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第8話 商業の国だよ in 異世界

お待たせ致しました!よろしくお願いします!

 

「次の者は前へ!」


「やっと順番が回って来たな。もうお昼ぐらいかな?腹減ったぞ…」


「そうですね、私もお腹ペコペコです」


「街に入ったらお昼にしましょうか」


「荷物検査を…何だ?そのロープの男達は?眠っているみたいだが…」


「盗賊よ、教われたから返り討ちにして運んで来たわ。幾らで引き取って貰えるのかしら?」


「盗賊か…詳しい話を聞きたいその目は大丈夫なのか?もし、大丈夫ならこっちの部屋まで来て事情を聞きたいんだが……」


「この目は別件だから気にしないで」


「そうか、ならいいんだ。おい、俺は少し抜けるから戻ってくるまで任せたぞ!」


「はっ!了解であります」


 他に目立った荷物も無いことでそのまま通して貰った。門番をしていた衛兵の後を追て行くと、小部屋の扉の前へ案内されて盗賊を一緒に荷台なら下ろした。衛兵が盗賊達に1人1人真っ黒な腕輪を付けて部屋の扉を開けて言った。


「すまない、こいつらを別の部屋に運んで行くからこの部屋に入って少し待っていてくれ」


「運ぶの手伝いましょうか?」


「そうだな、応援は呼んだが男手は欲しい。お願いしていいだろうか?」


「大丈夫です。…じぁ、白金さん達は待っておいて」


「えぇ、行ってらっしゃい」


 俺は衛兵と盗賊を引きずって運びながらちょっと聞いてみる事にした。


「すいません、この腕輪って何ですか?片腕に着けてるやつです」


「これを見るのは初めてかい?これはね、犯罪を犯した者や、今みたいに事情を聞く前に拘束しておく時に使うもので体内の魔力を乱して魔法を使えなくするものだ」


「奴隷に着ける物とは別なんですか?」


「そっちもこっちも闇魔法が付与されてる物だけど奴隷に着ける物ほどこっちのは拘束が強くないよ」


「魔法主体じゃなくて、格闘タイプだったらあんまり意味がなさそうですね」


「相手の体格が良いときは更にロープで手足を固く縛ったりするけど、こいつらみたいな奴なら腕輪と足を縛るくらいで十分さ…おし、この部屋にまとめて入れとくから扉を開けてくれ」


「分かりました…鉄の扉って重いですね」

 

「……おし、鍵を掛けるから閉めてくれ。…ありがとう。よし、戻ろうか、そしたらここに来るまでの経緯を教えてくれ」


 俺と衛兵は白金さん達が入って行った部屋まで戻った。さっきの盗賊達にも話は聞くらしいが8割方は俺達の話で判断するらしい。ほとんどの盗賊達は言い逃れしようとするかららしい。


「じゃあ、話を聞かせて貰おうかな?」


「はい、僕達はモータルから護衛を兼ねてここまで来たんですが…その護衛対象がどうやら盗賊のリーダーだったらしく、あそこの森の中程で盗賊の仲間達が出て来て襲われたって感じですね。」


「なるほど、護衛のクエストって事は君達はCランクなのかな?」


「あ、いえ、僕達はFランクでして…このダルタス国に来たくて自分から売り込んだんですよ」


「Fランク!?本当に?盗賊の事は抜きにしても護衛中魔物に教われたりもしただろ?」


「えぇ、まぁ。でも、こうやって盗賊も返り討ちにしてここに居ますしね。…どうやら、モータル辺りでCランクに上がったばかりの冒険者を狙って同じ手口で何度かやってるみたいでしたよ?」


「そうか、経緯は分かった。この街にはしばらく居るんだろ?」


「はい、ダンジョンを攻略してみようと思いまして……」


「この国のダンジョンは未だに最下層のボスが倒されてないって話だ、頑張ってみるといいよ。明日には盗賊の話も聞いて報酬も出ると思うからまたこの部屋に来て貰えるかな?」


「朝ですか?昼ですか?」


「朝で大丈夫だと思う、早すぎると困るけど普通に朝食を食べ終わる頃で大丈夫さ。よろしく頼むね」


「分かりました、では、また明日伺います」


 事情聴取も簡単に終わり、やっとゆっくりと出来そうだ。


「白金さん、これからどうするの?」


「お昼ご飯にしましょうか。ギルドに併設されてる所でいいかしら?」


「私は大丈夫ですよ!」


「俺もどこでもいいよ…馬ってどうするの?路上駐車って大丈夫な感じ?」


「私が前に来た時はどの街にも馬車を預かってくれる店があったんだけど…ルフィス、今も在るかしら?」


「あるはずですよ!馬を扱ってる店で一時的に預かって貰える筈です…お金はかかりますけどね」


「ギルドの前にそっちで馬を預けましょうか。一縷君、場所聞いてきてちょうだい。」


「あいよ!」


「白金さん、一縷君で大丈夫何ですか?」


「おっと、ルフィス……言ってくれるじゃないか?」


「あ、いえ、そういうアレじゃなくて……いや、そういうアレなんですけど……」


「成功した体験をさせないと成長しないものよ。頑張って来なさい一縷君」


「お任せを!」


 さて、誰に聞こうか…散歩してるお爺さん、イチャイチャしてる若いカップル、買い物に来てる主婦に物を売ってるオヤジ。…声を掛けるならやっぱり可愛い子しかないだろ!よし、あの子に決めた!


「詩葉さん……少し止まってたかと思ったら可愛らしい女の子の元へ行きましたけど……」


「はぁ……。あんな若い子が1人でこの広場にいる理由を考えずに飛び出したわね…ルフィス、悪いけどあの散歩してるお爺さんにちょっと聞いてきて貰えるかしら?」


「分かりました、行ってきます!」


「やれやれ……一縷君のフォローをしなきゃね……」



 ◇◇◇


「お姉さん、すいません道を尋ねたいのですけど、いいですかね?」


「あ、す、すいません。今待ち合わせ中で……」


「いやいや、こう…パパっと教えてくれるだけでいいんですよ!ほら、ギルドとか…馬を扱ってるお店とかね」


「真っ直ぐ行って左です……」


「え?あ、どこを左にです?」


「あの建物を左です……」


「え?どの建物を……?」


 可愛い子に道を訪ねていると、急に後ろから肩を捕まれて、振り替えるとそこには体格のいいあんちゃんがこちらを睨んでいた。



「おい、なに人の女をナンパしてやがる!!」


「あ、た、助けて。何か、知らない人に……」


「いや、僕はただ道を聞いていただけで……」


「しつこく言い寄ってただろうが!!」


「そ、それは説明が下手くそで……」


「ひ、酷い!せっかく教えたのに……ひっぐ……」


「てめぇ、よくも泣かせてくれたなぁ?」



「あ、いや、それは誤解というか…間違えたというか……」


「うるせぇ!今泣いてる事に変わりねぇだろうが!」


「待ちなさい!」


「あ?何だテメェは?」


「この男の連れよ」


 し、白金さん!良かった…助けてくれるって信じていたよ!



「そうか、なら俺の女を泣かせた償いをして貰おうか!銀貨5枚程度でいいぜ?…お前もそれで許してやれるか?」


「うん……ひっぐ……」


「はぁ…ホントに一縷君はツイてないわね…。もう安い演技は止めて貰えるかしら?寒気がするわ。男の方が遠くで待ち構えてるのは見えてたのよ。一縷君は…ホントこういうのダメねぇ。」


「おい、マジかよ…。美人局的なやつに捕まったって事?」


「そうよ、可愛い子に飛び付くからそうなるのよ。危険なのよ?可愛い女って」


「白金さんも?」


「ふふ、それはどうでしょうね」


「ルフィスは?」


「ふふ、自分で見極めなさいな」


「それもそうか、じゃ、戻りますか……」


「待て!!なに勝手に去ろうとしてやがる!」


「いや~、騙されたこっちも被害者というかね?むしろ、こっちが金を要求したいまであるんだけど?道聞いただけで、ナンパとかしてないしね?それなのに恐喝されて…あー、すぐそこに衛兵さん居たんだっけなー言っちゃおうかなぁ~」


「ちっ、面倒ね…もう行くわよ」


「へ、へい姉御。テメェら覚えておけよ!」


「よし、一件落着だな。白金の姉御、ギルドは真っ直ぐ行って左でございます」


「そう……」


「詩葉さん、聞いて来ましたよ。ギルドはここから右の道を真っ直ぐで馬を扱ってる店もそっちの方向にあるらしいです!」


「ご苦労様だったわね、ルフィス。一縷君はダメだったわ」


「まぁ、何となく分かってました」


「……くっ。ふぅ…さ、切り替えてさっさと行こう!時間は有限だよ!」


 失敗は成功の母って言うしな、次の自分に期待だな。


「じゃあ、荷台に乗って、行くわよ」


 俺とルフィスは荷台に飛び乗って馬の店とやって来た。結構広い土地を持っていて、周りには建物も少ない。馬が自由に走れるように作られているみたいだ。


「いらっしゃい、預けだね。料金表はこれだから決まったら教えてくれ」


「どれ…、1日辺り銅貨1枚か。でも30日単位でお得になるみたいだよ?」


「そうね…ここでは攻略は勿論として、ダンジョンでちゃんとレベル上げをしておきたいから、とりあえず30日にしておきましょうか」


「決まったようだね、途中で引き取りに来ても料金は先払いの額から返却とかないからな。延長は1日で銅貨1枚。百日を越えるとウチで引き取る形になるから注意しな。じゃあ、銀貨3枚だ」


「じゃあこれで」


「馬の首にこの番号札を掛けてくれ。それと同じ番号札をあんたらの誰かが保管しておいて、馬を取りに来た時に返してくれ。無くさない様にな。荷台の方も俺がやっておくからとりあえず、店の横から馬を柵の中に入れといてくれ。そしたらもういいぞ」


「分かったわ。じゃあ行きましょうか」


 店の外で待機してた馬に紐付きの番号札を頭から通し、横の入り口から牧場っぽくなってる場所へ入れてあげた。名前とか付けてないけど愛着は沸いてきた。しばらくはお別れだ。元気にしとけよ!


「さ、ギルドに行って、お昼にしましょうか」


「賛成です!もう、お腹ペコペコですよ~」


「ここは店が多いしさ、今度は別の所でも食べてみようぜ。屋台も沢山あったし、流石は商業の国だよな~」


 そんな話をしながら、ギルドにやって来た。モータルのギルドより大きいな。まぁ、人の数も違うしあたりまえか。俺達は中に入り、食事が食べられる2階へと上って行った。


「うーん、どれにしようかな…って、読めねえよ…俺は白金さんと同じ物でいいや」


「ランダム性があって面白いじゃない、テキトーに選んでみれば?」


「シェフの気まぐれサラダとかだったらどうすんだよ。というか俺が読めなくても二人が読めるならいいじゃんよ。俺の感だと…これだ!なんかこれが美味しそうな感じがする」


「ふふっ、流石ね一縷君」


「一縷さん、それはシェフの気まぐれドリンクですよ。当たりが出る確率は低い事で有名です」


 ちっ!何だよ気まぐれドリンクって、ドリンクバーで遊ぶ小学生かよ!俺もよくやったけどさ…。


「うん、やっぱり白金さんと同じやつでいいや…。」


「パスタ系があるわね。一縷君は何が好きかしら?」


「俺はミートソースだな。次点でナポリタンかな」


「私はクリーム系が好きだからそれでいいかしら?」


「詩葉さん、ミートソースあるんだからそれにしてあげればいいじゃないですか…またイジワルしちゃって、可哀想ですよ」


「あるんだ、ミートソース。いや、でもいいよ。これはきっと、白金さんからのメッセージなんだよ。早く文字を読めるようにならないとミートソースは食べられないぞ…ってね!」


「イジワルよ?」


 くそったれ!なら、もう普通にミートソース頼もう…。


「ルフィス、俺はミートソースで」


「あら、一縷君私と同じのじゃないのかしら?」


「白金さんはイジワルが過ぎるからルフィスに頼みます!」


「あら、残念ね。私の頼もうとしてるのは高くて一縷君のは一番安いわよ?これはパーティーのお金から支払う物よ」


「ルフィス、白金さんと同じ物を」


「ええ!?揺れすぎですよ、一縷さん!」


 やっぱ高いやつも食べてみたいじゃん?


「じゃあ、三人とも同じ物でいいですね。あ、注文お願いします!」


 従業員の方に注文を入れて待っていると、近くの席にいる冒険者達から色んな話が聞こえてきた。やれ、宝箱が空だったとか。やれ、1つ階層を進めただの。冒険者らしい会話が聞こえてきた。そんな中でも興味のある話がダンジョンの最下層に行ったパーティーがいる話だった。どうやら高ランク数人のパーティーで挑んだらしいがボロボロになって帰って来たらしい。まぁ、最下層のボスは元勇者御一行だし、なんかゾンビみたいで不死身そうだしな。


「攻略方法って、白金さんを連れて行く事なのかもな」


「別に他の人が攻略してしまってもいいけど…どうせなら皆に一目会いたいわね」


「なら、また最短で進んでボスだけ倒してから攻略し直すか?」


「大丈夫よ。もし、倒した人がいて…その人が手に入れた私の武器で魔族と戦ってくれるらなそれで十分だもの」


「そうか、俺も早くレベル上げて、戦闘技術も身に付けないとな」


「私も……頑張ります!」


 俺とルフィスの考えは同じなんだろうな。白金さんを元のパーティーメンバーに会わせてあげたい。だから強くなろうって。


「お待たせ致しました。季節の野菜を使ったクリームパスタです」


「「おぉ~」」


「美味しそうね。いただきます」


 ミートソース好きの俺でも納得の美味しさだった。クリームパスタ…侮れないな。白金さんは優雅に、ルフィスも美味しそうにパスタを食べている。一口が大きい分、俺が最初に食べ終わった。


「白金さん、この後はどうするんだ?」


「私とルフィスで宿を取ってくるから一縷君は自由にしてていいわよ?」


「了解した!今度こそ街を散策するぜ」


「商業が盛んなこの国にも一応、貴族や王族は居るから問題を起こさないようにね?」


「大丈夫、触らぬ神に祟りなしの精神でいくから」


「そう…食べ終わったなら、先に行っていいわよ?夕方にはギルドに集合だからね」


「あいよ~」


 俺はギルドを出て、とりあえず広場へと戻ることにした。屋台や露天も多かったし、お土産屋さんなんかもあったからそこで楽しむ為だ。


「銀貨9枚あるからな~何買おうっかなぁ~……あ?」


「……」


「いやぁ~、それにしてもいい天気だなぁ~んー!」


「……」


 俺は見ていない。女の子が後ろから追て来てる筈なんかない!俺はそっと後ろを振り返る…。


「お母さ~ん……どこぉ……?」


 ああああぁぁぁぁぁあ!

 お母さん探してる子が何で俺の後を歩いてついてくるんだよ!触らぬ神に……触らぬ幼女にに祟りなし……ちっくしょう!


「屋台で何か買おうかな!お、あのフルーツジュースなんて美味しそうだな!」


「お腹空いたよぉ~喉も乾いたなぁ……」


 くそったれ!何の呪いだ!神か!?スフィアの呪いなのか!?

 俺は走ってフルーツジュースを2つ買い、迷子幼女の元へと戻ってきた。


「ん、とりあえず話は聞いてあげるからあっちで座って話そう」


「わぁ!おいしそう!飲んでいいの!?」


 くっ、白々しいのか素の反応なのかわかんねーな。もう買っちゃったしいいんだけど!2つで銀貨1枚だったけど!


 俺は迷子幼女とベンチに座りジュースを飲みながら話す事にした。


「迷子なの?」


「ママがどっか行っちゃったの!困ったの…」


 もう銀貨8枚しかないし、ギルドは使いたくないな…どうするかな、この広場は人もよく通るし、ここに居れば見付かりそうな気もするな。


「君、名前は?」


「あたしは、サーナ、5歳なのよ?」


「俺は一縷だ。15歳だ。10歳違いだな。」


 5歳って迷子になりやすいとかあったりするんだろうか…。


「サーナちゃんは、この街に住んでるのかな?」


「うん…でも、ここまで遠いから馬車で来るの。あと、ちゃん付けは止めてよね!」


 おませな子だな…。この街も広いからな、乗り合い馬車みたいなのがあるんだろう。街の端に家があるなら一人じゃ帰れないんだろうな。


「えっと、サーナ?今日はお母さんと買い物に来たのかな?」


「うん!色々買いに来たのよ!イチルは何してるの?」


 幼女に呼び捨て……悪くない…おっと!危ない危ない。


「俺は冒険者だからな、旅とかしてるんだぞ」


「どこから来たの?」


「遠く離れた所から…かな」


「変なの~。イチル、ジュース美味しかった」


 それは良かった。それにしてもどうするかなぁ、白金さん達に相談してみるか?まだギルドに居るといいけどな…。


「サーナ、ちょっと俺の仲間に相談しに行ってもいいか?もしかしたらギルドからもう出ちゃってるかもしれないけど。」


「いいよ!イチルが迷子にならないように、手繋いであげるのよ?」


「はいはい、ありがとうね。…じゃあ行こうか」


 迷子幼女サーナのせいで散策は一旦中止だが今回はさっさとお母さんを見付けてあげよう。露天とか見て回りたい俺のためにな。


 ギルドまで戻ってきたが、すでに白金さんとルフィスは宿探しに行ってしまっていたようだ。


「俺の仲間達、宿探しに行っちゃったみたいだ。」


「イチルも1人なのね!」


「今はサーナと二人だけどな?うーん、買い物なら店が多い通りを歩いていたら見付かるかな?」


「イチル…お母さん見付かる?」


「見付けてやんよ、じゃあ店が多いとこに行ってお母さん探そうか」


 ギルドを出て、広場を経由して、商店街のような店が立ち並ぶ通りへとやって来た。昼過ぎの時間で人の流れも落ち着いたかなと思ったがそんな事は無く、買い物客で溢れていた。


「これは…子供は流されてすぐ見えなくなるかもな…サーナ、肩車していいか?そっちの方が目立つだろ?」


「イチル肩車してくれるの!?早くしゃがんで!早くしゃがんで!」


「はいはい…っと、乗り心地はどうだ?」


「うわぁ~、遠くまで見えるのよ!でも、人が多くてお母さんがどこか分からないの…」


「お母さんの方から見付けてもらうしか無いな。とりあえず向こうまで歩いてみようか」


「うん!イチル出発!」


 これは我ながらいいアイデアだと思ってる。探すのはサーナのお母さんに任せて、俺は店の商品を見て回っていたりする。迷子幼女2度目だから。散策もする余裕が出来ていい感じだ。


「色々あるなぁ。タオルとか売ってあるし買っておこうかな?…そうだ!この街なら双眼鏡とか望遠鏡とか売ってあるんじゃないか!?探さないと!」


「イチル…?ちゃんとサーナのお母さん探してるの!?」


「お、おう。大丈夫だ。任せておけな。」


「むぅ~う?あ!あのみどりのスカートはお母さんかも!」


 おいマジかよ!?ミッション完了じゃないか!緑のスカート…あの人だな?よし!


「すいませーん、サーナちゃんのお母さんですか!?」


「え…?いえ、違いますけど…」


 振り替えってそんな事を言われてしまった。残念、人違いだったようだ…。


「緑のスカート違いなの…。」


「違ったみたいです、すいませんでした。」


「あ、いえ。では…」


 俺達もまた歩き出した。せめて明るい内には見つけたいものだな。



 ◇◇◇


「お母さん…どこぉ…」


 サーナにも元気が無くなって来たな。そりゃそうか。夕方になっちゃったもんな。


 通りを往復したり、他の道を探したりしてるけどまだお母さんは見付けられていない。広場に戻るか…


「サーナ、お腹空いた?俺はお腹空いたから屋台で何か食べない?」


「うん…食べる…」


「何か食べながらまた広場に戻ろうか。安心しろ。見付かるまで一緒にいてあげるからな。」


「ありがとうイチル」


 屋台で串焼きを2本購入して、食べながら広場へと歩いて行く。


「すいません、誰か、迷子の女の子を見ませんでした?5歳の女の子なんてますけど。誰か知りませんか!?」


 広場に近づくと、そんな声が聞こえてきた。俺は声を聞いてから走り出した。広場の真ん中で女性が女の子を探していた。緑のスカート…ビンゴだ!


「すいません!サーナちゃんのお母さんですか?」


「お母さん!」


「サーナ!?あぁ…良かった。見付かって。ありがとうございました。良かった…本当に」


「サーナ、良かったな。今下ろすからな。」


「お母さん!お母さん!」


「サーナ!もう離さないからね!」


「うん!サーナもお母さん離さない!」


 よし、これでミッションは完了だな。俺もそろそろ待ち合わせ場所に戻らないとな。


「サーナ、もうはぐれないように気を付けるんだぞ。」


「イチルありがとう!また会える?」


「さぁね?こんなに人居るし難しいかもな。しばらくはこの街のダンジョンに潜る為に滞在するから、奇跡的に会えるかもね」


「イチルの泊まってる所に遊びに行く!ね、お母さんいいでしょ?」


「そうねぇ、お礼もしないといけないし…」


「いえいえ、そんな、大丈夫ですよ。」


「イチルどこに泊まるの?」


「うーん、仲間の冒険者が宿を取ってるからまだどこか分からないんだよね。今から合流して聞いてみないと」


「そうなんだ…イチルお礼してあげる!しゃがんで!」


 おっ、デジャブだ。でも、お礼ならちゃんと受け取らないとね。


「一縷君、こんな所に…」


「一縷さん、もう時間で…」


「イチルありがとう…ちゅっ!」


「………あ、ありがとうね。ははっ。」


 俺は必死になって、白金さんとルフィスに事情説明をしている。

 ルフィスがそんなに迷子に遭遇するわけ無いと主張しているが、本当に遭遇しているから仕方ないと思うんだ。


「一縷君…あなたは幼女キラーなのかしら?」


「何その称号!?やめてよ、迷子を助けただけなんだけど!むしろ、幼女が俺に助けを求めてくるんだけど!?」


「イチル!この人達が仲間?」


「あ、うん。白金さんとルフィスだよ。」


「ふーん。それで、イチルはどこの宿に泊まるの?」


「お礼に行きたいので、出来れば教えて頂きたいのですが…」


「私達は、『閑古鳥』って宿屋に部屋を取りました。ここからだと少し遠いですが。真っ直ぐ行って、ギルドを右に曲がり、少し進むと見付かると思います」


「分かりました。この街にはまだ滞在するみたいですが、空いてる時間はありますでしょうか?」


「そうね…明日からダンジョンに潜るから2日に1回戻るとして…2日後の夜、3日目の朝からとか、5日目の夜、6日目の朝とかかしらね。」


「分かりました。その時間にお邪魔させて頂きますね。一縷さん、ありがとうございました。」


「イチルありがとう!遊びに来るね!ばいばい」


「どういたしまして。迷子になるなよ、サーナ」


「手慣れてますね…一縷さん。」


 それは言わない約束でしょうよ。変な称号付いてたらどうすんだっつーの。


「それじゃ、私達も宿に帰りましょうか。宿で夜ご飯は出るみたいだし、食べ終わったら部屋で予定を話し合うわよ」


「了解」


「分かりました!」


 宿の『閑古鳥』に着いたけど、名前とは違ってそこそこ繁盛しているみたいだ。白金さんとルフィスでダブルの部屋。俺はシングルの部屋の2部屋を取れるのはここが値段的にも良かったそうだ。風呂は無いけど、タオルとお湯は貰えるみたいで寝る前に体を拭かないとな。


「食事の後で部屋に来るように言われたけど…もういいのかな?」


 俺はドアをノックして、中からの反応を待った。1拍置いて合図が帰って来た。


「お邪魔するよ~」


「さ、一縷君も来た事だし明日からの予定を確認するわよ。朝は朝食を食べた後にまずは昼間の盗賊の報酬を貰いに行くわ。それからダンジョンに潜る為の食料に水とか必要な物を買ってからダンジョンに潜るわよ。ダンジョンに泊まるからその為の道具も買っていくわ。」


「ダンジョンに泊まるって危険じゃないの?」


「それは色々とあるのよ。ボス前の通路はモンスターが沸かないとか、行き止まりの通路を背に魔法で壁を作るとかね。モンスターの近寄らない煙なんかの道具もあるし対策はいくつもあるわ。」


「なるほど。了解した。」


「ダンジョンに潜る時は一階層から進めて行くけど…レベル上げの為に最初は飛ばすわ。レベルに見あったところで鍛えながら進んでいくわよ。街に戻る時は2日に1回ね。そしてまた、ダンジョンに戻る時は到達地点まで駆け抜ける。を、繰り返していくわ」


「ダンジョンでトイレってどうするの?」


「ダンジョンの中でするしかないわね。ルフィス安心しなさい、ちゃんと魔法で隠してあげるから」


 それなら安心だな。そうだ、あれも聞いておかないと


「白金さん、この街にだったら双眼鏡とか望遠鏡って有るのかな?」


「たぶん売ってあると思うわよ?でも、私達には単眼鏡で十分でしょ?」


「おっと、そうだったな。いくらくらい?」


「さぁ?それなりじゃないの?ダンジョンで頑張って稼ぎなさいよ?」


「おう!フォローは任せるよ」


「一縷君も片目での戦闘に慣れるよう頑張りなさい。基本は槍で倒す事。ルフィスの場合は魔法での戦闘における回避等もしっかりね」


「分かりました。詩葉さん、アドバイスはお願いしますね」


「ええ、厳しく行くわよ。…じゃあ今日はこの辺までね。一縷君も部屋に戻って休んでいいわよ。」


「俺、朝弱いから部屋をノックしてくれると助かる。じゃ、また明日」


「分かったわ、また明日ね」


「おやすみなさい、一縷さん」


 俺は部屋に戻る前にお湯とタオルを借りて、部屋で体を拭いた。やっぱり風呂…せめてシャワーだけでもしたいと思うね。仕方ないけど。


 お湯は捨ててタオルも返却し、部屋の鍵をかけて布団に横になった。


「そうだ、ステータスの確認でもしておくか…ステータス!」



 ━━━━━━━━━

 イチル キリシマ Lv20


 HP 870/870

 MP 6800/6800


 STR 88

 VIT 82

 DEX 90

 AGI 103

 INT 64

 LUK 59


 スキル

 魔力制御 Lv1

 槍術 Lv2

 ユニークスキル

『消滅魔法』


 称号

『消滅の勇者』

『救う者』

『幼女キラー』

 ━━━━━━━━━



 おぉ!旅の間に倒した魔物達で2レベル上がってるな!この調子ならダンジョンではもっとレベル上げが捗りそうだ。


 俺はステータスをそっと閉じてゆっくり瞼を閉じて今日はもう寝る事にした。

 え?称号?変わってない変わってない。俺は自分にそう言い聞かせて眠りについた。




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