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暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~  作者: 暇人太一
第三章 学園国家グラドレイ
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第五十話 情報

『おーす! 元気か? 我が親友。この間ミルドガルに聞いたら、熊ゴーレムっていう面白いもん作ったんだって? 俺にも作って欲しいわけよ。もうすぐ、そっちにはプルームが行くそうだから、プルームはカルラちゃんに会えるだろ? だが、俺はボムがお使いを終えるまでソモルンに会えないわけよ。そこで、大きいバージョンのソモルンを作って欲しいわけだ。もちろん、親友のボムもな。片方をシェルターにして、片方をマジックバッグのようにして欲しい。もちろんお土産を持たせているから、タマからもらってくれ。じゃあ頼んだぞー!』


 ミルドガルと言うのは、あの前国王の名前だろう。オシャレだ。それよりも、これだけで何故こんなに厚いのかと疑問に思う。確認すると、魔法陣が描かれた手紙が入っていた。多重展開術式の魔法陣だった。それをプモルンに分析してもらったところ、とんでもないものだった。


 はっきり言って使えない。腕が吹き飛ぶだろう。そのとんでもないものとは、獅子王神様の得意技である、【獣爪拳】なるものだった。俺が手刀や抜き手をよく使うことを知った、獅子王神様からのプレゼントらしい。もちろん、ボムも覚えれば使える。さらに、プレゼントはこれだけではなかった。


「最近爪を切ったとかで、その爪で武器を作ったらどうかと言い渡されましたので、お受け取り下さい」


 またとんでもないものだった。これで断ることは出来なくなった。元から断ることはしなかったが、プレッシャーが強くなったのは間違いない。


「では、私達からも子熊作成の依頼をお願いします」


 モフリスト共は、当然のように便乗してきた。だが、子熊ならなんとかなるかと思いサイズを聞いた。


「子熊ならなんとか出来そうですが、具体的な大きさは?」


 その質問に対するモフリスト共の答えに驚愕した。それと同時に疑問もわいた。


「カトレア達と同じくらいですわよ」


「はっ? 子熊の大きさじゃないですよ? 大人の熊ですよ?」


 コイツらは何を言っているのだろうかと、不思議に思う。


「小さいから、子熊なのではありません。熊さんの子供だから子熊なのです。もちろん、中に入れるようにしてくださいね」


 おデブなボムは、妊婦ではなくただの脂肪と肉だ。そもそもオスなのだから、子熊って言わないはずだが、ボムは嬉しそうだ。


「では、その子熊を作ったら俺はモフモフされないんだな?」


 どうやら、解放されると思っているらしい。


「いいえ。それはそれ、これはこれです。そもそも、熊さんに勝てるモフモフはいません」


 真顔で言ってのけるモフリスト共。何故、ここまでボムを好きなのかよく分からない。そして、希望が儚く砕け散り絶望するボムであった。


「分かりました。オークションの資金調達のためにダンジョンを攻略しようと思っていたので、そこで材料を確保しますので少々お待ち下さい。タマさんはどうします? しばらくいるなら、食事を出しますけど」


「もちろん、いさせていただきます。噂は広がっていますから、その内様々な聖獣、果ては神獣が来るかもしれませんよ?」


「神獣って、聖域から出られないはずでは?」


 すると、どうやら違うようだ。


「基本的には、興味がないから動かないのであって、獅子王様のように遊び好きの方もいます。今は口実を作っている最中でしょう。ただ、獅子王様からのお使いの目的地である、聖獣の聖地にいる聖獣は来ませんのでご安心を。アイツらは性格悪いですからね。貴方様の言う阿呆が少ない聖獣の種族は、ドライディオス王国にもいるグリフォンとウルフ系ですね。いい子が多いので、よろしかったら食べさせてあげて下さい」


 そう言って、新たなお使いをもらい、新たな面倒事の予感もするのだった。





 この日は、大盤振る舞いで料理や酒、デザートを振る舞った。カルラやセルは、やはり女の子なのだろう。デザートを選ぶときの顔は、真剣そのものだった。以前、たくさん食べるカルラが心配になり、食べ過ぎではないかと声をかけた。すると……


『兄ちゃん……ダメ?』


 と、潤んだ瞳でおねだりをしてきた。こういうところも、ボムソックリである。ボムにも以前同じことを言った。すると、彼は声を出さず悲しそうな顔をし、皿と俺の顔を交互に見てうなだれてしまったのだ。可哀想に思ってしまった俺は、何も言うことが出来なくなってしまった。


 もちろん、ソモルンもボムの真似をした。そして現在、ボムの英才教育の賜物なのだろう。カルラも伝統を引き継いでいた。セル達はただ便乗しているだけだった。


 ギンとタマは意外にも仲が良く、酒を仲良く飲んでいた。そしてモフリスト共は食事のときはモフらない。理由は、ボムが美味しそうに食べている姿を見るというのもあるが、食事が好きなボムの邪魔をして嫌われたくなかったからだ。そして、お気づきの者もいるだろう。先ほどから、シュバルツの話題が出てこない。理由は今ここにはいないからだ。


 彼は、冒険者としても活動出来るようにギルド証を持っている。俺の考えと同じで、Dランクに留めている。俺の場合は、ボムの我が儘が理由でSランクになっただけだ。そして、シュバルツは何をしているかというと、エルザさんと協力して情報を集めているらしい。


 シュバルツには全く関係ないが、エルザさん含むモフリスト共が少しでも子熊を入手出来る確率を上げるため、俺の必要とする情報集めに奔走しているらしい。彼は、ボムからの圧力から解放されたのに、モフリスト共からの新たな圧力に苦労していたのだった。そんな苦労性のシュバルツが帰ってきたようだ。


「ただいま戻りました」


 モフリスト共に報告をするシュバルツに、飲み物や食べ物を勧め労うことにした。


「ありがとうございます。一息つけました。それでは、情報について報告します。残念ながら、グレタ様の話はありませんでした。ただ、どうやらこの街に教国の異端審問官が来ていることと、魔獣ハンターなる者達の詳細を得ることが出来ました」


 グレタの場所は確認出来たためよかったが、気になる二つの情報を集めて来た彼はすごいのだろう。そして、この情報はどうやら事実のようだ。外に気配の殺し方がお粗末な方々いるからだ。残念ながら、彼らはここまで来られない。ケットシーの幻影魔術で地面に掘ったゴミ箱に、自ら入って行くらしいからだ。


 タマ達ケットシーはこの幻影魔術を気に入られ、獅子王神様の部下になったそうだ。酒を飲むときのシチュエーションを、自由に出来るとか言っていたらしい。ふと思ったが、獅子王神様はあの人にソックリだ。


 それはさておき、シュバルツの情報によると異端審問官は、信者獲得のための動きをしているようだ。その内容は魔力の高い者を探しているらしい。おそらくは拉致して首輪をはめるのだろう。いかにも教国のやりそうなことである。


 さらに、その中の一人がこちらでは珍しい、黒目黒髪だったらしい。俺は「まさか!」と思い、思わず顔に出してしまった。まあ事情を知っているのは俺の従魔だけで、その俺の表情を見たのはボムだけだったから大丈夫だろう。


 続いて魔獣ハンターについては、自称賢者風阿呆教師筆頭が連れてきた者らしく、この街でやりたい放題らしい。活動内容はハンターギルドなるものを作り、魔獣や魔物の売買や討伐と称した狩りをしているらしい。珍しければ、オークションにかけるという。セルがこのパターンの被害者だろう。


 魔獣ハンターのギルドは学園の隣にあり、俺の家とは真逆の方向らしい。ということは、自称賢者風阿呆教師筆頭は、魔獣ハンターの一員であり学園は狩り場だ。そして聖獣などは手元に置いているそうだから、それらを使って何かをしているのだろう。トカゲがいい例だ。属性纏を使うことから、人体実験でもしているのかと思えてくる。それならば、急がなければグレタが危ない。


 そしてシュバルツの情報で、この国が真面になる方法を見つけた。その情報とは、街の主だった者達は魔獣ハンターに攫われたらしいということだ。まだ生きているなら、そいつらがいれば真面になるだろう。


 別に住むわけではないからどうでもいいと言えばどうでもいいが、一応生徒もいる。そして、この国の冒険者ギルドと商業ギルドの職員は真面だ。それに、また観光に来るかもしれない。それならば、少しは協力してあげようと思ったのだった。


 彼が持ってきた情報は、かなり有益な物だった。そして頑張った彼には、ご褒美を贈ろうと心に決めた。騎士だから、剣をあげよう。ただ、騎士に限ったことではないが、武器を使って戦う者の武器は、重心だったり持ち手だったりと、体に合っていなければ危険なのだ。


 とりあえず、あの長く使ってそうな剣をスキャナで読み取って置こう。あとは、本人と話し合って調整していくことにした。そのことを話すと、大喜びしていた。モフリスト共は、熊ゴーレムがあるからいいだろう。


 ちなみに、このモフリスト共がボムのことを名前で呼ばないのには理由がある。聖獣の名前を呼ぶ場合は、基本的に様付けらしい。だが、ボムは様付けがあまり好きではない。だから、初めて様付けされたときに不機嫌になってしまい、モフモフ出来なくなってしまった。だからといって、もし呼び捨てにしているところを、獣人族の者に見られたり聞かれたりした場合は、また使節団がやって来る事案になる。


 そこで出した結論が、種族名で呼ぶ。別に呼び捨てではない。さん付けだ。そういう屁理屈を思いついたモフリスト共は、ある意味すごい。実際、獣人族の者に「不敬ではないか?」と、尋ねられたことがあった。それをこの無理矢理な屁理屈でやり過ごしたのだ。しかも、ボム本人が「別に構わん」って言ってしまったため、見事に何事もなくやり過ごしたのだった。モフリスト共の執念の完全勝利である。


 その出来事を思い出し食後の休憩をしていると、モフリスト共とボムが何やら話し合っているようだ。気になった俺は、耳を傾けてみた。


「熊さん、一緒にお風呂に入りましょう?」


「断る。俺はマッサージをして欲しいのだ」


「私達がしてあげます」


「それでは満足出来ない。ラースには、勝てんのだ」


「では、練習させてください」


「そしたら、俺はマッサージを受けられない」


「二度入ればいいのでは?」


「のぼせるだろ」


「では、ラース君にも一緒に入ってもらいましょう。息子と言える年なのだから大丈夫よ」


「それは駄目だ。あらぬ疑いをかけられても迷惑だからな。そんなことしたら、モフモフ禁止な」


 どうやらボムの勝ちのようだ。それにしても、あのモフリスト共はボムとの風呂のためなら、裸を見せることに抵抗もないのか?


 そうさせるこの熊は、いったい何者なのだろうかと思ったのだが、結局はボムはボムだと思うことにした。そういえば、手紙に書いてあった通りだと、プルーム様が間もなくこちらに来るのだろう。その場合、このおデブさんは確実に怒られることになるだろう。この玉みたいな体で、どう戦うのかと言われながら怒られてる姿が目に浮かぶ。


 そこで、あることを思い出した。モフリスト共に、ボムが本当はもっとデカいことを教えたら、どうなるのだろうかということだ。発狂するのだろうか。そんなことを考えながら風呂を終え、布団の上へ。ちなみに、モフリスト共は帰らなかった。別の部屋にいる。そこで、ボムに先ほどの疑問を聞いてみた。


「なあボム。ボムの本当の大きさを教えたら、どうなると思う?」


 驚愕の顔をして、言葉を発した。


「お前は……そんな酷いことをするのか? 俺が苦しむ姿が見たいのか? そんなやつだとしたら、見損なうぞ。プルーム様に性根を叩き直してもらうぞ」


 どうやら誤解させてしまったようだ。


「そんなことするわけないだろ」


「絶対だな? 絶対言うなよ! いいな!」


 そう言って寝てしまった。ここでいつもなら俺も寝るのだが、今夜はお出かけである。夜遊びだけど、夜遊びじゃない。女の子がいる場所でも酒がある場所でもなく、探索魔術を使ったときに見つけた場所に行くのだ。



 そっと外に出る。

 結界をかけると目的の場所へと、静かに出掛けるのだった。

 


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