028:ダリル鍛冶屋
「ゼダさん達は、半年前に引退されました。それで、駆け出しの頃に僕の祖父に世話になったお返しに、駆け出しの僕に使えそうな防具を貸して下さったんです」
僕は装備を借り受けた経緯を簡潔に説明した。
「そうか……スマン! 冷静に考えりゃ、あんたみたいな駆け出しにゼダさん達みたいなベテランを三人もどうこう出来る訳ねえよな」
(僕、どんな犯罪者と思われてた? 誤解解けたからもういいよね……若い鍛冶屋さんみたいだけど、結構短気な性格してる?)
「この防具のメンテナンスをすればいいんだな。うーん……半年も放置されてただけあって、盾はともかく革製品は多少高級な薬品が必要だな……ああ、補強材の鉄板は全交換だな……」
思ってたより状態が悪いようで、僕は内心で冷や汗をかいていた。
「大銀貨五枚だな……補強材を買い取って素材にするか? あんたの今着ているレザーベストも買い取ろう、うん? 折れた盾かそれもだ……よし、大銀貨四枚と銀貨五枚だ!」そう言って、かなり便宜を図ってくれた。
「あの、こんなレザーベストや折れた盾、買い取って貰っていいんですか?」
こんな物どうするんだろうと素朴に疑問だったからそう尋ねてみた。
「うん? 別に損する話しでもねえのに妙な事を聞くんだな……盾はもうダメだが補強材の革や銅板は使えるからなレザーベストの修理に使う。修理しメンテナンスして綺麗にすれば、村行きの行商人が買い取って行くからな。いちから作るより楽で良いくらいさ」
僕が聞き入っていると、案外、饒舌なのか聞かれて無い事まで話してくれた。
「ついでに言うと、全交換する鉄板も多少の黒魔鉄が含まれているから、今回は手持ちの補強材があるからそれを使うがな。買い取った奴は鉄板の補強材を作る時に使えば黒魔鉄の劣化品の出来上がりだ」
僕はただフンフンと頷いていた、素材等の話しは面白かったし、最近の探索者の武器防具事情にも興味があったのだ。
「だがそれでも強化の刻印には使えるからな、馬鹿にしたもんじゃねえ、安価で量産の効く鋳造品の鉄防具でも、この劣化材を内張りにして強化の刻印を打てば、簡易強化防具のそれなりの品が出来上がりってわけさ」
僕は昨日、中央通りの武器防具店で見たアイアンアーマーを思い出し、安価で量産が効く鋳造防具なのか気になってきた。
(……値段は結構するみたいだったし、安価な量産品じゃないよね?)
「ああ、あそこの商品は確かに鋳造品だな……」
僕は驚いて思わず「エエッ⁉ でも結構な値段してたような……」と大きな声をだしてしまった。
「あんたまだ駆け出しだから知らないのも無理はないか、武器や防具ってのは作るのに技術と手間がかかる。それなりの素材を扱う物になると加工に技術や手間暇がかかるし、素材代なんざそれだけで金貨何十枚、何百枚の世界だぜ!」なんだか子供みたいに目を輝かせている。
僕は若干ひきぎみに、「それじゃあ、あれでも安いんですね……」僕は探索者の世界の金銭感覚が恐ろしくなった……ある意味魔物より薄気味悪いくらだ……
「勿論、かなりの利鞘は稼いでいる筈だ、あの親父の羽振りの良さを見れば一目瞭然だな……しかし本当に儲けているのは、探索者ギルドつまり都市ガザフだと言って良いくらいだ」
僕は突然出てきたギルドと都市の名前に(何で?)という顔をしていたんだと思う。
「知らなきゃ驚くのも無理はないな、簡易強化防具の製造を一手に担っているのは、領主お抱えの工房だからな……」少し間をおいてダリルさんは言った。
「領営工房ガザフ……都市の名を冠した工房だ!」




