社畜天国
1日8時間労働はキツイ。
その癖、時給も県の最低賃金と同等だ。
あ、サービス残業も含めると18時間労働になるんだけどな。
部屋から出ようとしても、外から鍵が掛かっていて出ることが出来なくなっている。
壁紙には、自分の好きなアイドル『宮部鶴美』のポスターや動画が360度映し出され、ミリオンセラーを果たした曲が流れている。
これだけが俺の唯一の癒しだ。
仕事中、椅子が適度に肩揉みや足の運動をさせてくれるので、運動不足になることも無い。
「さて。ご飯でも食うか。Alice」
そうパソコンに呼びかけると、メイド姿をした金髪ゆるふわロングの少女の姿をしたアバターが画面上に現れる。
『はい。お呼びしましたか? マスター』
「注文をしてくれ。んーと、中華で」
『と、言いますと?』
「分かるだろ。俺の好きな中華」
『ラーメンで御座いますね。畏まりました。直ぐに用意致しますので、今暫くお待ち下さい』
「ほーい」
さて、仕事の続きだ。
——数分後。
『マスター出来上がりました』
「さんきゅー」
横の『取り出し口』からラーメンが出てくる。
ずぞぞぞ。
「ん。美味いな」
『ありがとうございます。マスターがそう言ってくれたら、私は最高に幸せです』
「ああ。俺もお前が喜んでくれて嬉しいよ。Alice」
食べ終わると、眠くなってきた。
「Alice。すまんが寝る」
『畏まりました』
「4時間後にアラームをお願いする。電気ショックで起こされるのは嫌だからな」
『了承です。それでは、おやすみなさい。マスター』
「ああ。おやすみ」
もう、今が朝なのか夜なのかさえも分からない。
辛うじて、時計とPCで年月、日付、時間だけは
分かるが。
『スマートペーパー』の電源を起動させ、目の前に仮想現実世界が姿を表した。
大好きな宮部鶴美のポスターばかりが貼られてある。
何を隠そう、ここは俺の部屋だ。
「さて、寝るか」
ベッドの上で横になる。
起きたらすぐに現実に引き戻されて仕事だ。
ホント、大学に出ても何も良い事がない。
こんな人生が待ち受けていたなんて、誰が想像できただろうか。