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明るい島  作者: 雨世界
9/12

9 初恋の人

 初恋の人


 プロローグ


 君のことが大好きです。


 本編


 あなたは私の初恋の人だった。


 春の駅


 僕が君と再会したのは、本当に偶然だった。


 僕たちは小学校、中学校の同じ教室の同級生で、高校で別々の教室に別れ、そして大学は別々の大学に入学して、そこで完全に一度、『お別れをした』、関係だった。

 それから二年後のある日、僕たちは東京の駅で偶然に出会った。


 僕たちは本当に驚いた。

 二人ともきょとんとした表情をして、その目を丸くしていた。


「久しぶり」僕は言った。

「……うん。久しぶり」ちょっと照れたような顔で君は言った。


「今、なにしているの?」

「普通の大学生。君は?」


「まあ、同じ。普通の大学生やってる」にっこりと笑って君は言った。


 僕はそれから、言葉に詰まった。

 君になにを言っていいのか、よくわからなくなってしまったのだ。君は黙って、僕の言葉を待ってくれているようだった。


 でも、僕は結局、君になにも言えなかった。


 高校生のときの、卒業式の日と同じように、僕は「それじゃあ」と言って、笑顔で君の前からいなくなろうとした。


「待って」

 と君は言った。


「え?」僕は君のほうを振り向いて言った。

「あのさ、久しぶりに会ったんだしさ、もし時間あるなら、少しどこかを一緒に歩かない?」

 にっこりと笑って君は言った。


「うん。わかった」

 君を見て、僕は言った。


 それから僕たちは、君が言ったように、春の駅の周辺を少しだけ歩いて、美しく咲く桜を見て、それから近くにあった喫茶店に入って、そこで二人で温かいコーヒーを飲んだ。


「実は、君のことがずっと前から好きでした」


 その喫茶店を出て、桜の咲く、たくさんの桜の花びらの舞う、(その桜の花びらの舞う風景の中に、僕と君はいた。僕が君に恋をした、私があなたのことを好きになった、あの日と同じように)春の駅の前でお別れをするときに、僕は君にそういった。


 君はとても驚いた顔をしたあとで、「……嬉しい。私も、ずっとあなたのことが大好きでした」とちょっとだけ泣きながら、そう言ってくれた。


 それから、僕たちは恋人同士になった。


 ……そして、それから大学を卒業するのとほとんど同時に、僕たちは結婚をした。


 結婚式の日。


 僕たちは誓いのキスをした。


 僕は君にキスをして、君は僕のキスを受けいれてくれた。


「ずっと、君のことが大好きでした」

 僕は真っ白なウェディングドレス姿の君にそう言った。


「あなたと、ずっと一緒にいたかった」

 泣きながら、君は僕にそう言った。


 初恋の人 終わり

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