閑話 苦行
本日は閑話を二話掲載します。この話は二話目です。明日からは新章になります。
ある日突然、目の前に転移門が現れた。我々は、現在少子化問題と、食糧不足にあえいでいた。
ここはダンジョンである。本来は、モンスターを生み出してくれるが、我々は欲望の高い魔物だった。食事も必要だが、それ以外の三大欲求も満たされなければ、気が狂いそうにもなってしまう。食糧を求め、スタンピートを起こしたくても、人数が足りない。これでは、直に我々はダンジョンに、吸収されてしまうかもしれなかった。
そこに、降って湧いた、人間達である。全裸で、既に興奮状態だ。まずは、少子化問題に取り組むことにした。
しばらくすると、ダンジョンに冒険者が来た。この者の魔力の波動は、転移門の魔力の波動と、同じものだったのだ。一目で、我々の救世主であるということと、絶対に敵わぬ強者だということが分かった。それならば、先へ通した方が、お互いのためであろう。
次の階層への階段を指差すと、彼らも分かってくれたようだった。去り際に、親指を立てていった。あれは、褒めてくれていたのだろうか。少し嬉しくなってしまった。
っ! 下から凄まじい魔力の波動が……。先ほどの者か? それに、このダンジョンは、終焉を迎えたようだ。それならば、ここを国にしてもいいかもな。地下になっているのなら、攻められにくいはずだ。武器や食糧の確保に、動かなければな。
すると、またもや人間が現れた。そして、さらに追加もされた。今度は食糧や武器もある。彼は我々の神なのだ。そうに違いない。
この日ここに、ラースの思惑を、しっかりと理解した、オークキングが誕生した。彼は、賢い系真面魔物筆頭に、君臨したのだった。そして、ここに【新生オーク王国・オークランド】が、誕生したのだった。
そこに、それを祝うように、大量の肉と酒が、転移されてきた。彼らは、この日を記念日とすることを決めたのだ。そして、彼らはラースに忠誠を誓うのだった。
ところ変わって、獣王国某所。
「かぁ~旨ぇー! 何だこの酒! めちゃくちゃ旨いな! ドラゴンの内臓の焼き物も、こんなに旨いとはな! いつも売ってばかりいたが、これに入れておけば、料理してくれるかもな! それにしても、ボムは羨ましいな!」
もちろんこの方は、【獅子王・リオリクス】である。楽しみにしていた、酒と料理を、堪能中である。だが、彼は誤解をしている。ボムは酒を飲まない。甘いものは好きだが、酒はあまり好きではないのだ。故に、プルーム様の酒の相手は、いつも雷竜王だったのだ。
ボムは、カルラと遊びながら、お菓子をムシャムシャと、食っていただけである。もちろん、ラースはウェイターである。
「それにしても、あれだけ教えてやったのに、馬鹿なことしたもんだな。属性纏をしている者の相手をしたいなら、自分も属性纏をして、戦うしか方法はない。それだけの効果があるから、各流派の奥義にもなっているって言ったろ? アダマンタイトの剣が切られたのと、かすり傷で済んでよかったな。アイツらはまだまだだが、それは俺から見たら、という話だ。アイツらに勝てそうな人間は、竜人族か魔族にいれば、いい方だろう。勝てないやつに喧嘩を売るのは、自殺と同じだぞ? 馬鹿な真似は、二度としないことだな。今回のことは、俺から取りなしておいてやる。一つ貸しだぞ?」
現在、酒を飲んでいるリオリクスは、目の前の者に説教をしていた。その相手は、ドライディオス王国の、前国王であった。彼は、リオリクスと旧知の中で、現在師事している、師匠でもあった。その経験から、ボムの最大の怒気を前にしても、立っていられたのだ。
理由としては、弟子を取る際の試験に、リオリクスの威圧を耐える、というものがあったためだ。だが、実際のところ、ボムの怒気であったため、無事だっただけで、これが殺気だったら、無理だっただろう。たまに、ほんの少しだけ、優しいボムの心遣いだった。
「それに、俺はアイツらを気に入っているんだ。今は、俺の加護を受けた、俺にとっても可愛い弟の、お願いを叶えるために、行動してくれている。二度と邪魔をするな。構うなら、友好的に接しろ。次は、俺もその喧嘩に混ぜろよ?」
そう威圧しながらの説教を、阿呆な息子のせいで、一人で聞くことになった彼は、おそらく、一番の被害者だろう。彼の仲間は、奇しくも、カルラに毒を吐いたことで、プルーム様の逆鱗に触れた、ラースだったのだ。
「本当に申し訳ございませんでした。今後、二度とこのようなことにならないように、誠心誠意尽くします。どうか、今後もよろしくお願いします」
そう頭を下げた。
現在、この店も、店の周囲も誰もいない。理由は、尋常ではない威圧が、迸っていたためだ。その眼前にいる、隠居はある意味すごい人なのだろう。
「まあ、分かればいい。それで、酒に付き合うよな? その熊のゴーレムのことも詳しく」
今リオリクスが飲んでいる酒は、酒精が高いウイスキーを飲んでいる。お気に入りの酒である。目の前には、多くの空き瓶が並んでいる。足りなくなると、追加を要求するのだ。ボムがいることをいいことに。
そして、この世界に、ここまで強い酒はないため、飲み慣れない酒は多く飲めないが、お仕置きを兼ねた誘いのため、断れないのだった。
「……御相伴に与らせていただきます」
そう言って、熊ゴーレムの話を、意識のあるうちにし、意識がなくなるまで、酒の相手をするのだった。
翌日は、地獄の二日酔いと、戦ったそうだ。ちなみに、回復魔法を使うことは、許されなかったそうだ。
さらに、ところ変わり、竜の巣。
「もういいのではないか?」
「駄目です。全然駄目です」
現在も、プルーム様は修業中であった。
「ダンジョンの攻略を果たしたのだぞ? 楽しそうではないか。カルラが、宝探しが楽しかったと、言っておったぞ。我も宝探しがしたい」
「まだです。そうですね、そのダンジョンの最下層くらいですね。ラース殿のような、Sランクを超えている人間なら平気ですが、まだです。まだ我慢ですよ」
「はぁ~……。カルラに会いたいのじゃ。どうしているじゃろうか……」
「きっと元気にしていますよ。さあ、今日もやりますよ。頑張りましょう」
「頼むのじゃ」
プルーム様の修業は、今日も続く。そして、まだまだ続く。ため息をつくプルーム様だが、同時に島にいる他の竜もまた、ため息をつく。彼らは毎回、気絶していた。彼らの苦行は、プルーム様の修業が終わるまで続くのだった。
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やる気満々になります。




