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暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~  作者: 暇人太一
第三章 学園国家グラドレイ
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第六十話 トカゲの国

電波の状況が悪く遅くなりました。すみません。

 嫌がらせ作戦第二弾、魔獣兵&魔兵強襲作戦を実行し、後ろを振り返るとテイマーズ達が爆笑していた。そこに何故か、ガルーダもいたのだが……。


「ラース。そんなことをするから、セルに魔王降臨とか言われるのだぞ」


 笑いながら、ボムが話し掛けてきた。だが、俺にはそれよりも気になることがある。


「何故ガルーダがここに?」


「見張りの相手がここにいるってプルーム様に聞いて、面白い物が見られるから転移で来いって言われたんだ。でも、俺は転移出来ないからソモルンにや迎えに来てもらったんだ。……あぁ。学園の方は大丈夫だぞ。眷属置いてきたから」


 羽根でソモルンの頭を撫でながら答えるガルーダ。ソモルンの方が偉いのでは? と思ったが、ソモルンがいいならいいのだろう。


「眷属って?」


「さっきのラースみたいなヤツだ。羽根を使って、部下を作れるんだ。創造魔術と違って、体の一部だから見聞きしたものは俺にも分かる。痛みはないがな。さらに、魔力供給を止めれば羽根に戻る。だけど、一度魔力供給を止めると、その羽根はもう使えない。戦力は一匹でランクBくらいか。十匹置いてきたから大丈夫だろ」


「なるほど。じゃあ、学園の全員を監視して欲しい」


「了解だ」


 ガルーダはそう言いながら、ソモルンを撫でている羽根とは反対の羽根をあげた。 


「それよりも、小さくなれるのだな?」


 目の前にいるガルーダは、最初に会った時よりもかなり小さくなっていた。建物で言うと二階建ての家くらいの大きさから、平屋くらいの大きさになっていた。それに話し方もフランクになっていたため、俺も引っ張られるように普段通りになってきた。


「あぁ。じゃなきゃ不便だろ? 俺が管理しているダンジョンの入口は狭いからな。有事の際に中に入れなかったら、管理している意味がないというのもある。それで、これからどうするんだ?」


 なるほど。と、納得しながら聞いていると、ガルーダはこの後の予定が気になるようだ。


「この後は、グレタのところに行く。せっかく、陽動してもらっているんだ。必要な物は、全てもらっていくことにする」


 その話を聞いたボム達は、ソワソワしだした。


「じゃあ、宝探しだな。プモルンかタマを貸してくれ」


 そういえば、タマはまだ仕事をしていない。このままでは、ただの付き添いだ。それに気付いたのだろう。タマは、我が家の御意見番を味方につけることを思いたようで、探検隊に立候補した。


「私が行きます」


 承諾したボムは、タマ加入直後すぐに走り出した。テイマーズと星霊兄妹とともに。楽しそうなテイマーズとは違って、雷竜王はさっきから難しい顔をして黙っていた。その理由は、だいたい分かるが今は置いておこう。どうせすぐに分かる。


「それで、陽動はうまくいっているのか?」


 プルーム様が聞いてきたのだが、聞いている本人にも状況を確認出来ているはずだ。しかし、この竜神はただの付き添いに徹するようだ。そのため、何かをする気もなく、ただ確認をしたいだけのようだ。


 ちなみに、雷竜王も伊達に竜王の称号を持っているわけではない。圧倒的な武力に加え、探査能力も高い。この問題を単独で解決出来る人物なのだ。ただ、感性が竜であるからか人間への配慮が欠けている。故に、この二人が動くとこの国は更地になるだろう。そして、国民含む生物は全て灰になる。


 出来れば何もして欲しくない俺と、何もせず観戦したい竜達の、お互いの希望が見事に合致したのだった。


「……うまくいってるみたいですね。グレタはボム達に任せ、俺は自称賢者風阿呆教師筆頭の相手でもしてきますよ。二人はボム達のことをお願いしますね」


 そう言うと、不満顔になるプルーム様。


「では、今回も見られないのじゃな?」


「いえ、今回はこれを渡しておきます。昨日作っておいた時空属性の魔晶石です。転移の魔法陣を刻んでおきましたので、グレタを救出したら魔力を込めてください。俺の近くに転移出来ます」


 こんなこともあろうかと、作っておいたのだ。そして、思惑通り満足げなプルーム様。


「では、グローム。急ぐぞ」


「はい」


 雷のごとく走り去っていく竜二人。そんな二人の竜の姿を見送り、そんなに見たいかな? 俺のお仕置き。と、一人思うのだった。


「それじゃあ、俺も行くとしよう。ゆっくりと」





 ◇◇◇





 ボムは頭にソモルンを乗せ、手にはカルラを抱え走っていた。とても珍しい光景だった。走るのが嫌いな普段のボムなら「バイクを出せ」と、言うと思ったからだ。


 それに加え、セルの背中にはギンとタマが乗って走っていた。この二人は手柄をあげ、ラースの下に居座るために全力を尽くしていた。セルはラースの行動に対して、共感出来る同志であるギンの支援をしようと思っていた。


 そして、ニールも走っているのだろうと思っていたボム達が目にした光景は、全く違う光景だった。ガルーダの背中に乗り、満面の笑みで飛んでいたのだ。落ち込むニールを励ますための、ガルーダの行動に皆は感謝していた。


「ここからは、二手に分かれるぞ。おそらく、ラースは抜け駆けをする。ゆっくり回っていては、時間が足りずお仕置きが見られない。俺とソモルンとカルラがグレタの下に行く。他の者は、片っ端からストレージに突っ込んでこい。飛行船の材料があるかもしれないからな」


 的確な指示を出す賢い巨デブの熊さん。そしてラースのことを一番分かっているのも、この巨デブの熊さんだった。


「……走るのが辛い。ソモルン、カルラ、可愛くない俺を許せ」


 そう言いながら、魔術で鎧を作り出し以前ラースが使っていた、なんちゃってバーニアの準備をした。カルラはちょっとびっくりしていたが、ソモルンは全く違った。


「ボムちゃん、カッコいいー! いいなぁー。僕も出来るかな?」


 大好きなソモルンに、カッコいいと言われ喜ぶボム。


「もちろん、出来るぞ」


 そう話しながら、再びボムに抱きつくソモルンとカルラ。すると、魔力を込めたボムが少し浮かび、弾丸のごとく飛び出した。これで、空を飛ぶ練習をしたことはある。だが、今やっている低空飛行しか出来なかった。


 耳をつんざく高音を響かせ、風を切るかのような速度で移動する熊。熊が通りすぎた場所には、激しい風が巻き起こっていた。その熊は兜を着けていないため、鎧を着た熊が空を飛んでいるという物語から飛び出したような姿だった。それを目撃した物品回収メンバーは、少しの間思考停止してしまっていた。そして、ガルーダが一言。


「なにあれ……」


 ラースに慣れているメンバーでも、思考停止するのだ。初めて不思議な光景を見た者なら、そう思っても仕方がない。


「……じゃあ主のために、仕事をするわよ」


 と、一番先に意識を戻せたセルが皆を促す。ちなみに、コイツの言う主とはもちろんボムのことだが、この場ではニールだけしか知らない。


 次第に我に返っていき、物品回収行動を開始するのだった。セル達はゴミまでストレージに突っ込み、あとはプモルン任せにしていた。だが、選別という作業を省いたおかげで、あっという間に宝物庫は空になったのだった。しかし、その陰で苦労を強いられていた者もいた。それは、プモルンだ。この仕事の最大の功労者は、プモルンだというのは間違いないだろう。


「次は研究所ね。何を研究しているのか、全然分からないけど」


 セルがお馬鹿さんだから分からないのではなく、本当に誰にも何も分からなかった。とりあえず、資料を片っ端からストレージに入れていき、素材も回収していった。そして周囲には培養液の入った、デカいカプセルのような物だけが残った。それも大量に。ほとんどのカプセルの中身は空だった。


 作業が終わりしばらくすると、ガルーダが皆を呼んだ。


「おーい。奥来てみろ! デカいのがあるぞ」


 そう言われ奥へ行くと、空間いっぱいのカプセルがあった。しかも、巨大な生物入りで。


「何これ。こんな生物いたかしら?」


「いや。いないだろ」


 セルの質問に答えるガルーダ。神獣だけあって、様々な生物を知っていた。だが、目の前の生物は知らなかったのだ。


「セルさん、あそこに何かありますよ」


 お馬鹿コンビの相方であるギンが、相方のセルに何やら吹き込む。


「んっ? デカい赤い丸?」


 もちろん違う。ボタンだ。だが、何故だろう。丸を見ると、ほとんどの者は本能で触ってはいけないと思っていても触ってしまう。そして、このお馬鹿も例外ではなかった。


 その赤い真円を押すセル。カチッ、と。
















 ……だが、何も起こらなかった。


「なんだー。ガッカリね」


 そう言って、部屋を後にするのだった。










 セル達が部屋を出た後、ある液体の中の生物は瞳を開け動き出す。その生物にとっての雌伏の時が、今明けたのだった。お馬鹿な狼の手によって……。





 ところ変わって、低空飛行を続ける、ボム一行。


「ボムちゃん。グレタの気配がする!」


 ボムの頭の上に乗っかっているソモルンが、ボムに探索の結果を教えた。カルラはその話を聞き、まだ見ぬ兄ちゃんとの出会いに瞳を輝かせた。


「ここだな?」


 ボムも何かを感じたようで急停止した。目の前の扉についている小窓から中を覗くと、水色のモコモコした鳥がいた。ソモルンに確認してもらうと、間違いなくグレタだという。


「だが、確かにおかしな魔術で囲まれているな」


 ボムは部屋から感じる魔力の波動から、何か異常なものの気配を読み取った。


「ボムちゃん、なんとかならない?」


 泣きそうなソモルンの顔を見て、ボムはソモルンの頭を撫でながら答えた。


「大丈夫だぞ。ラースに色々もらってきたからな。説明書付きだから、バッチリだ」


 そう言って、ストレージから金色に光る魔晶石を取り出すボム。それに魔力を流しながら扉に投げつけた。


 ガラスが割れたような音を鳴らし、魔晶石が粉々に砕け散った。その砕けた破片が魔法陣を形成していく。しばらくすると、子機を通して念話が届いた。


『ボム。正体が分かった。逃走防止と魔力吸引術式に、扉の破壊者と中の者を強制転移させる術式のようだ。扉を破壊せずに入れば大丈夫だが、中に入るときは扉を閉めるなよ。開かなくなるからな。使う石は白いヤツな』


 先ほど投げた石で術式をラースに送り、解析をさせて指示をもらう。この打ち合わせはギンから作戦の概要を聞いたときから、ラースとボムが行ったものだった。金色の石は創造属性の魔晶石に、解析魔術の魔法陣と転送の魔法陣を組み込んでいた。そして今度は無限属性の魔晶石に、解錠の魔法陣を組み込んであるものを使用する。


「じゃあ開けるぞ」


 特にお礼も言わずに、ソモルンにそう言うボム。だが、ボムがお礼を言わないのには理由があった。作戦会議のときにボムが珍しく、ラースにすまんと言ったのだ。


 それに驚いたラースが「謝罪なんかいらない。お礼なら、全部無事に終わってからだ」と、言ったため、何も言わずとも伝わるだろうと思っての行動だった。二人の絆の深さこそだった。


 ボムは魔力を込めて、また石を投げた。


 先ほどと同様にガラスが割れる音が聞こえたあと、解錠された音が聞こえた。無事に解錠されたことを確認して、ボムが先に扉を開け安全確認した。魔力で重石を作りドアを開けたまま固定し、グレタに近付いたのだった。





 ◇◇◇





「グレタを見つけるの早かったな」


 ボムから連絡が来たのは、プルーム様達を見送ったすぐ後だった。それから、プモルンとともに解析をしてボムを指示を出した後、自称賢者風阿呆教師筆頭の下へ向かっているのだが……


「さっきから、木の根っこみたいのが邪魔で歩きにくい。なんだこれ?」


 真っ黒い木の根がそこら中に這っているため、暗さも相まってなかなか進めない。邪魔な木の根にイライラが募り、ついに燃やすことにした。俺のじゃないからという、結論を導き出したのだった。


「効率よく燃やそう。嫌がらせ作戦第三弾。木の根焼失作戦開始」


 ――火炎魔術《火焔龍》――


 ナイフで斬りつけ出来た傷から龍を入れ、燃やしながら食い破ってもらうことにした。この魔術は、魔力の維持に大量の魔力を使うのと、術式の構築に時間がかかる反面、創造魔術で造ったようにある程度自立して動く。コントロールも可能で、龍がおかれている状況も、掌に浮かび上がる魔紋によって知ることができる。


「植物が相手だからかな。あまり心が痛まないな。雑草を燃やしている感じかな」


 歩きながら燃やしていると、悲鳴が聞こえてきた。どうやら、混乱している現場に到着したようだ。そして俺の目に飛び込んで来たのは、なんとトカゲの集団だった。その光景を見た俺は思わず……


「ここはトカゲの国だったのか……」


 と、呟いてしまった。俺もオークの国を考えていたが、トカゲの国を考えている者がいたとは……。


 そんな俺の考えを当然のように無視して、混乱は続いていた。


「支部長ー! 指示を! 襲撃に加え培養管が燃やされています。さらに、おそらく捕まえていた魔物達も全て、解放されたと思われます。何処から手をつければいいのです!?」


 現場監督みたいなトカゲのおっさんが、自称賢者風阿呆教師筆頭兼支部長に大声をあげていた。自称賢者風阿呆教師筆頭兼支部長はトカゲじゃなかった。残念だ……。


 だが、よく見るとトカゲ以外もいた。まずは鳥。腕が翼になっているが、おそらく飛べないだろう。両腕をパタパタしているが、一mmも浮いてない。飛べないハーピーである。続いて、二足歩行の犬か狼。どっちにしろコボルトみたいだった。


 そして俺の気を一番惹いたのは、毛があるオークだった。本来のオークはツルッツルだから、斬新で新鮮だったのだ。是非とも欲しい人材だった。アイツらを使えば、毛があるオークを量産出来そうだ。きっと毛があるオークなら、忌避感は薄まるはず。


 さらに、我が家の二足歩行の熊さんのように、モフモフとかされるかもしれない。オークのモフモフ天国とか面白そうだ。そしたら、最初にモフリスト共を御招待してあげよう。嫌がるだろうが……。


「まずは、この襲撃者共をなんとかせよ! 何のための属性纏だ!」


 オークの国の新プランに思いを馳せていた頃、自称賢者風阿呆教師筆頭兼支部長は、指示を出し終えたようだ。さすがに、属性纏を使われるのは面倒だったため、属性纏の発動の予兆を感じ取り、発動が早い順に麻痺させていった。残った者は、自称賢者風阿呆教師筆頭兼支部長と現場監督だけだった。


 ――大地魔術《岩槍》――


 現場監督はガッシリ体系だった。故に、いつもより太めの槍で、いつもと同じように股間槍を打ち込んだ。


「ぐあぁぁー! ……あっ……あっ……」


 こちらも宙に浮いていた。足がプラプラして居心地が悪いのだろう。尻尾は痛みのあまり硬直して、一振りの剣のように真っ直ぐになっていた。すると、後方から爆笑の声が響き渡ったのだった。俺は振り返りながら、その爆笑している者達に一言声を掛けるのだった。


「おかえり」




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