SKK <1> 「出会い」
SKKとは、好きがの頭文字「S」加速する、の「K」この世界で、の「K」から取っています。
処女作ですが、興味のある方どうぞお付き合いください。
雪が激しく降る冬の日だった。一人の青年が仕事が終わって家に急いで小走りで帰っていたところ、女の子が道端に蹲っていた。彼は声をかけてみた。
「おい、こんなとこでなにしてんだ大丈夫か?」
その声に気づき、女の子いや、小柄なのだが、おそらく20代前半と思われる女性が、振り向いた。
「あ、あのね、いぬがこごえてしにそうなの。でもね、あたし、なにももっていないからたすけ
てあげられないの。」
その言葉に、嘘はないと信じた彼は答えた。
「じゃあさ、俺の家、来いよそのワンコロも、お前も、俺なら助けてやれる。」今にも泣き出しそうな表情で女性は答える。
「いいの?ほんとにいいの?」
「じゃなきゃ、お前もそのワンコロも死んじまうぜ。」
彼は彼女と犬を連れ、家へと向かった。
「涼夏ただいま、今日晩飯、作りすぎてないか?」
そう、彼が問うと一人の女性、おそらく
小野寺涼夏と思われる女性が答える。
「あっ、おかえり新君。作り置きしたいから多めに作ったけど、なんでかしら?」
と、答えながら涼夏が、新に視線を向けるとそこには新の隣に小柄な女の子と、一匹の犬が佇んでいた。涼夏は驚き、問う。
「えっ!その子達どうしたのよ?」
新が答える。
「道端で拾ったんだよ。こいつらもこの家で暮らすことはできないか?」
涼夏は唖然とし、間髪いれずに答える。
「ちょっと待って、今3人でも大変なのにその子達も増えたらどうなるの?お金稼ぐのも、3人分の家事するのも凄く大変なのよ?新君はそこまでわかって言ってるの?」
新は苦悶の表情を浮かべる。
「俺はこいつらを救ってやりてえんだ。」
「ねぇ、私の言ったこと聞いてたかしら?」
「じゃあ聞くけどよ。涼夏お前は死にそうになってるけど、助けてやれる人間を見殺しにできるのかよ。俺はできねえよ。」
「ごめんなさい。そうよね時間やお金より、命って重いのよね。私間違ってたわ、私協力するわ。」
「ありがとな。涼夏ならわかってくれると思ったぜ。でもまだ、典賢がなんて言うかはわからないけどな。」
「おっと新おかえり。それと客人かな?」「お!典賢!」
「典賢君。」
新と涼夏が彼の名前を呼ぶ。彼は榊原典賢というらしい。
「いつからそこにいたの?」
「あぁ、ごめんごめん。話は聞かせてもらったよ。もちろん僕も二人に賛成だよ。これから、更に忙しくはなりそうだけどね。」
「流石俺の親友だな、話が早くて助かったぜ。」
典賢が新に連れてこられた女性へと体を向けると質問した。
「あと、気になったんだけど、君って学校は通ってるのかな?高校生?」
「え?あたしですか?あたし25です。」
涼夏と新が驚いた。
「え?私達と同い年じゃない!私てっきり学生だと思ってたわ。」
「マジかよ。俺は小せえから女の子だと思ってたぜ。」
「いやいや、それは新君が大きいからよね。」
「お、おう。そうかもな。」
典賢が質問を続ける。
「今まではどうしてたのかな?家とか、家族とか、職場はどこなのかな?」
「あのね、あたしがついたらみちにたおれててねなまえととししかおぼえてないの。」
涼夏が驚き、ふと思ったことを口に出す。
「え?記憶喪失ってことよね?」
典賢が訪ねる。
「他には何もおぼえていないのかな?」
「おぽえてないよ。」
女性が答えた。
「マジかよ。それじゃ、居候になっちまうな。」
新が不安そうに訪ねる。
「あたしはたらけないかな?」
「うん、そうだね。難しいかもしれない。だけど、仕方がないよね。僕らでなんとかしようか。家事とか料理はできるかな?」
「わすれちゃったけど、あたしおしえてくれればできるよ。」
「わかったよ。じゃあ涼夏頼むよ。」
「わかったわ。」
涼夏が頷く。典賢が困り果てた顔で犬を見ながら口を開いた。
「でも、弱ったよね。このパブロフどうしようか。」
涼夏がすかさず口を開く
「え、パブロフって何?もしかしてこの犬のこと?ていうか、なんで知らず知らずのうちに名前つけ
てるのよ。それに人名みたいじゃない。」
「あぁ、それはパブロフの犬っていう実験があってさ。そこからとったんだけど、変かな?ほら、涎も垂れてるしさ。」
すると、涼夏も困り果てた顔をした。
「その、凄く言いづらいし、可愛そうなんだけど、この犬は私が保健所に連れていくから。異論はないわよね?」
女性が涙目になる。
「あたしパブロフかいたかったな…」
「あぁ、あなたまで。名前で呼ばないで、私も愛着沸いちゃうから。」
そこに新が口を挟む。
「でもよ、ちょっと可愛そうだけどよ。お前か犬どっちかつったら、俺はお前を選ぶけどな。いやまあ、そりゃそうかもしんねえけどさ。」
「え、ありがと。」
女性の鼓動が高鳴る。涼夏が新の女性に対する気持ちに勘づく。
「あっ、えっと、連れてくってことでいいわよね?」
女性が答える。
「いいよ。ごめんねパブロフ…」
パブロフもどこか悲しげである。新が疑問に思っていたことを口にする。
「そういやさ、お前名前なんてんだ?」
「あたし?くおんだよ。」
「え、くおん…」
新が何かを思い出そうとしたが、記憶が曖昧で思い出せなかった。
「どんな漢字を書くのかな?」
典賢が聞く。
「え?かんじ?あたしかんじもおぼえてないの。」
「え、漢字読めないと困るわよね。私教えた方がいいかしら。」
典賢が答える。
「そうだね、日常会話で使う程度は教えた方がいいかもしれないね。」
「あたし、おぼえられるかな?」
「大丈夫だぞ。俺も協力するからさ。」
涼夏が皮肉めいたことを口走る。
「新君は話したいだけよね。」
「え、いやいや、わかんねえと困るだろうなと思ってよ。ていうか、何言ってんだよ。俺別に好きな人いるぜ。」
「え?誰よ?」
「いや、ここじゃみんないるから言わねえけどさ。」
「へぇ、居たのね知らなかったわ。いつできたの?もしかして今日とかかしら?」
「え?あらたくん?」
「おいおいおい、ちょっと待て誰が今日だなんて言ったよ。マジで違うからな。」
「まさか、新に好きな人がいるだなんてね僕も知らなかったよ。で、その子は何歳なのかな?」
「いや、それも言えねえけど。てか、俺の好きな人に対して質問しすぎだろ。どんだけ、興味あんだよ。俺の好きな人に関する質問はこれでなしだぞ。」
「え、あらたくんすきなひといるの?」
「お前、今なしって……………お前はいいよ。」
「え、私達は駄目なのにくおんちゃんはいいわけ?」
「なぁ、新今しかないんじゃないかな」
「いや、その……」
くおんが意を決して新に質問した。
「だれがすきなの?」
「お、俺は……………」
しばらくの沈黙が流れる。
「くおん、お前が好きだ!!」
「ほんとに?あたしもすきだよ。」
「え…………マジで?」
「よっしゃあああああああ!!!!!」
涙目になりながら喜ぶ新をくおんが見つめる。くおんは笑みを浮かべた。典賢と涼夏が共に喜びながら拍手する。
それから、半年の月日が立ち、季節は夏に 変わった。太陽が燦々と照りつけるなか、二人は並んで歩いていた。人通りは少ないが、虫が鳴き、小鳥が囀ずり、車の音が騒がしいなか、二人はゆっくりと歩を進める。背の高い男、新が紅音に話しかける。
「なあ、紅音。映画楽しみだな。今日は何にしような。」
「あたしも楽しみ。新くんは洋画か邦画どっちが好きなの?」
「俺か。俺は洋画が好きだな。紅音は?」
「あたしも洋画が好きだよ。」
新くん今、好きって言ってくれた。嬉しいな。あたしもどさくさに紛れて好きって言っちゃった。普段言ってくれないから凄く嬉しい。
「ねぇねぇ、新くんって何が好きなの?うふふ。」
「え?何が好きって、簡単なようで難しいよな。今すぐには思い付かねえかもな。」
本当は紅音って言いてえけどさ、たぶんそういうことじゃねえよな。答えれなかったのはやっぱまずかったか。
「そうなんだね、本当に好きなものって簡単には見つからないのかもね。でも、あたしね人には譲れないもの。かけがえのないものをね、見つけた気がするの。それは近くにあって遠くて、当たり前なんだけど、当たり前だからいいっていうか。ずっとそのままでいてほしいっていうか。私にとっての宝物なの。でもね、大事な大事な宝物なのにね、鍵はかけられないの。でも、それでいいの。もし、鍵をかけちゃったらね。それは宝物じゃなくなっちゃうんだよ。」
「えっと、宝物はさ、いくつあんだよ。一つだけなのか。」
「宝物なんだからたくさんあった方がいいよ。でも、欲張っちゃダメだよね。2つで充分だよね。」
「その宝物が誰にも奪われないといいな。」この時、紅音は宝物は、新なんだという気持ちを抑えては、恋焦がれるのであった。
「お!着いたぜ。」
「映画館涼しいかな?」
「おいおい、そこかよ。何見るかだろ。」
「私、お腹すいたし喉乾いた。」
「まあそうだな、俺も小腹すいたしなんか食うか。何食う?」
「ポップコーンでしょ!」
「だよな!」
「じゃあ、何飲む?」
「カル◯ス!」
「俺もおんなじだぜ。2つずつでいいよな。」
「うん!」
そういや、あの二人どうしてんだろうな今日は休日だし、今頃、家だろうな。
一方その頃、シェアハウスにて、典賢と涼夏が会話をしていた。
「今日、二人でデートよね。楽しんでるかしら。」
「そうだね。新の折角の休日だし、楽しんでるだろうね。僕達はどうする。何処か出掛ける?」
「えっと、そうね。スーパーの買い出しにでも行こうかしら。」
「それもいいかもしれないけど、スーパーなら紅音が平日の特売日に行ってくれるんじゃないかな?」
「あぁ、確かにそうよね。その方がいいわよね。」
「その、カフェとかどうかな?行きつけのところがあるんだけど、あんまり乗り気じゃないかな?」
「いいけど、カフェで何するの?」
「そうだね、コーヒーとかお菓子食べながらゆっくり話そうよ。」
「分かったわ。行くわ。」
支度をし、二人はカフェへと向かった。カフェに着き椅子に腰掛けるとと、何やら店内が暗い。どうかしたのだろうか。
「あれ、ここ昼間なのに暗いわね。カーテンも締め切ってるし、いつもこうなのかしら。」
「…」
典賢は黙っている。すると、店の奥から何かが運ばれてきた。ベールで隠されており、何かはわからない。店員が涼夏と典賢のテーブルの前で止まり、何かをテーブルに置いた。
「え、私達まだ、何も頼んでないけど…。」
店員がベールを取っ払った。すると、そこにはホールケーキがあった。
「涼夏誕生日おめでう!!」
典賢が慌てて言った。
「涼夏ちゃんおめでとう!」
店内の客と店員が一斉に言った。涼夏の目から涙が溢れ落ちた。
「嬉しい。覚えててくれたのね。」
思わず典賢が立ち上がる。
「もうひとつ涼夏に言わなければならないことがある。」
「僕と付き合ってください。」
「もちろんよ。」
涼夏は咽び泣く。
場面は移り変わり、新と紅音が映画館から出てくる。
「新くん、映画面白かったね。でも、ちょっとあたしには難しかったかな。」
紅音が微笑む。
「あぁ、確かにそうだな。面白かったな。」
「なあ、紅音。他に行きたいとことかあんのかよ。まだ、日も暮れてねえし、そこ行こうぜ。」
「うーん、どうしよっかな。あっ、新くん肩になんか着いてるよ。よいしょ。」
新が紅音が届きやすいように少し屈むと、紅音の顔が新の顔に近づき、唇と唇が触れあった。紅音が目を閉じたが、新が慌てて、引き剥がした。
「馬鹿、お前なにしてんだよ。本当は肩になんもついてなかったんだろ?」
「もう!私の初めてだったのに。」
紅音は少し不機嫌である。
「馬鹿、俺もだよ。」
「え、そうなのー?嬉しいな。」
紅音の表情が和らいだ。紅音が一呼吸置き、口を開いた。
「てことはだよ。新くんが私と経験すること何もかもが、私と初めてってことだよね?」「まあ、そうだな。」
「ね?そうだよね?それすっごく嬉しいかも。本当に初
めてのなの?だって新くん。背も高くて、イケメンで、優しくて、あたしに漢字だって教えてくれて、私とデートまでしてくれて、誰かもわからなくて何も覚えてないあたしを幸せにしてくれたんだよ?その新くんに今まで彼女がいなかったなんて、私信じられないよ。本当のこと言ってくれない?」
「いや、その、マジで彼女はできたことねえよ。つか、そもそもあんまり女を好きになっことがないつうかさ、いや、実は一人いたんだけど、そいつはその…………」
不穏な空気が走る。新は何かを思い出そうとするが、記憶の片鱗しか思い出せない。
「幼稚園の時にいたんだけどな、すぐ、どっか行っちまってさ、顔も名前もどんなやつだったのかも、今では覚えてなくてな。」
「なんかあたしみたいだね。うふふ。新くん本当に初恋の人のこと覚えてないの?」
「そうだな、覚えてねえな。」
「じゃあ、実質あたしが最初ってことだよね?あたしやっぱり、嬉しい。この関係がずっと、ずっと、続いたらいいのにね。」
「俺もそう思うな。いつまでも、お前とさ、暮らせたらいいのになって思うぜ。」
「うふふ。ありがとね。すっごく嬉しい。今日はもう家帰らない?あたし疲れちゃったな。家でしたいこともあるし。なんだと思う?新くんもきっと喜ぶと思うよ?うふふ。」
「そうだな。なんだろうな。また、家で映画でも見んのか?」
「新くん本当に映画好きだよね。もう映画はいいから。わかんない?家に帰ったら教えてあげるね。ヒントは恋人がすることだよ。」
新は考え続けたが、さっぱりわからない。そして、考えるのをやめようとしたが、やめられなかった。紅音は悩み続ける新の手を握り、家へと向かった。
「深く考えなくていいからね。でも、ちょっと可愛そうだよね。じゃあ、悩んでる新くんに質問。」
「え?何だよ?」
「人間は誰だって人生に勝ちたいでしょ?でも、そう簡単にはいかないよね?負けることがほとんどだよね。じゃあ、人生にはどうしたら負けると思う?」
「えっと、そうだな。やっぱり、その、諦めちまった時じゃねえの?」
「あぁ、なるほどね。それもあるかもしれないよね。でもね、あたしが思うにね、人が人生に負ける時って、負けたことを気にしたときだと思うの。どれだけ、負けてもね、失敗してもね、気にしなければねあたしは何度だってやり直せると思うの。でも、それって、諦めないことおんなじだよね。やっぱりあたし、まだまだかも。うふふ。」
「なるほどな。それは一理あるよな。」
「気にせず、諦めないようにするのが一番いいかもしんねえよな。」
「新くん頭良いよね。その発想はなかったかも。じゃあさ、人生に勝つにはどうしたらいいと思う?うふふ。」
「それはあれだろ、やっぱ今自分にできることを最大限に努力する。とかじゃねえの?」
「おー、真面目だね。それもあるかもしれないけど、私はやっぱり、人生は楽しんだもの勝ちだと思うな。人生は楽しめばきっと上手くいく。そんな気がしてならないんだよね。どんな逆境、困難でさえも、不利だと思えば不利に思えてくるし、楽しめば自然と楽しくなると思うんだよね。うふふ。」
「楽しむか。それなら、楽しめない状況下に置かれたらどうしたらいいんだ?強制的に嫌なこと、やりたくないことをさせられたらどうしたらいいんだよ。その状況でさ、楽しめるやつなんていんのか?」
「ああ、そうだね。核心を突いたような質問だね。流石新くん。うふふ。」
「うーん、そういうときは逃げてもいいってあたしは思うかな。それか、気分転換するとかそれしかないんじゃないかな。うふふ。」
「なるほどな。お、着いたぜ。結局最初の質問の答えはわかんなかったけど、深く考えさせられたぜ。」
「うふふ。今にわかるからね。」二人は玄関を
開けたが誰もいない。涼夏と典賢は不在のようだ。
「あれ?誰もいないね。」
「本当だな。」
「じゃあ、丁度いっか。新くん。見せたいものがあるから。あたしの寝室に来て。」
「見せたいものってなんだよ?」
「ヒ・ミ・ツ」
「あ、おう。わかった。」
新は何かのサプライズなのかと思い、期待を胸に寄せる。二人は紅音の寝室に向かった。
「新くんはあたしのベッドに座ってて、あと、直前まで見せたくないから目閉じて。」
「わかった。」
「あぁ、そっか、目隠ししてもいい?新くん。」
「構わないが。」
「あー、ちょっと手を背中の方に持ってきてくれる?」
「え?なんでだよ?訳わかんねえって。」
「いいから、お願い。」
「しょうがねえな。これでいいか。」
「ありがとう。ごめんね。」
「え?なにが………」
すると、新の背中の辺りでガチャリと音がした。
「え?なんだよこれ?なにした?ちょっと待て腕が動かねえって。マジでどういうことだよ。拉致か?何が目的だよ?」
「あぁ、こうしないと見えちゃうし、触っちゃうでしょ?だからこうした方がいいかなって思ったんだけど、ごめんね?なにもしないからね?いや、その、するんだけど。拉致とかじゃないからね?」
新は酷く困惑した。とかく焦り、状況が飲み込めないために、紅音の言っていることが理解できなかった。不安でしかなかったが、心を決めた。
「わかった。好きにしてくれ。」
「え?いいの?」
「煮るなり焼くなり、お前の好きにしてくれ。俺は所詮ここまでの命なんだ。もう助からん。」
「新くん。大丈夫?勘違いしてない?でも、言われたもんね。あたしの好きにするね。」紅音はそういうと喋らなく
なった。新は死を覚悟していた。運よく、出掛けた二人が、帰ってこないかと、神頼みしたが、願い届かず。
残念、無念、また、来年。いや、来年はもうないのかもしれない。
「はあ。」
と、ため息をつくと、その刹那。口の中に何かが入り込んできた。その感触に驚きを隠せなかったが、新にはそれがなんなのかさえ、わからなかった。だが、それは温かく濡れていて、舌にまとわりついてきた。口に異物を入れられているわけだが、心地よく。嫌な気分はひとつもしなかった。新もその異物に合わせて舌を動かしてみると、かすかに紅音の声が聞こえた。
「んっ。」
が、一瞬だった。紅音がまだいるのかと思うと、やるせない気持ちになったが、今は口に入った異物の事で頭がいっぱいだった。しばらくすると、異物の感触が無くなった。新は不思議に思った。口に異物を入れられたが、痛みは一切感じなかった。新には一筋の希望の光が見えた。助かるかもしれない。紅音はおそらく俺で何らかの実験をしているのかもしれない。失敗したら、命の保障はないかもしれないが、成功すればなんとかなるかもしれない。そ
う思った新は、次はどんなことをされるのか待ってみた。すると、紅音が声を出した。が、何故か、息が上がっていた。運動でもしていたのだろうか。
「はあはあ、新くんズボン脱がすね?」
「今度は何すんだ?教えてくれ。」
「はあはあ、ここまでしてもわかんない?新くんならわかるよね?」
「すまん、わからん」
「ちょっと、しばらく喋れないかも。危ないから逃げたりしないでね。」
「危険なのか?」
「危なくはないんだけど、私の口が不自由になるから。」
新は考えたが、やはりわからない。下半身を集中的に狙った実験なのだろうか。口が使えない、また、意味不明だ。紅音は何を言っているのだろうか。そう、考えているうちに、新のズボンと下着が脱がされた。
「おい、下着までとは聞いてないぞ。もしかして切るのか。」
「え?着ないよ?というより、脱いだけど、なんでわかったの?もしかして見えてる?」
「ん?いや、その、なんでもない」話が噛み合わない。着ないとはなんだ、何をだ。それに、脱いだのは、いや、脱がされたのは俺だろう。紅音は何を言っている?
「まあ、いいや、始めるね?」
そう、紅音が言うと、急に局部が温かくなった。
「なんだこれ、温かいな、無くなったりしないよな?」
紅音は黙ったままだ。謎の音が聞こえるが、なんの音かはわからない。新は、局部に今までに感じたことのない快感を感じたが、それがなにかさえわからなかった。3分
ほど経ち、謎の音が止み、紅音が喋った。
「これ、大変だね。初めてしたけど、結構疲れるね。新くんどうだった?うふふ。」
「紅音がやったのか、まあ、その気持ちよかったが。これはなんなんだ。」
「あー、あたし名前知らないんだよね。」
「じゃあ、倒すね新くん。」
「え?」
新はベッドに押し倒された。
「始めるね。」
紅音が言ったその直後、局部は何かに包み込まれた。が、何かはわからない。
「すげえあったけえ、なんだよこれ。」
「あっ。」
「ん?どうした?」
「あ、あ、待って待ってあたし、これやばいかも。すぐかも。」
「何がすぐなんだ?」
「あっっっっ!!!」
すると、局部が何かに締め付けられた。
「えっ、大丈夫かよ。これマジでなに、機械じゃねえの?」
「はあはあ、これ凄いね。すごくよかった。またしたいね。新くんはどう?」「まあ、俺は命取られないならするけどよ。」
「そんなことしないってば、あたし新くん好きだからね。これからも一緒だよ?」
「俺も好きだけど。」
「ちょっと、今言うのは反則だってば、更に好きになっちゃうから。うふふ。」
「じゃあ、目隠しほどいてあげよっか?見たい?」
「その、折角なら見たいんだが。」
新は紅音がサプライズにしていたものが見たくなった。
「いいよ?じゃあ、ほどくね、あたし、自信ないから小さいと
か言わないでね。わかった?」
「おう。わかった。」
目隠しがほどかれると、目の前には裸になった紅音の姿があった。新はそういった知識を持ち合わせていなかったが、知らないなりに全てを把握した。そして、裸になった紅音を目にすると、言葉を口にした。
「綺麗だ。」
「ありがとね。うふふ。」
「その、手錠をつけたのは、やはり触るのは駄目なのか。」
「あー、ごめんね。初めてだったから乱暴にされたらどうしようって怖くてね。次からはいいからね。」
「わかった。」
「そういや、今何時だ?」
「もう夜中の2時くらいじゃない?はあ、寝たら今日が終わっちゃうね。今日が終わらなければいいのに。」
「あぁ、そうだな。」
その後、お互いを求め合い、愛に飢えていた二人は、何度も唇を這わせ、抱きしめあい、したいことをし続けた。飽きることはなく、何度も果てた。愛を分かち合い、疲れきった二人は、床に就いた。夜も静まり返り、二人は、熟睡した。やがて、朝になると先に紅音が目を覚ました。紅音は新の事が更に愛おしくなり、喜んでほしいと思ったため、朝食を作ることにした。しばらくして、紅音が朝食を作り終えたが、新がまだ起きない。
「う~ん。まだ、起きないなぁ。あ、そうだ。」
紅音はおもむろに新のズボンと下着を脱がし、それを咥えた。2分程立つと、新が飛び起きた。
「何してんだよ。」
「おはよう。」
「こうしたら、起きると思ってね。うふふ。」
新は紅音のサービス精神に恐れ入る。そして、2人は今日も愛し合うのであった。
映画のシーンで出てくる、ポップコーンは、2人の恋が弾けた事とポップコーンが弾けるに掛かっています。
カルピスは、精液の隠喩です。この場面で2人は、欲求不満になっています。