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第43話 ミッションスタート in 異世界


すいません、お待たせしました!

短めですが、よろしくお願いします!




 

「情報集めと言えば……?」

「決まってるでしょ、行くわよ! 酒場へ!」


 店を出た俺達は、表の通りまで戻って来た。酒場なら何処でも良いという訳ではなく、相手が貴族ならそれ相応の店に行かないと駄目らしい。冒険者がよく訪れる店も用途によっては使える場所らしいが、今回はそれよりも一つか二つ上のランクのお店を探すみたいだ。


「でも、俺達の格好は冒険者そのものじゃん? 浮かない?」

「まぁ、浮くわね。居酒屋に行く格好でオシャレなBARに行くようなものだもの。でも、細かい事は気にしなくて良いわ」

「そんなもんかね?」


 詩葉さんが良いというなら良いのだろう。聴き込み調査なんてしたこと無いし、やり方もあんまり分からない。が、とりあえず一杯奢る所から始まるのだけは、何となく分かる。


「良さそうな店を探さないとね」

「そうね……身なりの良い男でも見付けて後を追いましょうか」


 街を歩き、格好の良い男を探す。歓楽街に入ると、酒場やそういったお店が多くなる。威勢の良いキャッチを見ると、こういう所はあまり変わらないんだと、少しだけ笑ってしまった。


「一縷君、前の男。金髪の……あの人を追ってみましょう」

「理由を聞いても?」

「女の感よ! ……と、言いたい所だけど違うわ。あの男はおそらく貴族ね、男爵か準男爵……騎士爵かは分からないけど、きっと貴族よ。私達以外にも尾行している者が居るもの。きっと護衛でしょうけど……」


 その護衛が何処に潜んでいるか気になって、辺りを見回していたら、詩葉さんに注意されてしまった。

 俺達はその男を追いかけ、運良く酒場に入ってくれた事を確認し、俺達も店に入った。酒場『バニーガールと酒』へ。全然高級感は無かった。


「いらっしゃいませ~! 空いてるお席へどうぞ~」


 店の中はただの酒場。木製の建物に、カウンターでバーテンダーらしき壮年の男性が酒を作っている。ただ違うのは、接客してるウエイトレスさんがバニーガールなだけだ。いや、店名からしたら違う事は無いのかもしれないけど。


「ここって、いかがわしいお店だったりするの? 普通じゃないよね?」

「さぁね? 何が普通なのかは、そこに暮らす人達次第よ。とりあえず座りましょ」


 店の奥にあるカウンター席の、右の端っこに座った。俺達が追ってきた男は反対側の端っこに座っている。

 店の全体的な客層は、三十代から上が多いようで、バニーガールをツマミに酒を(あお)っていた。


「お客様はまだお若い様子。この酒場は少しだけ早いのではありませんか?」

「確かに、そうかもしれませんね。お酒もあまり強くはありませんし……マスター、そんな俺に一杯お願いします」

「ふふ、ずいぶんと素直なお客様だ……少々、お待ちを。お連れ様はどうされますか?」

「私は……そうね、果実酒をマスターのお任せで」


 注文を取ってくれたマスターは優しい対応で、紳士的だった。客に聞くよりも、マスターに聞いた方がもしかしたら……と思うが、より多くの情報が欲しいし、とりあえずは詩葉さんと相談である。


「で、どうする?」

「全員に聞いて回るのは得策じゃ無いでしょうね。ターゲットの耳に入ったら、警戒が強まるだけですもの」

「なるほど……ならさ、いろんな酒場の店主に聞いて回るのはどうかな? その人は情報を持ってなくても、持ってる人を知ってるかもしれないし」

「一理……あるわね。分かったわ、その案を第一として、余裕があれば聞いて周りましょうか」


 情報集めの方向性は決まった。結んでいた髪を解き、少しだけ大人っぽい雰囲気を出し始めた詩葉さんだが、バーの雰囲気にどちらが合ってるかと言えば当然、それは詩葉さんな訳で、俺は未だに浮いていた。


「お待たせ致しました」

「ありがとうございます。詩葉さん、とりあえず乾杯しようか」

「えぇ、そうね」


 木製だが、カクテルでも飲む時に使うオシャレなグラスの形をしたコップを持ち、詩葉さんのと軽く合わせる。酒の良し悪しなんて分からないが、とりあえず香りを楽しんだ風を醸し出す。

 そして、それを口に含むと……昔、親戚が集まった時に飲ませて貰った、甘いジュースの様な酒の味を思い出した。その時はまだ子供で、後からくるアルコールに眉を(ひそ)めたが、今になってみると、中々に悪くない。と言うか、思ったより飲みやすくて美味い。


「マスターの腕の良さですかね? 美味しいです」

「そうね、これは酒の良さだけじゃないわね」

「ありがとうございます。お客様に楽しんで頂くのが、私の仕事ですから」


 あまり量のある酒では無いが、一口ずつ味わいながら飲んでいく。アルコール度数も高くは無いみたいで、俺も詩葉さんも、酔う感覚どころか、頬が赤くなったりもしていない。そして、やっぱりマスターは紳士的である。


「あの、少々時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

「えぇ、構いませんよ」

「ありがとうございます。その豚伯爵という……」


 声のボリュームを下げ、マスターに豚伯爵について聞いてみた。この街で、その名を知らない者はほとんど居ないくらいの有名人らしく、情報もある程度教えてくれた。

 曰く、金遣いは荒い。曰く、屋敷の従業員の入れ替わりが激しい。曰く、収集家。曰く、美食家である……等々。

 人気は当然無いに等しいのだが、家柄は古く、裏の組織との繋がりもあるという噂があり……何より、証拠を隠すのが上手いらしく、家へ踏み込む事も出来ない状況みたいだ。


「君達……まさか、喧嘩でも売る気かな? お節介かもしれないけど、辞めた方が良い。街に居られなくなるだろう」

「僕らは冒険者ですし、クエストがあればそれを消費していくだけですよ」

「そうね。それに……もっと上の存在に喧嘩を売った事もありますし。さ、そろそろ他の場所にも情報を集めに行きましょうか」


 心配そうな顔をしてくれるマスターに酒代を払い、俺達は店を後にした。それからもう二件くらい聴き込みをしてから、一旦宿へと帰る事にした。

 豚伯爵は、相当嫌われているのだろう……住人からは必要無い愚痴まで聞かされる事になったが、とりあえず情報は集まった。


 ◇◇◇


 帰宅する頃には夜中も夜中で、部屋にいる皆を起こすのも忍びないと、詩葉さんと二人で俺が泊まってる部屋に居る。だが、雰囲気的には甘くは無い。それに、今から作戦の立案や細かい部分を詰める作業をするらしい。

 本来なら数日掛けて攻略するクエストをたった一日で……時間的にはもっと短時間でやろうというんだから、寝る間を惜しんでやるのも仕方ないけど。


「ターゲットである豚の屋敷の場所は割れているわ。でも、貴族街にある屋敷なのが少し厄介ね……」

「あー……通るには証明書みたいなのが必要なんだっけ?」

「えぇ。個人なら一縷君の力でどうとでもなるわ。でも、壺や絵や人を運ぶとなると、やっぱり馬車で入ってはおきたいのよね」


 俺の魔力が肝心なタイミングで無くなるなんて、用意に想像がつく。だからこそ、馬車で怪しげ無く通行出来るようにしておきたいのだろう。

 貴族街に潜入し、通行書をどこかから拝借するのが無難だろうか? だが、他の人に迷惑は可能な限り掛けたくは無い。

 この街の最奥にお城があり、そこから離れる順に、貴族街と一般人の住む市街がある。貴族街へ入る場所には、関所の様なものが設置されていて、貴族章や貴族の使いである証明書がなければ通れない。


「どうしよっか? 豚伯爵と敵対する貴族でも探して協力を頼む?」

「下手に目を付けられると厄介だから、それは他に案が出なかったらにしましょう。やっぱり先に……屋敷に到着してからの動きについて考えない?」

「分かった。リコルとレーロは待機だよね?」

「いえ、今回はリコルにもレーロにも動いて貰うわ。馬車の運転とその護衛になるけど」


 そう言って不敵に笑う詩葉さんから、ざっくりした作戦を聞いた。それから二人で細かい所を決めていく。夜中のテンションとは怖いもので、話が脱線する事が多々あったが、ミッション『豚伯爵邸からの奪還作戦』の内容がほぼ決まった。

 外が明るくなったんだと、鳥の鳴き声や外を歩く人が増えた事で気付いた。どこの国も、朝方の人が多いもんな。


 ◇◇◇


 この身体は一日くらいなら寝なくても大丈夫みたいで、自分の身体なのに、自分のものじゃないみたいだ。だが、怠さも眠気も無いのは素直にありがたい。

 詩葉さんは一度部屋に戻った。三〇分したら詩葉さん達の部屋に行くことになっている。


「あとは貴族街に馬車で入る方法だけだよなぁ……」


 決行は昼からの予定だ。意表を突くという面と、出来るだけ騒ぎは大きくした方が良いと詩葉さんが提案したからだ。

 屋敷への突入部隊は、俺と詩葉さん。目的はメイド服の予備を入手と、目的の居場所を確認する為である。その後に、ルフィスと聖女を連れて再突入をし、クエストを達成させる。メイド服の予備があるかは分からないし、少し行き当たりばったり感の強い作戦だが、時間の関係上は仕方ないだろう。


「やっぱり、どこかの貴族に頼んで……いや、でもなぁ」


 考えが纏まらない。纏まらないまま三〇分が経って、とりあえず俺は詩葉さん達の居る部屋へと向かった。


「一縷だけど~」

「入って良いわよ」


 返事が返って来たから、部屋へとおじゃまする。皆の準備は既に整っているらしく、いつでも出発は出来そうな格好になっていた。


「おはよう。詩葉さん、説明は終わってる?」

「えぇ、流れは伝えてあるわ。後はどう突破するかだけど……」

「称号だけはある勇者とか、ルフィスの王女、聖女としての地位は使えないしな……宝の持ち腐れとはこのことだな」


 俺の言葉に詩葉さんとルフィスは苦笑いを浮かべた。聖女は自分の地位についてはさほど興味は無いのか、マイペースに外を見ている。


「とりあえず、その場所に行ってみれば良いと思うんですけど?」

「そうね……昼からと予定していたけど、メイド服の確保と場所の確認は早が良いでしょうし。行ってみましょうか?」


 どうせ浅い考えで挑んでいるのだから、まずもって動かないと展開が進まない。

 最後の手段として、力押しのゴリ押し……というスマートでは無いが一番確実な方法が俺達にはある。その余裕があるから、焦らずに特に緊張も無くクエストが出来るのだと思った。

 雑貨屋に寄ってはみたものの、ロープやナイフは既に持っていたから何も買わずに出ていく事となった。ロープなんて買ったは良いが、未だに使っていないし。


 街を馬車で動いて三〇分以上は経っただろうか? ここが区切りと言わんばかりに、不自然な検問がそこには展開されていた。

 警備員の様な衛兵が二人、決して広くは無い通路の右と左に立っているのが見える。

 人通りの少ないこの道で、ただ立ち止まっている俺達は不自然に見えるだろう。一先ず脇道へと姿を隠し、作戦会議に移った。


「なぁ、詩葉さんよ」

「何かしら、一縷君?」

「このミッションって……実はめちゃくちゃ簡単だったりしない?」

「それを聞くって事は、攻略法が幾つか浮かんだという事かしら?」


 俺達ならではの作戦ではあるが、簡単な事だ。馬車で入るのも、その後の事も問題なくやれるだろう――そう、暗示を使えばね!

 暗示で突破し、邪魔な物は俺が消す。パーティーで力を合わせれば、実は物凄く簡単なミッションだと思える。


「つまり……私と聖女に片っ端から暗示を掛けて回れ、と言うのかしら?」

「でも、とりあえずはあの場所を突破出来るだろ? 催眠、暗示を相手に掛けるのにどんな条件があるのかは分からないけど、無駄な争いは極力避けれると思わない?」


 善意でクエストを受けた訳でも、悪意で豚伯爵を狙った訳では無い。ただ、クエストが発注されていて、俺達なら達成出来ると踏んだから受けた。目的は金の為に。

 俺達は金の為に豚伯爵を地に落とそうとしている。恨みなんて当然、欠片も持ってはいない……豚伯爵がどうなろうと構わないし、明日がくる前にはもう気にも止めないだろう。だが、それでもクエスト中に、被害者は少なければ良いと思っている。それは偽善だと、人に言われなくても自覚している。

 考えるまでもなく、クエストの達成条件は三つだけだ。余力があれば豚伯爵を倒す事も考えるが、それ以外には興味が無い。

 つまるところ俺は、誰かの為にクエストを受ける勇者じゃなくて、自分の為にクエストを受ける冒険者が適正だったと言えるのかもしれない。



「た、確かにですっ! 詩葉さん、聖女様、暗示を掛ける際にはどんな条件が?」

「とりあえず、目が合ってる事かしら?」

「そうですね~、ですから~大人数相手だと時間が掛かったりしますね~」


 各個撃破スタイルなら問題無いという事だろう。相手が面を着けている場合も難しいかもしれない。だが、作戦に組み込んでもリスクは無いだろう。


「とりあえず、屋敷の住人には極力で良いから手を出さない方向で。豚伯爵は……どうする?」

「一番良いのは、国に裁いて貰うことだけど……うっかり戦闘になってしまった場合はやむを得ないと思うわね」


 なるほど、隙あらば刺すという事ですね? 流石ですよ、詩葉さん。


「他に、何かある人は?」

「私とリコルちゃんは、どこで待機しておけば良いのか聞きたいんですけど?」

「出来るだけ近くで待っていて欲しいけど……怪しまれたら逃げなさい。作戦が完了したら空に魔法を放つから、そしたら玄関先に来てちょうだい」


 他には何も無い様で、俺と詩葉さん以外のメンバーにはここで待機して貰うことにした。今から行くのは下見だ。俺と詩葉さんだけで潜入して、下準備を整えに向かう。


「じゃあ皆、今から作戦を開始する。俺達に失敗の二文字は無いからな!」

「一縷君、この世界の文字だと失敗を意味する言葉の文字数は……」

「い、いや……知ってるよ? でも、ほら……やっぱりそこは二文字ってのが定番じゃん!?」


 いきなり水を差されたが、出発だ。姿と音を消した俺と詩葉さんは衛兵の間を通り抜け、豚伯爵の屋敷へと向かった。






誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)

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