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クロとカナデ  作者: 工房*自我
クロとカナデ
2/7

カナデの想い

 

 

 三人で狩りに出掛け、クロと別れてからカナデは家に着いた。

家の中は薄暗く、ランプに灯りをともして錠をかける。



「ただいま……」


 誰もいない室内に響くカナデの声

食卓の上には<仕事で帰りが遅くなる>という父ラルフの書き置きがあった。


(何だ父さんいないのか、一人かぁ……ご飯の支度面倒だなぁ)



 ポケットに入ってある銅貨2枚を取りだして、引き出しに仕舞いこむとそのまま歩きながら髪を止めていた櫛を外し、汚れた衣服を洗濯室の籠に脱ぎ捨て、水浴びの準備を始めた。井戸から汲み上げた水を桶に取り少しずつ体を洗うカナデ



(あぁ……いつか父さんが話していた沢山のお湯の中に体をつける<お風呂>っていうヤツに入ってみたいなぁ)


 そんな事を思いながら、カナデは自分の長い銀髪を洗い始める。



 ――私のこの銀色の髪は母ゆずりらしい


 父さんは茶色の髪をしていて、外見も父と私はあまり似ていないと言われる。

 母の事は私が生まれてすぐに亡くなったと聞かされている。

 『美しい人だった!』と父さんはお酒に酔うとすぐに自慢をする。



 あんまり言うもんだから一度――


 「キリ叔母さんよりも綺麗だった?」


 と聞いてやったら、キリ叔母さんも綺麗なもんだから少し困った顔になった。



 クロのお母さんのキリ叔母さんは、本当に綺麗だと思う。

 村の大人達もよく、そんな話をしていた。

 クロもキリ叔母さんに似ていて、黒髪に整った顔立ちで大きな目が可愛らしい。



 ――クロにお父さんがいないからなのかな?


 クロからは、キリ叔母さんを大事にしようとする気持ちがすごく伝わってくる。

 恐らく私が父を想う気持ちよりも強く……

 そんな(人を大切に想える)優しいクロに、素直に惹かれた



 父さんが出かけている時に一人で食事をするのがキライだった。

 一人ぼっちの食事は美味しくないし寂しいものだ

 そんな時は、いつもクロが来てくれた

 (まぁ、正確にはキリ叔母さんが来させて……だけど)



 私は今年で……正確にはあと3日で17歳になる。


 また、クロと年の差が2つになっちゃうな。

 クロは今年の私の誕生日覚えてくれてるかな?

 まだ、私より背丈の小さなクロは、将来私より大きくなるのかな?

 クロも、お父さんみたいに髭が生えてくるのかな?

 そういえば、村の商家さんの娘のミヤは絶対クロの事を好きな気がする……



 クロ……クロ……クロ……

 私のどこを掘り下げても、出てくるクロ。



 ――私はクロの事が好き


 いつからだったかな?

 <家族>として好きなのかな? と思った事もあったけど

 ……どうも違うみたい。



 こんなにいつも一緒に居るんだから

 私の気持ちに気付けよ! バカクロ!!

 いつか伝わればいいな……

 そして、クロも私と同じ気持ちになってくれたらいいな……



 ――水浴びも終えて、髪を拭いているとドアのノックの音が聞こえる


(――クロかな?)


「カナデー?」(やっぱり!)



――カナデは、ふと、今まで考えていた事を思い出して恥ずかしいという感情と、来てくれて嬉しい感情ち混ざり合う。



 (顔、赤くなってないかな?)


 そんな事を気にしながら、タオルで顔をあおぐ


 今はまだ、この気持ちを伝えるつもりはない

 いつか自然に……今後の私達の成り行きにまかせたい



(ヨシ!!)


 深呼吸して、ドアの錠を開けると

 いつも通りのカナデお姉ちゃんとしてクロを出迎えた。




 **********



(父さん達が結婚かぁ……)


 クロが帰った後にカナデは一人で改めて考えてみる


 ――親が再婚したとしても、子供同士は結婚出来るのよね?


 クロとの結婚を当たり前のように考えている自分が少し怖くなった



 ……そんな、ささやかな幸せを願うカナデの日常は

 太陽があと3回昇る頃には、ボロボロと音をたてて崩れていく



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