第十五話 ソモルンの贈り物
次の日からは早速準備と修行を始めた。
まず、四人の賢者の私室にあるものと、備え付けのものを除く、全ての資料や書籍、素材など、果てはあの飛行船までも、全てストレージと無限収納庫に入れた。
ストレージは、親機の容量の他に、子機の容量が個別に確保されている。その上で共有も可能なのだ。中々に高機能だった。何故なら、市井で高額取引をしている、マジックバッグなるものは不要になったからだ。しかも使用者制限つきで。
ストレージを使えば、ソモルンにも同じご飯を食べさせてあげれるのだ。
まあストレージに突っ込んだ理由は、プモルンが解析して、データベースとして図書館に保存してくれるそうだ。そうすることで、対応魔術のスキルを取得・表示されるそうだ。
ただ、以前というか、昨日の説明通りだといろいろと面倒事になるのではないかと、思わないでもなかった。何故なら、魔術スキル三つ以上で魔導師という、賢者を除けば魔法職で最高職に、俺は既になっているからだ。
そして、魔の賢者は、基本十一属性の魔術を全て習得することの他に、新しい魔術を身につけるか、派生魔術を一つ以上身につけるかが条件なのだが、仮に十一属性が全て揃うと、俺には既に幻想魔術というものがあるから、即賢者就任なのだ。
そのことをプモルンに伝えると。
〈あのときは、職業スキルの話をしたんだよ。そもそも、魔法関連の店は錬金術研究所と魔導機工房の二つだけ。どちらも錬金術関連だから、魔術はあまり意味はないんだよね。それに統合可能なのも、店に関係あるスキルだけだから。最初から魔術は、ステータスに表示されるようになってたわけ。
それに、隠しても意味ないよ。戦闘スキルを隠して使わなかったら、簡単に死ぬだけで無意味だよ。偽装や隠蔽で隠すこともできるし、手っ取り早い地位獲得にもなると思うよ。魔術を一つでも持っていれば、国から好待遇で勧誘されるからね。
それに、賢者は基本辿り着けない名誉だから、職業ではなく、称号なんだよ。だから、職業はテイマーのままで大丈夫。称号を自己申告で確認する必要なんかないしね〉
正論すぎてぐうの音も出ない。
確かに使う度にプモルン呼ぶのも情けない。
テイマーの典型とか言われそうだ。
逆に地位を落としそうであるのは、間違いないだろう。
あとは同時に、あの飛行船のことも解析してくれるそうだ。サラッと確認しただけでも、システムは完成しているそうだが、ここに引きこもっていたせいで、素材が足りないらしく、ストップしてしまったらしい。今は足りないものをリストアップしているところだ。
旅の最中で集めれば、後は魔導機工房さえアンロックさせれば自動で作ってくれるそうだ。あの車もどきもそうらしいが、空を飛べるなら特に必要性を感じない。だがオープンカーか、トレーラーハウスを引かせた大型車を造ってみたら面白そうだ。ボムに運転させたい。
魔法関連はいいとして、幻想魔術の使用と、実益を兼ねて素材狩りだ。そして、他の二人はというと、探検しながら修行もするそうだ。あの二人は強いから、修業はあまり必要ないのだ。それよりも今は、たくさん遊ぶことが重要なことであるのは、間違いない。
あと、やっとソモルンと話すことができた。想像通りの声だったが、話し方は違った。そのせいか、プモルンの話し方は、軽そうに感じてしまう。
それにあの、探検探検っていう口癖の原因がわかった。もちろん、創造神様の影響もあるのだろうが、初めて外出したときに獅子王神様に教えてもらった遊びなんだとか。そのときは、十大ダンジョンのうちの一つの下層辺りを一緒にお散歩したらしい。
ちょいちょい出てくる、この十大ダンジョンとは、創造神様以外の十柱の神々達がそれぞれ管理するダンジョンで、全踏破したものが、大陸中央の【創世の塔】というダンジョンに挑戦できるそうだ。
そんな建前も存在するが、本音を言うと、十大ダンジョンも攻略できない、実力不足の者は辿り着く前に死ぬ。そのような有象無象の相手をするのが、面倒くさいため、この方式にしたという話があるそうだ。あと、鍵のようなものも必要なのだとか。
だが、他にもダンジョンはあるらしいが、これらが一番有名で一番難しいらしい。どこの十大ダンジョンも、まだ三分の一も進んでいないらしく、難度が高すぎだと思わずにはいられない。
そこの下層を散歩と言っているソモルンは、ある意味化け物であるのは、間違いなかった。ちなみにボムは、獅子王神様が住んでる最下層に行ったらしいが、踏破したのではなく、スタンピートによって、下層の魔物が転移魔法陣で転移してきた、それを利用して、送還転移で最下層に行ったらしい。
賢い熊さんだった。
その話を聞いてるときのソモルンは、本当の探検みたいで羨ましそうにしていた。一緒にダンジョンの攻略しても楽しそうだ。ソモルンとやりたいことが、次々に増えていったのだった。
そんな日々を過ごすこと、早一年。
幻想魔術の魔紋は肩まで広がり、両腕両足同時に展開出来るまでになった。やっぱり考えたとおり、無手での戦闘が向いているようだ。誤魔化すために、手甲とグリーブ、ショルダープレートのようなものが必要になるだろう。それに、戦闘には邪魔そうだから、肘辺りまでのローブだ。魔術師らしさを出したいからだ。防寒着としても使えるだろう。
あとは、魔闘術と言えば、なんとかなるだろう。
そんなこんなで昨日人間が来た。
毎年数カ月かけてここまでお供え物をしたり、祭りをしたりしにくるらしい。最初の年は、終わった後に転生したから会わなかった。次の年は、来なかった。なぜなら嵐でこの島に近づけなかったからだ。俺らもあのボロ屋で大変だった。まああのすぐ後に、ソモルンと出会ったのだ。
ソモルンは、始めは俺の足にくっついて来たのに、今はボムの腹にべったりである。ボムも少しずつ成長して、今はかなりおデブさんだから、柔らかいんだろう。それに、大好きな友達だから、少しでも一緒にいたいのだろう。そんなボムをソモルンは、「ボムちゃん」と呼んでいた。
俺は呼び捨てなのに……。
少しだけ、悲しかった。
そんなこんなで、その人間と一緒に大陸に渡ろうとしたら、ソモルンから待ったがかかった。どうしても渡したいものがある。だから、用意が出来るまで、ここにいて欲しい、と。
俺が、もちろんと言う前に、
「当たり前だ。何なのか今から楽しみだな」
と、ボムが先に答えた。
俺も答えは一緒だったから、頷くだけにした。だから、人間には会わなかった。説明が面倒だからだ。
人間が去った後、ソモルンがついにそれを持ってきた。ソモルンが持ってきた物とは、卵だった。それも一抱えくらいある。そして、一言。
『もらってほしいの』
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やる気がみなぎります。




