127:十一層3
ラルフさんの話では、もう暫くするとゴブリン達が食料を狩るために拠点から出てくる頃らしい。狩る獲物によって規模は変わるようだが、とにかくチャンスには違いない。
「ラルフさんはこの階層に詳しいんですね。でも、あまり旨味のある狩り場とは思えないんですが」
僕は拠点の様子を確認しながらそう尋ねたのには訳があった。ゴブリンのような魔物は魔石以外は素材としての価値がないので、探索者に喜ばれる対象ではなかったからだ。
「そうですね、もちろん私もずっと十一層に居座っているというわけではなありません。私のテリトリーは十一層から十四層の間になりますね」
僕はその説明を聞いて奇妙に感じた。ラルフさんが言った階層をテリトリーにして探索者を続けるメリットを理解出来なかったからだ。
(経験の浅い探索者が魔素吸収で力を身につける以外の目的が、その階層にあるのかな?)
「それ以降の階層には降りないんですか?」
探索者という職業が生まれて数十年、現在のガザフでの探索者というのは、ゼダさん達のようなウサギ狩りやレッサーボア等を主に狩って生計を立てている九層迄を活動範囲にしている初級探索者と、大規模なクランを創設して商人等の資金的な後ろ盾を得て階層攻略を行う中級探索者以上の者達の大きく二種類に分けられると言われている。
その内訳は初級探索者が八割を占めていて、残りの二割のほとんどが上級探索者らしい。何故、中級探索者が少ないのか、それは……
「何故、クランに所属するなりして更に上を目指そうとしないのかという質問ですよね? 確かに長期間、中級探索者として留まっている意味は現状ありませんね。むしろ初級探索者として程々の装備で素材狩りを行っているほうが長い目でみれば金銭的な収支はずっと良いでしょう」
中級探索者が少ない理由……それは、試練を越えて一つ羽の探索者となっても九層以内で活動している者は中級探索者とは呼ばれないのだ。
通常、試練を越えるような者は大抵の場合、クランに所属し支援を受ける事になる。当然ながらクラン内での厳しい団員としての選別が行われ、そこから脱落した者は初級探索者に戻りダンジョンを生計の場所として終える事が殆どなのだ。
選別を乗り越えた者は支援を受けて二十層の試練を早々に越えて上級探索者入りしてしまう。それが中級探索者が少ない事情だった。
「個人で階層攻略を続けるのは装備の維持という面からも不可能とは言いませんがとても困難でしょう。そして二十層の試練を単独で越えるのは余程の力を持った者でないと無理でしょう――前置きが長くなりましたね、私がクランに所属しない……出来ない理由はこれです」
ラルフさんは、そう言うと手のひらを広げた。そこには黒い炎のような物が灯っていた。
「私は闇の精霊に憑依されているんですよ」
ラルフさんは少し寂しげにそう告げたのだった。




