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第三十五話 親子

ブックマークと評価をありがとうございます。日に日に増える数字を見て、活力に変えています。これからも頑張りますので、よろしくお願いします。

「あら? 体が軽いわ。今日はどうしたのかしら」


 そう話す、ローズさん。


「お母様。治ったんですよ。もう苦しい思いは、しなくていいのです」


 そう、涙を流して話すエルザさん。それに、辺境伯も涙を浮かべている。ここは、家族水入らずにしてあげよう。


『ボム。少し部屋から出るぞ』


『分かった』


 そう念話をして、部屋を出た。

 すると、ボムがこの時間に何かをしたいらしく、話し掛けてきた。


「いい加減、コイツに名前をつけろ」


 と、蒼い狼を指差した。

 なんだかんだと、保留にしてきたのだが、ついに来てしまった。


「空という意味がある『セル』だ」


 またも光に包まれていく。

 そういえば、ボムのときと手順が違うが、大丈夫そうだ。そしてやはり、変化が起きた。


 先ほどまでは、確かに体もそこそこデカく、色も俺の髪の毛のように、基本は蒼で毛先に向かってグラデーションになり、水色になっていた。それに加え、黄色や白の毛が、所々混じっていたのだが、今は全然違う。まず体のデカさが、ゾウである。ボムも乗れそうだ。さらに、モフモフが増していて、毛の長さも伸びている。


 そして色だ。

 蒼ではなく紫だ。

 所々グラデーションのようになり、赤が強かったり、青が強かったりしている。角度によっては、緑に見えるところもある。そこに、黄色や白のメッシュのような毛が、混じっているのだ。そして、瞳は金色である。俺、ボム、セルでお揃いだった。それに気づいたカルラが、悲しそうである。


『カルラだけ違う……』


 ボムさん大慌てなのだ。


「カルラ。カルラのお兄ちゃんの、ソモルンも違ったぞ。母ちゃんも違っただろう。同じじゃなければ、家族ではないのか?」


 カルラは首を横に振った。


『違う。父ちゃんたちとは家族なの』


「それならば、気にする必要はないだろう。ちょっといいなって思っただけだろう? 父ちゃんも、カルラと一緒がよかったぞ」


『残念だけど、ここは一緒ー!』


 と、言って指差したのは、顎の部分にある毛である。ボムも嬉しそうに笑い、カルラを抱きしめていた。ボムによる、カルラの教育は順調のようだ。


 さて、ステータスを視る前に、やっておくことがある。コイツを、小さくしなければならない。ここで使うのは、ボムがしているのと同じ、腕輪である。だがボムの腕輪は、アダマンタイト製で、そこそこ重いのだが、ボムは何とも思っていない。セルは狼だから、スピード重視だろう。そのため、軽い方がいいかもしれない。


「子機とサイズ変更アイテムと、ボムやカルラみたいな装備品を作るが、どこにつける?」


「子機は物の出し入れがしやすいように、足がいいな。片足だとバランスが気持ち悪いから、サイズ変更アイテムも、もう片足に着けるわ。装備はカルラのように、可愛いやつがいいな。カルラは、ブレスレットか……それなら私は首輪以外の、首につける物にして欲しい」


 コイツも、カルラを溺愛しているようだ。とりあえず、まずはサイズ変更アイテムを作ろう。


 ――創造魔術《魔法銀》――


 魔法銀とは、ミスリルのことである。さらに、創造魔術で多少なら、作れるのだ。飛行船の素材、これで作ればいいじゃん! と、俺も思った。だが、世の中甘くないのだ。何でも、天然物に比べると、純度が低く、何度精製しても、飛行船の素材には向かないらしい。


 サイズ変更アイテムは、作れない魔道具のマジックアイテムというやつだ。これを何故作れるかというと、プルーム様のところに、オリジナルがあり、それをコピーして、アダマンタイトを材料にして作ったのだ。ボムは、アダマンタイトがお気に入りらしい。黒くてカッコいいそうだ。そして、同じ事を、ミスリルでやるのだ。


 次に、プルーム様の鱗を留め具にした、マントにもなる、スカーフにしよう。スカーフしか、思い浮かばないのだ。ネックレスだと、戦闘中にプラプラ揺れて、邪魔だろう。そして、入れる文字は基本は、ボムと同じでいいだろう。ただ、速度強化のため、獅子奮迅の代わりに、疾風迅雷を書いておく。これで完成である。


 これらを身につけさせ、やっと終わった。ちなみに、王女は震えている。恐怖からではなく、歓喜でだ。ゾウサイズから牛サイズになった、セルに抱きついていた。ボムは、自分が解放されたと思っているようだが、それは間違いなのである。彼はまだ知らない。このあとの地獄を。



 さて、ステータスを視るとしよう。


【名前】  セル

【性別】  メス

【年齢】  78

【種族】  極光狼(アウロラウルフ)

【Lv】  118

【魔法】  暴嵐魔術

      雷霆魔術

      火炎魔術

      流水魔術 

      時空魔術

      氷雪魔術

【スキル】

[ノーマル]言語Lv.10

      魔力制御Lv.10

      魔力把握Lv.10

      身体制御Lv.10

      牙闘術

      爪闘術

      身体異常無効

      精神異常無効

      状態異常無効

      物理攻撃無効

      魔法攻撃無効

      看破 

      隠密

      心眼

      超感覚 


[ユニーク]賢王


【称号】  解放者

      紅炎熊の女騎士

      星霊怪竜「カルラ」の姉

      転生悪魔「ラース」の従魔

      新種聖獣への進化


【加護】  獅子王神の寵愛

      火神の加護

      水神の加護

      戦神の加護

      魔神の加護



 新種聖獣になることは、前例があったためか、そんなに驚かなかった。初めから魔術を二つ持っていたのは、すごいだろう。我が家の暴君ですら、大地魔術一つだった。俺の従魔になると、加護も同じものがつくようだ。カルラたちは、従魔に出来ないから残念だが、あの子たちは、創造神様の加護だけでも強いから、大丈夫だろう。


 そして、本来の魔獣の戦闘術があって、ユニークスキルもある。ユニークスキルは、ボムみたく二足歩行ではなく、器用になって話せることと、魔術を効率的に、うまく使えるようになるスキルのようだ。ボムと違って、魔術タイプになるのだろうか。


 そして、いよいよ、一番気になる称号欄である。コイツは、俺のことを悪魔だと、思っているのだろうか。自分が何をしてきたかは、分かっているが、コイツには助けた以外は、していないはずだ。しかも、ボムの女騎士って、どういう意味なのか。コイツの本当の主人は、ボムということだろうか。謎である。


 セルも、称号に気づいたのだろう。目が泳ぎだした。そんなセルに救いの手が、差し伸べられる。


「皆さん。お見苦しいところをお見せしました。どうぞ中へ」


 そう、エルザさんが、話し掛けてきた。セルはどうやら、有耶無耶にする作戦のようだ。まあ今はその作戦に乗ってやろう。


「大分姿が変わりましたね。何があったのでしょうか」


 セルの変わりように、驚いているエルザさん。ただ名前をつけただけなのだ。ちなみに、王女はモフモフの前なら、細かいことを気にしない性格のようだ。シュバルツは、目の前で起こった、異常な光景にプチパニックである。


「話は聞かせて頂きました。本当にありがとうございました。娘のことも合わせて、感謝を申し上げます」


 と、病み上がりなのに立とうとする、ローズさん。だが、思わぬところから制止がかかる。


「別にいいから、立つな。まだ完全には、体調が戻っていないはずだ。寝ていろ」


 と、まさかのボムである。

 立とうする、ローズさんの肩に手を置いている。しかし、辺境伯が何やらソワソワしている。まさか、ボムに嫉妬しているのか? と、思われたが、違った。ただ、エルザさんの母親だっただけだ。


「モフモフだぁー♪ モフモフがあるわー♪ 目の前に、こんな大きなモフモフがあるー♪」


 と言いながら、抱きついた。

 ボムも驚愕して、固まっていた。

 辺境伯の心配事は、これだったのだ。エルザさんのモフモフ好きは、遺伝だった。


 そして、この家は賢い系真面貴族筆頭になることを決意するくらいには、真面なのだが、その血を継いでいるのか? と疑問に思えるような存在が、まもなくやってくる。それまで、ボムのモフモフ地獄は続くのだ。ローズさんに便乗した、王女たちもともに、モフリ倒すのだった。





 ◇◇◇





「ただいま戻りました」


 ついに帰ってきた、阿呆予備軍。

 現在、執事が説明中である。

 この家にはお客様がおり、従魔と使い魔を連れていること。お嬢様と奥様の病を治し、現在もご歓談の最中だということ。さらに、第三王女殿下と、護衛騎士もいるため、失礼のないようにと、懇切丁寧に説明をしているのだ。


 そこまでしなければならない阿呆が、辺境伯の次期当主なのだ。他の貴族なら、まだよかっただろうが、辺境伯は、阿呆では駄目だろう。使用人含め全員が、この国は詰んでいると思っても、仕方がないのである。そして、ここまで説明されたのに、言った言葉があり得なかった。


「屋敷に魔物がいるのですか? 討伐して、安全を守らねば」


 コイツは何を聞いていたのか?

 と問い質したいが、一応仕えている者の家族なので、我慢するしかなかった。それに彼らは、コイツに問題を起こして欲しくない理由があった。


 メイドが一人消えたのだ。

 気づかないわけがない。

 理由も知っている……というか見た。自分の目で見て、さらに、四角い荷車みたいなものが、厩舎近くに置いてあるのだが、そこからたまに、呻き声が聞こえるのだ。ちなみに、馬は慣れた。ボムに比べれば、虫の鳴き声と、同じようなものである。


 だが、彼らはまだ一回しか見てない上に、四角い荷車は、空気穴以外は穴がないため、どうなっているのかも分からない。王女殿下も一緒にいる、異常な状況に不安になる。屋敷の中、それも取り分け使用人の中では、大パニックなのだ。


 門の守衛に何かあったら、頼む! とお願いしても、そんなもの無理に決まってるだろ! と、拒否されてしまった。


 彼らはこれでも、元Aランク冒険者なのだ。彼らが無理ならば、もうお手上げである。だが、一つ思い出したことがあり、お客様が厩舎をあとにしたあと、自ら厩舎に行き、この家のモフモフ要員兼番犬ならぬ、番狼の元へ向かったのだ。そして、守衛に言ったことと同じお願いをすると、此奴は既に陥落していたようだった。


 もはや、打つ手のない彼らは、阿呆予備軍に阿呆な行動をさせないように、全力を尽くすしかなかったのだが、どうやら無理なようだ。部屋に行き、武装を整え、奥様の部屋へ突撃していったのだ。だが、彼には分かっただろう。今は特に、駄目である。モフリ中の光景を見たら、襲っているはずなのに、襲われているように見えてしまう。


「では行くぞ! ついて参れ!」


「坊ちゃま、お止め下さい! 坊ちゃまー!」





 ◇◇◇





「失礼する」


 その言葉とともに、全身武装の少年が入ってきた。俺よりも年上だが、ヒョロッとしているせいか、あまり年上に見えない。そして、阿呆の臭いがする。歓談中に、全身武装で入室してくるとは、きっと余程のことである。だいたい分かっているが、先手を打って、少し虐めてみることにした。


「全身武装とは、何事ですか? 私も王女殿下の護衛任務の最中です。お役に立てるのならば、是非協力させていただきたい。どこかからの襲撃ですか?」


 と、聞いてみた。

 少年の後ろの執事にのみ、俺の黒い笑顔が見えたらしく、顔面蒼白で震えている。


「それはありがたい。この屋敷に魔物が侵入したという話を、執事に聞いた。討伐するのを手伝ってほしい」


 すると、全員の目が執事の元へ向く。本人は、激しく首を横に振る。辺境伯一家は、現在苦境に立たされている。ローズさん以外は、お仕置きを見ているのだ。ちなみに、ボムだけは喜んでいる。この阿呆のお陰で、モフリが中断されたからである。しかし、魔物扱いがイラついたらしく、若干の怒気が漏れている。そして、その怒気に影響されたのか、カルラが珍しく怒っていた。


『父ちゃんは魔物じゃないよー! 父ちゃんの悪口言うなー!』


 と、キュイキュイ言って、怒っていた。すると、阿呆予備軍が、気持ち悪い笑みを浮かべた。


「竜だ……珍しい魔物だけでなく……竜もいる。これを売れば……借金を返せるぞ」


 と、小声で言ったのを、聞いてしまった。お仕置きはマズいだろう。辺境伯一家に、お世話にならなければ、野宿である。それは別にいいが、カルラがお風呂を楽しみにしていたのだ。ローズさんと入る約束をしていた。俺も一緒に風呂に入るのか? と期待と不安と疑問が同時に湧いた瞬間であった。


 そして、円満な解決法を思いついた。


「申し訳ありませんが、あちらにいる子たちは、俺の家族なので、借金返済に充てることはできません。代わりに、ここにライトニングドラゴンの、素材があります。俺と組み手をやって、勝てば譲りましょう。強さを心配しているのなら、大丈夫ですよ。これは彼らが討伐したもので、俺はテイマーですから」


 と言った。

 最初借金の件で慌てていたが、テイマーを倒せば、ライトニングドラゴンの素材が、もらえるのだ。欲に目が眩んでいる彼は、申し出を受けてしまった。さすがに、お仕置きと股間槍は、やっては駄目だろう。エルザさんの視線が、それを物語っている。


「では、さっそく外に行きましょう」


 そして、執事は現在、辺境伯に詰め寄られている。どう説明したのかを、使用人一同全員で、説明している。納得した辺境伯は、どうするべきか悩んでいるみたいだ。


 ローズさんは、見に行きたいようで、エルザさんに、駄々をこねている。王女はカルラをなだめて、ボムに抱きついていた。というか、コイツが一番楽していて、楽しんでいることは間違いない。結局、先に進まないため、セルの背に、ローズさんを乗せて行くようだ。


 あの阿呆予備軍が来ただけで、カオスになりかけるなんて、素晴らしい阿呆の才能の、持ち主なのかもしれない。



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やる気満々になります。

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