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第5話 旅立つよ in 異世界

ストックがないので週1くらいの更新になります。(もしかしたら3日に1度くらい)

よろしくお願いします!

 

「一縷君、聞くけど記憶って消せるの?」



「え?き、記憶?記憶か…どうだろ?消せる様な気もするけどやってみない事には何とも…」


「そう。今からダンジョンに行くけど、出来れば顔を見られた相手の記憶を消しておきたいのよね。ルフィスはローブを持ってきていないみたいだし。」


「す、すいません。慌ててたもので…。」


「俺達もパレードで顔を晒しているしな…とりあえず俺のローブはルフィスに貸しておくか。記憶の消去…可能だとは思うけど一応試しておくか。ダンジョンの衛兵さんには悪いけど。」


「とりあえず急ぎましょう。朝までにダンジョンを踏破するわよ。ふふ…私の力を見せてあげるわ。」


 どうやら白金さんが本気を出すようです。実力差も分からないけど相当強いのは分かる。何かこう強者の雰囲気が伝わってくるんだよね、上手く言葉に出来ないけど…。


 王城から出たときにはすでに街中だったからダンジョンまではそうかからなかった。


「衛兵は…1人ね。夜中だからかしら?都合がいいわね。一縷君、これを頭に巻いて、一応眼帯も外しておきなさい。念には念よ。」


「分かった。このバンダナみたいなのは?」


「さっき、服を破いたのよ。私達の姿は覚えられたら全てが失敗よ。さ、行くわよ」


 俺達は前と同じ様に普通に歩いてダンジョンの入り口まで行き、紙を見せて中に入ろうとした。その前に…


「あれ、衛兵さん頭にゴミが……デリート」


「ん?ゴミがついていたのか…。ありがとな、ダンジョンの中は危険だけど頑張ってこいよ。」


「え?あ、はい。行ってきます」


 出来なかったぁ!そりゃ、記憶は視えないもん!出来るわけなかったじゃんよ…


「あなたの顔ははっきり見られたわね…。まぁ、一応の保険が利いたわね。髪も隠して眼帯も外していれば別人よ。」


「面目ねぇです…。」


「すいません霧島様、私のせいで…」


「気にしないでくれルフィス。いつかは試したかった事でもあるし出来ないって分かっただけでも収穫ってもんよ。」


「そろそろ1階に着くわよ。ここからは私の後をついてきて。最短で駆け抜けるわ。二人共、一応ステータスの確認をしておいて。」


「「ステータス」」


 ━━━━━━━━━

 イチル キリシマ Lv18


 HP 810/810

 MP 2000/6400


 STR 85

 VIT 80

 DEX 89

 AGI 102

 INT 62

 LUK 58


 スキル

 魔力制御 Lv1

 槍術 Lv1

 ユニークスキル

『消滅魔法』


 称号

『消滅の勇者』

『救う者』

 ━━━━━━━━━



 ━━━━━━━━━

 シルフィス ソフュール Lv10


 HP 420/420

 MP 800/800


 STR 51

 VIT 59

 DEX 60

 AGI 62

 INT 50

 LUK 70


 スキル

 魔力制御 Lv4

 火魔法 Lv3

 光魔法 Lv3

 水魔法 Lv2


 ユニークスキル



 称号

『孤独な王女』

 ━━━━━━━━━━




「さっきの暗殺者のおかげでレベルが18にまであがってるな。魔力も今は減ってるけど最大値は伸びてるし、戦闘は楽になるかな。」


「霧島様にまで抜かれてしまいましたね…私もちゃんと鍛えないと足手まといになりますね。」


「準備はいいわね。基本的にはモンスターを無視していくわよ。戦闘は避けられない相手だけ。足を止めたらそのままにして走り去るわ。疲れたら言って、少し休憩を取るから。でも、出来るだけ頑張って。じゃ、行くわよ。」


 そこからは一直線に下の層へ降りる階段まで走った。どうやって階段まで辿り着いているのかは不思議だけど白金さんならそういうスキルって事で納得出来てしまう。たまにモンスターと遭遇もするが、白金さんが足を斬りそのまま走って行くのでそれに倣って俺とルフィスも走り抜ける。20階層までやって来た所で少し休憩を挟んだ。


「こんな短時間でここまでこれるなんて驚きです。白金様のスキルですか?凄いですね。」


「戦闘もほとんどしてないし、そこまで疲れも無いから次は一気に39階まで降りよう。でも、40階のボスに勝てるのか?白金さんはともかく俺とルフィスはまだ弱いぞ?」


「このダンジョンは私に任せて。とりあえずここを出てから二人のレベル上げをしましょう。疲れて無いならそろそろ行くわよ。だんだんモンスターも強くなっているから二人共、不意討ちには気をつけて。」


「あいよ。」


「分かりました。」


 走って走って走って走る。状況に慣れてきた俺もモンスターの足を消滅させながら走り、ペースを落とさない様に補助をした。途中からはモンスターの足を止める役割を完全に俺にして走るようになっていた。魔力が減ったらルフィスが回復役を渡してくれる。それを繰り返して僅か1時間と少しで39階層にある40階へ降りる階段の前まで辿り着いた。


「ふぅ。中々いいペースで来れたわね。予想してたよりずっと早いわ、二人共ありがとう。」


「はぁ…はぁ…。まぁ…これも白金さんが道を案内してくれるから出来る事だよな…。」


「…はひゅー…はひゅー。」


 俺も流石に息が上がるけどルフィスはもっと辛そうだ。ここまでずっと走って来たわけだし、王女やってたのに凄いと褒めるべきだなこれは。


「帰りも…はぁ…こうやって…帰るの?」


「私の知ってるダンジョンだとボスを倒せば帰りはワープホールみたいなのが出て1階に戻れるはずよ。」


「そ、そうなんだ…助かった…ふぅ。」


「もう少し息を整えたら下に行くわよ?戦闘も任せてくれて良いけど、危なかったら手助けはして欲しいわ。武器の性能も不安だしね。」


「了解だ…。あ、あと1分だけ待ってくれ…。」


 それからきっかり1分後に俺達は動き出した。下の階へ降りて行くとそこには闘技場の様な広めの部屋があった。そして、中央に何かがいる。


「う、嘘!?あの子は…」


「何ヲ求メココヘ来タ?オ前ハ誰ダ?私ハ守護スル者ナリ。」


「リーラン…。その姿…間違いない!あなた、リーランね!」


「白金さん…リーランってまさか?」


「ええ、100年前の私のパーティーメンバーの1人よ。あぁ…あんな姿になってまで私の武器を守ってくれていたのね。」


「え?100年前?パーティーメンバー?」


「ルフィス、その話は後でするよ。」


「遅くなってゴメンね。私はあなた達を置いて帰ってしまった。ゴメンねリーラン。私、今度こそ魔王を倒すから。絶対に負けないから」


「リーラン…わだじ…リーラン…。ぞの声…ウタハ…?ヴゥ…」


「ダンジョンの障気と魔力が身体に染み付いてるのね…今、楽にしてあげるから。『聖なる光よ邪気を払いその身を浄化せよ。浄化の光(ピュアライト)』」


 眩い光がリーランさんを包みこんでいく。その中で少しずつリーランさんの意識が正常になっていったみたいだ。


「ウタハ、ウタハ。良かった…また会えて…本当に良かった。」


「ゴメンねリーラン。長い事待たせてしまったわね…でも、あなた達の事を忘れた日は1度もないわ…辛い事があってもあなた達との旅の思い出があったから私は乗り越えて来れた。ありがとうリーラン。」


「ウタハ、私達は貴女の装備を守ってる。みんなに会いに行ってあげて。どこかのダンジョンで私達は貴女を待ってる。リュミネが魔法で私達をこうしたの、だからまだ攻略されてないダンジョンに行ってみて。ここから東にある国が近いと思うわ。……そろそろ時間ね。私が持ってるのはこのペンダント。…そちらの女の子にでも装備させてあげて。そちらの方達…ウタハをお願いします。この子は私達を守ってくれた、多分これからも誰かを守ろうとするけど、あなた達は隣に立ってあげて。よろしく頼むわね…。ウタハ…もう1度会えて良かった。今度こそ…頑張ってね。」


「うん…もうゆっくり休んでね、リーラン。世界を平和にしたらあなた達のお墓もちゃんと作るから。お休みなさいリーラン。」


 リーランさんは光に包まれながら消えていった。俺はリーランさんに誓おうと思う。ちゃんと隣に立ってみせるよって。



 ◇◇◇


 リーランさんが消えた後には宝箱とワープホールが現れた。恐らくあの中にペンダントがあるのだろう。白金さんがリーランさんの消えていった場所を見つめている。俺とルフィスはもうしばらく待つことにした。


「ルフィス、宝箱を開けていいわよ。リーランが言ってたでしょペンダントはルフィスにって。」


「え…でも、よろしいんですか?白金様の装備品なんじゃ…」


「良いのよ。それは魔法の威力を底上げと状態異常に耐性が付くアイテムなの。今じゃ国宝級の代物かしらね。でも、遠慮せずに着けるのよ。それで役に立って貰うんだから」


「は、はい!精一杯がんばります!」


 ルフィスが宝箱を開けて中身を取り出すと、エメラルド色の強い緑に輝く宝石が付いてるペンダントが出てきた。国宝級ってのも頷けるレベルに綺麗な装飾品だ。


「はわぁ~…こんなに綺麗な宝石…中々目に出来るものじゃないですよぉ~」


「ルフィスはそれを首から下げてなさい。よし、ここから出たら一直線に街から出るわよ。作戦的には、城壁まで行って一縷君の魔法で穴を開けて私が穴を塞ぐ。人は少ないけど朝早くから行動する人もいるわ、迅速に動きましょう。」


「了解。」


「分かりました。」


 俺達はワープホールから1階にまでワープした。人もモンスターも居なかったから出口へと向かう。俺は、入り口での記憶消去の失敗から何故に記憶を消せないのか考えていた。記憶は視えないし一部を狙うなんて出来ないから消せないのはなんとなく分かった。じゃあどうすればいいのか、と考えた時に気づいたのは俺自身の姿を消すという方法だ。今までは対象物を消すことに注目し過ぎていたから思い付かなかったけど、リーランさんが消えた姿を見てそこからヒントを得た。


「ちょっと待ってくれ、少し見ててもらえるか?… バニッシュ」


「き、消えました!」


「一縷君、そこにはいるんでしょ?」


「ああ、姿は見えてないけど声は聞こえてるだろ?まだまだ可能性がありそうな気がしてきたよ。」


「それは私達にも使えるのかしら?」


「大丈夫だ。消費魔力は人数分増えるが今の俺の魔力なら全然平気だ。とりあえず白金さんに使ってみるよ、バニッシュ」


「白金様まで消えましたね…なんでしょう…そこはかとなく不安になってきますね。」


「消えてる同士も見えないのね…移動中は手を繋がないとダメね。」


「…解除。これならミュートと合わせれば透明人間の出来上がりさ。」


「凄いです、霧島様!」


「一縷君、能力が犯罪者寄りになっていくわね…ふふ。」


「それは自分でも思ってる…完全にアサシンだよ。熱探知とか魔力探知といかそういう方法以外じゃバレないと思うわこれ。」


「そうね。でも、今の状況じゃ欲しい能力よ。早速行きましょうか、よろしくね一縷君。」


「じゃあ、手を繋いで。白金さんを先頭に、よし。行くよー、バニッシュ、そしてミュート!」


 俺達は音も姿も無く、でも確かにそこには居るという状態で街を走った。予定通り城壁に穴を開けて俺達は脱出する。恐らくもうここには来ないであろう。


「…解除。」


「これで一安心ね。…ルフィス?」


「王国の民…ごめんなさい。お父様、お母様、私は行きます。国を守れなかった事をお許しください。さよなら…ソフュール王国。……お待たせしました。では行きましょうか。」


「あぁ、東に行けばいいんだよな?どこに着くか分かるか?」


「昔なら大きな商業の国のある方角ね。」


「あの、確かに今も大きな商業の国がありますけど…白金様はなぜその事を?白金様はいったい…」


「そうだったね、白金さんはね…」


 俺は白金さんの昔の勇者の事についてだけルフィスに教えた。それはもう驚いてたけど最後には納得と100年前の感謝をしてたよ。


「それで白金様は色々と詳しかったのですね。」


「そういう事よ。次の街まで歩きじゃ何日かかるか分からないわね。」


「そうですね、途中の村で馬車を手に入れられればいいのですが…」


「いつまでもこの国に居る訳にも行かないし、少し遠回りになるけど1度、南下して国を出ましょう。姫様と勇者が死んだなんて言えないでしょうけど、暗殺者が戻ってこない事で一部の貴族は捜索を始めるかもしれないし。それから東に向かえば少し遠回りになるけど安全度は上がるわ。この辺が小さな国の集まってる場所で助かったわね。隣の国までなら私達の足なら2日もかからずに近付けるはずよ。国境の検問も街に入る時の検問も冒険者カードを作る時まではスルーさせてもらいましょう。」


「分かった。じゃあ行きますか、少しでも王都から離れたいしね。」



 ◇◇◇


「空も明るくなってきたな…次の国まであとどのくらいだ?」


「そうですね…結構、端の方まで来ましたけどあと1日と少しくらいはかかりそうですかね。でも、もうすぐこの国の端の方にある村が見えてくると思いますよ?」


「じゃあ、そこで少し仮眠をとりましょう…ふぁ~あ…そういえば、走りっぱなしで寝てないのよね。」


「そう言われてみれば眠いかもな…お?あの村じゃないか?」


「そうです!あの村はたしか…テューダ村です。後ろの方にある大きい森が国境がわりになってますから、基本的にあの村には村人しか居ないはずです」


「泊まれる所があるといいけどな。お金か宝石あたりで何とかなるか?」


「そうね…森で何か狩って行った方がいいかもしれないわね。端の方の村だとお金より物々交換が主流だったりするのよ。昔はそうだったけど…ルフィス、今はどうかしら?」


「えぇ、お金は一応使ってますがそれはたまに来る行商人とのやり取りで少しだけですし、その行商人とも村の特産と必要な物との物々交換が主流ですね。」


「行商人が居るなら宝石とかの方がいいんじゃないの?」


「安く買い叩かれるのがオチよ。村人に宝石の良し悪しが分かる者は少ないわ。だから動物の皮とか肉の方が喜ばれるのよ。」


「なるほどね…じゃあ、眠いけど一旦森に行きますか。槍のレベルを少しでも上げないしね。」



 ◇◇◇


「外の魔物は同じ種類でもダンジョンのモンスターより強いわよ。はしないようにね。前衛は一縷君、中衛はルフィス、後衛は私がやるわ。」


「分かった。危なかったらフォローお願い。」


 俺達は森へ入り、浅い所で魔物を探し始めた。鳥系の魔物はルフィスか白金さんに任せて、俺は地上に居る魔物を担当した。


「一縷君、前からデカいの来るわよ!」


「了解…ってデカ!!なんだあれ、バッファローかよ!えげつない角してるぞ」


「一縷君、魔法使いなさい!今のあなたの槍じゃ、あの勢いで来られたらへし折れるわよ!」


「ロスト、ロスト、ロスト、ロスト!」


 バッファローみたいな魔物の足に4つの穴を開けたが今まで走って来た勢いのまま突っ込んでくる。


「ヤバイヤバイヤバイ…お?」


「ったく、詰めが甘いんだから…」


 白金さんが土の壁を作りバッファローを止めてくれたみたいだ。結構ギリギリだけど助かった…。


「ありがとう白金さん。まさかあのまま突っ込んでくるとは…もっとタイミングをずらして消したら良かったな。」


「まだ、生きてるから早く楽にしてあげて。そしたら…これどうやって運びましょうか?一縷君、持てる?私の筋力でも引きずるくらいしか出来ないわよ?」


 このバッファロー引きずって運ぶことは出来るんだ…レベルいくつなんだろ白金さん。うーん、いくつかに分けて運ぶしかないかな?


「村に行って人手を借りよう。角とか持っていけば信じて貰えると思うし。白金さんにこのバッファローをさっきの土の魔法で隠してもらえば取られる心配も無いだろうし。一応、ルフィスと白金さんはローブを被っていてくれ。村人には俺が話すよ、こういう時は男の方が話が通り易そうだしね。」


「そうね、女の子がバッファローモドキを倒したと言ってもね…任せたわ一縷君。」


「おう!」



 ◇◇◇



「嘘つくな!オメーみてーなヒョロっちぃ奴があの牛を倒せる訳ねーだろ!その角もどうせ偽物かなんかだろーさ!」


 あ、あれー?予定だとスッと話が進むはずだったのに、後ろからの視線が痛いよ…


「ほ、本当なんです信じてください!そして、少し仮眠を取れる場所を貸してください!」


「おめぇらなーんか怪しいなぁ…」


「白金さん、ルフィス、戦略的撤退をしよう…」


「敗北じゃないのよ。はぁ…しょうがないわね。おじさん、私達の事信じて、バッファローも倒しているのよ。運ぶ手伝いをして欲しいの」


「あら~凄い可愛い子だこと。ヤツは重いからな、お嬢ちゃん達じゃ大変だろう。村の若い者連れてくっから待っててくれ。」


 白金さんがフードを取ったらこの対応である。あのじじいは許さないリストに書いておこう。


「なんか、納得いかないんだけど。」


「霧島様…なんとおいたわしい…。た、多分、村の娘さんなら霧島様にメロメロですよ!」


「!?…そ、そうかな?ふーん。あのじじいの事少しくらいは許してあげようかな」


「待たせたねぇ。そこの男、おめぇはうちの村の娘にもヒョロくて頼りねぇって言われてたぞ。鍛えねぇとダメだな」


 俺、なんかこの村嫌い…

 結局、バッファローの所まで連れていってバッファローと引き換えに村で休ませて貰える事になった。村の男達の奥さんが肉料理を作ってくれるみたいでそれまで俺達は寝ることにした。


 目を覚ますと夕方になっていた。けっこうがっつり眠ってしまったけど頭はスッキリしたし、体も休まった。


「起きたのね。ルフィスはまだ寝てるから静かにね。」


「おはよう。案外疲れてたみたいだ。スッキリしたよ。」


「この後の予定だけど、とりあえず食事をいただいたらすぐ出るわよ。森を抜ければもう他国だしね。…今頃ソフュール王国は混乱しているでしょうね、スパイを通じて大国にも伝わってるかもしれないわ。どう動くかは分からないけど、私達は私達のしたいようにするだけ。立ちはだかる壁は壊して進むわよ。」


「たしか、2つの大国にクラスメイト達は召喚されたんだよな?大丈夫かね?ただの高校生であの貴族や王族に立ち向かえる奴なんて居ないと思うぞ。」


「1度目の私の様にいいように扱われてる…でしょうね。仮にも勇者だし、死ぬような事にはなってないと思うけど。まぁ、勇者やってればいずれ出会うわよ、大国もダンジョン巡りをさせるだろうしね。」


「俺達が生きてるってバレたらどうなるの?やっぱ捕まる感じ?」


「そうね。捕まって洗脳かしら?最悪、クラスメイトと敵対する事も考えておいて。洗脳されてるなら解けるかも知れないけど、たまに居るのよね空気の読めない自分がいつも正しいと思ってるタイプが。」


「なんかあれだな…クラスメイトと合うとロクな事にならないってのは分かった。対話の後は逃げる事だけ考えよう。クラスメイトよりは良い能力を持ってると思うけど戦わなくて済むならそれが1番だしね。」


「うん…ん…?あれ?私が1番寝ちゃいまひた?」


「おはようルフィス、俺もさっき起きたばっかりだ。白金さんはいつ起きたか分からないけど」


「睡眠を取るといろいろ落ち着くというか整理されるというか…これからどうなっちゃうんだろうって考えちゃいますね。今まではずっとお城で暮らすものとばかり思ってましたから」


「これからどうなるかなんて、本来は分からないものよ?だから、人は自分がこれからどうしたいか、どうなりたいのかって考えて行動するのよ。ルフィスもこれからはよく考えるといいわ」


「そう…ですよね。生きてる限り可能性は無限大ですよね」


「それはいいな。俺も可能性は無限大だぜ!」


「一縷君は可能性も消滅してると思うけど?」


「俺の未来だけ1つで確定してんのかよ!」


「ふふっ。その1つが幸せな未来ならいいじゃないですか。」


「そうだと信じて生きるしかねーよな…。いや、可能性が消滅してる可能性もあるって話だから!俺も可能性は無限大だから!」


 他愛もない話で盛り上がってると、外からご飯が出来たとの声が聞こえてきた。ルフィスにもご飯を食べたらすぐに出ていく事を伝え、奥様方が作ってくれた料理を食べに向かった。


「あんたかい?この牛を狩ったってのは?…ホントに細い坊やだね。本当は後ろの子が狩って来たんだろ?ダメだよ男の子が頑張らないと…とりあえず今日は沢山食べるんだよ!」


 くそぅ…白金さんの方が強いから何も言い返せねぇぜ…。あー、美味い。焼いてるだけっぽいのにめちゃくちゃ美味しい。


「おめぇらはこの後どうすんだ?」


「食事が終わったらすぐにでも旅立ちます。休憩させてくださりありがとうございました。」


「なんだい、もう行くのか…まぁ、旅ならしょうがないわな。なんか王都で勇者様を召喚したそうな。行ってみるのもいいんじゃねーか?」


「そ、そうなんですかぁー知らなかったなー機会があれば立ち寄ってみようかなー」


 ふぅ…。いきなりの事で驚いたけど上手く誤魔化せただろう。そろそろお腹いっぱいだし、行くとしますか。


「二人共、もう大丈夫か?」


「ええ。」


「じゃ、おじさん、奥様方、ありがとうございました。そろそろ行きます」


「おう、端っこの村だが機会があればまた寄っていってくれ。」


「坊や、しっかり食べるんだよ!」


 中々良い村だったな。この国には来ないかもしれないけどこの村の事は覚えておこう。さて、森を抜けないと行けないからな、気を引き締めて行かないと!


「白金さん、森の中で夜になったらどうするの?そのまま進むの?」


「流石に夜の森は動けないと思うわ。焚き火をしながら交代で休憩して、明るくなったら出発ね。という訳で今から出来るだけ進んでおくから走るわよ!」


「は、はいぃ!」


「なんか、走ってばっかりな気がする…」


 胃の中のモノが少し消化されるのを待ってから、俺達は走りだした。レベルのおかげで、元居た世界よりも走るのが楽になった。息切れも起きないし…そういえば入学式の時も走ってたなぁ。


「森を抜けたら、なんて、国?」


「えっと、確か、そこも小国で、モータル国、ですね。」


「何か特産品とかあるのかしら?」


「そう、ですね、これと言って、は、ありませんね。ソフュール、はダンジョンが、ありました、けど、モータルには、それも、ありませんし。」


「走りながら、話すのって、きつくない?」


「まだトレーニングが足りてないわね。ルフィス、そんなんじゃ走りながらの詠唱も出来ないわよ。」


 白金さんは息切れもしてないし話すのもいつもと変わらないな。魔術師も動きながらの詠唱が出来ないと少人数パーティーじゃキツいモノがあるな。


「ルフィス、これ、話すの、走りながらの、詠唱の、練習に、なるんじゃないか?」


「ふぅー、ふぅー。」


 まともに話せなくなってるからまずは体力作りからだな、俺もルフィスも。


「話さなくてもいいから、とりあえず遅れない様にね。一縷君は雑魚敵の足止め。ダンジョンと同じ感じでよろしく。」


「分かった。」


 森の中を走って、たまに白金さんが木の上まで登り方角を確認する。後少しで森を抜けそうらしいが残念な事に夜が来てしまった。


「一縷君、この辺の枝の水分を取っておいて。燃えやすくするためにね。」


「了解。…水分パージ」


 うぇ、なんかヌメっとしたのが俺の手に…。臭い…。


「後は明るくなるまで休憩ね。眠くは無いでしょうけどここで休憩するわよ。明日にはここを抜けるから、そしたらレベル上げも始めるわ」


「私も頑張ります!霧島様、白金様、よろしくお願いいたしますね。」


「ルフィス?今まで思ってたけどもう名前に様なんて付けなくていいよ?」


「そうよ。私達を勇者だと知らない人達から見れば貴女と私達に主従関係があるか、奴隷かに思われるわ。」


「では、なんとお呼びしたら…?」


「別に、普通に一縷でいいぞ」


「私も詩葉でいいわ。ルフィスならね」


「一縷様…じゃなかった、一縷さん?詩葉さん?」


「うん、それでいいよ。俺達はパーティーだ。言いたいことはどんどん言って良いんだからな。遠慮も要らないぞ」


「早めに慣れなさいよ。ふふ、貴女はもうただの平民よ」


「私はただの平民じゃありませんよ詩葉さん。私は…勇者の仲間です。冒険者です。そして、魔王を倒すパーティーの一員です。」


「言ったわね。なら、強くなってもらわないと…覚悟しておいてね。もちろん一縷君も」


「ルフィス!白金さんに変なスイッチ入ったじゃないか!あの企んでる顔をみろよ!ヤバイぞ」


「す、すいません。勢いに任せすぎました!詩葉さん、先程のはただの決意の現れというか気持ちというか…」


「…ふふ。」


 ダメだ、もう色々と計画していらっしゃる。これはキツくなりそうだなぁ…。


 こうして俺とルフィスのキツいトレーニングが決定した。俺達は明るくなるまで休憩して、明るくなるとすぐに森を抜けた。


「ここからがモータル王国か…。草原の先に小さく村が見えるな」


「たしか、いくつか村の先に王都があったはずですよ。あの村まで行けば王都もそこから見えるはずです。この国も小さいですからね、王都の周りに村がいくつかあるくらいです。」


 もう合併しちゃえよと思うが色々と面倒もありそうだな。俺達は歩き出して、草原にいる動物を狩ながら村を目指した。




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