少年と生徒会長
3日程たち、怪我がやっと回復し、俺はようやく医務室から出ることが出来た。久しぶりに登校すると俺はクラスメイトから糾弾された。「そなた、これでいいのか?」「いいわけないですよ。でも俺は何も言い返せません。俺の不運のせいかもしれないんだから。」その後授業を受けていると呼び出された。「すみません、アクイラ君居ますか?」「はい、俺ですけど」「ちょっと来てくれ。「え、あなたは」俺を呼び出したのは生徒会長だった。
「なぁドライズ、俺、退学処分でもくらうんですかね?」生徒会長の後を歩きながら俺はドライズに救いを求めるように話しかけた。「まさか、そもそもそなたのせいとは分からんじゃろ。」「ですよね。」そのまま着いていくと魔法陣のような物に案内された。「初めて見る?」「はい。」「これは転移陣さ。我々生徒会は士官学校4校を管理してるからね。生徒会室はそもそもこの学校じゃないんだ。」「そうですか。」イマイチこの人との会話が弾まない。「そもそも士官学校4校に個別に名前が着いてるの知ってる?」「いいえ……」「そんなに緊張しなくていいよ。今は使われてない昔の名前だしね。この学校はローゼン、西の学校がフェルヌス、北がアゾーム、南がギルール。」「なんだか星座みたいですね。」「そうでしょ?」長い廊下を渡りながらの何気ない会話もここで終わり、このドアの先で俺はどんな話をされるのだろうか。
「早速なんだけど、君、生徒会選挙出ない?」「はい?」「あはは、唐突過ぎたね。」「俺、何もしてないですよ。初めての授業で怪我して寝込んでて、今日怪我明けで生徒会選挙出ない?ってどういう事ですか?」「僕の能力の噂、聞いたことある?」「いいえ。」「まぁ話さないと話が進まないし教えると……僕には能力が複数ある。その内の一つに、人の才能を見極めるという能力がある。」「も、もしかして挨拶の時の顕現魔法で全生徒の才能を見たって事ですか?」「全生徒の才能を見たわけじゃないよ。君が極端に光った才能をしていたんだ。そもそも僕の能力は細かい部分はよく分からないし、将来性を見通す能力って感じかな。君は大物になれる。勿論、善でも悪でも。」「出ないと言ったら?」これはブラフだ。俺は生徒会選挙に出るつもりだった。これ程有難い話はない。「その時は諦めるよ。」「そもそもこの学校の生徒会選挙に俺が勝てなかったら?」「君は勝てるさ。必ずね。」そうして俺は生徒会室を後にした。転移陣は俺が元の学校に戻ると消えていた。
一日を終え、寮で俺は考え事をした。生徒会長の真の目的を。「そなた、そう真剣に勘繰らなくてもいいのじゃないか?」「え、でも」「奴はヤバい奴じゃ。とても年齢に合った強さじゃない。それどころかガインやラドサモと張り合えるレベルじゃ。」「え、そんなに強いんですか?」「うむ、じゃから奴との敵対行為だけは避けねばならん。奴に目論見があるなら乗ってやろうではないか。どうせそなたは生徒会選挙に出るつもりなのじゃろう?」「そうですね……分かりました。乗ってやろうじゃないですか!待ってろ生徒会長!」「そうと分かったら早速ポスター作りじゃ!」「え?」「なんじゃ?ワシなんか変なこと言ったか?」「生徒会選挙のことなんか勘違いしてません?」「はて?」「さっきも言ったじゃないですか。生徒会選挙に勝てないかも知れないって。あれは生徒会に優れた生徒を選ぶっていう名のもとに学年同士トーナメント形式で立候補者を対戦させてより順位の高い者が役員になれるっていうものなんですよ。」「なんじゃそれ、戦闘狂のお祭りではないか。」「そうですよ。でも生徒会役員に慣れれば成績が大きく上昇します。役員は全生徒の夢のような物です。ちなみにイサカ会長は2年最初の生徒会選挙で3年を倒して生徒会長になってるようですよ。」「じゃろうな。あれはこの世代には敵はおらんじゃろうし。そなた、自信はあるか?」「無いですよ。でもあれだけ太鼓判を押されたら、やるしかないですよね!」
生徒会選挙は一学期後半。約1ヶ月半の短い期間で俺はどこまで強くなれるだろうか。




