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第三十八話 救出

 走ること数分、現在離宮の近くにいる。ここにいるそうだが、警備がすごい。虫一匹入る、隙間もなさそうだ。


 ということで、罠魔術を使った陽動を、行うことにした。あまり強力な魔術を使えないが、魔法のように、複合して行えば大丈夫だろう。


 ――火炎魔術《火柱》――


 ――暴嵐魔術《風弾》――


 これをいくつか仕掛け、順次発動していった。爆発しているように見えれば、御の字である。夜だから大丈夫だと思う。そして、案の定警備が離れていく。上にいる弓兵は、石をぶつけて置いた。死んではいないだろう。次に、病気がうつるのは嫌だから、結界を張ってから中へ入ろう。


 ――結界魔術《聖域》――


 だが、警備兵はまだいたようだ。入口からは、さすがに離れないか。とりあえず、寝ていてもらおう。


 ――暴嵐魔術《風弾》――


 顎に当て、グラついたところで、腹パン。横になって、寝ていたと分かると、怒られて可哀想だから、壁に頼掛けて立たせ、鎧の一部を、壁と融合させてやった。これで近付くか、明るくなるまで、分からないだろう。


 扉を開けて中へ入ると、勢揃いしていた。駆け寄ろうとする、二人を制止して様子を見ると、どうやら彼らも、呪殺されそうになっているようだった。だが、この人たちの方が、威力が高いようだ。ローズさんは、ある意味ラッキーだったようだ。そして、呪いを掛けた、張本人もいるようだ。


「どちら様ですか? 許可なく開けるとは、どういうことですか? それに鍵を掛けてあったはずです」


 メイド風阿呆その三である。そして、騎士が二人と、暗部が一人。最後に、ダンディーなオジ様がいた。


「すみません。城門の方で、いきなり爆発があったもので、突然帰れなくなってしまったんですよ。こちらの方へ、避難してきたところ、扉が開いていたため、入らせて頂きました」


 そう言って、辺境伯をチラッと見ると、状況を察してくれたようだ。賢い系真面貴族筆頭は、優秀なのだ。


「これはこれは、アハト公爵閣下。ご無沙汰しております。ルドルフ・フォン・ガイスト・フェスティオ辺境伯です。お忘れになって、しまわれましたか? ご迷惑をかけるようですが、外の状況が落ち着くまで、どうかこちらに、いさせてもらえませんか?」


 と言った。

 俺はそれに加えて、さらに追い詰める。


「これはこれは、公爵閣下でございましたか。失礼をしてしまい、申し訳ごさいません。お詫びに、そちらで横になっている方々の、治療をいたしましょう。この魔力の流れは、呪いでしょう? それに、よく見れば、国王陛下のようにも見えます。急がねば、なりますまい」


 と言った。

 これで断れば、何故? となるからだ。呪殺されそうになっているのに、治さないとは、いったいどういうことなのか。そう追い詰めることにしたのだ。


「ガイスト卿であったか。これは久しいな。それにしても、本当に治せるのか? 不確かなことは、出来れば、やらせたくないのだがな」


 と、心底嫌そうである。


「はい。私のお客様が、本日、ローズに掛けられた呪いを、病魔とともに消し去りました。鑑定士にも、確認してもらいましたから、間違いないでしょう」


 鑑定士とは、鑑定眼を使える者のことだ。もちろん、使っていないが、モフることが出来るくらい、体力が戻ったのだ。完治していると、確信していた。


「では、やってみせてくれ」


 断ることを諦め、俺らを処分することに、決めたようだ。


『セルは二人を守ってくれ。あのおっさん以外は、死んでも構わん』


 と、セルに指示を出して、国王の元へ。わざと、おっさんの近くを、歩き回る。それから、国王のベッドに近付いた。騎士が、俺達を取り囲み、抜剣した。だが、すでにロックオンしている。発射!


 騎士二人と暗部、そして公爵閣下の股間目掛けて、何かが飛び出した。ちなみに、今回は槍ではない。槍のように、一点集中型にするのと、拳のように、多面的な攻撃にして押し潰すのと、どちらが痛いのか、実験してみたかったからだ。


 あと、患者たちは、起きている。つまり、今の惨劇を目にしているのだ。女性はいいだろう。だが、男性もいる。そして、驚愕な光景に、目を見開いていた。


 辺境伯は、娘に聞いていたことを目にし、阿呆な息子は、手加減されていたことを知った。シュバルツも同僚が、男色愛好家と、呼ばれていた意味が、今初めて分かったのだ。セルは、女で良かったと思っていた。メイドは、私はどうなるのか心配していた。


「静かになったので、まずは治しましょう」


 ――生命魔術《完治》――


 ――生命魔術《吸毒》――


 ――生命魔術《解毒》――


 ――生命魔術《薬物生成》――


 ――神聖魔術《反射》――


 途中までは、ローズさんと同じ手順だ。だが、最後は呪いを掛けたものに、送り返す魔術を行った。どうなるか知らんが、頑張ってくれ。そう思い、辺境伯にポーションを渡して、飲ませている間に、荷車を作ってしまおう。


 汚いだろうが、その方がお仕置きになるだろう。男色愛好家風阿呆共が、乗っていた荷車に、新たな男色愛好家達を入れた。もちろんメイドもだ。彼女は、貴重な素材なのだ。


 そして、辺境伯家から持ってきた馬車に、患者達を入れ、荷車を連結した。牽くのは、もちろんセルである。セルは、スカーフをマントにして、俺もフードを被る。シュバルツと辺境伯も、狭いだろうが、馬車に乗ってもらい、出発。馬車と荷車には、認識阻害の結界を張り、まずは公爵宅へ。まだ、役者が揃っていないからだ。



 コンコンコンッ。


 窓をノックして、役者が来るのを待つ。すると、ドアが開かれ、辺りを見回す阿呆がいた。下が疎かになっていますよ。


 彼は槍だ。

 初夜権とか言う、クソみたいな権利を作って、好き勝手していたためだ。だが、その後失敗したと思ったが、まずは連れ去ることにした。同じように荷車に入れ、辺境伯を呼んだ。プモルンの探査によると、地下に誰かがいるようだからだ。


 まずは、家宰を捕まえ、ボコボコにした。コイツも、グルだったようだ。あとは、武闘メイドが三人と、言っていたので、コンプリートしていたようだ。コイツは、そのまま荷車に入れた。そして地下へ。


「カトレア……エドガー」


 檻の向こう側に、首輪をはめられた少女と、首輪をはめられた青年がいた。鍵を探すのも、面倒である。辺境伯に退いてもらって、鍵を焼き切ることにした。


 ――属性纏《火炎》――


 ナイフに魔力を集中させ、高温にして、鍵を焼き切った。火傷されても困るため、俺が開けた。急いで中へ入り、二人を連れ出そうとするが、隷属の首輪のせいで動かない。不幸中の幸いだったのは、オークションに売るため、どちらも貞操が守られていたことだろう。ボコボコにした、家宰風阿呆が言っていた。


 ――神聖魔術《解呪》――


 首輪を外し、焼却しようとしたが、証拠にしなければと思い、辺境伯に持たせた。檻には、他に何かいないか思い、確認したが、いなかった。一先ず、屋敷を出て、辺境伯宅へ。


 荷車は、とりあえず放置して、患者の回復をしていった。その後、お仕置きを先に済ませようとしたら、ボムも見たいそうで、先にボムの水を流すことにした。王女たちは、既に風呂から出ており、入っているのは、ボムとカルラだけである。カルラはボムがいるから、入っているだけだ。


「遅いぞ。のぼせるかと思った。お前も後で入るのだろう。俺も、もう一度入ってもいいぞ」


「今日は生活魔法で済ませるよ」


 もう一度、洗って欲しかったみたいだが、今日はもう疲れた。それを聞いたボムは、ガッカリしていた。馬たちも、こういうところを見れば、可愛いと思うはずだ。たぶん。



 槍を持って、いざ! お仕置きへ!



 何故か、辺境伯家の使用人たちも、見に行くようだ。灯りをともして、見やすくする。二階からも、お客さんが見ているからだ。ちなみに、辺境伯と王女からは、既にお礼を言われている。ちゃんと学習したようだ。だが、王女は外で見ている。


「部屋に行かなくていいのですか?」


「部屋に行くと、天罰を見せてもらえないのじゃ」


 さらに、エルザさんの兄妹も、外で見ることにした。いろいろありすぎて、彼らとはまだ、話していない。もちろん、寝込んでる阿呆予備軍はいない。


「とりあえず、パンパン変身ツアーを体験している人達を、公爵達と一緒に見ましょう」


 そう言って、穴を開け、荷車にも覗き穴を開けてあげた。荷車は、そのままの位置からだと、見えないだろうから、高さをあげた。そして、パンパン変身ツアーを体験した方達は、パンパンになっていた。


 初めて、それを見た方達は、辺境伯達経験者を見て、さらに驚愕した。普通にしているのだ。近くに、何やら巨大な、二足歩行の熊がいるのも驚きなのに、その光景を見て、当たり前のような表情をしていることが、さらに驚きだった。


 そこに、自分たちの娘、つまり第三王女がいたというのもある。むしろ、王女はボムと、手を繋いでいた。あり得ない光景だったはずだ。


「では、槍を消毒して、加熱殺菌もしました。これで彼らを治療します。エルザさん、シュバルツさん、王女殿下は、やり方が分かりますね? 誰か、やりたい方はいますか?」


 と、聞いてみた。誰も手をあげない。だが、さすがだ。


「俺がやる」


 ボムがやるようだ。

 体験型にしたのは、成功のようだ。


「軽くだぞ。ボムが本気で刺すと、死んじゃうからな」


「分かってる。飛び散らないようにだけしとけ。もう一回、風呂に入るならいいけどな」


 と、言っていたので、風の障壁を張って置いた。


「行くぞ」


 そう言って、男色愛好家風阿呆の、腫れている股間に、突き刺した。そう言えば、男色愛好家風阿呆の股間に、大地魔術で作った槍を、突き刺したとき、爆笑してたのを思い出した。股間に槍は、ボムも、お気に入りのようだ。


 だが、最初にそこをやったら、消毒した意味がないが、まあいいか、と思うことにした。刺した槍が抜かれたとき、毒液が噴き出した。ボムさん、爆笑である。まるで、用を足しているかのように。


 だが、草人間は平気そうだ。やはり痒くないのか? これは、専用ポーションを使って、元に戻して確認しなければ! と思い、交渉用に作っておいた、ポーションを出した。シュバルツとエルザさん、王女には、効果と副作用のことを伝えている。


「何をするのじゃ?」


「彼女を見てるのが辛いため、治してあげようと思います」


 と言うと、辺境伯達、知らないメンバーは優しい子だと、微笑みを浮かべていた。だが、知っているメンバーは、悪魔かという、抗議の視線を、向けていた。そして、魔術を使って飲ませた。


「うわあああぁぁあぁぁぁがぁぁ」


 っと絶叫する、女騎士風阿呆。辺境伯達は、毒を飲ませたのかと、思っているようだ。


「何を飲ませたのだ?」


「ポーションですよ。専用の治療薬で、少し副作用があるのですが、あの人の病は、あの薬で治すんですよ」


 と言ったことで、辺境伯は気づいたようだ。他にも、治療法があるということに。だが、何も言わない。パンパン変身ツアーに、行きたくはないからだ。


 どうやら草人間は、痛みで痒さは、飛んでいるようだ。そして、今度は女性にとって、衝撃の展開が。ボムの槍によって、胸が弾けて萎んだのだ。数名が胸を押さえている。


 ここで武闘メイド風阿呆その三が、気づいたようだ。武闘メイド風阿呆が、コンプリートしていることに。そして、騎士風阿呆も気づいた。男色愛好家風阿呆が、自分達と同じ派閥の、同僚だということに。さらに、暗部の方にプレゼント。今まで剥ぎ取って来た、暗部の身分証明を、穴から放り込み、笑いかけた。絶望していることだろう。


 呪いもあるだろうから、体も重く魔力も、うまく練れないはずだ。だが、彼らは新しいお仕置きを、体験してもらうのだ。人によっては、最高の体験ツアーである。エルフは好きなはずだ。


「終わったぞ」


「じゃあ虫君ご苦労様」


 そう言って、蠱毒で呼び出したが、召喚魔術の送還で、送り返した。そして、穴の上には、消毒液を浮かせてある。上から穴に落とすためだ。バケツの水を、ひっくり返すように。さらに彼らは、全裸隊長と違って、磔である。避けられはしないのだ。


「それでは皆さん。御唱和ください。三・二・一・ゼロ!」


 ザッバァーン!


 と、落ちていった、大量の消毒液。叫び声が聞こえるが、無視である。しばらくは、消毒槽に入っていてもらおう。


「続きまして、あなたたちですよ。お待たせしました」


 そう振り返ると、暗くてよく見えないが、震えているようだ。


「震えるくらい。嬉しいのですか?」


「こんなことをして、いいと思っているのか? 今なら間に合う。いくら払えば助けてくれる? 頼む。ああはなりたくない」


「もう遅いのですよ。あなたの阿呆な部下が、俺の妹を虐めたため、使用者責任というやつで、大人しく罰を受けてください。人によっては、快楽ですから。安心してください」


「安心できるかぁー!」


 魂の叫びだろう。

 だが、止まらない。まずはいつも通り、全裸に剥く。全員である。そして、磔にする。


「魔法の薬、登場」


 と言って、注射器と真っ赤な液体を、取り出した。彼らのお仕置きとは、治験である。何も治さないけど、あえて言うなら、阿呆を治す治験である。彼らは、散々魔薬を使ってきたから、いつか返してあげようと、取って置いたのだ。それを元に、新薬を作ってしまった。ちなみに、薄めれば売れるかもしれないが、原液である。


「さて、まずは男色愛好家にしてしまった面々には、元に戻ってもらおう。とても残念だが、今からの治験には、重要なのだ」


 股間を治し、彼らの体に魔紋を入れて、死にそうになったら、王城の離宮に、転送されるようにした。召喚魔術の応用である。そして、彼らの体に注射していく。


「かっ体が……! 何を入れた……?」


「魔薬を元に作った、新薬を入れました。効能は、媚薬です。あなたたちは、初夜権が欲しいのでしょう? ある方々の初夜権を、あなた方にプレゼントします」


 ――召喚魔術《逆召喚》――


「娼館【オークの巣】体験ツアーへ、いってらっしゃいませ」


 文字通り、オークの巣送り込んだ。あとは、知らない。


「困りましたね。彼らは、国王陛下を襲ったのに、休暇に行ってしまわれた。今は公爵の家には、誰もいないのです。調査をするための許可を出す、責任者がいませんね」


 と、言ったところで、辺境伯が一言言って、打ち合わせに行った。国王陛下の方を見て微笑むと、目線を外された。いったい何故だろう。


「コイツらはどうするんだ?」


 と、ボムが聞いてきた。消毒液プールで泳いでいるメンバーのことだ。


「オークの巣に行きたいですか?」


 と、聞いてみるが、返事はないようだ。処分が面倒だったため、失敗ポーションと解毒剤を飲ませ、新薬を注射して送った。もちろん、転送用の魔紋をつけて。あとの処分は、役人に任せることにした。槍を消毒して、持ち主に返した。ちなみに、持ち主は、阿呆予備軍だった。使用人の小さな仕返しらしい。


 これでやっと終わりのようだった。




 その夜、なんとボムが、久しぶりにモフリながら、寝かせてくれたのだ。いつもは、「ソモルンとカルラのものだ」と言うのにだ。


 お仕置きを、労ってくれたのだろう。俺は、ボムのモフモフに、顔を埋め、爆睡したのだった。

 



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