125:十一層1
翌日、僕は十一層攻略の為の準備を完了してダンジョン十層に転移してきた。
準備と言ってもルナとキャロがポーションと毒消し、そして干し肉まで大量に用意してくれたので、特に買い揃える必要も無かった。
干し肉は大量に倒したレッサーウルフの肉を使って作ったそうだ。調査隊が倒した物まで孤児院に下げ渡されたらしいのだが、レッサーウルフの肉は硬めで筋が多いのでそのまま食べても美味しくないらしい。それで干し肉にして保存食にすれば食べやすくなるらしく大量に作ったようだ。
(二人がお金を受け取ってくれなかったのには、困ったけど……)
二人は今までのお礼だからと頑として受け取ってくれなかった。
(何かお土産になるような物をみんなに持って帰れればいいんだけどな)
僕はそんな事を考えながら遺跡の拠点を歩いていると、サラが多くの人々を誘導している姿が見えた。
「長時間の移動、お疲れ様でした。これから少し休憩して頂いた後、遺跡内で転移魔法陣への登録をして貰います。登録が終われば今後は転移魔法陣での移動が可能になります」
サラが査察団員として働く姿を見るのは初めてなので、僕は離れた所で興味深く様子を見守っていた。
「やれやれ、やっと着いたぜ、護衛付きとはいえ流石に十層迄来るのは緊張するな」
「だが登録すれば転移できるんだろ? 仕事があけたら夜は街に戻って一杯やりに行けるって事か?」
「バカ野郎、寝る時間と飯以外は仕事だ! 終わるまで帰れると思うなよ! その為に部屋まで用意してもらって、割り増しの代金貰ってんだ!」
「それにしても、エルフィーデの力はすげえな! 短期間にこれだけの城壁付きの拠点をダンジョン内に作っちまうなんてよ、俺達に頼まなくても自力で全部出来るんじゃねえの?」
「いや、細かな遺跡内の作業は無理らしいぜ、俺も城壁をさっき見せて貰ったが、強度はあるようだが素人の作業だな。まあ突貫作業用の魔法なんだろうぜ」
どうやら遺跡内の修復作業を行うガザフの職人集団を、サラ達が護衛して遺跡まで連れてきたようだ。
「これから部屋割りを行いますので此方に来て下さい」サラが職人達を誘導して僕とニースで作った連棟式の建物のある方に移動を始めた。
サラが頑張っている姿をいつまでも眺めている訳にもいかないので、僕は「突貫魔法じゃないの!」と言いながら僕の頭をぺしぺしと叩いているニースを頭に乗せながら拠点を後にしたのだった。
◻ ◼ ◻
幸い、遺跡から十一層への階段の入り口は離れていなかったので直ぐに到着する事が出来た。
僕の頭をぺしぺしと叩いていたニースは最初は怒っていたのだが……今では叩く事を楽しんでいるようで、きゃっきゃと頭の上ではしゃいでいるようだ。
「ルピナス」
僕がルピナスを召喚すると、ニースの注意がルピナスに向かいふよふよと飛んでいってルピナスの背に乗り上空に舞い上がっていった。
(やれやれ助かったよ)
ニースは普段から聞き分けの良い子なので僕が頼んだ事を素直に聞いてくれる。だからあまり叱るような真似をしたくなかった。
(ちょっと甘いかな)
ニースは僕にとっては年の離れた幼い妹のような存在だった。だからどうしても甘くなってしまう。
「ニース行くよ」僕は上空にいるニースに声をかけて十一層への階段を降りていった。
◻ ◼ ◻
降り立った十一層は荒涼とした風景が広がっていた。山と荒れ果てた荒野が続くどこか寒々とした景色だった。
「やはり皆は来なくて正解だったな」
僕が一人で十一層に向かうと聞いて心配したキャロ達が一緒に行きたいと言い出したのだ。
正直に言えば、四人が来てくれれば心強いのは確かだったがこれ以上四人を危険な領域に踏み込ませたくなかった。
僕は四人が一つ羽の探索者といっても戦いの訓練を受けていない事や防具の面でも今のままでは厳しいとはっきりと告げた。
「そうですね、僕達が無理に一緒に行っても足を引っ張ってしまう事になるかもしれませんね……」冷静なティムがそう呟くと皆も納得したようだ。
「ユーリには強い精霊達も付いているし……正確には一人っていう訳じゃないから大丈夫よ!」シルフィーが力強く請け負ってくれて、四人にも笑顔が戻って僕もホッとしたのだった。
「さて、何処から始めるかな」
僕はギルドで手に入れた地図を確認した。
「あの山沿いに真っ直ぐ向かった場所に一つ目のゴブリンの群生地があるんだな。まずはそこの様子を確認しよう」
今までの階層には居なかった拠点のような物を構築して群れを作っている魔物がいて、そういう拠点が何ヵ所か存在するらしい。
今回、地図を入手したのは、過去に探索者がギルドに報告した拠点の情報が地図には記されているのだ。
僕は地図から一番近くにあると思われる拠点にとにかく向かう事にしたのだった。




