第十七話 大激怒
準備をしていると、ボム達が部屋にやってきた。しかし、さっきと違うものを抱えている。さっきの卵がなく、子竜みたいな子を抱えているということは、あの子が卵から生まれた子なのか?
おそらく、そうなのだろう。
それにしても、早すぎる。
誕生の瞬間を見たかった……。
「この子の名前をつけることを譲ってやろう。見て分かるだろうが、女の子だから、可愛い名前をつけてやれよ」
譲ってやるとは言っているが、結局は丸投げだろう。魂胆が見え見えだった。
まずは、ボムの時のように容姿を見て考えることにした。顎の部分が、ボムみたく炎が揺らめいているように見えなくもない。
「じゃあ、カルラだな。君の名前は、【カルラ】だ」
そこまで言って、ステータスを確認すると。
【名前】 カルラ
【性別】 メス
【種族】 星霊怪竜
【魔法】 星霊術
【スキル】
[ユニーク]無敵
【称号】 創造神のペット
星霊怪獣「ソモルン」の妹
星霊怪鳥「グレタ」の妹
紅炎熊「ボム」の娘
転生者「ラース」の妹
【加護】 創造神の加護
と、なっているわけだが、ボムの娘でいいのか? 創造神様のペットだったはずだと、疑問が湧いてきたが、答えは見つかりそうもなかったため、思考を放棄した。
それにしても、ペットとして生まれると、ステータスのほとんどは、同じように固定されるようだ。【グレタ】というお兄ちゃんには、会っていないはずなのに、称号に記載されてる。
そもそもどうやって、どこから生まれるのか不思議だ。現在、創造神様は監禁されてて自由がないはずだ。生む人がいないのだ。それは、簡単なことだった。
元々家にあったようだ。
「気に入った人や動物に、魔力を込めてもらいなさい」
と、言われていたらしい。
ここで言う動物とは、聖獣以上のランクの生き物のことだ。今回薄い桃色になった原因としては、幻想魔術の属性色によるものらしい。今までになかった色なんだとか。
だが、ここで問題が一つ。
連れて行けないのだ。
生まれたばかりの子を置いていくようなことをしなければならないのだろうか。もちろん、お父さんは怒り狂った。
「バカなことを言うな。いくら無敵スキルがあっても、最強ではないんだぞ。ソモルンがこのタイミングで渡してきたということは、一緒に連れて行って世界を見せてあげたいと言うことだろう。外の世界は危険と言うが、ここにも人間は来るし、たまにバカな魔物も来る。危険と言うならここも同じだ。
その危険からこの子らを守るために準備をしてきたんだろ。そこは俺が守るって言えばいいんだよ。あんまり情けないこと言うと、ぶっ飛ばすぞ」
まさかの大激怒。
この二年で初めてだ。
二人も口を開けたまま固まっていた。
カルラも、さっきまで置いて行かれると聞いて、「いやだ、いやだ」と、駄々をこねていたのに、固まっていた。それほどの衝撃を受け、つい口から出た言葉は、
「俺が守ります」
だった。
その言葉に満足したのか、体からほとばしっていた怒気は、霧散していた。
それなら、ソモルンもとなるかもしれないが、そう簡単にはいかない。今まで一回も会うことがなかった、ソモルンの弟の【グレタ】。
彼は好奇心旺盛で、ソモルンが獅子王神に会ったことを話したことで、自分も鳥なのだから、鳥の頂点の【天帝・セレール】に会いに行ってくるって言って全然戻ってこないんだとか。火神様が言っていた頼み事とは、弟を捜して欲しいということだった。
ただ、その頼みをすると、必然的に一人になってしまうのが嫌で、なかなか言い出せなかったそうだ。そこでソモルンは行き違いにならないように、ここに残ってもらい、最優先で捜して連れてくる。そしたら、一緒に旅に出ようと約束すると、やっと決心がついたようだ。ボムにも「最優先だぞ!」と念を押されてしまったから、頑張るしかない。
とりあえず、カルラにも子機を渡した。
どんな形にするのかなと思って見てると、そこは女の子らしく、ペンダントにしていた。可愛い子だ。
その夜は豪華に食事をして、お菓子もケーキをホールで出したり、プリンタワーを作ったり、心行くまで食べた。もちろんカルラは初めての体験尽くしで、すごいはしゃぎようだった。
その後みんなでお風呂に入り、みんなでボムを洗った。巨大だからだ。
ちなみに、お供えは一週間に一回のペースで行っている。ホールケーキに目をつけた、女神様たちがすごかった。男神たちは、つまみの催促もするようになった。
そして、火神様からは、
『早く旅に出て料理を広めろ!』
と、お達しがきた。
そうすれば、酒を飲んでるだけでも貢献したことになり、働かなくても大丈夫らしい。
同じような理由で、戦神からは、
『武術大会に出て優勝しろ!』
と言ってきた。
なんでも、戦神の加護持ちが優勝したってことは、神として見る目があり、しっかり監督してるから出来ることだから、酒を飲んでいても大丈夫らしい。
さらに、いつの間にか追加されてた、技工神様からは、
『たまにでいいから何か作って店を開け。特にドワーフの国に喧嘩を売りに行くのが、面白そうで尚いい』
と言っていた。
ただ、三柱共通して言っていたことは、何かに怯えながら、
『創造神様を解放する前にやれ』
と言ってきた。
ちなみに、メール機能があるのに、直接神託を下すのだ。証拠を残さないための行動ではないかと、疑ってしまう。そして今日も、もちろんお供えものをして、みんなで最後の就寝。
ボムの腹には、新たにカルラが加わった。最近はソモルン用と言って、乗らせてくれなかったが、カルラはいいらしい。まぁ俺はソファーとして使っている。
そして、別れの朝が来た。
今にも泣き出しそうな、ソモルン。
ずっと、ボムに抱きついているのだ。
そんなソモルンにボムは……。
「一生の別れということではないんだぞ。ソモルンも寂しいだろうが、俺も寂しいぞ。弟捜し出して、すぐ迎えに来るから元気で待っているんだぞ」
そうボムが話している間、ソモルンは、涙が流れるのを堪えながら、コクコクと何度も頷いた。ボムが話し終えると、一本の羽を渡してきた。これは、グレタの魔力の残滓が残っている羽で、この日のために作った魔道具にセットした。
すると、プモルンが出て来て、作業を進めていく。
〈探査スキル及び新電脳機能のマップ、それから探査魔道具の同期を開始するよー〉
このシリアスな場面にふさわしくない、軽い口調で話し始めるプモルン。
〈同期を完了したよー。場所は、【学園国家グラドレイ】だよ。
あと、ご主人様にメールが届いてるよ〉
マップ機能は、現在わかっている世界の地図をスキャナで読み取り解析したところ、新機能が追加されていた。それが今回多いに役に立った。
それから、メールを確認してみると、旅立ち記念に【隠蔽EX】をプレゼントと書いてあった。
隠蔽は、現在おかしくなっているステータスを、鑑定レベル十でも騙せるような、素晴らしいスキルらしい。戦闘では、情報戦も大切な要素の一つ。自分は相手を欺けて、俺は相手の全てを【神魔眼】で確認できるという、大きなアドバンテージを持っているわけだ。これは助かる。
そして、いざ、別れの瞬間……。
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やる気がみなぎります。




