第37話 さらば、最後まで嫌いだったぜ in 異世界
お待たせしました!
キリが良いので短めです!(展開が思い付かなかったとかじゃないんですけど!)
……という事で、よろしくお願いします!(´ω`)
火事と、街中からも見える上空への魔法の発動が行われた事によって、街行く人が混乱している。
子供を連れた母親は出来るだけ遠くへと離れる為に動き、火事場付近の建物を所有している人は火が移らない様に消火を急ぐ。
そして、大半は野次馬根性を持つ人達で、俺達と同じ方向へと走っている。
「詩葉さん、この先って何があったっけ?」
「たしか…… ぅく、広場になってなかったかしら?」
人混みに紛れてしまいそうな詩葉さんの手を取って、引き寄せてそのまま人の少ない裏通りへと抜けた。
「あ、ありがとう……助かったわ」
「とりあえずバラバラにならなくて良かった。それに、俺達ならアッチから行った方が楽そうだし」
俺が指差したのは上の方。つまり、屋根だ。
どしどしと家主には迷惑を掛けてしまうが、緊急事態だし……それに、そうすぐに正体がバレる事も無いだろうという算段もある。
俺の言いたい事に気付いた詩葉さんが颯爽と、壁や窪み、他の掴める所を使って屋根の上まで駆け上がっていく。それに続くように俺も登り、高さの無い平屋からスタートして、走り出した。
障害物というか、屋根から屋根への跳躍にリコルを背負っている事で少し躊躇いそうになる事もあったが、勢いに任せて全てを越えて来た。
――そして、屋根上から広場を見渡した時に、衛兵と勇者に取り囲まれている岩の球体を発見した。
「ちっ、帝国の仕業か」
「あれは……きっとレーロの精霊魔法でしょうね。私がやったように味方を内側に取り込んでいるのでしょう」
「お、お姉ちゃん達大丈夫なの?」
きっと、俺達がダンジョンから出た所をどっかから監視していたのだろう。理由はおそらく、勇者の居た階層への侵入と逃亡。下手すると、あの時のアレが有加への暴行なんて事にされているかもしれない。
だからと言って、宿屋に火を放つのは意味がわからない。過激過ぎるというか、イカれている。勇者の沽券に関わるのか、それとも他に理由があるのか……とりあえずやってられないな。
「すぐ逃げるとしても、馬車をどうする? 宿屋に置いてきたままだろ?」
「そうね……いえ、一縷君。あそこに沢山あるじゃない」
「あれって、どこかの貴族か偉い人のみたいだけど?」
そう言い返すと、『だから何?』とでも言わんばかりの悪い笑みを浮かべ返して来た。まぁ、異論は無い。雨を避けられる屋根付きだし俺達パーティーが乗っても大丈夫そうな大きさだ。
ここまで連れて来てくれた馬達とはここでお別れになりそうだ。最後にエサでもあげたかったが……今は時間が無いし、あの宿屋への寄付という事で良いかもしれない。
「んで、作戦は?」
「まだ状況が膠着しているわね。誰か交渉する人が出たら動きましょう……一縷君が」
「作戦があってだよね!? 全ての罪を俺に押し付けようとしている訳じゃないよね!?」
詩葉さんならやりかねない。俺を囮にして裏で何かをやるのかも知れないが、結局それも俺の罪として上乗せされるに違いない。何か問題を起こす事は避けられないが、世界的に指名手配されるつもりは無い……というか、されたくない。
「……私はとりあえず、馬車を確保してから現れるわよ?」
「一瞬の間! そして疑問系! はぁ……とりあえずどうするの?」
「馬車を用意出来たら合図を出すわ。そしたら嫌がらせでも何でも良いから仕返しでもしてきなさい! そしたら逃げるわよ」
リコルを詩葉さんに先に預けておき、状況が動くのを待った。
詩葉さんの雑な作戦は、割りといつもの事だし慣れている。だが、よくよく考えると勇者や衛兵の居る場所からどうやって逃げ出せば良いと言うのだろうか?
交渉なんてされても上手く対応出来るとは思えないし……。やりたい仕返しは十個くらい浮かんだのにな。
「おい、またかよっ! 出てこいよ、何もしねーって言ってるだろ!?」
「あの時よりは脆そうだけど、すぐ修復するぞ?」
「なら、強力な一撃でもお見舞いするか?」
「ばっか、中の奴等が傷付くだろ?」
岩の球体に勇者が張り付いて攻撃している。邪魔だな。ひたすらに邪魔……帝国の勇者ってホントに邪魔だなぁ。
レーロが居なければあの作戦は取れなかっただろうし、役に立ってくれて評価を上げようと思ったが……よく考えると全部あいつのせいだったな。
「おい、軍務卿のラスタブ伯が到着なされたぞ! 通せ! 通せ!」
一際大きな声が響き、そちらに注目すると、衛兵は端へ移り頭を下げている。勇者達もとりあえず攻撃は止めて一ヶ所に集まりだした。
それを好機とは別に思わないが、行動するには丁度良いと踏んで俺達は動き出した。
詩葉さんはリコルを背負って馬車の調達に、そして俺は――広場に降り立ち、何事も無いように、さも当然とでも言うかのように、注目の逸れた岩の球体がある場所まで平然と歩き出した。
「おーい、生きてますかぁ? って、聞こえないか。これも魔法なら……『部分消去』」
「わっ、私の魔法が!? 意味わかんないんですけど!?」
岩の中からレーロ、聖女、そしてルフィスのみんなが揃って座っていた。とりあえず無事そうで何よりだ。
「一縷さん! 良かったですよぉ~怖かったですよぉ~!」
「まぁ、聞きたい事もあるんだが……とりあえずレーロはいつでもさっきの岩で囲う準備を、ルフィスと聖女は俺の後ろで周囲の警戒……風でフードを取られないようにな?」
涙目のルフィスを何とかしてやりたいが、今はこの場を終わらせるのが優先事項だ。
岩から出てきたローブの三人と更にローブの人物……俺だけど。これでもかとと言う程に、怪しい四人組に対するのが勇者や衛兵に貴族だ。周りの野次馬共からすれば、圧倒的に俺達が悪で勇者が善だろう。
なら、遠慮なくやらせて貰うが……まずは対話からだろう。軍務卿なる伯爵様が、勇者を引き連れて近付いて来ている。
「私はこの国の軍務を指揮している者だ。私も何かと忙しい身でね、おとなしく拘束されてはくれまいかね?」
「おっと、いったい何故に俺達が捕まらねばならない? 仲間は行きなり衛兵と勇者に追われて怯えてしまっている。あぁ、勇者とは罪なき者を追い掛け回すのが仕事なのかな?」
「ふざけんな!!」
「そうよ! あんた達が悪いんでしょ!?」
「俺達は有加に危害を加えた奴を探してるだけだ!!」
なるほど、俺か。マジごめん……。
というか、有加なら何でもないと言ってくれる筈なんだが……居ない。手当てに時間が掛かっているのか? いや、骨とかは折ってないしそこまでの怪我では無い筈なんだけど。
「知らないな。俺達に勇者の知り合いは居ない。それに……勇者に怪我を負わせられる人間がそうそう居るとでも?」
「それは……いや、でも佐島さんは怪我を!!」
「それに、私達の居た階層に入ってきたのって貴女達でしょ!? 全員ローブだし、背丈も似てるわ!」
まぁ、全員ローブは流石に怪しいし、イメージを繋げて俺達を犯人と断定するのは分かる。というか、正解だしな。
でも、これで俺達を追っている理由が判ったな。仲間がやられたから、その仕返しに。
「そんな曖昧な証拠で、宿に火まで放ったのか!! 卑劣だな。店の店主が泣いていたぞ! 勇者様は何でもアリなんだな!!」
「は……宿に火? いや……俺達はここで待ち構えてただけだぞ!! デタラメを言うな!!」
ここで野次馬達が口々に火事があった事についての話をし始める。良い援護射撃だ。
それが勇者の耳にも届いたのだろう。少し狼狽え始めた。
勇者達がここで待ち構えていたという事は、やったのは衛兵達という事になるが、どうして逃げ回っていたのだろうか? レーロとルフィスが居れば撃退くらいはそう難しい話では無い筈だ。
「な、なぁ? 何でお前らはここまで逃げて来たんだ?」
「いえ、その……レーロさんが火が怖いというか、木材が燃えていく光景が怖いと言って走りだしまして……幸い、荷物は何とか持ってきたのですが」
レーロを叩こうと思ったが、怖いのなら仕方ないか。
こいつの評価を上げれば良いのか下げるべきか迷っていると、勇者達も落ち着いてきた様子だ。もっと混乱してくれれば楽だったのに。
だが、誰も口を開こうとはしていない。何を言っても俺に火事の事を言われると思っているのだろうか? なら好都合なのだが。
「ふむ、事情は判った。その宿には補修の費用を国から送ろう。だが、貴様等の疑いとは別件だ。ダンジョン内では勇者を育てる事が優先である。それを邪魔した上に危害を加えたとなると、罰せねばならない」
「まぁ、そうだろうな。そんな不届き者が居るならそいつは罰せられるべきだろう。ですが……勇者を倒しうる人物をどうやって捕まえるのか、是非ともお聞かせ願いたいですね? それとも、我々も微力ながらお力をお貸し致しましょうか? もちろん、報酬は頂きますが」
ヤバい。なんか、煽るのが楽しくなってきた。この帝国に来てからの鬱憤を出しちゃってる気がする。
勇者の中には既にキレ出しそうな奴も何人かいるし、衛兵も剣や槍を構えている。
ちょっとやり過ぎたかもしれないし、そろそろ気を引き締めるか。
「協力してくれるかね? なら、少々お話を聞くために拘束されてはくれまいか? 報酬としてお茶くらいは出そう」
「はっ、そんな事なら答えてやるよ。勇者に危害を加えたなんて知らない事だ。勇者の居る階層に忍び込む術も知らない。以上か? 満足だろう? 解決だ。さ、帰らせて貰うぞ?」
俺が勇者達の方を見ているから、奴等の方角の空に詩葉さんからの合図があることに気づけた。
馬車はもう手に入っているのだろう。後は上手く騒いで逃げるだけだ。
「おい、詩葉さんが馬車を調達し終わったみたいだ。隙が出来たら左の道に走るからな」
俺がそう皆に声を掛けたタイミングで勇者の一人が暴走し始めた。
「だぁぁぁくそっ!! 訳わかんねぇよ!! お前のその声、魔族を倒した奴にも似ているしよ!! 一体誰なんだテメーはよっ!」
「ナンノコトダー? 魔族ー? シラナイハナシダナー」
くそ、あいつはたしか……後藤とかいう男だったな。
声か、しまったな。完全に忘れていた。高くする訳でも無く、低くする訳でも無い……素の声で話していた。
時間も経っているし、大丈夫かとも思ったが……やるじゃないか後藤。
「くそっ、ムカつくなぁ!! この腕輪もオメーも何もかもが!!」
腕輪……腕輪か! 仕返しに追加しよう。というか、今すぐにやってやろう。そうすれば勇者達は俺達を味方だと思って逃がしてくれるかもしれない。
最高なのは、衛兵達の言うことを無視して俺達の逃走を助けてくれる事だけどな。
「おい、その腕輪と言うのを見せてみろ!! これでも俺は呪を解く職業についている。役に立てるかもしれないぞ? その代わり……言いたい事は分かるだろ?」
「――っ!!」
後藤が息を飲む。後藤だけじゃない、今の台詞が聞こえた勇者達からも強い視線を感じる。
思ってたよりも、帝国から良いように使われていたのかも知れない。こればかりは本当に運が無かったと言えるだろう。
「おい、勇者の腕輪に呪いなどない!! この腕輪は勇者である証だ!」
「証ならステータスに既に記載されているだろう!! 聞け、勇者! その腕輪を外して欲しい者だけその腕輪を俺に見せろ」
小声でルフィスに演出のお願いをしておく。
案の定、勇者達が腕を空に伸ばしている。素直でよろしい。
「おい、勇者! 二人一組、交代で寝る事を心掛けないとまた縛られるぞ!! 広範囲魔法『呪文消去』」
コロン……コロンコロン
勇者達の足元に腕輪が転がる。
勇者一人一人に驚愕と喜び、疑念の表情が浮かんでいる。
ある者は隣の者と抱き合って、ある者は落ちた腕輪を踏み潰している。
「オッケーだルフィス。勇者、一つだけ教えておく。佐島有加という者の腕輪も大丈夫だ。最後にあの城を見ろ」
今の俺の声は人を動かす。勇者が城を注目すれば民衆もそれを見る。俺はレーロ、聖女、ルフィスに走り出す準備を整えさせる。
「えっ? 城に何かするのかって? ははっ……掻き消えろ屋根部分!! 『雨漏り地獄』!!」
尖っている部分や、なんなら平らな部分の上まで削ってやった。
「ふははははははっ! バーカ! バーカ!! 帝国のバーカ! 勇者も嫌いだバーカ!! お前ら行くぞ! 何か言っておけ」
「えっと、えっと……エルフを拐うのを辞めて欲しいんですけど!! バーカなんですけどー!」
「昔から怖いんですよぉ! 暴力反対! ば、バーカ……ですぅ」
「信仰心が足りてないのです~、ちゃんと悔い改めるのですよぉ~? 愚か者達よ~」
俺達は野次馬の居る方に走り出し、道を開けて貰ってそこを走っていく。完全勝利とはこの事だな。
「ちょっと待てぇぇぇー!!」
「ふざけんなよ、テメー!!」
「うぇ!? 何かキレて追い掛けて来るんだけど!? まさか、言い過ぎた?」
俺の考えた最強の作戦によると、最後尾で援護してくる予定だったがそんな気配じゃない。俺達を追い掛けて来ている。
流石は勇者のスペック、このままじゃ聖女が先に捕まってしまうだろう。
「聖女、おぶる! レーロは、足止めの魔法を余裕があればやってくれ!」
「ふぃ~ですねぇ~」
「余裕に決まっているんですけど!」
軽い障害物なら簡単に越えて追い掛けて来る、すこぶる面倒な奴等だな。
「くっそ、はえーぞ!!」
「やっぱりアイツだろ犯人!!」
「それよりも……」
「「「あの城、俺達も住んでんだぞぉぉ!!」」」
ホント、運の無い奴等だな。まさか、あそこに住んでいたとは……それはそうか。これはうっかりしていたけど……ちょっと面白い。後で詩葉さんにも話してあげようかな。
「これを気に普通の生活でもしてみろ! クエスト受けながらダンジョンで鍛えれば良いだろうが!」
「「「おっ、それもそうだな!」」」
追い掛けて来たのがこんな奴等で助かった。もう少しで詩葉さんの待つ場所へと着くだろう。あとは、ちゃっちゃと街を抜けて次を目指そう。
◇◇◇
「こっちよ!」
「えっ……ちょ、えっ!? これ……」
「そりゃ、どうせなら“一番良い馬車”が良いじゃない?」
操縦席から詩葉さんが俺達を呼んでいる。
操縦席までは雨避けの屋根が届いていないけど、俺達が乗る所にはしっかりと屋根がついている。というか、箱だ。四人くらいなら入れそうで、高級感の漂う雰囲気の箱馬車。
だけどふと、本当にこれを使って良いのかという不安に襲われる。
箱部分は綺麗だし、馬だって足が速そうだ。だけど……だけど……。
「なんか、ガッツリ貴族のマークみたいなのあるけど!?」
「やったじゃない。つまり、貴族よ?」
貴族か、やったぜ! とは、流石にならない。というか、ヤバくない? 今冷静によく考えたら、王の城を攻撃するとか頭がおかしい。詩葉さんも、軍務卿の馬車を盗んで来るとかヤバい。
――ヤバい、ヤバいヤバいヤバい!!
「詩葉さん、急ごう! 王城を整えてきちまった! 馬車も盗むとかヤバい」
「何それ……面白そうじゃないの! なんで呼んでくれなかったのかしら!?」
無茶を言わないで……と、言う時間も惜しい。
さっそく箱にレーロ、聖女、ルフィスを乗せて、既に箱に乗って居たリコルを膝に乗せる形で俺も乗り込んだ。
この中からでも、操縦者の居る場所へは声が届く。小さい窓口が設計されているおかげだな。俺はそこから、詩葉さんに急ぐ様に伝え、出発した。
街を行く度に、道を譲ってくれる。これは中々に良い特権だな。今は助かる。
詩葉さんの運転は少々荒くなっているけど、今は我慢だ。レーロが酔います酔いますとうるさいけど……これは吐かないように願うしか無い。帝都を脱出するまではな。
「一縷君、街の出口に着くわ! この馬車の特権を見せてあげたいけど……とりあえず全員を消しておいて!」
「分かった。大丈夫になったら言ってくれ」
俺達を乗せた馬車は一般用の出口から横にズレて、貴族用の閑古鳥が鳴いている方へと進んで行った。
何となく中央に集まって、小さく纏まっていたからどんなやりとりがあったかはわからないが……一度止まって再び動き出すのに、そう時間は掛からなかった。
――俺達はようやく帝国を脱出し、次のエルミック王国へ向けて出発出来たのだ。
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イチル キリシマ Lv61
HP 2100/2100
MP 13000/15000
STR 140
VIT 120
DEX 121
AGI 141
INT 109
LUK 59
スキル
魔力制御 Lv3
槍術 Lv5
雷魔法 Lv2
変熱耐性 Lv3
柔術 Lv2
格闘術 Lv3
ユニークスキル
『消滅魔法』
称号
『消滅の勇者』
『救う者』
『幼女キラー』
『優柔不断』
『笑いの先駆者』
『対城兵器』
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ここのダンジョンに潜って、レベルも上がったが……何よりスキルのレベルアップが多かった。
確かに鍛えていた感覚はあったし、過酷な環境だった。お陰で強くなれたし、それだけは帝国に感謝をしておこうか。
「よし、暇だしトランプでもするか」
次に立ち止まる街までどれくらい掛かるか分からないけど、また暇な移動時間が多くなる事だけは分かっている。夜になる前に詩葉さんに鍛えられるけど、それはそれこれはこれである。
「トランプ? って、何なのか気になるんですけど?」
「私が説明してあげますよっ!」
ルフィスがレーロに説明をしている間に、何のゲームをするか決めといて……俺達は飽きるまでトランプで時間潰しを始めた。
誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)




