表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

出会い





春。


……といってもまだ肌寒い今日、真新しい制服を着た新入生たちが門をくぐってこの学校にやって来た。



周りに見知った顔はない。



__よかった、同じ中学から来た人はいないっぽい



そんなことを考えながら教室に入って席に着き、キョロキョロとあたりを見渡してみる。



ほとんどが不安げな表情を貼り付けておとなしく座っているか、友達とヒソヒソ話しているかのどちらかである。




だが、ここにいるクラスメートよりも希望を抱いて入学したのは確かだ。

俺には目的がある……それは絵を描くこと。



この学校には名の知れた画家でもある先生が勤務していると聞いた。

その先生がいたから、ここに来ようと思ったんだ。



それにしても綺麗な学校だ。

机もガタガタしてないし、床も真っ白で……


考えを巡らせていると、




__ガラッ





教室の扉が開き、若い、大学を出たばかりという出で立ちの先生が入ってくる。

ひそひそ声がピタリと止み、全員の視線が一点に集まる。




「おはようございます。

1年間みなさんと一緒に過ごすことになりました、担任の黒田悠と申します」




当たり障りのない挨拶をして、コホンと小さく咳払いをする。




「僕も皆さんと同じ一年目で、右も左も分からない若造ですが、一緒に頑張っていきましょう!」




緊張しているのか、真顔で前を見つめたまま誰も返事をしない。

先生が気の毒になった俺は、少し微笑みかけた。


……伝わったかどうかは分からない。

だが少しだけ、ほんの少しだけ先生の肩の力が抜けたような気がした。




その後、迷子になりそうな校舎内を通って入学式の会場へ向かった。



校長先生や来賓の方の長い話を耐え抜き、歌よりピアノの方がよく聞こえる校歌を聞き、約2時間後。



ようやく式を終えた俺たちは、再び長い廊下を列になって歩いていた。




そのとき、目の端にちらっと青いポスターのようなものが写った。




__『来たれ、軽音部。』





一瞬で内容までよく見えなかったが、確かに白字でそう書いてあった。


帰りにちゃんと見に来よう、なくなるものじゃないし。





……しかし、このポスターが偶然とはいえ目に止まったことは、もしかしたら運命だったのかもしれない。



新しい生活が、始まった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ