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閑話 竜の巣

 ラース達が旅立ったあと、雷竜王と話をするプルーム様。


「行ってしまわれましたな。寂しくなりますでしょうな」


 ラースにもらった子機を、カルラの形に作り、抱きしめているプルーム様に、そう話し掛ける。


「そうじゃな。だが、また戻ってくるそうじゃから、それはそれで楽しみじゃろう。永いときを生きてきたが、これほど充実していた日々もなく、楽しみを待つこともなかった。それに比べれば、十分に幸せだろう」


 実際別れが辛くなったカルラが、誘ったのだ。一緒に行こうと。獅子王神様も出掛けているのだ。構わないのでは? と思ったのだ。だが行けなかった。理由としては、【存在感】だ。


 初めて会ったラース達は一応強者の部類に入っていたはずだが、目を合わせただけで死を予感させていた。それ程の存在感は、人化しても変わらなかったのだ。だがここで疑問に思うのは、獅子王神様だろう。

 なぜ大丈夫なのか? という質問をプルーム様に投げかけた。すると、返ってきた答えが驚くほどのものだった。


「彼奴は、遊びのためなら何でもするんじゃ。ダンジョンに住んでいるのも、ボムのように、たまに来る挑戦者と遊べるからであり、ついでに雑魚の露払いにちょうどいいと思っているのじゃ。

 実際、ボムが使った送還転移を操作したのは、彼奴がダンジョンマスターに命令したからじゃ。スタンピート中に、逆に入ってくるとは面白いって言っての。ダンジョンマスターは、彼奴に守ってもらってるから、言いなりなのじゃ。無敵の守護神を得たようなものだからな。

 そして、飽き性の彼奴の次の遊びが、人間の街に行って冒険者になる。とかいう意味の分からんものじゃった。だが、今の我と同じ問題にぶつかった彼奴は、人間にも威圧をコントロールする奴がいるのだ。やってやれないことはないだろうと、練習を始めたのじゃ。方法は、ダンジョンの逆走。

 存在感がコントロール出来ていれば、魔物が襲って来るだろう。それを低層まで行ければ、ちょっと強い人間として行けるかもしれないと思ったそうじゃ。結果、それは成功した。だが、ちょっと強いではなかったのじゃ。十大ダンジョンの低層は、そこらのダンジョンの深層に当たるのだ。だから、登録したときの試験で、例外的にSランクとして、登録されたらしい」


 その話を聞いていたときのボムは、目をキラキラさせてブツブツ呟いていた。耳を澄ませて聞いてみると……


「さすがだ。ラースも同じように、いきなりSランクとやらにさせねば。お揃いがいいからな」


 という不穏な言葉を呟いていた。


「では、獅子王神様に教わるのはいかがでしょうか?」


 俺は、プルーム様に提案してみたのだが……。


「それは嫌じゃ。彼奴の言っていることは、よく分からん。ドーンとかグッとか。説明をしろと言っているのに、分からん我を馬鹿にしているような顔をする。何かムカつくのじゃ」


 なるほど。

 感性で教えるタイプか。

 そこで、雷竜王が提案する。


「私はプルーム様のような存在感を持っておりませぬが、それでも竜王として存在感をコントロールする術を持ち合わせております。もし、よろしければ、私からお教えさせて頂けませんか?」


 まさかの提案に満面の笑みを浮かべるプルーム様。


「もちろんじゃ。お願いする」


 そう頭を下げながら言うプルーム様に、恐縮しっぱなしの雷竜王だった。



 そして始まる修行の日々。

 今度はプルーム様の。

 長命な竜族とは違い、ラース達はいついなくなるか分からない。時間はかけてはいられないのだ。気合いを込めた、プルーム様だった。


 その存在感によって、竜の巣の多くの生物が気絶したのは、不慮の事故だった。


 そして、始まるのだった。

 雷竜王の新たな試練が……。

 終わったとき、確実に強くなっているだろう、過酷な試練が……。







『おーい。我じゃ。プルームじゃ。お主の言っておった、熊とその主人が来たぞ。可愛い娘を連れての。酒も料理もこの世にはまだない物だそうじゃ。それに、今我も存在感のコントロールをしておるのじゃ。旅をするためにの。よいじゃろう。羨ましかろう』


 いつも自慢してくる【獅子王・リオリクス】に、自慢の仕返しをすることにした、【始原竜・プルーム】。


『なんだそれは! ズルいぞ! まだない、酒と飯だと? なぜ呼ばん! 俺も食ってみたい!』


『もう旅立ったわ。残念じゃのう。それに、お使いが終わるまで会わないと言ったのは、お主じゃろう。まぁ我は主人の方に子機なる物をもらって、いつでも飲み食い出来るがな。ラースに会ったのは、僥倖じゃったのう。では、修行の時間じゃ。さらば』


『おい! おーい!』


 一方的に自慢され、一方的に念話を終了させられた。もちろん、プルーム様はご機嫌だ。


 もう片方の不機嫌な獅子王神様は、というと……


「クソー。あんなこと言うんじゃなかったぜ。自慢してくるほど旨い酒と飯ってなんだ? 獣人国にはないのか? 確か主人の名前は、ラースとか言ってたな。熊の方には、会わないと言ったが、ソイツには大丈夫だろう。

 そして、その子機なる物をもらう。幸いにも、熊の魔力は憶えているのだ。辿っていけばいいだろう。待ってろ! 酒と飯!」


 この世界を、現世で管理している、三体の神。

 そのうちの二体の念話は、まるで子供のすることのようだったのだ。


 そして、この自慢合戦に巻き込まれるラースは、このとき突然の悪寒に襲われたという。



この話で、第一章完結です。

次章は修正が終わり次第、順次投稿予定です。

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