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第十二話 お供えもの

〈メールを受信したよ。確認してね〉


 目の前に来て、いきなりそういうプモルン。

 今メール出来るのは、神様だけ。

 おそらく催促何だろうが、祭壇なんかない。

 もちろん祭壇を造るための材料もない。

 だが、とりあえず確認しよう。


『加護を授けた神々一同からラースへ。

 一体いつまで待たせるつもりなのだ? おぬし達だけでお菓子を楽しむのは、ズルいのだ。急ぎ備えよ。全種類。ついでに酒も備えてやれ。酒精が強いものを与えてやれば、文句はあるまい。

 祭壇がない。材料もないと言いそうだが、そんなお主に朗報を届けよう。まず、その城の持ち主は、この世界で唯一の賢者だけで組まれた集団で、それぞれの道を極めていた。その中に、ドワーフがいるのだが、祭壇なんかあっという間に作れてしまう。

 材料は、地下ではなく、玄関を出て左にある小屋の中に山ほどある。ストレージに全部しまって、あとは、アバターに任せろ。今のままでは、店が使えないが、私がアンロックするとズルをしたと言われそうだから、石材加工工房を新たに追加してやるぞ。では、急げよ。さらばだ。

 追伸、水神の供物は多めで構わんぞ』


 いつもと違う神からメールが来た。

 まさか、見ていたとは思わなかった。

 そして、山ほどお菓子を食べていた張本人のボムは、今は満足そうに仰向けに寝転んでいる。そのボムの腹の上には、うつ伏せで寝ているソモルンがいた。


 いつまでも見ていたくなるその光景を横目に、真っ暗で魔物の声が聞こえる、外に急いで行かなければならないと思うと、少しだけ憂鬱になった。


 そういえば、あの四人が賢者だったことを、メールで初めて知った。そして、気になったことと言えば、人族とエルフはいなかったことだ。自称ならたくさんいるだろう。最初に話した獣人と、これから世話になるドワーフに、おそらく魔族と竜人だろう。人とエルフ以外の種族は、大まかに分ければ、もういないからだ。角が生えていたことも、判断材料になったことは間違いない。


 とりあえず今は、小屋に行くとしよう。

 生活魔法の照明(ライト)を使って、全力疾走した。照明は、自分の一定範囲を浮いている魔法だから、微妙な操作とかが不要で楽なのだ。

 そして、小屋に着いたため、扉を開ける。小屋の中を確認すると、山ほど石材や木材、少量の金属などが置いてあった。それらを、プモルンに頼んで、しまっていく。さすがにしまうときは、飲み込まないようだ。魔法陣を広げて円の中に通して行くと、そこにあったものが消えていく。しまうものをしまって、小屋を出て、また全力疾走で戻る。


 部屋に戻ると二人は、いびきをかいて寝ていた。起こさないように、別の場所でやろう。と言っても、玄関ホールしかないのだが。あとは巨大な書斎だからだ。


「じゃあ、出番だ。プモルン」


 トコトコ歩きながら目の前に来る、プモルン。

 というか気になることが一つ。


「プモルン。プモルンに任せればいいって言ってたけど、あの賢者達と関係でもあったのか?」


〈それは、思念を取り込んだ、知識や技術の結晶であるキューブを取り込んで、融合したからなんだよね。

 本来は、頑丈に封印されてて錬金術や魔術で封印を解除しなければいけなかったんだけど、僕自体がキューブになったから、キューブに詰まった知識や技術、思念に残った経験も身につけることに成功したんだよ。

 それに、僕はご主人様のスキルでもあるから、これらの技術や知識は、ご主人様のスキルということにもなるけど、ステータスに表示すると色々面倒くさいことになるから、表示されないよ。まあスキルと言っても、同期されてるから、店が開かないと何もできないけどね。

 それとこれも知識から得たんだけど、偽装の上位スキル隠蔽の最高レベルの十があっても、鍛冶スキルが最高のレベル十だと、ドワーフの人には分かってしまうんだって。賢者は極めた人だからこそ、レベル十と言う枠に入らない。それだと、ドワーフに会う度面倒でしょ?

 だから、表示されないんだよ。ちなみに、僕は神に創られたギフトだから、使い魔や従魔にしか見えないはずだって言ってたよ。火神様が〉


 途中までは、すごいと感心していたが、最後の言葉で急に不安になる。今日まで適当感が全く拭えずに来てるから、徐々に信頼度が下がって来ている。

 それと、使い魔のことだが、使い魔は魔法か魔術で創られた、魔物みたいな存在だったはず。だが今は関係ないため、横に置いておくとしよう。それよりも、早くお供えをしなければ、またメールが来る。


〈では始めるよ〉


「よろしく」


 返事をすると、手を左右に広げ、そこからそれぞれ床に対して垂直に、魔法陣が二つ出てくる。ギフトのお店で、やるのではなかったのだろうか。

 すると、魔法陣と魔法陣の間に、小屋にあった材料を出していく。その材料は、次々精錬され、光輝いていく。続いて、精錬された材料に手をかざし、魔法陣を展開・起動させる。


付与(エンチャント)――神聖――〉


 と言って魔法陣を通過させると、またストレージにしまう。しまった後は、あの小っこい家みたいのに入り、数分後に出てきた。まさか、あの中で造っているのでは? と、思わないでもないが、それはさすがにないと思いたい。


〈完成したよ。今出すね〉


 目の前に現れたのは、真っ白な石で造られた祭壇。神聖属性を付与していたからか、ほんのり青みがかった白と言えなくもない。見ただけで神聖なものだと分かる。


 形は立方体の台座に大きめな天板が載せられ、台座の手前側に窪みがあり、魔法陣が刻まれている。交信する神様の属性の魔石や素材を置く場所だろう。そして、天板の上、中央には大きな扉がついた教会のようなものがあった。

 その教会の屋根の上には、ソモルンを抱えた創造神様がいて、教会の左右には雛壇のようになって、それぞれ創造神様を支える十柱の神々が五柱ずつ立っている。



 豪華絢爛だった。

 簡易祭壇なんて言っていたから、足がついたお盆みたいな者を想像していたのだが、全然違う物だった。むしろ、この島にある祭壇より豪華。そして、ソモルンもいた。

 ソモルンの弟がいないのは、情報が足りないからだろう。プモルン自体が、ソモルンだからか、超リアルだったのだ。だが今は、見とれている場合ではない。


 先ほどのメールに添付された、水属性の魔石を窪んでいる場所に置く。魔石が添付されたのを知ったのは、今だった。プモルンに聞いて、初めて知った。水神様は用意周到だったのだ。そこまで気を回せるなら、あのボロ家はないだろと思ってしまった。


 とりあえず、お金が足りることを祈り、お菓子を全種類二個ずつ購入。もう一柱、女神がいたはずだからだ。

 あとは、不可能はないと書いてあるが、こっちの酒は全く知らないから、ウイスキーとウォッカ、個人的に病気が分かる前まで、前世で好きだった自家製の梅酒を買った。まさか【あなたの家の自家製梅酒】なんて書いてある物があるなんて思わなかったが、確かに不可能はないのかもしれない。


 そして、購入した金額は、ゼロ。

 何故なのかと、不思議に思っていたら、クーポンって言う表示があり見てみると、【素敵な祭壇感謝クーポン】って書いてあった。確かに、素敵すぎるがいいのだろうかと、思いながら並べていると、後ろから声をかけられた。


「まだ食べるのか? 食いしん坊だな。おデブさんになってしまうぞ」


 と声をかけてきた、元祖おデブさん。

 その腕にソモルンを抱いて。

 ソモルンもグルグル鳴きながら、笑っている。


「違うよ。これは神様へのお供えだよ。俺らが食べてたのを見て、食べたくなったんだって」


「そうなのか。まあ、あれらはうまかったからな。仕方ないと思うぞ。それに、お世話になってるのだから、お供えも大事だよな。それにしても、すごい祭壇だな。ソモルンもいて豪華じゃないか。地下にあった船並みのお宝だな。どこにあったんだ?」


 ボムは、あの飛行船を相当気に入ってるようだった。気持ちは分かる。俺も早く完成させたいと思っているのだ。


「これはプモルンが造ったんだよ」


「プモルン? ……あぁ。ギフトの機能の一つをプチソモルンって呼んでたな。名前をつけたのか。それでこれを、そいつが造ったと。すごいな」


 ボムがプモルンを褒めると、自分と同じ姿だが、別の誰かが褒められているのが悔しいのか、グルグルッグルグルッ鳴いてる。


「ソモルンも妬くことがあるのか。別にソモルンがスゴくないと言っている訳ではないぞ。ただ、今回のお手柄はプモルンだっただけだ」


 ボムがそう諭すと、ソモルンは大人しくなった。うちの熊さんは、ただの巨デブの熊ではないようだ。だが、話題のプモルンは、素知らぬ顔していたのだった。


 そんなこともあり、ソモルンが落ち着いてきたところで、みんなでお祈りしてお供えを終わらせた。まさかあの祭壇の天板の上にある、教会の扉が開いて、物がを吸い込んで行くとは思いもしなかったのだが、無事に終わって一安心である。


 とりあえず、任務完了だ。

 お疲れ様。プモルン。




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