第40話 マッピングは冒険の基本だよね in 異世界
すいません、体調崩してましたm(._.)m
ぼちぼち書いていくので、よろしくお願いします!
前回のあらすじ
双子の幼女とお出掛け。
「えっと、これが全体の食料で……あとは個人用にも買い揃えないといけないわね」
「そんなに沢山買ってくのー?」
「そんなに買って食べれるのー?」
ギルドを後にした俺達は、何日分かも分からない量の食料を買い漁っていた。今回挑むダンジョンの特性上、食料は多ければ多い方が良い。とりあえず、はぐれてもそれぞれ一週間は持つ様に買っている。ただし、基準は聖女やレーロじゃなく俺の食べる量だ。
「ここのダンジョンは迷路らしくてな、食料は欠かせないんだよ」
「へぇ~、大変なんだねぇ~」
「へぇ~、凄いんだねぇ~」
アキちゃんフユちゃんはそこまでダンジョンに興味が無いのか、理由を聞いたらすぐ他の事へと意識が移っていった。ちっとも大人しくはならない二人の手を離す事は、出来そうに無い。すぐに迷子になるだろうし、二人の両親に怒られてしまう。
「一縷君、今回はいつもより稼がないと食費が馬鹿にならないわよ? エンゲル係数が大変な事になりかねないわ」
「そうだよなぁ~、出来るだけ早く良い狩り場まで進まないとだよなぁ」
食費をケチる事は出来ないし、紙やペン、インク代やその他の雑費。弱いモンスターから取れる素材じゃ賄えないだろう。宝箱に期待して動くのも危ない……となると、やはり作戦は『ガンガンいこうぜ』以外には無いという事だ。
「あっ! 見てお兄ちゃん、男の勇者様だよ!」
「あっ! お兄ちゃん見て、女の勇者様も居るよ!」
「「――――ッッ!!?」」
俺は双子と数秒だけ手を離してフードを深めに被った。詩葉さんもフードを被り直している。聖女はまぁ、別に大丈夫だろう。
双子が言う勇者様を見ると、四人組の男女。全員が同じローブを着ていた。視える所には護衛らしき影も無い。帝国とはあまりにも違う待遇に驚くし、少し油断していた。
だが、全員知らない奴等なのは助かった。顔を見られていたとしても街の住人程度にしか思われて無いだろう。
「勇者様~」
「勇者様~」
「あら、双子ちゃんなのね? 可愛いわ~」
「もう、あんな歳の子供が居るんだな……やっぱりこの世界の人達って早いな、いろいろと」
この対応からも、街の人達とは上手く関係を構築している事が分かった。冒険者から煙たがられていた帝国の勇者とは大違いだな。国……というか、環境だけであからさまに差が出来ている。
「勇者様の進捗はどんなもんですかい? あっし達は勇者様頼りですけぇ」
「お兄ちゃんが変~」
「変なお兄ちゃん~」
黙らっしゃい! せっかくのチャンスを活かして聞き出そうとしているのだから。詩葉さんと聖女は完全に反対側を向いている。俺に任せてくれると捉えて大丈夫だな。
「大丈夫ですよ! 順調に攻略は進んでいますから! 任せておいてください」
「今日は買い出しで、また明日から出発してしまうんで……また一週間近くは街に来れませんが、安心してください」
「えぇ、よろしくお願いしますね。ほら、お前達も勇者様を応援してやんな」
双子に最後を押し付けて、自然な形で勇者と離れていく。
どうやら勇者達は一度のダンジョンアタックで、一週間近く潜り、数日の休暇の後にまた潜るというパターンでやっているのだろう。
何だか、レベルや技術の底上げというよりダンジョンを攻略する事を目標にしているかの言い様だったが……流石に深読みし過ぎかもしれないな。順調ならばそれで良いんだけど、本当かどうかは詩葉さんに聞けばそれで分かる事だ。鑑定スキル……便利過ぎだよな。
「お兄ちゃん、どうして変な話し方したの?」
「お兄ちゃん、なんで話し方が変だったの?」
「それは秘密だ。ほら、買い物の続きに戻るよ」
食料を買い終えた後は、雑貨屋に訪れてマッピング作業の為の紙やペンを買い揃えた。リコルには荷物を持って貰ってるし、聖女にさせてみようかとも考えたが、やはりリコルに任せようという事で、聖女にリコルが持つ荷物の一部を持たせるという事で落ち着いた。
途中、休憩を挟んだりして買い物が終わった時には空がオレンジ色に染まり始めていた。そろそろ送り届ける時間だろう。
「やだやだ、お兄ちゃん達ともっと遊ぶ!」
「やだやだ、お姉ちゃん達ともっと遊ぶ!」
ゆっくりと双子の家に向かっている事に気付いたのか、駄々をこね始めた。
「約束だったでしょ? 約束は破ると大変な事になるんだぞ?」
「「大変な事?」」
「そう。約束を破った事をずっと後悔する事になるかもしれない。約束した相手を悲しませるかもしれない。約束した相手が遠くに離れて、破った事を謝る事が出来なくなるかもしれない。だから約束は大切な相手としかしちゃいけないし、破っちゃいけないんだ…………ちょっと、難しいかもだけどさ」
双子の年齢的にはまだまだ小さい子供だ。そんな子に約束について語っても意味が無いかもしれない。
顔を合わせて呆けている所をみると、やはり難しかったのかもな。数秒間、顔を合わせていた双子が妙に瞳を輝かせてこっちに視線を寄越した。あ、ヤな予感がする。
「「お兄ちゃんが私達を大切だって!」」
「おい、何故にそこだけを切り取ってるんだ……」
見てみろ、いや感じてみろ。詩葉さんの圧力を。無理か……詩葉さんクラスになると、どうやら圧力は全体じゃなく個人へと集中させる事が可能らしい。俺は今、背中に汗が滲み出していた。
「アキも、お兄ちゃんが大切だから約束守るよ!」
「フユも、大切なお兄ちゃんとの約束は守るよ!」
「……そうか。なら、とりあえずはお家までしっかりと送り届けるよ。それが約束だったもんな」
聖女の聖女的な微笑みと、詩葉さんの悪魔的な微笑みを受けながら、俺は双子を親御さんの元までしっかりと送り届けた。
二人の髪型の変化に気付いた父親が、とても喜んではいたのだが……髪型に頼り過ぎると、入れ替わった時に気付けなくなる事をソッと伝えておいた。
そして――――。
「お兄ちゃんに、感謝の気持ちだよ!」
「ちょっとしゃがんで、お兄ちゃん!」
「「…………チュッ!」」
俺は悪くない。悪いのは称号のせいだと心の中で唱えながら、双子の父親から逃げ出したまでは良いが、結局は先回りされた詩葉さんに捕らえられてしまった。
どうやら、宿に戻ったらお説教らしい。悪いのは……俺じゃないのに。
◇◇◇
「だだいま、皆。ぢぇは、しゃっしょくだが、あじだのがいぎをはじべばぶ……」
「いや、一縷さん……お帰りなさいの前に、ボコボコにされた理由を問いただすくらいには気になるんですが?」
「お兄ちゃん……また、何かやらかしたの?」
酷いなリコル……俺は無実なんだ。だけど、たまたま独裁政治の法に照らされた結果、有罪だっただけ。罰は、訓練のついでにボコボコの刑である。ボコボコの刑なんて言えば可愛く聞こえるかもしれないが、実際はそんな生易しくは無かった。
「一縷君は……ただ、リコルより少し年下の女の子にデレデレしてたから、お灸を据えただけよ? 気にしないでいいわ。それより、お土産もあるから」
詩葉さんが取り出したのは、腕に巻くミサンガのような紐。双子にリボンを買ってあげた店で、ついでに買った物だ。詩葉さんが、「この紐をパーティーの証にしましょう」と言い出した事で買うことを決めた品。
当然の如く、黒い紐は詩葉さんが取った。それから、赤い紐はリコルで、黄色がルフィス、白が聖女で、ついでに緑の紐をレーロに。そして俺は、欲張りにも五色の色で作られた虹紐だ。
全員が左手首辺りに巻いて、その手を座っている所から中央に向けて出す。何だか初めてパーティーっぽい事をした気もするが、とりあえずむず痒い。俺がそう感じているという事は……。
「ふふっ、中々に良いじゃない。皆、無くすんじゃ無いわよ?」
「濡れ無いように気を付けないとですね!」
やはり、この二人は特にご満悦そうで、楽しそうだった。パーティーでお揃いの何かって盛り上がるもんね、気持ちは分かる。
気分が上がった所で、誰かそろそろ俺の治療をしてくれても良いんじゃない? と思うけど、詩葉さんしか出来ないからもうしばらくは我慢しないといけなさそうだ。今の気分を落とさ無いようにするのが優先だな。
「お土産も配ったし、とりあえずダンジョンの事から話していきましょうか。食料の事も話しておかないとね」
ボコボコの俺の代わりに、詩葉さんが今日の出来事や調べた事に関して簡潔に説明してくれた。ダンジョンについてや勇者について、そして街の様子とかも。
食料に関しても多く買ってるのは、万が一の時の為である事を念入りに忠告しておく。特に、よく食べる者達には。
説明をし終えたら、皆で晩のご飯を頼みに向かった。外食はリスクが高いし、店の食堂もそこそこのリスク。だから、部屋に運んで貰う事にした。
その間に、詩葉さんがリコルに簡単にマッピングのやり方をレクチャーするらしく、他の皆は雑談で時間を潰していた。一応、このタイミングで詩葉さんに回復魔法を掛けて貰う事に成功した。やはり、土下座すればなんとかなるもんだな。
食事を終えると、もう明日に向けての就寝しかやる事は無い。俺も部屋に戻って、明日からの事を考えながら眠りについた。
◇◇◇
「どこも似たようなものですねぇ」
「でも、やっぱり特徴は出てるよな。露店が綺麗に並んでるとか、食料系が多いとか……マップとかな」
ダンジョン前が賑わっているのは、たしかにどこも似ている。
帝国と王国を比べるなら、やはり帝国の方が強そうな冒険者は多い。だが、王国にだって高ランクの冒険者は居るみたいだし、環境の良さは圧倒的に王国だ。
『へいらっしゃい! うちのマップは正確に描かれているよ!』
『俺の店のマップは、出現した宝箱の位置だって載ってるぞー!』
『あたいのマップは、最新さ! 買ってっておくんな!』
マップ屋がそこそこ多い。最新の場所がどこかは分からないけど、まだ行かないだろうからいらないし、他もなんだか怪しく感じてくる。
1枚ずつくらい買うのも良いかもしれないが、自分達で作るのが無難だろうな。
「じゃあ、行きましょうか。リコル、頼んだわよ」
「うん! 頑張って描くね」
俺達はダンジョンの中へと入っていく。
薄暗い通路を抜けた先は――まるで迷路そのものであった。しかも、薄暗いせいもあって遠くまで見渡せない広さがある。
今は少し高い所から見下ろしている。左右にはその迷路に続く下りの階段がある。そして、見上げた所にも――通路があった。
まるで、空中庭園に続く通路の如く、上空にも通路がある。迷路は迷路でも立体的な迷路であった。
ご丁寧な事に、迷路での禁じ手である、壁を登って歩いていく事は、トゲトゲにより不可能だ。しかも、壁を壊していく事だって大変そうだ。消滅魔法でも普通の魔法でも、魔力に対して進める距離が少な過ぎて無駄だろう。
「これは……」
「困ったわね……。ギルドに行った時に時間を惜しんで新人職員の列に並ぶんじゃ無かったわ……私のミスね、ごめんなさい。それに、上空を通るのだとしたら紙を二枚使わないと……足りるかしら?」
「と、とりあえず……ここから視える範囲は描いてみるね?」
詩葉さんが愚痴ってる所をみると、ダンジョンの情報を集めている時に迷路とは教えられたものの、こんなに複雑だとは聞かされてなかったのだろう。新人とはいえ、これはクレームを入れても良いレベルだろう。
リコルが詩葉さんの指導の元、どこに階段があって、どこが行き止まりかを細かく描いていく。スタート地点が見渡せる所からだからまだ良いが、下の迷路からだとすると……何か方法を考えとかないといけないかもな。
「リコル、冒険者達の歩いて行く方向もメモしておいて」
「わかった!」
「他の冒険者達……紐で繋いでたりしてないのな?」
ソロやペアで活動してる人や、パーティー単位で動いてる人が通り過ぎていくが誰も転移罠に対する備えはしていない様に見える。もしかすると、その罠がある場所は知れているのかもしれない。
ちょっと、その辺も新人じゃないギルド職員さんに聞かなければだな。死に直結しかねない。
「ね、ねぇ……詩葉姉? もしかすると、ゴールまでの道が複数あるのかも」
「リコル、どういうこと?」
「同じ分岐点で、右に曲がった冒険者と左に曲がった冒険者が居て……どっちも初めてって感じゃなさそうだったの」
「なるほど……ホント複雑ね。マップが複数売り出されている理由はこれかも知れないわね」
詩葉さんとリコルに難しい事は任せる事にして、まだ時間が掛かりそうという事もあって、俺を含む他のメンバーは休憩に入った。
「ここのダンジョンは時間が掛かりそうですね?」
「そうだな。でも、暑いとか寒いの特殊エリアが無いだけありがたい」
このダンジョンでは、まだやらかしてない事もあって、ルフィスは顔を出している。流石にレーロはフードを深めに被らせている。
帝国では勇者との接触は仕方なかった面もあるが、今回は階層を占拠しているという事も無さそうだし、関わる事は無いだろう。
「最悪、壁を越えて行けば良いと思うんですけど~?」
「普通に登るのは無理そうだぞ? 壁だって高いし、垂直に立ってるし、凹凸も少ない……ほぼ、無いって言ってもいいくらいだし」
「土魔法で階段作れば良いと思うんですけど……?」
「それはどうやら無理みたいよ?」
レーロが珍しく、凄く良いことを言った気がした途端、詩葉さんの言葉が割り込んだ。
「無理って?」
「そう、都合の良いダンジョンでは無いって事よ。ダンジョンが迷路としての機能を損なうと判断するモノは出来ないみたい。後で降りた時にでもやってみせるわ」
「描けた! これで視える範囲までは大丈夫だと思うよ!」
視える範囲から先がどれ程あるのかは分からないが、とりあえずは行ってみるしか無い。俺達には聖女やルフィスが居るし、どの道を行くか迷ったら二人に任せよう。
「じゃあ、行こうか。リコル、マッピングはお願いね! モンスターは俺達が倒すから」
「うん!」
休憩を終えて、右の階段を降りていった。壁は高く、道幅はそこそこ広い。巨大迷路なだけはある。
さっそく、詩葉さんが土魔法で階段を作成するが、五メートル近くある壁の三メートル付近から作れなくなっていた。だが、上空へ放つ魔法に関しては問題無く飛んでいく。
ダンジョンが何をセーフとして何をアウトと判断するのか、調べる必要もありそうだった。
「壁も硬いな……消滅魔法は使えそうだけど、魔力が減りが大きそう……」
「普通に攻略していくしか無さそうね……信頼出来る地図があれば良いのだけど、来たばかりで冒険者との交流も無いしね」
交流が無いどころが、そもそも交流する気はそんなに無いのが俺達パーティーだ。ひかり……に会えたらと思うが、交換条件でどんな条件を出される……もとい押し付けられるか分からない。ひかりは切り札扱いにしておくか。
「あ、ゴブリン」
「ゴブリンですねぇ……」
一階層のモンスターだけあって、木の棒を片手に持ったゴブリンが一匹でさ迷っている。だが、何だか一階層のモンスターが武装しているのは少しだけ裕福な感じがしてくる。お国柄という事だろうか?
「えいっ」
『ぐぎ……ぎ』
槍で一突き、サクッと倒して進んでいく。きっと、他の冒険者の後ろを勝手について行くのはマナー違反だろう……“バレたら”だが。
たまたま鉢合わせした時にどんな対応をすれば良いのか分からないが、その辺は詩葉さんがいればどうとでもなるだろう。なんなら、聖女の金稼ぎのチャンスかもしれない。とにかく、穏便に行けばそれが一番だな。
「お兄ちゃん! 次を右に行って、突き当たりを左で、また右に。そこからは描いてない場所になるから慎重にね!」
「了解だ!」
念のためにレーロと紐で繋がってるリコルから指示が飛んできた。ちなみに、聖女は詩葉さんと紐で繋がっている。これで効果があるのかは分からないけど、無いよりは気持ち的にマシだ。
先程、紐を結んでいる時に、リコルとペアとなるレーロに対して詩葉さんからの脅しがあった。
「仮にリコルとレーロが二人になった時、リコルに傷一つでも付けてみなさい。エルフの住む森を破壊するわよ?」
「ひぃぃ……い、命懸けで守る事を約束するんですけどぉ……」
まぁ、レーロの強さなら問題は無いと思うが……強さを発揮する前にやられない事を祈るしかない。そこはリコルがしっかりするだろう。
描いていた道が終わってからはリコルの指示通りに進んでいく。が、曲がり角が多いのはどうにも気になってしまう。敵が潜伏し易く、背後からの奇襲だってし易い環境にある。逃げやすいかもしれないが、行き止まりにぶつかったら最悪だろう。
“あぁ、フロア全てを把握してたら何でも出来るな”
冒険者は善人ばかりじゃない。自分に限界を感じた冒険者、ならず者、金の為なら平気で動く人間。そういう者達にとって迷路となっているこのダンジョンは良い狩り場だろう。
どうも自分の思考回路が犯罪者寄りになっている気もするが、それでリコル達を守れるならむしろありがたくも思える。お人好しじゃ自分が損をすると、冒険者になってから思い知らされたのかもしれない。
「まだ一階層だから大丈夫だと思うけど、気を付けろよルフィス。罠を仕掛けているのがダンジョンだけとは限らないからな」
「それって……ここで冒険者を襲っている冒険者が居ると言うことですか?」
「可能性の話だけどな。ギルドで調べたらハッキリすると思うけど」
ルフィスや聖女……それにレーロはアホだから、人が困っていると親身になって話を聞いてしまうだろう。パーティー単位なら俺や詩葉さんが居る……でも、転移罠に嵌まったら? 最悪の状況は考えだしたらキリが無いな。後で言い聞かせておかないと駄目だろうな。
――三回ほど行き止まりに来てしまったが、何とか一階層の攻略マップが完成した。
出口を見付けるにあたって、問題があるとすれば……ルフィスも聖女も次の階層へ進む出口の方角は合っているのに、それが迷路に阻まれるという事だ。今回は本当に時間が掛かりそうである。
「さ、行きましょうか。次からが本番よ」
誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)




