第八話 四賢者と新魔術
後ろの二人は、何が起きたのか分からず、ただ一言……
「お宝はないのか?」
と、言った。
目の前にあるのは、黒いキューブだけだからだ。
すると、次の瞬間……周りに山ほどの資料や本が現れた。それから、丁度部屋の真ん中の円卓には、四人の人影が見える。人いたの? と、思わないでもないが、ボムやソモルンが、反応しなかったのはおかしい。
今現在は、横で威圧しながら警戒しているからだ。そして、その四人が立ち上がり、こちらを向く。
「初めまして。我ら四人はそれぞれの道を極めし者であり、同じ志を抱く者である」
四人の内の一人で、おそらく獣人の爺さんが話しかけてきた。とりあえず、人の家に勝手に上がり込んでいいるわけだから、あいさつをしようと思う。
「こちらこそ、初めまして。城に勝手に入らせてもらって申し訳ありません」
すると、ボムが衝撃の一言を発した。
「コイツら死人だぞ」
ということは、アンデッドなのだろう。
だが、俺は光属性は使えない。
それどころか、真面な戦闘は出来ない。
一人焦る最弱な俺に、獣人の爺さんが話しかけてきた。
「無理かもしれないが、そんなに警戒しないでもらいたい。我らには、ほとんど時間もなければ、力もないからな。
とりあえず、簡単に説明させてもらうから、少しだけ聞いていてほしい。
では、まずその魔導書は我ら四人で創った魔導書であり、未完成な魔術を封印してあった。適性のある者が、封印を解いてくれるのを待ち続けてきたのだ。我ら四人の志は、ありきたりかもしれんが、不老不死である。そこで創ったのが、その幻想魔術だ。
その魔術は、魔物や魔獣などの心臓や魔石を取り込むことで、魔力や能力を吸収できる。方法は、掌か指の先に魔力制御で、魔力を纏わせるだけだ。心臓だけなら体の特徴を、魔石だけなら魔力と属性魔術を、さらに両方だとより良い。
今右腕には、トライバルのような魔紋があると思うが、吸収を繰り返し、質と量をともに増すと心臓の外側の胸のあたりに魔法陣が現れ、代わりにトライバルは消えるはずだ。ちなみに、申し訳ないが、この世界は魔紋を持っている者は、呪いを受けている者で、差別の対象になっている。そして、そこまでが第一段階だ。
ここまでは、我らも達成できたのだが、次が問題だった。この世界の十大ダンジョンを含む、遺跡のどこかにあるオーブを見つけ、胸に当てて欲しい。そうすれば、完成するだろう。あぁ、一個とは限らんぞ。魔紋の大きさによって、能力を発揮できる面積が変わる。
どうか我らの悲願を達成して欲しい。お礼と言ってはなんだが、この城や城にある物全てを譲る。地下に行けば、魔道具や素材もある。では、頼んだ」
本当に言いたいことだけ言って消えていった。というか、このキューブに入っていった。
つまり、完成するか分からん、現在呪いの魔術を完成させてくれ。その代わりにお宝やるから。ということだろう。
でも、怪しい魔術で呪いが理由で差別を受けるかもしれないということ以外は、特にデメリットはない。むしろ、チートじゃね? って思わなくもない。
出来るか分からないが、ドラゴンの心臓と魔石を手に入れれば、ドラゴンの能力が使えるってことだ。
そこでこの魔術を一番有効的に、使える戦法を考えて見ることにした。魔術の能力や吸収方法から考えると、武闘術と魔闘術での戦闘が、一番最適だと思う。
そこまで考えてると、二人から声をかけられた。
「よく分からないが、お宝もらえてよかったな。早速見に行くぞ」
金貨があったとしても、この無人島では無意味だから、魔道具に期待しているのだろう。だが、ワクワクしている二人が、魔道具を使えるかは、まだ分からないのだが……。
ところで、地下に行く方法はどうするのだろうか。とりあえず、キューブだけを無限収納庫にしまって、二人についていくと、さっきのエレベーターみたいな物に乗ってる。
「これで行けるのか?」
「これじゃなきゃ、どれで行くんだ?」
どうやら勘で、乗っているようだ。
とりあえず触ってみると、さっきより明確にどこに行きたいのか選べるようになった。そして、地下を選択すると、一瞬で地下に到着。
今回の移動の感覚は、勇者召喚のときの感覚にソックリだった。ということは、転移魔術なのだろうか。そうだとしたら、すごい技術である。
それはさておき、宝物庫らしき部屋の扉が目の前にあるのだが、扉が巨大すぎる。何を入れているのか分からないが、本来なら不要なほどの大きさだった。だが、中身への期待が高まったのは、間違いない。
その巨大な扉は自動で開いた。
どうやらエレベーターもどきと同じで、幻想魔術の魔力に反応しているみたいだ。そして、宝はすごかった。これが探検の集大成だと納得出来るほどに。
金銭はほとんどなかったが、未完成の魔道具や素材が山ほどあった。もちろん魔法金属と呼ばれるミスリルやオリハルコンも少量だがあった。
そして、巨大な扉をつけた原因にして、我らの三人が大興奮している一番の目玉は……
なんと【飛行船】だった。
しかし、未完成なのが、少し残念だった。
その飛行船を見た二人も、やっぱり男の子なのだろう、かじりついて見ていた。やっぱりどこの世界でも、乗り物はワクワクするようだ。完成させたら、ソモルンとお出かけしてみたいと、思ったのだった。
ソモルンは本来、他の神獣と違って、パトロールは義務じゃないと言っていたからだ。
ただ、暇な時間を潰すために、パトロールしているのだ。今回、俺やボムを見つけたのも、パトロールのおかげだったのだ。この城もパトロールのときに、見つけたのだ。いつか、友達と探検するために。
それはさておき、あの四人ってやっぱり相当すごかったんだと思う。世界が違うのに、バイクなのか車なのか分からないが、エンジンのようなものがついた乗り物らしき未完成の物があった。
だが、これも未完成なのが、残念だ。
と、ここで一つの疑問が湧いた。
未完成の物ばかりということは、飽き性なのかということだ。魔術の未完成も、飽き性が理由だったら、どうしようと思わないでもない。
「なぁ。これ動くのか? 動いたらどうなるんだ?」
ボムは、自分も余裕で乗れる大きさの船に大興奮のようだ。
「動いたら空を飛ぶが、未完成だから動かない」
そう言うと、絶望した顔になった。
心が痛むが事実だから仕方がない。
「資料がたくさんあるから、完成したらソモルンと一緒に遊びに行こう」
そう言うと、ソモルンが大喜びで、はしゃいだ。
さっきまでは、ボムの頭の上に乗ってたのに、俺の胸に飛び込んできた。相変わらず、可愛い怪獣である。
そして、ボムの機嫌も元に戻って、嬉しそうにしてる。これで一安心だ。
探検が一段落して一階の玄関ホールに戻ってくると、いきなり声が聞こえてきた。
『おーい。久しぶりだな。俺だよ俺。ボルガニスだよ。丁度いいタイミングだし、いい物やるから近くの祭壇まで来いよ。
祭壇の利用は、お供え物と神託を受けたい神の属性の魔石などが必要だが、今回はなしでいい。あと、みんなで来いよ。じゃあ待ってるぜ!』
突然の神の声に戸惑いながら、ソモルンの雲に乗って、祭壇へ出発するのだった。
微妙に厄介事の予感がしたのは、なぜだろう……。
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やる気がみなぎります。