018:戦い終わって
近くの木にレッサーラビットを吊り、血抜きを行いながら、僕は木の幹にもたれ、休憩していた。
「そろそろ良いかな……」ここで、しっかり血抜きしておかないと肉が血生臭くなり食べたときにとても残念な事になる。
村では獲物の処理は自分で全て行っていたので、多少獲物が大きくてもやる事はかわりない。
(……でも皮の処理とか、買取りの人に確認したほうがいいな……)
血抜きは後回しに出来ないので、これだけはとにかくやっておき後は、誰かに相談するつもりだ。
(あの屋台のおじさんとかに聞いてもいいかな……)
木の枝から降ろしたレッサーラビットを村から持ってきた太い棒に紐で結んで肩から担いだ。
こういう時、マジックポーチは本当に便利だった。村から出るとき、家にあった家財のほとんどを持ってきていたからだ。
(……持ってきた棒一本でもこんな所で役立つなんてな……誰も使わない家に放置される家財がなんだか切なくて持ってきたんだけどね……)
レッサーラビットをポーチに入れてしまう事も考えたが、こうして吊るして歩けば血抜きの時間の節約になる。
それに、ある程度荷物もないと不自然だし、マジックポーチについて気付かれないように、普段から気を付けるためだ。
慎重すぎる気もしたが、慣れないうちは何事も慎重にいくつもりだった。
そうやって、出口のある洞窟に向かって移動すると、探索が終わった他の探索者の集団が見えてきた。
獲物を今から丸焼きにでもするかのように、二本の長い棒に獲物の四肢を紐で縛り四人がかりで運んでいる。
僕はある程度まで近づくと、距離を取って出口に向かった。
獲物は牙がないのでレッサーボアだろうか? 黒い毛皮をしている。
その山イノシンとは全く違う巨大さと凶暴そうな容姿に、もし一人で挑んだらと考えて、吹き飛ばされる自分の姿が思い浮かんだ。
探索者集団もこちらに気が付いたようで「ソロでウサギ狩りかよ、よくやるな」とか、「装備見ろよハブられたんだろうぜ」と色々いっているようだ。そのうち僕への関心もなくなったのか、
「装備といやあ、俺が探索者始めるための装備代金貯めるのに二年かかったぜ」先頭の男が言うと……
「城塞工事は割りが良いだろ、二年もかかるなんざ、仕事の後、酒ばっか飲んでたんじゃねえか?」後ろの男が突っ込みをいれた。
そのとなりの背中に巨大な盾を背負った男が、
「違いねえ、レッサーボアの突撃に耐えられる、この俺のタワーシールドでも一年で済んだんだぜ、オメエのペラペラのアイアンアーマーなんざ半年ありゃ買えるだろ」と合いの手をいれた。
「うるせえ! 何がペラペラだ、もういっぺん言ってみやがれ」後ろを向いて文句を言い出した男に、
「うるせえ! 前見て歩きやがれ、後ろがつかえるだろうが!」別の男が言いだした。
「うしろなんか誰もいねえだろうが!」みんなから突っ込まれた、先頭の男が拗ねたように言って……皆で大笑いしだした。
僕はそのやり取りを見て、仲良さそうでいいなと思っていた。
僕にもいずれああいった仲間が出来るだろうか? 未来の自分を想像してみた。しかし……
(……今現在の僕は、ここにいてもよかったのだろうか? 僕にはまだダンジョンは早すぎたんじゃないだろうか……)
内心で思ったのは、そんな事だった……




