第三話 熊さんの魔法講座
「はしゃいでるところ悪いんだけど、なんで魔法欄に魔術がたくさん書かれてるんだ? あと、獅子王神の寵愛って何だ?」
とりあえず、疑問に思ったことだけ聞いてみることにした。
だが、ボムに分かるのか?
「あぁ、それな。まずは、魔法にはいくつか種類があるんだが、大まかに分けるとしたら、魔法と魔術の二つだ。
魔法は、火・風・水・土の四大属性。さらに、それぞれの複合属性の雷・氷・緑・砂の四つ。光・闇・無・回復の四つの上位属性。合わせて、十二属性で構成されているんだ。ちなみに、生活魔法は特殊魔法で数えられない。
それで魔術についてだが、早い話が魔法の上位互換だな。基本は全部で、十一属性ある。そこから派生もしてる。数が合わないと思うだろうが、独立したり、統合したりで分けられている。まあ元々が、全十一柱の神々の担当属性が、魔術として存在していたわけだ。だが、規模も威力が桁違いなのだが、魔力量の消費も桁違いだ。だから使いやすいように簡略化された。それが、魔法というわけだ」
スゲー! の一言である。
難しいことをスラスラと答えている。
魔物は、みんなこうなのだろうか?
疑問が次から次に出てくる。
だがとりあえず、ステータスの表示に集中しよう。
「ここまではわかったな? では、次に行くぞ。
魔物が生まれる現象は、魔素を取り込み、魔素に侵されたことで生まれたりする。重要なのは、この【魔素】だな。これは、空気中に含まれているもので、この世界の構成には、無くてはならないものだ。魔物も人も関係ない。
そこで違うのは、魔物は生まれた瞬間から戦いが始まる。本能的に魔法が使えなければ、生存競争で勝ち抜けない。生きて行く内に、完全に身につく能力がある。それが、【身体制御】と【魔力制御】、【魔力把握】という三つだ。
これらは、上位身体スキルなのだ。魔術を使うには、魔力を完全に操作し、制御できる魔力制御。魔力を完全に感知し、把握できる魔力把握。この二つのスキルが必要になる。俺にはあって、お前にないものだ。故に、お前には魔術は表示されない。
ちなみに、魔法が表示されないのは、魔法を創ったのは人だ。神には関係ないからだな。わかったな?」
表示されない理由は分かった。
だが、残念に思う気持ちもある。
その魔力制御と魔力把握を習得して魔術を身につけるか、あの勇者たちみたく、スクロールか魔導書で覚えるか、はたまた自力でどうにかしなければ、それまで魔法はお預けなのだ。
「まぁ魔法については、わかった。次は、獅子王神の寵愛についてだな」
普通の加護と違うのだろうか?
「獅子王神様の寵愛に限らず、加護には三段階ある。【寵愛】・【祝福】・【加護】の順だな。
今回は根性があって、そこそこ実力もあったことと、元々遊び好きで暇をもてあましていた獅子王神様の話し相手として気に入られていた。だからつけてくれたんだろ。おかげで、この島まで来れたからな。補正効果は、身体能力向上【中】だったと思うぞ」
ボムは、気に入られた件でドヤ顔を見せつけながら話してたけど、どれだけスゴイのかいまいち分からないのだ。
「じゃあボムは、スゴイ魔物なんだな」
「違うぞ! 魔物ではない」
さっきまでの上機嫌が嘘のように不機嫌に。
でも、魔物じゃないってどういうことなのか。
「魔物と一緒にするな」
やっぱり不機嫌の理由は、同じにされたことのようだ。
「違いが分からないから、怒ってる理由を教えてくれないか?」
「別に怒っているわけじゃない。不愉快なだけだ。
とりあえず、説明するとだな。魔物と魔獣と聖獣、さらに神獣というものがいる。神獣は、この世界の十大ダンジョンや魔境などの聖域を守護・管理している。聖獣は、世界樹のある島で生まれ生息していたり、たまに進化したりして生まれる。まぁ神獣予備軍で、神獣の兵隊みたいなものかな。それで、魔獣とは、人間が創ったランクで言うとS以上で知能が高く、聖獣への進化が可能なものを言う。俺は魔獣だったわけだ。
魔物は本能に任せた行動しかできない。そんなやつらと一括りにされるのが、不愉快なだけだ」
なるほど。
だから、神獣への成り上がりが目標とか言ってたのだろう。それじゃあ気分も悪くなるはずだ。
こんなに難しい説明もスラスラ受け答えできる知識も理性もあって、獅子王神に実力も認めてもらえるようなボムが、人間で言うところの自分の欲求に負けて、犯罪塗れの行動している阿呆達と、同じような括りにされたら、俺でも不愉快だ。
「それはすまなかった。知らなかったとはいえ、酷いことを言った」
俺が謝ったことに驚き、固まるボム。
俺が前世から大切にしてることは、感謝と謝罪。
どこの国の言語でも、一番最初に学ぶのはありがとうとごめんなさいであろう。だからこそ、この二つは生きて行く上で、一番大切だと思っている。
これから先、この世界で一緒に過ごすことになる相棒には、真摯に向き合わなければと思っての行動だった。
そんなボムはというと、頬をほんのり赤くしながら、話し出した。
「知らなかったんだから、今回はもういいぞ。次はないからな。覚えておけよ」
照れ隠しなのだろうか。
ツンデレとは、やりおる。
だが、ツンの部分が来たら本当の恐怖なのだ。
気をつけようと思うのだった。
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やる気がみなぎります。