第十一話 我が家の食いしん坊
更新が遅くなり、楽しみにしていてくれた方には申し訳なく思います。
この話から文章の量が少しずつ増えて行きますが、読んでいただければ幸いです。
俺は、腕の中のソモルンを撫でながら、城に入って行く。相変わらず、モコモコモフモフしてて、可愛い。
その撫でている光景を、横にいる熊さんが羨ましそうに見てくるが、今までずっと抱いていたんだから、少しは我慢して譲ってほしい。しばらくは、俺がこのモフモフを楽しませてもらう。
とりあえず説明をしようかと思ったら、盛大に腹の音がなった。音の主は、我が家自慢のおデブさんだった。
この一年間は、肉を焼いただけだったり、魚を焼いたりしただけで、料理スキルを持っていても、レベルも真面に上がらないくらいの、料理と呼ぶのもおこがましい物しか食べて来なかった。
それでも加工することが新鮮なボムは、文句も言わずに食べていた。だがしかし、今回は素晴らしきギフトを頂いた。
実際に、今すぐ使える飲食関係は三つ。
不本意ながら、不可能はないと表示されている、酒屋とお菓子屋に、料理スキルとの統合のお陰でアンロックされていた、レストランがある。
前世を含めて、作ったことがあれば、お金を払って代わりに作ってくれるわけだ。ただ問題があるとすれば、食品スーパーがアンロックされていないため、材料も調味料も買えないし、持ってないことだ。
食品スーパーのアンロック条件は、Aランク以上の氷の魔石以上が必要というものだった。魔石以上が、どういうことなのかは分からないが、素材なら宝物庫にあるはず。
まずは、現在放置中の二人に説明して、待っててもらうことにした。
「というわけで、今回もらったギフトで美味しいものを食べようと思っているんだが、必要なものを宝物庫に取りに行ってくるから、待ってて欲しいんだ。待てるか?」
「本当にうまいのか? うまいものが食べられるなら待っててやってもいいぞ。なぁ、ソモルン」
いつの間にか抱きしめている、ソモルンに話し掛けながら、返事をしてきた。ソモルンも嬉しそうに頷いていた。
「じゃあ、食堂のテーブルを隅に移動させて、待っててくれ。すぐ戻るからさ」
「わかった。急げよ」
空腹だと不機嫌になるから急がなければ……。
急いでエレベーターもどきに乗って、地下へ。
片っ端から鑑定しながら探すこと数分、やっと見つけた。その目的の物は、かなりの大きさだった。これでもAランクしかないって、S以上はどうなるんだろう。魔物の個体差があるのだろうが、強い魔物は基本的に大きいそうだ。
そう思いながら、手に取った魔石は占いで使いそうな、水晶玉くらいの大きさだった。
あとは、お金をもらっていくことにした。
お金がなければ、何も買えないからだ。
これらを無限収納庫にしまっていく。
すると、今までどこにいたのか分からない、プチソモルンが目の前に現れた。
〈素材を使って、お店をアンロックするよ。お店を選んでね〉
これぞ、音声設定の効果だ。
大分イメージに近付いた。
まだ、ソモルン本人と話してないから、分からないが、おそらく近いと思いたかった。
それはさておき、食品スーパーを選択。
確認画面が出て、決定を押すと、店のシャッターが上がる映像が、画面に映った。内容は適当感がすごいのに、どうでもいいところは凝るようだ。
だが、このギフトを使えば、ボム達を満足させられるはずだ。おデブさんに拍車がかかって、さらにおデブさんになるかもしれないが、そこは聖獣だから大丈夫だと思うことに決めた。
そんなこんなで一階に戻ってくると、凄まじい音が聞こえる。猛獣でもいるのかってくらいの音だ。実際猛獣はいるが、早く行かなければならないことは、間違いないだろう。
「お待たせ。何食べたい?」
部屋に入るなり聞くと、二人揃って不機嫌そうに見てくる。ソモルン……。ボムに感化されすぎではないだろうか。そんなところまで似なくていいのだぞ。可愛い顔が台無し……ではなかった。そんな顔してても、ボムと違って可愛いかったのだ。
ボムも普段は可愛いのだが、不機嫌になると、額から眉間にかけての傷跡と相まって怖さが増す。獅子王神様と闘った勲章だと、本人に何回も聞かされたが、知らない者からしたら恐怖でしかない。
まぁそれはさておき、リクエストを聞くのが一番だと思ったんだが、出した方が早そうだ。
まず、生活魔法の清潔で部屋をきれいにし、ついでに俺含めた三人にも、魔法をかけた。ギフトの画面でレストランを開き、ステーキやハンバーグ、オムライスを注文していく。作ったことがある物しか頼めないが、食品スーパーには惣菜があるから、きっと大丈夫だろう。
惣菜は、肉団子や揚げ物、ポテトサラダなどを注文した。大量に注文して、最後にまとめて精算。支払い方法は、ストレージからの自動引き落としらしく、楽だった。
そして、精算後に配達って文字があったのだが、配達方法が分からなかった。疑問に思っていても仕方がないため、押してみることにした。すると、これから食事なのに微妙な光景が……。
プチソモルンの口が開き、魔法陣が展開。まさか、と思っていたそのとき、目の前に注文したものが現れた。ソモルンが口から雲を出していたのを見たからだろうか。そこまで真似しなくてもいいと思い、設定出来ないか確認してみることにした。確認してみると、設定することが出来たため、すぐに直すことにした。
設定後は、プチソモルンの顔を向けた方向の三十cm以内の範囲なら、好きな場所に出せるそうだ。
それにしても、プチソモルンだと名前を呼びにくいことに、改めて気付いた。丁度名前の設定画面も見つけたため、設定することにした。名付けは苦手なのだが、今回は短絡的だろうが思い付いた名前があった。
それは、『プモルン』だ。
口からの配達方法に一人衝撃を受けたことで、設定を直していると、うちのおデブさんと可愛い怪獣が、すごい勢いで咀嚼している。モグモグッゴクンッを繰り返していると、目で何かを訴えてくる。
もしかしたら、水が欲しいのかもしれない。
レストランで一番嬉しいサービスは、冷水がタダで好きなだけ飲めるということだ。生活魔法では限界があったからだ。
目の前に、水差しを二つ置いてやると、ゴクゴク飲むのだが、飲み終わった後も何かを訴えてくる。もしかして、おかわりが欲しいのだろうかと思い、リクエストを聞くことにした。
「何が欲しいんだ?」
そう聞くと、二人が指差したのは、やっぱりステーキだった。
「たくさんか?」
即座に首を縦に振り、肯定を表す。
追加注文の品を待ってる間に、他のものを食い尽くし終え、今か今かと待っている姿は本当に可愛いかった。本当の兄弟のようだったのだ。
ちなみに、この二人はフォークとスプーンを、器用に使って食事をしている。
「お腹いっぱいになったら、手をあげるんだぞ」
作りすぎても、ストレージに入れて置けば、時間経過がなくいつでも食べられるのだが、この後にもイベントがあるから、お金を取っておかなければいけないのだ。
「お待たせ。できたぞ」
注文をしてあるから、配達を全てプモルンに任せて、俺は前世で一番好きだった、だし巻き玉子を、マヨネーズに醤油をちょい足しして混ぜて作った、醤油マヨにつけて食べる。
食欲がない日でも、箸が進むくらい好きだったおかずをまた食べられるとは思わなかったため、感動してしまった。転生やギフトを含め、神様に本気で感謝した瞬間だった。
一人感傷に浸っていると、視線を感じた。
そして視線を向けると、手をあげる二人がそこにはいた。注文をストップして、今作ってる分はストレージにしまっておいた。こうしておけば、二人に子機をあげた後もそこから好きに取り出せるからだ。
無限収納庫は俺専用だから、二人には使えないのだが、ストレージなら子機を通せば、二人にも使えるのだ。しかも、違いは容量だけで、他は同じなのだ。使わない手はないだろう。
だが、ジッとこっちを見てる。
玉子焼きを食べたいのだろうか。
そう思い、玉子焼きを指差すと、コクンと頷く二人。食事が始まり、急に静かになったが、食欲には素直のようだった。
同じように用意してやると、いちいちつけるのが面倒なのか、上にたっぷりのっけてペロリと平らげた。そして、うまかったのか、数回おかわりして満足したようだ。
「うまかったぞ。もう生肉は食えないかもしれないな。ちなみに、ソモルンは食事をしなくても大丈夫だそうだが、これから毎日食べるそうだ」
どうやらボムは大満足のようだ。
「うまかったならよかった。だが、人によっては、これよりうまいものがあるのだが、まだ食べられるか?」
「何? まだうまいものがあるのか? それは食べるしかないだろ!」
さすが食いしん坊。
「では、早速」
目の前に、まずは定番のケーキを各種置いていく。もちろん二個ずつだ。ショートケーキにチョコ、抹茶にモンブラン。プリンも置いてみよう。ゼリーもだ。とりあえず、これだけ。
最初は恐る恐る匂いを嗅いでいたり皿を持って見たりしていたが、意を決して一口。それからは早かった。満面の笑みを浮かべながら、バクバクと。
二人のお菓子の趣味は違ったらしく、ボムは抹茶ケーキのおかわりを所望し、ソモルンはプリンが気に入ったみたいだ。
ちなみに、抹茶ケーキにはあんこがのっていないやつだったから、食べやすかったかもしれない。もちろんおかわりを出してあげて、食後のお茶を飲んでいると、プモルンが近付いてきた。
いつもどこにいるのか不思議に思っていたのだが、小っこい家みたいのをストレージから出して待機しているようだ。
それにしても、どうしたんだろうと、疑問が湧いたのと同時に、不安も感じるのだった。
面白いと思ってくださいましたら、感想、ブックマーク、評価をお願いします。
やる気がみなぎります。




