表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/46

第9話 槍…難しいな in 異世界

お待たせ致しました!よろしくお願いします!

 

 ドンドンドン!


「一縷君、起きてるかしら?」


「は…い、今起きました…」


 頼んでおいて良かった。扉の音がするまで完全に寝ていたから、起こされなかったらまだまだ寝ていた可能性しかない。


「そう…食堂で朝食の準備はして貰っておくから早く来るのよ」


「あ、はい…なるはやで行きます…」


 本当なら二度寝と洒落込みたい所だが今日はダンジョンにも行く日という事で、ゆっくりと体を目覚めさせていく。


「服は…このままでいいか。顔洗ったら行こう…」


 欠伸をしながら階段を降りて、食堂まで来た。既に食べ始めてる白金さんとルフィスを見付けて朝食が置かれている隣の席に座る。


「おはよう」


「早く食べないと冷めるわよ?おはよう」


「おはようございます、一縷さん!」


 野菜と何かの肉が挟まれたサンドイッチ、スープと果物が今日の朝食。俺は早すぎないペースで朝食を食べて、今は果物を食べている。


「まずは昨日の衛兵さんの所でいいんだよね?」


「そうね、そしたらその足で買い物に行くわよ。そしたらダンジョンね。」


「この宿はどうするんですか?」


「そうね、宿は戻って来る度に新しく取ろうと思うわ。もしかしたらダンジョンに何日も居ることがあるかもしれないからね」


 ま、節約しないといけないしそれがいいんだろうな。そういう判断は白金さんに任せるのがうちのパーティーの暗黙のルールだ。



 ◇◇◇


「おはよう。旅の疲れは取れたかい?」


「えぇ、体調もバッチリです!」


「それは良かった。さ、昨日の部屋で盗賊達について話をするからついてきて」


 俺達は朝食の後に荷物を持って報酬を受け取りに来ていた。昨日事情聴衆された部屋に案内されて椅子に腰を下ろした。


「昨日の盗賊達だけど、被害にあった人達もそれなりに多くて賞金がかけられていたよ。まずはその賞金で金貨5枚だ。」


 おぉ~!金貨5枚!50万か!ありがたい報酬だな。


「盗賊達だけど、奴隷として売られる事になった。力のある男手だから高く売れると予想して、全員で金貨20枚が報酬として出ているよ」


「え!こんなに貰っちゃっていいんですか?」


「もちろん!正当な報酬だから受け取ってもらわないと、こっちが困ってしまうよ。たしか、ダンジョンに潜るんだよね。食料を買ったり、素材を入れる大きめのマジックバックなんかを買うと良いんじゃないかな?」


 お金の使い道は白金さんに任せるけど、お小遣い上がったりしないかなぁ…。


「短いけど話はこれくらいだよ。何か聞きたい事はあるかな?」


「そうね…。オススメのお店を教えて貰えると助かるわね」


「道案内をする事もあるからね、大抵の場所は分かるよ!どんなお店を知りたいんだい?」


「食品関係のお店、ダンジョンで使える道具が売ってある店。あとは、薬関係のお店かしらね。…一縷君、ルフィス、他に何か思い付くかしら?」


「武器は?予備の武器とか」


「私達の使ってる武器はそこそこ頑丈だからまだ大丈夫だとは思うけど…そうね、武器屋にもその内行ってみましょうか」


「詩葉さん、飲み物はどうするんですか?」


「それは宿の井戸から貰ってくる予定よ。でも、その容器は買わないといけないわね。」


「それじゃあ、店の名前とだいたいの位置を書くからちょっと待ってね………はい、これ」


「助かったわ。それじゃあ、私達はもう行くわね」


「気を付けるんだよ?油断すると足元を掬われるからね」


「はい、気を付けておきます」


 衛兵さんはいい人だったな。部屋を出て、白金さんを先頭にさっき書いて貰ったメモを見ながらお店へと向かっていく。



「最初はどこのお店?」


「そうね、このメモを見ると…食料、道具、一旦宿で水を汲んで、薬屋のルートが1番最適かしらね。」


「ふむふむ。じゃ、買い物は任せるよ白金さん!」


「情けないですが、それが1番なんですよね…私と一縷さんは荷物持ちですね」


 最初のお店でそのまま食べられる干し肉やパン、それとスープの出汁になる乾燥した昆布みたいなの。他には果物を幾つか購入した。


「ダンジョンで泊まるのが1日ならこんなものかしらね。さ、次行くわよ!」


 買い物が楽しいのか、白金さんの調子が良さそうでルフィスの調子も良さそうだ。


「道具屋はちょっと相談しながら買うわよ。私だけだと道具に偏りが出てしまうもの」


「了解。そうだ…マジックバックって幾らくらいするの?自分の荷物くらいなら今持ってるやつで十分だけど、パーティーの荷物ならもう少し大きいのが欲しくない?」


「店によって差があるから何とも言えないけど…1番性能が良いものなら今日の報酬じゃ足りないわね。流石にそんなものはまだ買うつもりも無いけどね」


 朝に受け取った今日の報酬って計60万だよな…それで足りたいとか凄いのが在るんだな…。


「今日はとりあえず、料理の道具に食器類。テントにランタンにロープとか。後は店内を見渡して必要そうな物を買って、最後にマジックバックを選ぶわ」


「テントは…俺は寝袋みたいなので良いから1つで良いな」


「大丈夫よ、最初からそのつもりだから」


 あ…はい。自分から言っといてあれだけど、会話をもう1クッション挟んで欲しかったな。「ホントにいいの?」とかをさ。


「ダンジョンによっては寒い場所とか暑い場所もあるからその時は流石に対策しないといけないけど…ここのダンジョンはそう言った話も聞かないし、平気だと思っての返答だからね。」


「一縷さんが寂しそうな顔をして慌ててフォローを入れましたね…」


 え?俺ってばそんな顔してた?だとしたら少しハズいな…。


「ほら、行くわよ!一縷君、遅れないでね」


 道具屋では、先程言っていた道具の他に小さめの魔導コンロと湯沸し器、ゴミを捨てる為の布袋を数枚購入した。初期費用は掛かるのは仕方ないよな…お小遣いの分は余らないだろうなぁ。


「やっぱり、マジックバックが1番値段が高かったね」


「これだけで金貨2枚ですもんね…」


「ま、必要経費と思って割りきりなさい。」


「あ、荷物…と言ってもマジックバックだけど、俺が持つよ」


「無くさない?」


「大丈夫ですか?無くしませんか一縷さん…」


 信用が無い…悲しみの雨が目から降りそうだけど何とか堪えてバックを肩から掛ける。


 道具屋から出発して泊まっていた宿の井戸を拝借し、容器に飲み水を十分に入れて薬屋へやって来た。


「薬屋…と言うと、解毒薬とか回復ポーション的なやつ?」


「即効性を期待してるなら裏切ってしまうと思うわよ?解毒薬と言っても効果が現れるまで体が痛かったりするし、回復ポーションなんて無いわ。傷口に塗る痛み止めと止血剤が合わさった物みたいな感じかしら?」


 普通…飲んだら傷が消えていくとかさ。いや、普通とか分かんないけどさ…ステータスにHPの項目があって、回復ポーションが無いってどういう事だよ!?


「まさか…魔力回復ポーションも…」


「一縷さん!それならありますよ!」


「何でだよ!」


 ルフィスの体をビクッとさせてしまったが…白金さんはどうやら理解はしてくれてるみたいだけど、でも俺の反応が普通の反応だと思う。


「ほら、ちゃちゃっと買いに行くわよ。一縷君、ルフィス、薬は念の為に買うのよ?相手の攻撃は基本的に避けるか武器で対処する事。魔法なら尚更、当たれば死ぬ事だってあるの。実力が拮抗しているならお互いに傷付く事もあるけど…それでも当たらない事を考えて」


 漫画やアニメの主人公は傷付いても痛みを我慢して立ち上がる、そんな格好いい姿をしてるけど……俺は白金さんの言う当たらない事を徹底しよう。昔から戦っていた訳でもなく、武術を習っていた訳でも無いのだ。痛みに慣れてい無いからな。



「分かった」


「が、頑張ります!」


 白金さんが待っといてと言ったので俺とルフィスは薬屋の前で待っていると、店に入って約1分。白金さんが出てきた。


「さ、買い物も済んだし行きましょう!」


「ね?早くない?店に入ってから出るまで早くない?」


「買う物は決まってるんだから無駄な事はしないのよ。小さい事は気にしないで槍のメンテナンスでもしときなさいよ」


「う、うす…」


 今回は主に槍での戦闘をするように言われているから頑張んないとな…


 ◇◇◇


 ついにダンジョンまでやって来た。正確にはダンジョンの入口…辺りにある冒険者や屋台でいっぱいになっている所にだ。


「こんだけ人が居て、最後のボスが倒されて無いって不思議だよな」


「周りから聞こえてくる声ですと、10階層や…下まで潜って25くらいを探索しているみたいですよ?」


「下まで行けるのは100人居たら1人くらいなものよ。一縷君とルフィスにはその1人になって貰うんだからね?気合い入れなさいよ」


「了解。それで…1階層とかは飛ばすんだったよね?どの階層辺りから進めて行くの?」


「とりあえず10階層のボスは越えるわよ。その後は敵のレベルを見ながらね。一縷君の槍やルフィスの魔法でも通じるくらいの敵で熟練度を上げていくわよ」


 俺とルフィスは頷いてダンジョンの中へと足を進めていく。最初は飛ばすと言っても敵が現れたら倒していく予定だ。一応、経験値にはなるからな。


「まぁ…ゴブリン1匹じゃ大差ないよな…」


「ほら、下に降りる階段があったわよ!」


 こんな感じでゴブリンやスライム、そこまで大きくない狼など弱いモンスターを俺とルフィスで狩りながら俺達は9階層から中ボスのいる10階層へと降りてきた。



「10階層だから中ボスかな?何が出るんだろ」


「中ボスはそこに辿り着くまでに会ったモンスターの強化版ってパターンが多いわよ。例外もあるから、入ってみないと分からないけどね」


「ルフィス、頑張ろうな。援護は任せた」


「はい!頑張りましょうね一縷さん」


 この扉の先に中ボスか。


「ボスを倒すとするじゃん?その部屋を出ると、すぐ復活するの?」


「一縷君、前にソフュール王国のダンジョンを踏破した時に見てなかったのかしら?中ボスを倒して次の階層に降りると1階層に戻るワープゲートが現れるのよ。つまり、1階層に戻るには11階21階31階層に戻ればいいという事よ」


 あの時は白金さんを追うことで精一杯だったからな…まったく気付いて居なかった。1階に戻る時にどうするか気になっていたから解決して良かった。


「そうだったんだ、ならじゃんじゃん進んじゃっても大丈夫そうだね!ルフィス、扉を開けるからね。行くぞ!」


「はい!」


 少し重く硬い扉を押して開き、中に入るとそこにはゴブリンと狼型のモンスターがうじゃうじゃ居た。これはまるで…


「モンスターハウス?」


「一縷君、槍を振るうスピードを上げなさいよ!対処出来なくなるわ。ルフィスは離れて一縷君のフォローよ!今回は私がルフィスに寄ってくるモンスターを排除するから二人共、気合いを入れなさい!」


「了解だ!一突一死を目指して行くぜ!」


「私も!火よ!」


『ぎゃぎゃぎゃ!』

『グルゥゥゥゥ…』


「はっ!…はっ!はっ!はぁ!!」


「穿て火の矢!火の矢!一縷さん、左右の的は貫きます!」


「頼む!……もっと速く突け!叩け!貫け!」


 正面に死体が溜まったら少し動いてまた、ゴブリンの頭や心臓を貫いていく。狼の飛び付きには力任せに叩き落として先端で突き刺す。


「白金さん!あと、どれくらい!?」


「半分…ふっ!…って所かしら?」


 白金さんの所へも何体かモンスターが向かってしまっているな…。魔法を使えたら良いんだけど、槍でって言われてしまってるからな~。もっと速く効率的に…だな!


「ぐぅ!?うらぁ!!」


「一縷さん!大丈夫ですか!?」


「ただの体当たりだから平気だ!あと少し、行くぞルフィス」


「はい!光よ!火よ!」


 ルフィスが少し後方にいる敵には光の目眩ましを、手前の敵には火で援護をしてくれて戦いやすくなった。


『ぐぎゃ…ぎゃ…』


「はぁ…はぁ…っく…はぁ…終わった…」


「お疲れ様一縷君。怪我は?」


「大丈夫だ…シンプルに疲れただけ」


「そう。今の戦いだけど、点数にすると40点かしらね?」


 おぉ…う。低い。いや、まぁ素人だし低いのは理解できるけど…さては、疲れた体に追い打ちを掛ける様に精神まで疲れさせるつもりか?


「良い所と悪い所、どっちから聞きたいかしら?」


「あ、じゃあ悪い方から」


「そう。1つは攻撃の後の次に移るまでがまだぎこちない事ね。2つ目は槍を先端の方しか扱いきれてない事。3つ目は視野が狭くなってる所かしらね。まぁ、どれもこれからの経験で成長する部分だから頑張れば良いわ」


「ちょっと…はぁ…ふぅ…詳しく説明…して貰える?」


「見たまんまの事を言うわよ。まず攻撃の後だけど槍なら特に突いた後、叩いた後の動きを滑らかにしないといけないわ。間を詰められたらそれだけで不利になるからね。一縷君は、槍を突いたら戻して"溜め"を作ってまた突くけど、その一瞬の溜めは戻す事で済ませる様に練習した方がいいわね」


 確かにゴブリンを突いた後に槍を引いてグッとしてから突いていたな…。その間に敵は半歩動いているからな…


「思い当たる節がありまくる。戻す動作がそのまま溜めに出来るよう頑張るよ」


「2つ目だけど…一縷君、槍は確かに先端の鋭い事が特徴で攻撃に使える部分だけど、柄の部分だって十分に武器として使えるのよ?棍棒的な扱い方も学ぶべきだと思うわ。それだけで攻撃の幅が広がるからね」


「うんうん…何となくイメージは出来た。もっと槍を振り回せるようにならないとだな」


「最後のは言わなくても分かるわね?」


「あ、うん。横からの攻撃に反応が遅れたからね。どうしても目の前の敵を見ちゃってね」


「こればっかりは慣れるしかないわ。頑張りましょう。それで、良いところだけど…生きてる事よ。」


「あぁ…たしかに。戦闘での良い所を突き詰めればそれだよなぁ」



「でも、一縷さん凄かったですよ!」


「ありがとうルフィス。ルフィスの援護は助かったよ!後半の光魔法のお陰で対処する敵のペースも落ちたから戦いきれた」


「確かに、いい判断よルフィス。あなたは魔法を発動しながら迫り来る敵に対処する練習ね」


「わ、分かりました!」


 俺の呼吸が整うのを待ってもらってから俺達はさらに下の階層へ向けて出発した。


 ◇◇◇


「ふぅ…やっぱ上の階層と違ってくるな。パワーも耐久力もスピードも」


 俺達は中ボスを倒してから更に下へと進み、15階層まで降りてきていた。


「それに、10階までと違ってモンスターが3、4…多いときは5匹とかで行動してますもんね」


「今はまだ対処出来てるけど、疲労が溜まったらヤバイかもな」


 俺とルフィスは白金さんに言われた事を直そうと一戦一戦を考えながら戦っていた。敵の強さと、そのせいもあってか疲れが溜まり始めている。


「なら、少し休憩にしましょうか。自分が疲れてる時の動きも覚えて欲しいけど…それは基礎が出来てからでいいわ。見張っておくから二人は休みなさい」


「お願い、白金さん…ふぅ」


「今は何時くらいなんでしょうか?」


「ダンジョンに入ったのがだいたい9時過ぎくらいだから…もうお昼は過ぎちゃったくらいかも?」


「だいたいそのくらいよ。二人は何か食べておいてね、この後も動くのだから」


「白金さんは?」


「私は二人が動いてる時に頂くから気にしないで大丈夫よ」


 白金さんに見張りをお願いしてお昼に干し肉と果物を食べていると通路の曲がり角から3匹の狼が現れた。


「座ってて大丈夫よ、一縷君。まぁ見てて」


「わ、分かった」


 白金さんが剣を抜き、歩き出した。狼達は白金さんに狙いを定めたようで一斉に走り出す。


『グルォァァァ!』


「ふぅ……。はっ!!!」


『グラァ…ァ…』


「は、速い…」


「一縷さん…私…見えなかったです」


 それは俺も同じだ。白金さんへ向けて飛び付いて白金さんが剣を正面まで上げた所までは見えた。だが、気付いたら狼は切り捨てられ、白金さんは剣を鞘に戻していた。



「まぁ、剣じゃこんなものよね…」


「白金さん!すごい!剣筋っていうか…とにかく見えなかった!」


「ふっ…私はまだ何回か進化するわよ?」


「マジかよ。白金さんの強さが見えて来ねーな」


「効率的に動いてステータスに任せて動くとあれくらいは出来るようになるわ。一縷君、ちょっと槍を貸して貰えるかしら?」


「槍を…?どうぞ」


「槍でさっきに似た動きをすると…ふぅーっ…ハッ!!」


 突き…今、何回突いた?俺の目には1回突いて引いてる間に残像が何回か見えた気がするけど…


「4回突いているわよ。うーん。槍も良いわね…刀を手に入れるまでは私も剣より槍にしようかしら?」


「最低でも今の動きに追い付かないと行けないのか…。ルフィス!休憩終わり!」


「すいません…まだ食べ終わってなくて、干し肉が固くてしょっぱくて美味しくないですぅ…」


「確かにしょっぱくて固い何かだよな…。果物は?」


「食べました…むしろそれしか食べれてません」


「無理して食わなくていいんじゃないか?」


「でも、勿体無いですし…。」


「ルフィス、ならそれは私が貰うわ。代わりに夜に食べるご飯を少しあげるわ」


「ありがとうございます、白金さん!」


「ほら、すぐに準備しなさい。訓練の再開よ!」


 俺とルフィスはこの階層で訓練を再開させた。3匹程度なら俺かルフィスどちらかで倒し、4匹5匹になると二人で倒すようにしていった。


「よし、安定してきたんじゃないか?ルフィス、魔力はどうだ?」


「1番弱い魔法を使ってますが…レベルが上がったお陰か、威力も上がってるのでこれで十分ですし、まだまだ大丈夫ですよ」


「じゃあ、1階層分したに降りましょうか?」


「賛成!次は16階層か。どんな敵が居るかな?」


「流れからすると、この先もゴブリンや狼じゃないですか?」


「数が増えるのかな?それはそれで厄介だからな…頑張ろうルフィス」


「はい!」



 ◇◇◇



『ブゥオオオオオ!!』

『グギャギャ!』

『グギャギャ!』



 16階層に降りる階段を見つけ、降りていくとダンジョン自体の作りは変わらないのに何かが違うように感じていた。その原因を探る様にキョロキョロと辺りを見渡しながら進んで行くと、冒険者が戦っているような音が聞こえ、曲がり角から覗いてみた。


「あれは…豚…人?褐色の豚人(オーク)?」


「オークですね…しかも周りにはゴブリンを引き連れてますね」


「よく見なさい。ゴブリンの中に1匹だけ違うのが居るでしょ?」


「どれ…あ、あれか?なんかゴブリンの中で少しだけ小綺麗な奴」


「そう、あれはたぶん魔法を使う種類よ」


「ゴブリンも使えるのか!?」


「このくらいの階層だと恐らく初級の基本的な最弱魔法しか使えないと思うけど、それだけでも少しは厄介になるわ。加えてメインの敵はオークだしね」


「オークですか…」


「ん?ルフィス、オークがどうかしたのか?」


「あ、いえ…オークとゴブリンは世の女性から嫌われてるんですよ」


「一縷君もだいたい予想はできるでしょ?」

 

 イメージ通りでいいと言うなら…まぁ、対姫や対女騎手の魔物だもんな。恐らく地上でも村から女の人を拐ったりするんだろうな。


「理解した。ルフィス、慣れるまでの最初の戦闘は後ろから魔法を使うゴブリンを優先で周りのゴブリンを倒してくれ。俺がオークをやる。慣れて来たら交代もするけどね」


「ありがとうございます一縷さん。冒険者の戦闘をもう少し見させて貰いましょ?」


「あの人達は4人パーティーだな。盾職、攻撃、魔法使い、荷物持ち…かな?バランスは良さそうだね」


「そうですね。オークの攻撃を盾の人が止めて、その隙に攻撃して…魔法使いがゴブリンの討伐と牽制をしてますね。」


「ゴブリン達の動きはさっきと余り変わらないみたいだな。オークは…ボロボロの剣を振り回してるけど、パワーがあるな。白金さん、ああいうパワーのある相手ってどう戦えばいいの?」


「スピードで上回ってるならそれを活かすべきね。パワーで勝てない相手の攻撃は受けない様に注意しなさいね。回避するか受け流すかよ。オークはあの脂肪だから体を斬っても致命傷にはなり難いわ。突き刺して体力を削るか、一撃で心臓や頭を狙うかね。」


「なるほど。お、攻撃担当の人が首を斬ったな。」


「魔法使いの人もゴブリン達にトドメをさしたみたいです。結構参考になりましたね!」


「離れるわよ。こんな所でこそこそ様子を見てたら怪しまれるわ」


 俺達はその場を離れてオーク達を探し始めた。耳を澄ませて近くに居ないか、曲がり角で出くわさないかを警戒しながら歩きまわり10分近く探してようやく見つけた。


「ここを曲がった所にオーク1とゴブリン4、魔法ゴブリンが1だ。」


「分かりました。では私が魔法ゴブリンを仕留めます!」


「了解。ルフィスの魔法であのゴブリンを倒したら俺はオーク目掛けて走り出す。周りのゴブリンに牽制をお願い」


「はい!では、準備は大丈夫ですか?」


「おう!いつでも大丈夫!」


「行きますよ。貫け!火の槍(ファイヤースピア)!」


 矢じゃなくて、槍か。鋭く速い攻撃魔法が魔法ゴブリンに…当たる!今だ!!


「行くぜ!」


 俺はオークへと走り出す。急に近くにいたゴブリンが燃えた事でオークもその周辺のゴブリン達も混乱しているようだ。


「チャンス!……っはぁ!!」


『ブォォォォォォ!?』

『ギャギャ!?』


 さっきの白金さんの動きを思い出せ。速く、鋭く、突き刺せ!


「はあああ!!」


『ブゥ…ブゥオオ…』


「穿て火の矢!!」


『ギャギャ…ギャ…』


「一縷さん、ゴブリンは終わりました!」


「ありがとう!」


『ブゥオオオオオ!!』


「遅い!」


 ブゥン…っと体の横をオークが振った剣が通過し、がら空きになったオークの顔に槍を突き刺す。


「ふぅ…。最初の攻撃で仕留められないのか。耐久力が凄いな。でも、奇襲なら倒せるな。白金さん、ルフィス、終わりましたよ!」


「お疲れ様です。倒せましたね」


「ルフィスの援護も良かったよ。魔法の命中力が良いんだな」


「ありがとうございます。外さなくて良かったです!」


「二人共、お疲れ様。一縷君、オークと対峙してどうだった?」


「白金さんの言うとおり、急所を突かないと耐えられて反撃されるね。奇襲で足、その後に胴体を突いたけどまだ立って反撃されたし。まぁ、スピードはそうでも無かったかな。冒険者達の戦いを見てて良かったよ」


「そこまで分かってるなら私から言うことは特に無いわ。油断しなければ問題無さそうね」


「次はルフィスが戦ってみるか?」


「ルフィスならすぐに倒せるわよ?オークは魔法に対してはそこまで強くないのよ。物理には強いのだけどね」


「敵によってあるんだそういうの。じゃあ、ルフィスのレベル上げに丁度いいな!ルフィス、俺がゴブリンを相手するから、魔法ゴブリンだけ倒したらオークの相手をしてくれて」


「分かりました!挑戦してみます!」


 オークを探して再び歩き、ようやく見つけたと思ったらオークが2体と魔法ゴブリンが1体というパーティーだった。


「まぁ…そういう事もあるのか。1体だけとは限らないしな」


「一縷さん、どうしますか?」


「やろう。さっきと同じように魔法ゴブリンを倒したら、1体は俺が引き付けるからもう1体はルフィスが相手してくれ。俺はやられない様に防戦で時間を稼ぐから、1体倒せたらその調子でこっちも頼む」


「分かりました!ふぅ…。行きます。貫け火の槍!」


 ルフィスが魔法を放ち、魔法ゴブリンに直撃する。今度は走り出さず、驚いてるオークの前に普通に現れる。


『ブゥオオオオオ!!』

『ブォォォォォォ!!』


「一縷さん、1体お願いします!」


「任された!行くぞ豚野郎!」


 2体とも俺の方を目掛けて来るが、2体の内の右側の奴にルフィスの魔法が飛んでいき注意を引き付けていた。俺は左側の敵を引き付ける為にそっちに走り出した。


『ブォォォォォォ!』


「…っと!危ない。防がずに回避か受け流さないと。せいっ!」


『ブゥゥゥ!!』


 オークは錆び付いた剣を上から振り下ろし、横に薙いで攻撃をしてくる。俺はそれを槍で逸らし、下がって回避したりして当たらない様に動き回る。


「当たれ!火弾撃(マルチバレット)!」


『ブゥオオオオオ…オオ…』


 ルフィスの方からドンという音が2、3回聞こえた後に静かになった。倒せたのか?



「やりましたよ~一縷さ~ん!隙をついてこちらへ来て下さい!魔法放ちます!」


「了解だ!……うっし!逃げろー!」


「当たれ!火弾撃!」


 俺の後ろに居るオークに向かって火の弾が銃弾のように弾き出された魔法が飛んでいく。当たると同時に先ほど聞こえた音が鳴り響き、オークの叫び声が聞こえて静かになった。


「やるじゃん、ルフィス!」


「はい!火の矢、火の槍よりは消費しますが攻撃力の高い今の魔法で倒せるみたいです!」


「良かったわよルフィス。一縷君もちゃんと戦っていけるみたいね。」


「時間は掛かりそうだけど、何とか1対1なら大丈夫そう」


「二人共、ステータスは伸びてるんじゃないかしら?」


 そうだな。この辺で確認しておくか。


「「ステータス!」」


 ━━━━━━━━━

 イチル キリシマ Lv23


 HP 870/960

 MP 7400/7400


 STR 90

 VIT 84

 DEX 91

 AGI 106

 INT 64

 LUK 59


 スキル

 魔力制御 Lv1

 槍術 Lv2

 ユニークスキル

『消滅魔法』


 称号

『消滅の勇者』

『救う者』

『幼女キラー』

 ━━━━━━━━━


「おぉ、レベルとステータスの値が少し上がってる!」


「順調なようね」


 ━━━━━━━━━

 シルフィス ソフュール Lv18


 HP 550/550

 MP 320/1010


 STR 58

 VIT 66

 DEX 67

 AGI 66

 INT 59

 LUK 70


 スキル

 魔力制御 Lv4

 火魔法 Lv3

 光魔法 Lv3

 水魔法 Lv2


 ユニークスキル



 称号

『孤独な王女』

 ━━━━━━━━━━


「わ、私も上がってます!多分、勇者のお二人には届きませんが少しはお役に立てる筈です」


「ルフィスには十分助けて貰ってる。一緒に白金さんを目指して頑張ろうぜ!」


「ステータスだけが全てじゃないわ。戦術や技。ステータスには現れない所だって重要よ。…でも、頑張っているわねルフィス」


「えへへ。ありがとうございます!」


 うし、順調に成長しているみたいだし、この調子で頑張りますか!


「今日はそろそろ夜営の準備に入りましょう。丁度いい行き止まりを探しに行きましょうか。」


「了解!」


「ふぅ…そういえばお腹も空きましたね」


 俺達はテントを設営出来る場所を探して歩き出した。




評価や感想…レビューにブクマもお待ちしております!(´ω`)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ