少年と悪魔と街
城内某所にて
「最近頑張りすぎじゃないのか?」「ありがとうガイン、だけど何回も言ってるだろ?俺を心配するのはやめろってさ、俺は人間もどきなんだからさ。」
「お前はいつでも人間に戻れるんだぞ。お前が戻ろうとしないだけで」「俺は戻らないし、戻れない。所で、例の件は?」「あぁ、確定だ。この国の幹部には、外部に情報を垂れ流してるスパイがいる。」「そいつの情報は?」「そいつの取り引き相手を拷問しても、エルド帝国の人間ということしか分からなかった。相手もやり手だ。幹部の情報を改めて洗ってみたが不自然なものは無かった。」「……対魔王兵器、通称''勇者''の情報はバレているのか?」「おそらく、な。」「厄介事は避けられねぇか。」そういうと男は背中から翼を広げ、窓から飛び立った。
あれから時はたち、遂に地獄の特訓が終了した。ドライズは、俺の心の中に潜み助言をくれる良い相棒と呼べる存在になっていた。
「師匠!この半年間!お世話になりました!」「本当に強くなったよ。いつの日か、俺を越えられるかもな。3日後は士官学校の入学試験だ。しっかりやれよ。」「ありがとうございました!」
師匠には本当にお世話になった。恩返しのひとつとして、魔王を倒すための確実な第一歩を踏まなければならない。
そして俺は3日後の試験のために街の宿に泊まることになった。
「うおー!ここがセルディア王国の首都、サンベルクかー!」「なんじゃ、そなた、偉くはしゃぐではないか。」「こういう所に来るのは初めてですからね。あ、良い匂いがします!」「全く、若いっていいことじゃなぁ。」俺は俺にとって初めてだらけの街を遊び尽くした。
「そなた、明日はどうするのじゃ?」「ガインさんに言われてたように街の東の商店街で買い物をします!お土産も沢山買わなくちゃ!」
翌日、俺とドライズは街の東の商店街へ買い物に行った。
「うわー、すげー剣だなぁ……」「そなた、興奮すると語彙力低下するタイプじゃったのか。」「うるさいですよ〜。」
買い物を終えた僕らはご飯を食べるお店に入ることにした。「なんじゃ、このカレーとは」「ドライズと契約する前に食べたことのあるものだよ。ちょっと辛いけどそれが癖になる食べ物なんだ!ここにしよう!」そうしてカレー屋に入った俺は奇妙な女の子を見つけた。「かぁーっ!この辛さ、このコク、この旨み、全てがパーフェクト!私が何故生まれたのか!このカレーを味わうために生まれた!そんな味です!」彼女はそう言って店を立ち去った。そして彼女の去り際、目が合った時、とても懐かしかったような気がした。
「どうした?そなた、食べんのか?」「いや、食べるよ。」そう言って俺は料理を口へ運んだ。俺の体内へ伝わった味等は、ドライズにも共有される。「確かにこれは美味い!美味いぞ!人間の黒炎焼きより美味い!」「食欲落ちるからそんなこと言うのやめてくださいよ。」はしゃぎながらご飯を食べている時、話し声が聞こえた。「聞いたか?今年の入学試験の噂。」「あぁ、聞いたぜ、魔王城進行により兵が大量に減ったからとりあえず誰でも合格させて、操り人形の能力で意思を奪うんだろ?」「バカバカしいな」その3人のガラの悪いグループの中で一番偉そうな男が口を開いた。「なんだその胡散臭い話、軍がそんなことやってたら大問題だろ。お前らそんな話信じてんのか?お前らはそれでもいずれ世界を統べる烈火のガロンガオン様の子分かよ」「うぅ兄貴、そんなこと言わないでくださいよ」「そうっスよ!それに今回に関しては割と信憑性があるんス!」「じゃあそれどこ情報なんだよ」「その〜、それはっスねぇ、風の噂っス!」「馬鹿がよ」
心の中で俺は誓った。烈火のガロンガオンを覚えておこうと。「あれ絶対小物じゃぞ。そなた、結構アホなんじゃな。」ドライズから鋭いツッコミが入ったが、とりあえず無視しよう。明日は遂に入学試験だ。
今回はかなり明るく書けたので楽しかったです。ドライズくんはこの方向性がいいですね。主人公も元は結構明るい子なんですよ。ちなみにこの街サンベルクは首都なので奴隷売買とかは厳しく取り締まられているので街の影に痩せ細った女の子が……とかはないです。




