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トウヤの旅  作者: yukihisa
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ダゴ村①

初投稿です。

信念と信念がぶつかり合う物語です。是非お楽しみ頂ければと思います。

 苔むした木々が立ち並び、葉と葉の隙間から太陽の光が差す緑一面の原生林の中、あちこちから野鳥の鳴き声が聞こえてくる。


「そろそろ、村に戻ろうか。」


 腰に石斧を、背中に身の丈の半分ほどの長さの弓を装備した少年のトウヤが、同い年くらいに見える少女のキョウに向かって言った。


「うん。もう日も落ちてくる頃ね。」


 集めた木の実が入ったカゴを背負い、二人は川の流れてくる方向に歩いた。二人の少し後ろを、セイウチのような2本の長いキバを持つ、クマに似た白毛の動物がついてくる。二人を襲うような気配はない。


 二人は、村までの目印を辿って細い獣道を進んだ。腰ほどの位置まで盛り上がった木の根、巨大な切り株、光の差す場所にのみ咲く花…。歩くうちに、段々と陽の光が弱くなる。


「キバ、今日はここまでだ。はい、これ今日の分。ありがとな。」


「バウフ!」


 クマに似た白毛の動物はキバと呼ばれていた。トウヤに随分と懐いているようだ。村に近づいた所で、トウヤはキバに果物を分けてから別れた。森に帰るキバの姿を見届けてから、トウヤとキョウは森を出て村に戻った。村に戻る頃には日はほとんど落ちていて、中央の広場で焚き火係の村人が火を付け始めていた。



ー「戻ったよ、サクじい。」


 トウヤは、自身と、サクじいと呼ばれた初老の男が住む家に帰った。村にある家は皆同じ造りになっている。家には床がなく、作業台と椅子、そして寝床のみが拵えられている。木細工をしていたサクじいは、トウヤが帰ってきて安堵した様子だったが、すぐに眉間にシワを寄せてトウヤを叱った。


「遅いぞトウヤ!日が落ちる前には帰って来いと言っただろう!お前も、夜の森の恐ろしさは知っとるだろうが!」


 村は背の高い原生林に囲まれているため日照時間が短く、日が落ちる前に村の中央の広場で焚き火係が火をつけて灯りを確保する習わしがある。しかし、村の外、すなわち森の中では火は使えない。森で火をつければ、火事になり村を巻き込む恐れがある。さらに、森の中では月光もほとんどが木や葉に遮られ、十分な光が届かない。人々にとっての夜の森は、深い闇が広がり、夜鳥の鳴き声が響く恐ろしい場所だった。


「いつも通ってる道なんだ、大丈夫だよ。今日も、帰ってきてからそのすぐあとで日が落ちたところさ。」


 トウヤは幼い頃から何度もサクじいの目を盗んでは森を探検していた。その度にサクじいからはこっぴどく怒られたが、幼い頃から森に慣れているトウヤにとっては、たとえ夜の森でも生きていける確信があった。


「今日はお前一人ではなく、キョウが一緒だったそうじゃないか。お前は良いかもしれんが、キョウが死んでしもうたら取り返しが付かんじゃろう!」


 トウヤは今日、キョウと一緒に木の実を採取していた。キョウの裁縫仕事に暇ができた時、森に出るトウヤにたまに着いて来るのだ。この日も、先ほどまでキョウが採取に着いてきていた。


「大丈夫だよじいちゃん。キバも一緒だったし、危険な動物が来ても大丈夫さ。今までだって、危険な動物を何度も仕留めて持ち帰ったじゃないか。それに、俺なら例え夜でも村までキョウを届けられるよ。森には、俺しか知らない道がたくさんあるんだ。」


 トウヤの自信たっぷりな反応に、サクじいは諦めた様子で叱るのをやめた。


「はあ。お前は森の事となると、何を言うても聞かんのう。」


 トウヤが物心つく頃には既に両親がいなかったため、サクじいが親代わりとしてトウヤを育ててきた。サクじいは、この村でトウヤと血が繋がっているただ1人の人間だった。


「トウヤ…お前はそんなに森が好きか?一体森の何が良いと言うんじゃ。凶暴な生き物がおるかもしれんし、夜はまっくら闇じゃ。わしは、お前が森を好きな理由が分からんわい。」


「どうして森が好きなのか、って…。仲のいい動物がいて、美味しい木の実があるからかな…?そんなこと、あんまり考えたことないや。」


 少し考える素振りを見せたが、またすぐに話し始めるトウヤ。


「でも、どうしてかは分からないけど、もっと森を知りたいんだ。森の奥には何があって、どんな生き物がいるのか…。自分の知らないことがあると思うと、ワクワクするんだ。それを好きって言うのかな…?」


 森の話になってから目が輝き始めたトウヤを見て、サクじいは何かを諦めた様子だった。


「はぁ…。じゃが、やはり日が落ちる前には帰ってこなければならん。これだけは約束じゃぞ、トウヤ。」


「分かったよ、じいちゃん。」


次回は4/9(土)までには投稿したいと思います。

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