SKK <2> 「アサガオ」
新と、紅音が愛を交わしている最中、玄関の扉を叩く音が3回ほど鳴った。
「ん?誰だ?典賢達が帰ってきたのか?」
新が呟く。紅音もその声に耳を傾けて、言葉を交わした。
「あたし見てくるよ。新くんは待っててね。うふふ。」
紅音が玄関へと向かい、扉を開けると、そこには、典賢と涼夏が居た。賢典が口を開いた。
「紅音ちゃんただいま。もう朝だね、2人は何してたのかな?」
「ヒミツ。典賢君ならわかるかもね。」
「なるほど・・・詮索はしないほうがいいかな?誰にだって隠しておきたい、もしくは、話したがらないような事実はあるよね。」
賢典は、察したが、紅音のためにも公言することを留めた。また、賢典は新と紅音に伝えるべきことがあるため、一呼吸置いた。
「典賢くん、どうしちゃったの?深呼吸なんかしちゃって。何かあったの?」
「実は、新と紅音ちゃんに伝えるべきことがあってね」
新は、その発言に驚き、思わず口を開いた。
「え?なんだよ。まさか、出ていくなんて言ったりしないよな?典賢。お前そんなことしねえよな?」
「そういう訳ではないんだけど、実は僕ら、僕と涼夏は付き合ってるんだ。」
4人の間に長い沈黙が走る。沈黙に耐えきれなくなった紅音が言葉を発した。
「知らなかった~。典賢くんおめでとう。末永くお幸せに。気になったんだけど、いつから付き合ってたの?」
典賢が答える。
「紅音ちゃんありがとうね。僕らもまさか付き合えるだなんて思ってもみなかったよ。サプライズだったからね。上手くいって本当に良かった。友達どまりで終わらなくて本当に良かったって、僕は本当にそう思うよ。質問に答えるとするならば、・・・・・・・昨日かな。ふふふ。」
「そうなのよ。私もケーキが出てくるなんて思わなかったわ。あはは。昨日は最高の夜だったわ。」
典賢は紅音の好奇心に若干引き、上辺だけの笑顔を見せたが、紅音の優しさには、目を見張るものがあったのか、紅音に少しばかりの好意を抱いた。また、紅音も同様に、典賢のロマンティックな側面やサプライズを用意していたという素敵さに惹かれていった。
「あたしもサプライズされたいな~。4人でダブルデートとかしたいよね。」
典賢が答える。
「そうだね。」
一方で、新は、少しばかりの嫉妬心と疑念を抱いていた。典賢の頭の良さには一目置いていたからだ。だが、同居人である以上仕方がないと割り切り、憤りまでは感じなかった。新が口を動かした。
「紅音。お前は俺のものだからな。」
「わかってるよ。新くん。私は新くんのものだよ。うふふ。」
新が涼夏に目線をやると、涼夏の手には梱包されていた荷物があった。新はそれが気になり、質問した。
「なあ、涼夏。それ、なんだ。」
「あっ、これ?これ中に、アサガオの絵画が入ってるの。部屋に飾ろうと思ったのよね。」
「アサガオ?なぜ、アサガオなんだ?今夏だぜ?」
「新君は知らないのね。確かに今は夏なんだけど、アサガオの花言葉は<愛情><結束><明日も爽やかに><あなたに絡みつく>私達に、ピッタリだと思わない?それに、私達の苗字偶然か必然か、あ・・・さ・・・が・・・おになるのよね。まず、新君の『あ』でしょ?私の彼氏、典賢君は榊原だから、『さ』でしょ?紅音ちゃんは我孫子だから『が』でしょ?そして、私は小野寺だがら『お』なのよ。色んな絵画があったけどアサガオが一番いいと思ったの。神の悪戯か知らないけど私達、アサガオの花言葉みたく、愛で溢れた、素敵な人生を送りたいとは思わない?」
「・・・異議なしだな。俺もそう思う。偶然か神っているのかもしれないな。ふふ。ん?ちょっと待て、紅音って我孫子っていうのか。」
新は思い出した。我孫子紅音って幼稚園の時いたよな、どういうことだ。しかも俺、我孫子が好きだった。訳わかんねえだろ。これが千載一遇のチャンスってやつなのかよ。神様マジで感謝するぜ。
「なあ、今の説明聞いたよな。お前なんか思い出したか?それにお前、我孫子っていうのかよ。驚いた。俺の事覚えてないのか?本当に覚えてないのか?」
紅音の記憶が断片的に蘇った。
「え?じゃあ、新くんが世界くんなの?」
「そうだ、紅音。いや、我孫子紅音!俺が新世界だ!!!」
「あたしたち、一緒の保育園だったよね?思い出したよ。あたしその頃から好きだったよ。」
「本当か?俺も好きだったんだ。紅音。俺はお前が大好きだ!!!」
世界と紅音は、口々にこう言った。
「俺達は」「あたしたちは」「生きていく、好きが加速するこの世界で。」