伝えたいという可憐な願いをこめて、彼に対して膝を屈めて礼をした(当時は若い淑女は膝を屈める礼をしたものである)。(『二都物語』チャールズ・ディッケンズ 佐々木直次郎訳)
・彼女は膝を屈めて敬禮しながら、若主人を迎へる歡びを顏にも言葉にも現すのであつた。(『クリスマス・イーヴ』アーヴィング ワシントン 高垣松雄訳)
・「――でもちゃんとお国のお名前何ですかっておうかがいしないと、ねえ。どうも、おくさま、ここはニュージーランド、それともオーストラリア?」(と言いながら左足を引いてひざを曲げようとしたんだけど――空中でこんなふうにスカートつまむところ思いえがける? できると思う?)(『アリスはふしぎの国で』ルイス・キャロル 大久保ゆう訳)
・すると、イリーナとよばれたその娘は、まるで舞台の上で、踊り子がアンコールに答えるときにでもするように、にっこり笑いながら、赤い服のスカートを左右につまみあげて、片脚を深くうしろにひいて膝を曲げるお辞儀をした。(『道標』宮本百合子)
今回見つけた文章を見ると、「膝を屈める」、「スカートをつまむ」などの表現を使ってカーテシーは表されていたようです。探せば他にも違った表現の仕方が見つかると思うので、色々探してみるのも面白そうです。
小説を書いていて、「カーテシー」という言葉を使わずにカーテシーを表現したい、という時に参考になるかもしれません。なお言うまでもなく、コピペは駄目です。あくまでも参考に。
【参考資料】
青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)
コトバンク(https://kotobank.jp/)