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暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~  作者: 暇人太一
第三章 学園国家グラドレイ
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第四十六話 入学式

 だが、何処に? である。全く考えていなかった。おデブさんがいるから、何部屋か分かれて、部屋を取ろうと言ったのだが、まさかボムが嫌だと言うとは、思わなかった。


 そこで考えたのが、家を借りる。デカい風呂付きの家である。たまたま、貴族が住んでいた豪邸があったため、そこにした。予算は、大丈夫だった。ファフニールの財宝のおかげで、金はある。ただ、星金貨は、世に出すと面倒なため、異世界百貨店で崩すことにした。


 この豪邸をとりあえず、一ヶ月借りた。値段は、白金貨十枚(一千万円)である。結構高いが、ボムが気に入っているようだから、ここで満足である。一番広い、寝室にあったベッドや不要な家具を、他の部屋に移し、布団を敷いた。ボム用のベッドを作ろうか? と聞いたが、布団がいいようだ。どうやら、落ちそうで怖いそうだ。

 

 そして、食事をしながら、グレタの話し合いをする。ちなみに、セルやニールに、今までの経緯や目的などを話し、ニールにはみんなとお揃いの、スカーフと子機をあげた。とても喜んでいた。そして、ご飯も喜んでいた。


「プモルン曰く、学園の何処かに、グレタがいるらしい。もちろん学園には、関係者以外は入れない」


 ボムが何かを閃いたようだ。


「お前がいつものように、忍び込めばいいだろ」


 いつも、忍び込んでいるわけではない。


「なんか、あそこの学園長は、自分のことを賢者だと言っているらしい。それで、固定型の結界を何パターンか、張っているらしい。ご丁寧に球状で。まあ、固定型は難しくないからな。魔力も、魔石や魔道具を使えば、いいだけだからな」


 ボムは思案顔だ。そして、またも閃いた。


「では、結界を破る」


「犯罪者になってしまうぞ。……俺が」


「じゃあどうするんだ?」


「もちろん、入学する」


 そう言ったのだった。





 ◇◇◇





「追いつかなかったのじゃ」


 カルラを追いかける王女と、ボムを追いかけるモフリスト一行は、ついに、学園国家に到着したのだが、結局入学式前日になってしまった。道中、魔物を討伐したり、道を間違えたりといろいろあったため、ボム達に追いつくことが出来なかったのだ。


「とりあえず、入学の手続きに行くのじゃ。家は、寮か通いかじゃったな。カトレアは、どっちにするのじゃ?」


「私は熊さんの家」


 コイツは何を言っているんだ? と、モフリスト含む全員が思っていた。


「それはどういうことじゃ?」


「熊さん達は、この街にいる。大きいから、多分家を借りていると思う。私もそこに行って、一緒に住む。熊さんは、お風呂が好きだから、熊さんが入れる、お風呂がある家は、豪邸だけ。絶対に寝る場所はある。最悪、ガルの中で寝る」


 超絶賢い子であった。誰も、考えていなかったことである。だが、重要なことが抜けている。場所と、相手の都合である。しかし、この娘には、関係ない。熊ゴーレム欲しさに、図々しくも強請ったのだ。今回も大丈夫だろうと、思っている。


「場所は、どうするのじゃ?」


「ギルドでは、教えてくれないと思う。けど、方法はある。まずは、商業ギルドで、風呂のある豪邸を購入と言って、紹介してもらう。現在、貸し出し中の物も教えてもらい、資料の写しをもらって、検討するふりをする。でも、今ある物は不要。貸し出し中の物で、大きい方から当たっていく。ノックしていって、間違えたら謝ればいい」


 絶句である。

 何て恐ろしいことを……。


 現在、ボムに魔の手が、少しずつ迫っていた。ちなみに、カトレアは、ボムのことを出して、話を進めているが、実のところ、ラースともっと話をしたかったのだ。入学手続きは、当日まで可能なため、先にこの恐ろしい計画を実行することにしたのだった。





 ◇◇◇





 風呂から出た俺達は、そろそろ寝ようと思い、寝室に向かうところだった。だが、この家に近付く、多くの気配がして玄関へ。


 コンッコンッ! と、ノックがされた。


「こんな時間にどちら様?」


 そう言って、扉を開けると、そこにいたのは、青い熊。そして、その後ろから人が現れた。


「こんばんは。泊めて」


 調子が狂う娘であった。


「……どうしてここが?」


「……偶然?」


 そんなわけないだろう! と、突っ込みたかった。だが、こんな時間に、放り出すわけにもいかない。仕方がなく、空き部屋へ連れて行った。


「ボム。お客さんだよ」


「んっ? 誰だ?」


 そう言ったボムの前に現れた、モフリスト共。次の瞬間、ボムの目は死んだ。


「「「「「熊さーん♪」」」」」


「何故ここにいる! まさかここに住むとか言わないよな? 許さんぞ! それだけは許さん!」


 必死である。ボムの剣幕に、モフリスト共は、悲しそうである。


『……リア……』


「カルラ。ごめんなのじゃ。妾のこと一番に思ってくれたのに、妾は裏切ってしまったのじゃ。許して欲しいが、すぐには無理だと言うことも、分かっておる。だが、もう一度チャンスが欲しいのじゃ。この通りなのじゃ」


『カルラ。寂しかった。可愛いリアと話したかった。パーティー、誘ってくれたの嬉しかった。でも、邪魔者みたいだった。とっても悲しかったの』


「ごめんなのじゃ。カルラのこと傷つけて、ごめんなのじゃ」


「さぁ、明日も早いですし、寝ましょう。まだ手続きしていないのでしょ?」


 面倒だったため、打ち切りにしようと思ったのだが、カルラは違ったようだ。


『カルラ、もう一回信じる。兄ちゃん、言ってた。一回目は許してあげるって。二回目ないよって。大好きな兄ちゃんのように、カルラもなりたいから、カルラもいいよってする』


「だそうだ。娘。今回は、ある方からのお達しが来たため、水に流すが次はないぞ」


 このある方とは、リオリクス様のことである。ボムが言うことを聞くのは、現世にいる管理神達と、天上にいる神々しか、存在しないのだ。仮に神獣に命令されても、無視するだろう、熊さんなのだ。


「ありがとなのじゃ」


 カルラに抱きつこうとする王女だが、またも止められる。


「何故じゃ?」


「カルラは、既に風呂に入ったからだ。それより、許してもらっても、住むのは駄目だからな。俺達は一ヶ月しかいないんだから、そのあとも、ここを借りるなら別だが、違うなら他を探せ。俺達も明日は早いからもう寝る。モフモフとやらは、駄目だ」


 ガックリと項垂れるモフリスト共。


「じゃあまた明日。おやすみ」


 そう言って、部屋を出て行った、カトレアである。苦手な娘だ。そして、ボムも頭を抱えていた。


「何故……何故ニールにいかない。何故俺に来る? 怖い熊だろ? 分からん……」


 わずかな疑問を残し、就寝するのだった。






 翌日、朝食を終え、みんなで学園へと、歩いて行く。この家は、学園のすぐ近くだった。王女とカトレアは、朝早くに商業ギルドで、この屋敷に一番近い場所を借り、そこを住所として、学園の手続きを終えた。今は着替えをして、学園に向かっている。


「カルラ達は、何故学園に行くのじゃ?」


「用があるからだ」


 それは何の? と、言いたそうだが、質問攻めに遭うため、言わないことにした。そして、ボムは現在、再会祝いに、モフられている。ボムにとって、祝いではなく、虐めだろう。だが、モフリスト共は、カルラに優しくしてくれ、臣下や弟分にも優しいため、振り払うことも出来ないでいた。


 そして、ついに学園に着き、門の前で手続きをしている。俺達一行と、王女とモフリスト一行は、手続きの場所が違うため、お互い内容は分からないようだ。


「では、講堂へ向かってください。従魔も一緒で構いませんが、他にも従魔を連れている者が多くいますので、トラブルを起こさないように、お願いします」


「分かりました。従魔同士のトラブルは、起こさないようにします」


 そう言って、俺達一行は、講堂へ向かった。王女達は別ルートである。


「何故あのような言い方をしたんだ?」


「人間が、カルラやニールを、虐めるかもしれないだろ? 俺が約束したのは、従魔同士であって、人間が相手だとしたら、約束してないから、遠慮なくお仕置き出来る。それに従魔同士は、心配してない」


「そう言うものか」


 ボムさんは、納得してくれたようだ。すると、講堂近くに、中に入れない従魔がいた。首輪をしてないため、実力がある者がテイムしたのだろう。デカい猫型の魔物が、周囲に当たり散らしていた。そして、やってはいけないことをした。


「グルルルルッ」


 ボムに威嚇したのだ。ボムは、近づき諭し始めた。


「なんだ入れなくて寂しいのか? それとも、俺に喧嘩売ってるのか? 最近運動してないから、太ってしまってな。是非、ダイエットというものを、手伝って欲しい」


 そう言って、魔力を込めるボム。どうやら、ボムチョップSPを、喰らわせる予定のようだ。だが、あれは即死レベルの威力で、あれを喰らわせたのは、プルーム様だけである。泥酔して、カルラに絡んだ、お仕置きであった。


「っ! ……グルァ……」


 そう言って、甘えだした。ボムより大きい猫は、ゴロゴロと喉を鳴らし、目をパチクリして、可愛さアピールをしていた。


「なんだ。やっぱり寂しかっただけか。それならば、ご主人が出て来てから、甘えればいいだろう。あと、この子は俺の可愛い娘だ。虐めるでないぞ。この子が泣いていたら、どうなるか分かるよな。お前は、阿呆ではないだろ?こっちにいるのは、俺の臣下と弟分だ。出来れば、何もしないことを勧める。……ラースは、手を出したら、本人に殺されるだろうから、次の日には、新しい物に生まれ変わってるかもな」


 ニコニコしながら、言うボム。顔は可愛いが、言葉は脅しである。周囲にいる、他の従魔も巻き込まれ、全員が頷いていた。機嫌の悪いボムに絡んでいいことなど、一つもない。


 機嫌が悪い理由の一つに、モフリスト共が含まれているだろうが、一番の理由は、この学園に入ったときから、粘着くようなベットリとした視線が、纏わり付いているのだ。いつもならカルラに向くが、俺含む全員に、向いていて気持ち悪いのだ。


「じゃあ中に入るから、そこを退いてくれ」


 扉の前に陣取る猫を退かし、中へと入ることに。中へ入ると、外の騒動を察していた従魔達は、もれなく大人しくなっていた。だが、突然の従魔の様子に、慌てる主人達が、目に飛び込んで来た。


 とりあえず無視して、自分の席に座ることにした。ボムの椅子は、俺が作った特製の椅子だ。そのお気に入りの椅子に、嬉しそうに座るボムを見ながら、入学式が始まるのを静かに待つのだった。





 ◇◇◇





 やっと講堂に着いた、王女とモフリスト一行。気づいたら、ボム達はいなかった。そして、講堂に入り、すぐに見つけることが出来た、巨大な熊さん。だが、座ってるそこは、普通ならあり得なかった。


「何故じゃ? ……もしかして……」


 そう思いながら、席に着く。もちろん、隣にはフランもいる。そのため、フランを見た生徒達は、驚愕である。二足歩行で歩く、ぬいぐるみだからだ。よく見なければ、ぬいぐるみと分からないが、それでもこれだけ近ければ、判断出来る。


 もちろん、ガルも同じであった。王女もカトレアも席は近いが、間にモフリスト共の言うところの、子熊が二頭いるため、遠く感じるのだった。


 そして、始まる入学式。最後の方で、ラースの紹介があるようだ。


「紹介に与った、ラースです。魔法と実技担当の、先生の代わりに、一ヶ月ほど臨時で教えることになりました。私も今回、教師としては初めてですので、どうか長い目で、見てもらえると助かります。短い間ですが、よろしくお願いします」


 と、そう言ったのだ。その言葉に王女とモフリスト一行は、絶叫したのだった。


『えぇぇぇぇぇぇぇー!』





 ◇◇◇





 ラースが言う入学とは、生徒ではなく、教師としてであった。生徒だと、結局許可がなければ、入れないところがあるが、教師は基本的にはなく、都合が良かったからだ。


 しかもこの学校は、教師の選択が、可能であった。同じ科目を持つ教師は数人いて、そこから自由に選べるそうだ。授業を、三回ほど受けてみてからの変更も可能だが、異世界に来る前の大学のように、時間割も重要になるため、基本的には、授業の最初の日の説明会を聞き、選択するようだ。


 俺の魔法の授業は、一ヶ月だけの予定なため、地味な魔力操作を、メインにするつもりだ。一番人気は、派手風阿呆魔法士の先生が、担当する授業で、派手な魔法や従魔が、最強だと思っているやつだ。ボム達が側にいる俺に、嫉妬の視線をぶつける、気持ち悪いやつだった。


 そして、人数が五人揃わなければ、授業は行われず、別の教師の下へ移動しなければならない。ちなみに、定員に上限はない。


 そして、俺はこの仕事を、Sランク冒険者のギルド証を使って、もぎ取った。教えてくれた、商業ギルドには、本当に感謝した。


 だから、ファフニールの持っていた宝石を数点、言い値で売ってあげた。超高価な宝石を格安で手に入れ、大喜びの商業ギルドに、堂々と学園に侵入出来る伝手を得て、大喜びの俺の、二人の光景に、引いていた人もいただろう。


 ちなみに、ボムが知らなかったのは、ギルドの直売コーナーで、ソモルンのお土産を見ていたからだ。彼は、買い物が出来る、熊さんなのだ。カルラが騙されないように、勉強したからだった。先生は、もちろん俺。



 そして、若い俺を教師にするのは、問題だと言う者も当然いた。実技担当の教師らしい、ガチムチ体系の青年だった。実戦は、筋肉が全てだと思っている、阿呆だったようだ。


「この学園の神聖な入学式に、正装ではなく、鎧とローブで来るとは……。それになんだ、そのあべこべな格好は! 戦士なのか、魔法士なのか、はっきりしろ!」


 そう怒鳴る、ガチムチ風阿呆教師に、事実を教えてあげた。


「まず、昨日初めて、この国に来たもので、神聖かどうかが、よく分からない。その上、来てすぐに、実力で教師になってしまったため、正装の用意が出来なかった。さらに言えば、これ以上にいい物は、この世に存在しないし、戦闘を行う者の正装は、鎧などの防具ではないですか? 騎士に正装で来いって言ったら、全身武装で来ますよ。そんなことも分からないで、実技を教えられるのですか? あなたに、何を教わるのですか? 筋肉についてですか? それは、主旨が違うのでは? 

 最後に、見た目をはっきりさせる必要はない。見た目でしか、相手の能力を判断できないのは、実力がない証拠。あなたもこの学園に、通い直しては?」


 ボムとセルは、後ろで爆笑である。何人か、同じ事を思っていた仲間が、いたのだろう。同じく爆笑であった。


「さて、生徒を待たせてはいけませんので、教室に行きますね。これから、説明会を行わなければ、ならないので」


 顔を赤くして、怒りが限界の彼は、息を止めてたことに気づかず、そのまま気絶してしまった。


「みなさん。御覧の通りです。実技担当の先生を倒す方法は、口撃による挑発です。このガチムチの筋肉は、役に立ちませんでした」


 そう言って、近くの教師や、保護者と、まだ残っていた生徒に聞こえるように、大声で言った。彼が、授業を行えるように、応援してやったのだ。感謝してほしい。


 やっと、辿り着いた教室の扉から、赤と青の熊さんの顔が、廊下に出ていた。どうやら、こちらに来たようだ。授業の内容と教師、そして場所が記された冊子が、渡されていたためだろう。四人なら、授業をやらずに済んだのに、二人は確定したようだ。



 授業がなくなることを祈りながら、ボム達と共に、中へと入るのだった。



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