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第42話 裏クエストは闇が深いね in 異世界

すいません!

大変お待たせいたしましたぁ!/(^o^)\


~前回のあらすじ~

ダンジョンは迷路だ、ひょえ~~

 


 泊まる場所を確保して食事を済ませてから少し、今日はいつもより厳しい訓練になっていた。理由は単純に、昼間に鍛える事が出来ないからだ。


「一縷君、ただ殴る蹴るをすれば良いんじゃないのよ? 当てなきゃ無駄だし、フェイントですらなかったら無意味よ」

「くっ……詩葉さんが速すぎるだけじゃないですか……っ!?」


 脇腹へ向けて蹴りを放つも、足の届かないギリギリの所まで下がられ、すかさずカウンターを仕掛けられた。


「今のだって蹴りを回避されたら、直ぐに次の一手を繰り出さないと。倒すか倒されるかまで終わりじゃないのだから……さ、もう一度」

「お願いしま……すっ!!」


 結局、攻撃を当てることは出来ずにその日の訓練は終わった。強くなってる自信はあるのだが、詩葉さんのせいでその自信が無くなっていく。まぁ、本気でやってくれているからだとは思うけど。

 とりあえず、目の前に目標とする人が居るのはありがたく思う。まだまだ届きそうに無いけれど。


「うぅ……頭がガンガンするんですけど……」


 果たして……寝て起きる頃にはレーロの酔いは治るのだろうか。



 ◇◇◇



「……また行き止まりだね。引き返さない?」

「そうだね、一度みんなと合流しようか。葉桜さん、大丈夫? 疲れてない?」

「あぁ……うん、平気」



 三十階層まで進んで来て、迷路ダンジョンのいろはも私達なりに理解してきたけど、この階層の攻略に手間取っていた。

 十階層、二十階層とキリの良い階層はだいたいこんな感じではあった。不自然に広く、戦闘も多くなり、罠も増える。

 私達の攻略の方法……単純に手分けして探索し、合流したら情報を照らし合わせる。そして、ゴールの在りそうな場所へ皆で進んで行くというものだ。リーダーの坂倉君が上手く纏めているお陰で、チームワークは良いと思う。……正直、一人の時間が少なくて多少なりともストレスはあるけど、それを口にするのは更に面倒な事だ。


「……っと、モンスターだな。行くぞ、祐也!」

「おうよ! 『放拳(ほうけん)火弾(ファイヤー)》』」


 どうして、拳から火が飛び出すのか……考えても答えは出なかった。そういうモノだと今はもう諦めているけど。

 私達は個人よりもチームで戦う事が多い。皆の出来る事がバラバラだから正しい判断だけど、そのせいで大変な事もあった。


 ――私達は、トラップによってバラバラに散らばってしまった。


 一人になった者も居れば、複数人で同じ場所に飛ばされた者も居た。戦える者が一人なのはまだ良かった。運良く戦えない者同士が集まる事は無かったけど、戦える者が一人で戦えない者を数人守らないといけない、なんて事も何組かあったと聞く……アレはキツかったな。


「……ったく(一縷は関係無いけど……これもきっと一縷のせい)」

「ん? 何か言った? ひかりちゃん」

「何でもないよ。私達ももっと個人のレベルを上げていかないと、って思っただけ」


 あの時、一人で戦っていたお陰か私のレベルは他の皆より少しだけ高い。まぁ、意図して遠回りして狩りに行ったのは理由の1つ。でも、それ以外にも“たまたま”私でも倒せる“階層”に飛ばされたのが幸運だった。


「そうだね……“もしも”の事を考えて……動かないと、だもんね」


 美空の顔が沈む。無理もない……その悲報を聞いた時は、私も混乱して現実を受け止め切れなかった。


 ――十六名。それが今のクラスの人数。元は十九名。そういう事だ。

 私達より先の階層まで進んでいる人達に助力して貰い、一度三十七階層まで向かった。そこでボロボロになった防具一式を見た時に、受け入れざるを得なかった。あぁ……死は常に隣にあるのだと。勇者なんて言っても無敵じゃ無いんだと。


 クラスの人数は十六人だけど、ダンジョンの攻略をしているのは十名程度。女子は私と同じパーティー美空しか居ない。他の子は安全第一でレベルを少しでも上げる方にシフトチェンジしている。


「坂倉君と三倉君が引っ張って行ってくれてるお陰で、何とかクラスも、攻略も崩れずにいるけど……今はパーティーでよりも、個人で戦えるようにしておかないとって思う」

「ひかりちゃんは強いね……」


 強い? それはきっと間違い。ただ面倒臭いだけ。落ち込んだり凹んで居るのは疲れる。だからしない。一縷を見た、強かった。きっと面倒だけど、そう在った方が楽に違いない。だから……つまり――。


「私より強い人は居る。任せっきりだと心配だから……少しくらい手伝いくらいはしてあげないと」



 心配はいらないと思うけど気を付けてよ、一縷。トラップは、“どこに飛ばされるか分からない”から。



 ◇◇◇



「あぁ……頭が~いたいん~ですけど~」

「ねぇ、ホントに痛いの? 嘘臭いけど、ホントなんだよね?」

「い、痛いですよ!? 信じて欲しいんですけど……」



 三階層の行き止まりを利用して睡眠を取り、いざ出発となった所でレーロが頭痛があると申告してきた。決して深刻そうでは無い。

 だが、それでも痛いと良い続けるレーロを無視出来ずに、今日も背負って歩き始めた。ちなみに弓を渡したら凄くテンションが上がっていた。


「一縷さん、ここを左に行くと一体居ますよ。どうします?」

「レーロにやらせてみよう。遠距離で先制出来ればそれだけで有利だし」

「頭痛いんですけど、それくらいなら出来る気が……あ~いたたぁ~」


 今すぐにでも降ろしてやりたい衝動を堪えて、レーロを背負ったまま曲がり角を左に進み、モンスターを確認する。


「レーロ、弱いが速いタイプだぞ。出来るのか?」

「私達にとって弓は手足に等しいんです……けどっ!!」


 放たれた風の弓がモンスターの首を()ね、静かに倒れて行くのを見届けた。俺の背中で構え、不安定ながらその弓を使いこなした技術は本物みたいだ。これで、近距離でも戦えたら恐ろしいほど強くなるんじゃないだろうか?


「レーロ、短剣とか槍とか使えたりする?」

「えーっと……残念ながら、私にはその才能までは無かったですけど」

「そうか……なら、これから鍛えれば良いさ! 大丈夫、才能なんて無くても強くなれるぞ、詩葉さんの所ならね」

「目が笑って無いんですけどっ!? 私は遠距離専門なんですけどっ?」


 遠距離専門? うちのパーティーにはサポート専門はあっても遠距離、近距離専門なんてものは無い。聖女の身体強化系のサポートや、リコルみたいに後方支援的なサポートは在るが、戦闘は自分でこなさなければならない。大きいチームでも無い俺達は、少数精鋭でやっていかないと。


「ルフィスだって杖と体術を頑張ってるし、俺もやってる。一人じゃないし、お前も頑張ってみろよ」

「うぅ、重たい武器は苦手ですけどぉ……」


 ぐちぐち言い始めたレーロの運命は変わらない。詩葉さんにスパルタ式で鍛えられる事になるだろう。仲間が増えて満足だし、レーロが全然元気なのは気付いているけど、もうしばらくは背負ってやろう。武器は何が良いかも考えておかないとな。


「ルフィス、レーロも弓で援護出来るしガンガン進んでいいからな」

「はいっ! お願いしますね、レーロさん。では、出発ですよ!」


 とは、言っても三階層のモンスターにルフィスが苦戦する筈もなく、レーロの出番が回って来る事は無かった。

 リコルの描く地図も行き止まりのルートばかり増えて行ったが、攻略を開始してから四時間程して、ようやく四階層へと続く道を発見した。


「提案だけど、今回はここまでにして引き返さない?」


 昨日の夜の段階では、今日は攻略で明日に帰還する予定だったが、四階層を目の前にして詩葉さんからそんな提案が出された。

 勿論、攻略のペースに関して異論は無い。ルフィスの顔を見てみるが、きっと俺と同じ気持ちだろう。


「了解。だけど、少し休憩させて欲しいかな」

「悪いわね、思ったより紙の消費が多いし、食料以外の物資を少なめにしたのが(あだ)となったわ。帰るまでに予定とか計画し直しとくから」


 買い物に付き合ったから分かる。食料が必要になる事は分かっていたからそれは十分(じゅうぶん)に用意してあるが、それ以外は少なくしていた。見通しが甘かったのは詩葉さんだけのせいじゃないし、別に責めるつもりは無いのだが……申し訳無さそうにしている詩葉さんは、少しレアかもしれない。



「レーロ、重いから帰りは歩きな」

「お、お、重くないんですけどっ!? ちょっと、失礼過ぎるんですけど!」


 ちょっとなのか、過ぎるのか分からないが、レーロに関してはデリカシーが無くても良い気がしている。レーロだしな。


「一縷さん! 女の子に体重の話をしちゃダメですよっ!」

「おい、レーロ。ルフィスに怒られたじゃないか」

「当然の結果なんですけど! もっと、怒られればいいんですけどぉ!」


 しばらく休憩を挟んだ後に、リコルの描いた地図通りに一階層のダンジョン入口に向かって歩き出した。本当に、ダンジョンの構造が変わる事は無いらしく、帰りは分かりきっている道順をサクサクと進んで行った。

 あまり進めはしなかったものの、“ツラいのは行きだけ”“荷物は多めに”と、他にも学ぶ事となった、一回目のダンジョンアタックだった。レーロの弓も手に入れたし、結果的にはプラスだな。



 ◇◇◇



 ダンジョンを出ると、外は暗かった。

 俺達は宿に向けて歩き出す。この街は夜でも活気があるみたいで、酒を飲み騒いだり、美味しそうな料理を食べて盛り上がっている。

 そんな光景を見ながら歩いてると、急に詩葉さんが俺達を止めた。


「クエストの事だけど……紹介所に行ってこようと思うわ。時間もちょうど良さそうだしね」

「今から?」


 クエストは、だいたい朝に受注して数日内に完遂させるか、当日に終わらせてくるかの筈だ。こんな夜に紹介されるクエストなんて怪しいにも程がある……夜に? クエスト? 裏……はっ! まさか!?


「早まっちゃ駄目だ詩葉! そんな仕事はさせられない! 俺がもっと稼げば良い話だろ!?」

「ちょ、ちょっと何よ……急に、う、詩葉だなんて……呼び捨てにするなんて生意気よっ! でも、そんなに悪い気分でも無いというか……なんと言うか……」


「リコルちゃん……私達は何を見せられているのでしょうか?」

「さ、さぁ? 何かズレがあるのはリコルでも分かるけど……」


 詩葉さんが金策について考えてくれてるのはありがたい……が、夜の仕事だなんて認められる訳がないだろ? たしかにそういう仕事は割合が良いのかもしれないけど。


「いくらお金が必要とはいえ、詩葉さんが身体を売るのを許容なんて出来ないよ」

「……一縷君、今なんて?」

「えっ……いや……(あ、あれ? 詩葉さんの顔が怖いぞ?)」


 詩葉さんだけじゃなくて、他のメンバーからも鋭い視線を貰っている……気がする。なるほど、どうやら間違っているのは俺みたいだな。うん、やるか……土下座。


「だって、裏で、夜で、クエストって詩葉さんが言うからさぁ! でも、すいませんでしたぁ!」

「はぁ……どうしてこう早とちりしてしまうのかしら? 考えたら、そんなのはあり得ない事って分かるじゃないの。私は、誰の何?」

「詩葉さんは、俺の……いや、これより先を口にするのはちょっと照れるかな」


 人行く場所で土下座しているのよりも、照れる。改めて言うのは何故か照れる。少し不満そうな詩葉さんではあるが、雰囲気的には許してくれそうだ。


「うーん……そうね、ルフィス! 他のみんなを連れて宿で待機しておいて。一縷君は私とクエストを受けに行くわよ。あぁ、帰りは朝方になるかもしれないけど心配はしないで……私達はランクも低いから、まずは試されるでしょうし」

「試される……ですか? 詩葉さんと一縷さんが居れば大丈夫かとは思いますが……」

「えぇ、危険なクエストや厄介なクエストが回されて辿り着く場所だから、それ相応の実力が必要なのよ。まぁ、逆に言えば実力さえあればって話。私だけでも良いんだけど……二人の方が確かに効率は良いかもしれないし、それに……一縷君が疑うからね」


 あ、これはきっとずっと弄られるやつだと確信した。別に疑った訳じゃない。嫌だっただけで。それに、詩葉さんがそんな軽い女だなんて思っても無い。身体を売るほど資金面がヤバイのかと、心配が先走っただけなのだ。


「う、詩葉さん? その、クエストを受けられる場所は存じていらっしゃるのでしょうか?」

「ふふっ、大丈夫よ一縷君。もう怒ってないわ……でも、そうね。一縷君がどうしても心残りになると言うなら……何かして貰おうかしら? そういえば……前にも何かしてくれるツケがあったんじゃなかったかしら?」

「……あったような? 無かったよう……すいません、ありましたね」


 たしか、聖女を拾った時にそんな約束をしていた気もする。ヤバいな……溜まっていったらどうなっちゃうのか。きっと、永久にパシられるみたいな事になりそうだ。


「場所はこれから探すわ。でも、こういうのはだいたい裏路地に行けば大丈夫よ。ルフィス、宿に戻って待機。外に出るなとは言わないけど、十分に注意しなさい。不意討ちが一番怖いもの」

「分かりました……今日は宿で大人しくしてますね! では、皆で先に戻りましょうか」

「うん! リコル、お腹すいちゃった」


 ルフィス、リコル、聖女、レーロ。四人を見送るも少し心配になるのは過保護が過ぎるだろうか? ルフィスとレーロが居ればとりあえず戦闘面での心配は要らないけど、腕力的なものは弱い。不意に拘束具でも使われたら簡単に捕らえられてしまうし。一人確保したらきっと四人共に捕まったと同義だろう。


「心配なら少しでも早く帰ってやれば良いか……行こう詩葉さん」

「そうね。まさか、貴方も私も心配性だなんて笑っちゃうわね。最初は自分達の命を優先する気構えだったのに」


 本当である。召喚された最初の頃は、ルフィスが捕まろうとリコルが捕まろうと、まずは自分が生き延びる事を優先させようとしていた。でも、今やパーティーメンバーの事も大事に思っている。たしかに、何だか笑えてくるな。初志貫徹だって大事な事だろうけど、きっと変わっていく考えも同じくらい大切だろう。ブレブレな考えは良くないかもしれないけど。


「じゃあ、案内よろしく」

「えぇ、行きましょうか」


 俺と詩葉さんは、夜の路地裏に入って行った。


 ◇◇◇


「おい、あの話はどうなってる?」

「今度の標的は……」

「金は準備出来てるんだろうな?」


 さすが裏路地と言わんばかりに、怪しい会話がなされている。出来るだけ目を合わせないように気を付けてはいるが、話し声が聞こえてくるのは仕方ないだろう。


「プラチナ、首尾はどうだ?」

「ミストワン……雰囲気に飲み込まれないでちょうだい」


 詩葉さんも満更では無さそうだ。顔をクールに決めているのがその証拠。普段からクールではあるものの、いつも以上に格好つけているというか、キメ顔だ。たしかに雰囲気に飲まれて、ややそれっぽくしてみたが、若い冒険者が二人歩いてるだけである。つまり――。


「おいおい、こっから先は通行止めだぁ。ここらは俺らの管轄だぜ? 通りたきゃ金でも持ってくんだなぁ!」

「アニキィ! こんな奴等力ずくで装備剥いでやりましょう! 冒険者の一人や二人、どうにでもなりやすよ! 女は売っ払うのもアリですがぁ」


 まぁ、チンピラに絡まれるだろう。想定内ではある。ここまで頭が悪そうなのを見ると、こいつらはきっと末端だろうな。盗賊、山賊、海賊。それともギャング的な組織でもあるのだろうか? 裏路地の住人みたいな話は聞く事もあるが、いちいち構ってもられない。土地勘が無いのが一番厄介だったりするしな。


「ちなみに聞くけど、この辺りで報酬の良いクエストを受注している場所を知らないかしら?」

「あぁん? あー……良いぜ、紹介してやるよ! お前みたいな顔なら一日で稼げるだろうさ! ひゃはははは!」

「……一縷君と同じね。まぁ、誰かに聞いていればその内当たりを引くでしょ。行くわよ」


 チンピラを無視して通行止めと言われた場所を悠然と歩いていく。もちろん、そんな暴挙をただ黙って見ている様じゃチンピラなんてやっていけないのだろう。

 ――だが、相手が悪い。正直、何をしたのかは俺もハッキリと見えなかったけど地面に倒れていくチンピラ二人組を見て、「ドンマイ」の言葉だけが思い浮かんだ。財布とか盗まれ無い内に起きれば良いが、まぁそれは、どうでも良いことだな。


「表の通りとは違って……やっぱりなんか汚いな。ゴミは散らかってるし、灯りは明るく無いし。怪しいし……」

「雰囲気はあるから良いじゃない。いっそ城にでも忍び込んで、お宝を盗んだ方が早いかもね。一縷君、そういうの得意でしょ?」

「誤解を招くような事言わないでくれよ……。出来なくも無いけど、別に得意って訳じゃないぞ。それに、悪者から盗るならともかくなぁ。義賊的なのには憧れたりするが」

「王城に忍び込む時点で極刑ね。それにしても義賊ねぇ……私利私欲の為に盗もうとしてる私達は、義賊ですら無いわね。ま、そんな機会は無いだろうし」


 俺達は、裏路地の更に奥へと進んで行った。


 ◇◇◇


 フラグの早期回収には定評のある俺と詩葉さんだが、こんなにも早く訪れるとは思っていなかった。


「冒険者に頼めそうなクエストはその辺にある。勝手に探せ、決まったら俺の所に持ってこい。……あ? 実力を試さないのかって? 何年ここでいろんな奴を見てきたと思ってんだ。見れば分かる」


 俺達は無事に、裏クエストを取り扱っている店へと辿り着いた。そして、気怠そうな雰囲気の男に話掛けたら、この対応である。


「今、”冒険者に”って言ったわよね? 職業によって紹介するクエストは違うの?」

「……っち。当たり前の事をいちいち聞くな。冒険者用もあれば、暗殺者用や狩人用のクエストだってある。表で稼げない奴等が辿り着く場所だぞ」

「そ。ついでにもう一つ確認だけど、冒険者用のクエスト以外を受けても構わないのかしら?」

「オススメはしねぇ。失敗した時のリスクを舐めるな。高い報酬だが、それを受け取りに戻って来る奴等は少ねぇ……ちっ、面倒だ、さっさとしろ」


 やる気が無い割にはちゃんと説明して貰った所で、俺と詩葉さんはクエストを閲覧し始めた。とりあえずは冒険者用を。


「どれどれ……裏路地の掃除(人)に危険モンスターの捕獲。密漁に運送……なるほど、ヤバいな。裏路地の掃除とか……さっきのチンピラ組織の事か?」

「高級食材の密漁に物資の運送……普通に犯罪に巻き込まれるわね」


 普通のクエストは、商会でも個人でも発注主というのがある。だが、ここに在るクエストにはそれが無い。名前を出せない人が発注しているのだろう……そこに関しては首を突っ込まない方が賢明かもな。

 軽く見ただけでも、この危険なラインナップだ。確かに報酬は良い。が、胸を張ってリコルに会えなくなるのはさすがに勘弁したい。


「他のクエストは……人殺し、盗み、人拐い……かぁ」

「誰を……とか、何を……とか書いてないって事は後々指示があるのか、受けたら受付で教えて貰うかなのよね。あ、エルフを拐うクエストもあるわよ」


 予想してたより悩んむ。難易度は俺と詩葉さんがいればそう難しいものじゃ無い。だが、どのクエストを受けるかで決めきれないでいた。今、一番マシだと思うのが裏路地の掃除(人)である。でも、一日で終わるかと言えば無理だろう。そのクエストには条件として、表に住む人に被害が出ない事、組織壊滅が最低条件など、ルールが設けられているからだ。

 組織のトップや幹部を探って、夜の内にやらなければならない……つまり、一日で終わる量じゃないのだ。


「日雇いのをもう少し探してみよっか……」

「あ、『豚伯爵に拐われた娘を取り返して欲しい』とか『豚伯爵を殺して』とか『豚伯爵に略奪された骨董品を』……とか、豚伯爵は人気らしいわね?」

「どんな人間か想像出来るな……豚伯爵。殺しはまぁ、状況次第ではあるけど、複数からターゲットとしてクエストが出ているなら報酬は一気に手に入るな?」


 発注主の名前が無いから分からないが、一人が恨み過ぎて複数ものクエストを発注している可能性もある。もちろん、複数から恨まれてる可能性だってあるが……。とにかく、受けるなら割りと良いクエストかもしれない。今から豚伯爵の情報を集めれば、朝までにはかなりの情報が集まるだろう。


「今週のターゲットは豚伯爵で良いかしら?」

「オーケー! 最初だし、このくらいでちょうど良いだろうし」


 俺達は、クエストの受注票を複数持って受付に戻ってきた。気怠そうな男が、気怠そうにクエストを処理する。


「豚な、意外と解決しねーんだよなぁ……でも、まぁ良いか。えっと……最低限の事は伝えておく。まず、拐われた娘の名は『マナ』歳は……えっと、十……四、五、六くらいだ。何処に居るかは知らん、生きてるかも知らん。次は……盗まれた骨董品は『壺』と『絵』だ。どんな壺とどんな絵かは知らん……以上だ。あぁ、殺してもバレるなよ。面倒だからな。娘も骨董品も俺の所に持ってこい……その時点でクエスト完了だ」


 雑な説明だが、もう言うことは無いといった感じで酒を飲み始めた。仕方なく俺と詩葉さんはその店を後にしたが、流石は裏クエストだと世界の闇を感じていた。


「ふっ……あなたと私じゃ住む世界が違うのよ」

「今その台詞の練習とか要る!? テンション高いですね!?」


 よくよく考えたら闇の部分とか詩葉さんの好物でしたね。

 何やらやる気になっている詩葉さんに任せとけば大丈夫だろうと、俺は後ろからついて行っていた。まずは、豚伯爵の情報集めからだな。


 ――夜はまだ、始まったばかりである。





誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!


暑いですから、体調にはお気をつけて……

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