第二十三話 いってきます
昨夜は、なかなか忙しかった。
あのドラゴンの肉で作った、料理と酒でドラゴンパーティーをやったのだ。うちには、食いしん坊のおデブさんと、育ち盛りの可愛い怪竜がいる。量が不安ということもないが、一応先にお供えをしておいた。そして案の定、不安が当たったのだった。
そのドラゴンパーティーには、正体不明のフードの人改め、【雷竜王・グローム】とその息子のライトニングドラゴン。亡くなった娘の兄に当たるそうだ。ちなみに、老竜である。あんな雑魚とは、格が違うのだ。そして、時間感覚も違った。事実、訪問前まで爆睡していたらしい。仇を討てなくて、悔しがっていた。
さらに、子竜まで、多岐に渡る年齢のドラゴン一家がやってきて、仇のドラゴンを珍しい味付けで食い尽くしていた。そして、なめてたら瞬殺されるであろう、可愛い子竜は、うちのカルラと仲良くなっていた。それを見た、父親のボムさんは複雑そうな心境のようだ。その子竜が、オスだったからだろう。
というか、前から思っていたのだが、コイツ人間くさいな。種族とか関係なく可愛がっているのを見ると、無償の愛ってあるんだなと、思えてくるから不思議だ。
そして、食事を終え、装備の詳細を詰める。
理由は、世界を管理する、管理神の素材を使うのだ。無駄にしないように、様々な付与をしていくつもりだ。そこで、日本語の登場だ。
魔術でもそうだが、この国の言葉はカタカナみたいなもので、イメージしにくい。漢字は、それだけで意味を持つ。だからイメージしやすくなるのだ。魔術にも応用している。
だが、日本人だったからといって、全ての漢字を知っているわけではない。それに、ほとんどの人がそうだと思うが、読めはするが書くことが出来ない。そんな漢字があるのだ。万能ギフトを持っていても、知らないものは無理だ。考えた結果、本屋で辞書を買うことにした。
修行で使ったのがダンジョンだったおかげで、ドロップアイテムがあった。本来は、それを使った装備を作るはずだったのだが、もう必要なくなったため、両替所で換金してやった。
そして、手に入れた辞書を使って文字を入れていくわけだが、ただ文字の羅列を入れても芸がないし、効果が薄い気がした。そこで、四字熟語にしたのだ。四字熟語は、それだけで完結している言葉だから分かりやすい。そこで自分の中で知っている四字熟語を、辞書を見て確認していったのだ。そして、入れることに決めたものが次になる。
【天下無双】
この装備にピッタリの言葉だろう。
プルーム様が守護しているようなイメージで、防御力が高まる気がしたから入れることにした。
【疾風迅雷】
速度は必要だろう。そう思い入れることにした。この言葉は、ライトニングドラゴンの素材にも入れたから、相性が良さそうだ。
【獅子奮迅】
これは、ボムのゴリ押しだ。獅子と言う文字が、獅子王神の獅子と同じことを知ったボムが入れろと、駄々をこねたのだ。まあ力が上がりそうな四字熟語を探していたから、結果的によかった。
【不撓不屈】
強い意志をもって、どんな苦労や困難にもくじけないさま。と、聞いたとき、強い意志さえ持てば、致命傷回避の付与ができると思ったのだ。
【全知全能】
魔術を使う戦法もとる。それなら、補助や補正効果も欲しくて入れてみた。
【神出鬼没】
認識阻害の効果を入れるのに、これだけ適した言葉もないだろう。
【不老不死】
これは、俺がではなく、装備がと思い入れたのだ。自動修復や状態維持をしてもらいたかったからだ。これだけの素材で作った、装備を迂闊にメンテナンスになんて、出せないからだ。盗まれる未来しか見えない。
ギフトには、修復する店はない。
買い物しか出来ない。
それだけでも有難いのはもちろんだ。
あとは、サイズ自動調節と温度管理、使用者固定の三つを入れたところで、許容量が上限に達した。これだけでもスゴイ装備になったと、満足している。ちなみに、ボムはマントだけだから、全ては無理なのだ。聞くだけ無駄だろうが、一応聞いた。返ってきた答えは決まっている。
「獅子奮迅な。それ以外はなんでもいい」
とのことだ。
完全な二足歩行で歩く、熊だ。
目立つに決まっているが、少しでも緩和させるためと、メンテナンスフリーのため、入れる文字は、神出鬼没と不老不死だ。あとは、サイズ自動調節と温度管理、使用者固定を入れていっぱいになった。
残った素材はやっぱり取っておくことにした。サイズ自動調節と言っても、ないものは作れない。つまり、大きいものを小さくはできるが、小さいものを大きくは出来ないのだ。そして、うちには日々成長中の巨大な熊と、間もなく十歳の俺がいる。
いくら大きめに作っても、将来どれだけ違うのか、五体満足なのか分からないから、作りようがなかったのだ。
という点を話し合って、取っておくことにした。ただ、カルラも欲しいのだろう。もじもじしてる姿は、可愛かった。と言っても、カルラは装備ではない。こう言ってはなんだが、翼が邪魔なのだ。これがソモルンなら、ボムと同じマントでよかったのだろう。そこで、プルーム様の素材を使った物も欲しがったため、ブレスレットのような物を作ることに。
獅子王神様の毛色は、赤銅色に近く、黒に近い赤なのだ。ボムはともかく、俺はカッコいい色だと思っている。ボムにそう告げると、満足そうにしながら、
「そうだろう。やっとわかったか」
と言っていた。
相当嬉しかったのだろう。
短い尻尾が、ゆらゆら揺れていた。
そこに、プルーム様の深い緑。
カッコいい姿しか浮かばない。
ライトニングドラゴンは、革を使って鎧の下に着る服を作った。柔らかく加工しやすいが、色が薄い黄色だったため、錬金術で黒に染めてやった。鱗や角は、要所要所で使ったため、深い緑に黄色の模様や縁取りなど、意外にもさまになっていた。牙は、いくつか売る分を取っておき、ナイフを作った。大型のサバイバルナイフを数本と、ワイヤーをつけられるスローイングナイフを二〇本くらい。
剣は魔術で作るから、普段から持ち歩くのはやめた。無限収納庫があるじゃん! って思うだろうが、武器を取り出すだけで、厄介事になるとか、その方が面倒だ。街では、腰にポーチを付け、なんちゃってアイテムバッグで通すのだ。
そして、朝起きて、遂に完成していた我が装備に胸がときめいた。まず、インナーは黒。ライトニングドラゴンの革だ。意外に柔らかく、動きやすい。丈夫な服と言ってもいいくらいに。
そして、鎧。これは、プルーム様の鱗やライトニングドラゴンの鱗や角だ。ただ、どのようなものにするか、一番悩んだ。結果、材料が山ほどあるならと思い、フルプレートアーマーのようにしてみた。兜なしで、金属ではないから、そう呼んでもいいのか分からないけど、満足いくものになったのは間違いない。腿の部分と手首から先以外は、ほとんど包まれている。
手の部分は、ライトニングドラゴンの革で、指出しグローブのような物を作っていて、手の甲には、鎧と同じように、鱗を加工してつけている。手甲のようなものだ。
拳王術での攻撃がメインな俺は、手首や指が自由に動く方がいいのと、幻想魔術で指先を強化できるのも、理由の一つになっているだろう。
そして、最後に獅子王神様の毛で作ったローブだ。もちろん、フード付きのものだ。袖は肘くらいまでで、丈も邪魔にならないように、膝裏くらいのものだ。あとは、胸……というか腹くらいの位置で、留められる金具付きで。まあ金具と言っても、金属ではなく、ライトニングドラゴンの角で作ったものだ。
ライトニングドラゴンは、意外にも役に立っていた。生前は胸糞悪い奴だったが、死んだ後は役に立つ奴だった。ナイフは、腿の部分と腰に固定してある。
これで完成だ。
ちなみに、ボム達のものは昨日完成している。
ボムは毛布のようにして、抱いて寝ていた。
意外にも、子供のような部分もあるのだ。
そして、これが今のステータスである。
【名前】 ラース
【性別】 男
【年齢】 9歳
【種族】 人族
【職業】 テイマー
【Lv】 150
【魔力量】 測定不能
【魔法】 生活魔法
火炎魔術
流水魔術
雷霆魔術
時空魔術
幻想魔術
無限魔術
森羅魔術
暴嵐魔術
大地魔術
生命魔術
闇黒魔術
創造魔術
竜魔術
【スキル】
[ノーマル]算術Lv.10
採取Lv.7
魔力制御Lv.10
魔力把握Lv.10
身体制御Lv.10
投擲術Lv.7
剣王術
拳王術
身体異常無効
精神異常無効
状態異常無効
物理攻撃無効
魔法攻撃無効
看破
隠密
心眼
属性纏
[ユニーク]全言語理解
無限収納庫
神魔眼
テイム
全魔対応
異世界電脳
異世界百貨店
隠蔽EX
【称号】 転生者
新種聖獣「ボム」の相棒
星霊怪獣「ソモルン」の友
星霊怪竜「カルラ」の兄
賢者
拳聖
竜殺し
始原竜「プルーム」の弟子
雷竜王「グローム」の友
【加護】 火神の加護
水神の加護
戦神の加護
魔神の加護
技工神の加護
豊穣神の加護
始原竜の加護
雷竜王の加護
そして次は、ボムさんだ。
【名前】 ボム
【性別】 オス
【年齢】 150
【種族】 紅炎熊
【Lv】 254
【魔法】 大地魔術
火炎魔術
雷霆魔術
流水魔術
時空魔術
【スキル】
[ノーマル]言語Lv.10
魔力制御Lv.10
魔力把握Lv.10
身体制御Lv.10
剣王術
槍王術
撃王術
拳王術
身体異常無効
精神異常無効
状態異常無効
物理攻撃無効
魔法攻撃無効
看破
隠密
心眼
超感覚
属性纏
[ユニーク]擬人化
【称号】 神々の共犯者
転生者「ラース」の相棒
新種の聖獣への進化
星霊怪獣「ソモルン」の親友
星霊怪竜「カルラ」の父親
剣聖
槍聖
撃聖
竜殺し
始原竜「プルーム」の弟子
雷竜王「グローム」の友
【加護】 獅子王神の寵愛
火神の加護
水神の加護
戦神の加護
魔神の加護
始原竜の加護
雷竜王の加護
雷竜王の加護は、神と違って強力ではないが、おすすめと言われた。それは……
属性纏の補正【極】(全属性)
確かに勧めるのも分かる。
本当に有難い。
そしてボムと俺の称号にある【聖】なのだが、王術を持っているものの中で、最強の存在という者につけられる。つまり、ここにいる人数で完結してしまうのだ。【剣聖】は、俺とボムで剣だけで闘い決めた。【拳聖】も同じだ。結局、お互いが得意分野で分かれたということになり、解決した。
カルラが変わった点は、称号と加護。
称号や加護に関してはほとんど同じだ。
そして、一番の収穫は、竜魔術だ。
もちろん、ブレスもできる。
そして思う。
ちゃんと勉強していたんだなと。
あのときは、済まなかった。
そして、遂に出発の時。
雷竜王も来てくれた。
でも、そんなに寂しくない。
雷竜王は、放蕩おじいさんで、プルーム様には子機を渡してあるからだ。だが、ボムのようになって欲しくはない。遠距離恋愛みたく、毎晩眠る前にソモルンへと電話する姿に、いつも恋人なのか? と、自問自答している自分がいるのだ。あぁそれからテントは二日目から消えた。小屋を建てさせられたからだ。
話を戻すが、旅立ちのときだ。
まずはグレタを捜しに行くのだ。
決意を胸に、いざ! 出発!
涙を流し、一同揃って挨拶のとき。
「「『お世話になりました。楽しい時間になりました。次会うときまで、どうぞお元気で。いってきまーす!!!』」」
その場にいた、全員の瞳から涙が止めどなく流れ落ちた。どうしても留められなかったのだ。楽しい思い出は少しだっただろう。それでも、言葉に出るくらい楽しかったのは、決して嘘ではなかった。必ず戻ってくる。心にそう誓い、出発していくのだった。
――冒険が始まる。本当の冒険だ。楽な道ではないだろう。だが踏み出した一歩を続けて行くことが大切なのだ。人生そのものが、旅であり、冒険でもある。その中でこれだけワクワク出来た一歩は、これから素晴らしいものになるだろう。力もつけた。自由に歩いて行くのだ。自分の人生を――
第一章は、おしまいです。
閑話を二話掲載して、次の章になります。
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やる気がみなぎります。




