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透明な少年③


「ん?今なんて言った?」

ネトスト男の異空間。今度は私からSNSで呼びかけて招いてもらった。

「チカラ関係の面倒事。まだ受け付けてるか知らないけど、仕事があるなら引き受けてあげるって言ってるの!」

何故か素直になれない私。

「それは願ってもないことだよ!勿論是非お願いしたいのだが、何かあったのか?」

あったにはあったけどこんな奴に言っても仕方のない事だ。

「別に。あ、でも経費とかは請求するからね。仕事として臨むんだから、当然時給と出来高制も要求するわ!」

 透明な家族の一件は善意を持って対処したが、今後については話は別だ。私は大学デビューで金も要るし、この話がなければバイトをしているはずだったんだ。それに私のベッドとぬいぐるみ達。直接否定されたけど、コイツの窃盗容疑はまだ晴れてない。買い戻す資金は容疑者からせしめてやる。

「わかったよ。報酬についてはこちらから切り出そうと思ってたくらいさ。具体的なことは追々伝えるよ。ひとまずこちらも調査を進めておくから何か頼めそうなことがあったら今みたいに招集させてもらう。そういえば自己紹介がまだだったね。僕のことは管理人とでも呼んでくれ。君のアカウント名は本名かな?」

やっと名乗ったと思ったら役職名か。この男は相変わらず謎が多い。

「そうだよ。アカウントが本名。よろしくね、ネトストおじさん。」

「んなっ!」

前回も今回も。態度で伝わらなかったみたいだから言葉で少し刺してやった。この男、ネガイがSNSでの出会い目的だからこんなチカラになったって、既に自分で説明してるようなもんだよね?

「まあいい。では君の協力も決まったことだし、最後に一つ。大切な儀式を済ませないとね。」

「儀式?」

これ以上今何かすることがあるのか?男が何か取り出しながら咳ばらいをした。

「えー、オホン。鬼海ナキよ。汝のチカラに名を授けよう。この運命のタロットが、君のチカラの暗示であり冠する名を決め」

「ちょっと待った!!」

お父さんの漫画で見た展開だ。ここで止めないと取り返しのつかないことになると思った。

「何?今めちゃくちゃノってるとこだったのに。」

「私のチカラの名前アンタが決めるの!?それって任意!?強制!?」

職質に抵抗する人みたいな聞き方してしまった。

「え。んー。まぁうん。強制かな。」

「嘘つけ!」

確かにあの漫画は名作だが、このネトスト男の原作再現ノリに付き合わされて、一方的に名前なんか付けられたらたまったもんじゃない!

「名前は大切なんだよ。言霊がチカラに乗るんだ。実際出力も上がる。スポーツとか声だすだろ。アレと同じだよ。」

「だったら尚更他人に決められてたまるか!」

いくらチョロいと思われてたか知らないがここばかりは譲れないと力いっぱいゴネた。

「そんなこと言うんだったら今すぐ自分で決めなよ。ほら。」

「大事な名前をそんな急かされて考えられんわ!」

いろいろ言い合ったが結局名前は使いながら考えることにした。先送りはモラトリアムの特権だなという男の皮肉は少し効いた。


「じゃ、出口はあちらでーす。どうぞお帰りくださーい。」

拗ねた男ほど見苦しいものはない。どれだけ名付け親になる気満々だったんだろうか。

男が私の背後を示すと大扉がゆっくりと開いた。外は明るくてよく見えない。

「あと任せる仕事は選んでよね!私のチカラとやらじゃ武闘派案件は御免だから!」

釘を刺しながら帰る私に

「分かったよ。ありがとう。」

確かにそう聞こえた。いままで会話した中で、男の素直さが初めて垣間見えて私は少し戸惑った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「どうもお世話になっております。管理人です。」

「こちらこそお世話になってます〜。で、どうでしたか?」

「お陰様でもうバッチリでした。今後僕らの仕事に協力してくれるそうです!」

「本当ですか!いや良かった〜!おーい、裕也?真紀?あのお姉さん僕らの仲間になってくれたって!」

「『他生の縁〈クロスライフ〉』の御家族さんですね!私からもありがとうとお伝え下さい!いやしかし鬼怒川さんにお手を借りるのは2度目で大変恐縮ですが、1人目も2人目も快く参入してくれて本当助かってますよ!勧誘に加えて、チカラを喪失させるチュートリアルまで体験させてくれるんですから!!」

「演技通りだったらあれで僕はチカラとお別れしてますからね~。チカラ、というか二人の正式な供養は、私自身のケリをつけるまでまだ時間を置こうと思ってます。あ、あと管理人さん、一点だけちょっと報告があるんですけど…。」

「はい、ふむふむ、え!?神獣ワンダータイガーが逃げた!?」


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