第六話 無敵
今の今まで忘れていたスキル【神魔眼】を使って、この可愛らしい怪獣のステータスを見させてもらった。
【名前】 ソモルン
【性別】 オス
【種族】 星霊怪獣
【魔法】 星霊術
【スキル】
[ユニーク]無敵
【称号】 創造神のペット
星霊怪鳥「グレタ」の兄
【加護】 創造神の加護
獅子王神の加護
という結果に。
いろいろとおかしなところがある。
年齢とか、レベルとかないのは、神様の家族だから、そういう概念はなかったからだろう。あの家がいい例だ。
種族や魔法は……まぁいい。
うちにもおかしな種族の熊がいるからだ。
魔法は、種族特性なんだろう。きっと。
それよりも一番気になるのは、ユニークスキルだ。
無敵っていう、あまりの適当さに絶句である。
でも、現実に無敵なのだ。
神様を除けば……。
あとは、兄弟がいたのは、ボムに聞いてたから知ってるけど、獅子王神様も加護あげてるようだ。可愛いからあげてしまったのだろうか。
よし。話を戻そう。
結局、この子どうすればいいのだろうか。嬉しそうにはしゃぐ子を、邪険になんて扱えない。
「それで、ステータス見たけど、どうするんだ? ぶっちゃけ、俺らより強いから危険はないだろうから、森に放すのか?」
そう言うと、ソモルンはすごく悲しそうな顔をしながら、こっちを見てくる。なんか虐めてるみたいで、罪悪感が半端ない。
「何てことを言うんだ! 酷いやつだな。獅子王神様から最大級の加護を受けた子を、あんな危険で寂しい場所に放すとは……考えただけでもゾッとする!」
いきなり興奮気味に、声をあげるボム。
分かっているとも。俺もそんなことをしたいわけではない。
ただ、分かってほしい。
我が家は招待できるほど、立派ではないことを。
というか、何で獅子王神様の加護を持ってることを知ってるんだ? と思う。何故なら、ボムは魔眼を持ってないからだ。
「加護のことを何で知ってるんだ?」
「そんなこと、本人に聞いたからに決まってるだろ。獅子王神様の話で盛り上がったんだぞ」
それでさっきまで、はしゃいでたのだろう。
それより言葉が分かるなら、早く言って欲しかった。
「じゃあ、どうしたいか聞いてくれ」
「そんなこと、とっくに聞いたぞ。一緒に遊びたいんだよな?」
ボムがそう聞くと、コクンと頷いた。
行動の一つ一つが可愛い。
創造神様の溺愛加減が、スキル見ればわかるけど、納得だった。
こんな可愛い子を、たとえ思っていなくても、森に放すなんて言うなんて、ボムの言うとおり酷いやつだ。反省して、悲しそうな顔をさせたお詫びに、満足いくまで遊ばせてもらおう。
「じゃあ、何して遊ぶ?」
「探検がいいんだと。なっ」
ボムが代わりに答えると、ソモルンがまた、コクンと頷いた。やっぱり男の子なのだろう。どの世界でも探検は、ワクワクするものだ。
しかし、この中で最弱な俺は、未だに結界の周辺をウロウロすることしかできない。戦闘面に関しては、特にチートの補正が全く意味を見出していないのだ。
どうするかと一人本気で悩んでいると、隣にうちの熊さん並みに巨大な子がいる。
――んっ?
ソモルンにそっくりだが、本物の怪獣である。
ボムと楽しそうに話してるけど、何で大きくなれたのだろうか。サイズ変更スキルなんてなかったはずだ。まさか、ユニークスキルの無敵に含まれるのだろうか。
確かに、モフモフモコモコが激増して、可愛いさが限界突破してる。だから、無敵なのか?
「……おい。……おいって」
ボムの呼ぶ声がする。
モフモフモコモコの体に見とれてた。
「なんだ? お話は終わったのか?」
「探検する場所まで、乗せてってくれるらしいぞ。さっさと、荷物を無限収納庫に突っ込め」
ボムって俺より俺のスキルを把握している。
感心しながら、荷物の整理を終えると、ソモルンが口を開け、何やら始めた。
口の中に魔法陣が展開されていく。
ブレスか?
竜じゃないのに、ドラゴンブレスなのか?
と、わずかな期待をする。
すると、口から真っ白な雲が、モコモコモコモコ漂いながら出てきた。三人が乗れるくらいの大きさの雲が、目の前に浮いている。
まさか、これに乗るのか? と思っていたら、ヨイショって感じで、雲に乗り込んだ熊と怪獣。夢でも見てるような、可愛い光景だ。
「早く乗れ。置いてくぞ」
ヤバい。またしても、うっとり見とれてた。急いで乗り込むと、意外にもしっかりしてる。雲は乗れるものなのだろう。たぶん。
この上で寝たら最高だろう。この上で寝そべるソモルンの気持ちが、よく分かる。そんな幸せの空の旅を楽しんでいると、目的地が見えてきた。
なんとそこは、俺達の目的地である城。
中々に大きい城だ。
確かに、ここならボムでも大丈夫そうではある。でも、同時に、城の門の前でたむろしている、デカい魔物の姿も見える。というか、城に入れないようだ。結界でもあるか?
なんかただの城じゃない気がする。
ワクワクもするが、不安もある。
だが、目の前の二人はワクワクしかないようだ。
さて、どうなるのだろうか。
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やる気がみなぎります。