第36話 誰が狙われたんだ!? in 異世界
お待たせしました!
今回は少し短いです!
感想で詩葉さんの魔王化というアイデアをパクって、後半で少しだけ悪詩葉さんを出してみました。
よろしくお願いします!(´ω`)
四十一階層。めちゃくちゃ……寒い!!
汗を掻けば、それが冷えて熱を奪われる。だが、戦闘も楽じゃない。どんどん強くなるモンスターが襲いかかってくる、一度に複数体もだ。
「寒いんですけど……」
「エルフって本当に環境の変化に弱いのな……」
「一縷君、右の遠方に敵影よ」
詩葉さんに言われた方向を確認すると、確かに小さく動いているモンスターの姿が見える。別にこの方向に進む訳では無いが、せっかく見付けたのなら、経験値として倒しておいた方が良いだろう。
俺は望遠レンズを覗いて、標的の居る方向にピストル型にした右手を向ける。
「何も解らぬままに消えて逝け……『消滅狙撃』」
二体居た鬼人の消滅を確認して、羨ましそうに見てくる詩葉さんとルフィスと今の攻撃について話ながら進んでいく。
遠くに敵を発見出来た時の楽さは凄いが、ちゃんと槍の練習もしている。最近は詩葉さんと格闘技の訓練をしているからか、人型のモンスターの動きを予測出来る様になってきた……気がする。
パワーは相手の方が桁違いに強いが、当たらなければ意味が無い……と、俺だって学んでいるのだ。
「ルフィス……交代しよう」
「はいっ! 次は任せてください」
階層が変わると敵も変わる。だが、俺達は得意なモンスター苦手なモンスターに関わらず、交代する時に交代する。
レベル的にはルフィスにピッタリの階層だし、ここらで上げておくと楽になるだろう。
だが、ルフィスが戦闘に立つと……決まって一緒に前に出る奴が居る。そう、もちろんレーロだ。別に戦闘に手を出す訳じゃないが、戦闘に関して口を出すのだ。
ルフィスは嫌がって無く見えるが、俺だったら集中力を乱しているだろう。『そこはもっと……溜めるべきなんですけど』『もっと、効率と術式を見直すと良いんですけど?』などを横で言っている。
魔法に関してはエルフの言う事に一家言あるのは確かだ。だから、ルフィスもしっかり聞いて盗み出そうとしているのかもしれない。
「でも、細かすぎというか……うるさくない?」
「間違った事は言ってないのよね……我慢すれば、ルフィスの腕も上がるでしょう」
「火よりも熱い炎の力よ!! ――『炎の重槍』!!」
「魔力を陣に注入する際に、まだまだ無駄にしている部分があるんですけど」
鬼教官よりも細かい所で注意されている気もするが、あれがルフィスの為になるのなら俺が口を挟む事では無いだろう。
アフターケアはリコルや聖女辺りが上手くやってくれるからな。
――細かい事を言われているが、しっかりとルフィスは敵を倒している。
敵の数も増えて、戦闘の回数は多くなっているが次の階層まではやはり早い時間で来れていると思う。
ルフィスと交代しながら、俺達は四十五階層にまでやってきた。
予想通りに、ここからはボス部屋になっているみたいだった。
◇◇◇
「よし、突入!」
四十六階層のボス部屋に俺達は入っていく。
ボス部屋に入ると、天井や壁を確認するのだが、今回はそんな事をする必要が無かった。真正面に……“美しい”を形にしたとしか思えない女の人が居たからだ。
あれは……モンスターなのだろうか? もしかしたら詩葉さんのパーティーメンバーかもしれないと思って、聞いてみたいが目が離せない。
キラキラとして見える髪。整った顔に、理想的なプロポーション。扇情的な服装……美の女神かとも思った。
――そして気付いた。“あぁ、そういうタイプか”……と。
男を誘惑して近付いた所を襲うモンスターは居るらしい。女を誘惑する奴も。何故か分からないが、そういうモンスターが居るという事を詩葉さんにめちゃくちゃ教えられていた。
それが功を奏したのか、美しく惚れ惚れするその人にいくら手招きされようが、近付こうとは思わなかった。
「詩葉……さん。状態異常かもしれない」
「あの醜女がどう見えるの?」
「美の結晶」
――――バチンッ!!
思いっきり頬を叩かれた……。俺は知っている、回復魔法はこんな叩かなくても発動する事を。完全な私怨で叩かれた事を。
もう一度モンスターを見てやると、さっきの美しく微笑んで居た人はもう居なかった。そこに居たのはくすんだ髪、醜悪な顔……リコルの首飾りを作ってくれた、あの美魔女よりも変化が激しかった。
もう少し、あの美しい姿を見ておけば……と、思ったのは内緒である。
「醜女……だなぁ」
「一縷さんにはどう見えたんですか?」
「人の辿り着ける領域じゃ無かったな……痛いっ!?」
また詩葉さんに叩かれた。だが、そう見えたのは事実だしモンスターが悪いのであって俺が悪い訳じゃない。
今思うと、男だけのパーティーだったら詰んでいたかもしれないボスだな……俺はギリギリで大丈夫だけど。
「ちょっと詩葉さん!? ポンポン叩きすぎじゃないかな!?」
「一縷君が悪いんじゃないかしら?」
「でも、完全に見惚れてはいなかっただろ? それはさ、完成された美よりも美しいと思える存在を知っているから……だ。と、という事で倒してきますっ!!」
醜女はめちゃくちゃ弱かった。本当に男だけならヤバかったパターンだろうな。そういう敵は今後も気を付けないといけないだろう。
――と、思って進んだ次のボス部屋。男を誑かすモンスターが居るのなら、当然、女を誑かすモンスターもいるだろう。
「格好いい人が居ますっ!」
「凄く好みですけどっ!?」
「あれが天使様なのでしょうか~」
「あれっ!? お兄ちゃんが二人に!?」
「……っ。皆! しっかりなさい!!」
さっきの俺もこんな感じに見えて居たのだろうか……? だとすると、男女ペアで行く事もオススメしない。何かこう……精神的にダメージがある。とりあえずリコルを撫でておこう。
リコルや聖女の発言から、それぞれ見えて居るものが違うのだろう。さっき俺が見た美女も、俺のツボを押さえた美女だったのかもしれない。これは、一人ずつ聞いていくしかないな……今後の為にルフィスと詩葉さんのは念入りに。
「ルフィス、どんな姿が?」
「前に観た舞台の、有名な演者さんに似ていましたね……何で黒い髪かは分かりませんけど」
なるほど。観たことある中で格好いいと思った人というパターンもあるんだな。俺の場合は完全にイメージ上って感じだったが。
「レーロは?」
「あれは噂に聞く、ハイエルフの御方に違いないんですけど!? 黙ってついて来いって言ってたんですけど!」
レーロは耳までやられていたのか……魔法防御力は高そうなのに魅せられたという事は、不可避の攻撃なのかもしれない。堪えられるかどうかは別として。
「聖女は?」
「羽が生えていました~」
なるほど。完全にイメージが先行しているタイプかな? 理想というか妄想まで突き抜けてしまったのだろう。レーロがアホじゃなかったら、聖女が一番ヤバイのを見ていたのかもな。
「リコルは? 何故、俺を?」
「あの時……果物をくれたお兄ちゃんより格好いい姿をした人を知らないから……なのかな?」
リコルはルフィスに似てる感じだな。とても良い子である。
さて、問題は最後の詩葉さんだけど……絶対に言わないだろうなぁ。プライド的なものが邪魔をして。でも、一応……聞いておくか。
「詩葉さんは?」
「……くっ。この私に催眠なんて中々やるわ……ね。ふふっ」
なるほど。厨二に振り切れば誤魔化せると踏んでいるのかな? まぁ、これはこれで面白いから暫くはこの状態で居て貰おう。
「ルフィス、弱いけど経験値的には良さそうだから倒しておいで」
「はい! やってきますねっ!」
特に素材が落ちる訳でも無い、経験値だけの本当に迷惑なモンスターである。
次の四十七階層の前で休憩を取り、続くボス部屋に来たのだが……こいつが本当に厄介だった。
「ヌボォ……」「ヌボォ……」「ヌボォ……」
「ヌボォ……」「ヌボォ……」「ヌボォ……」
「ヌボォ……」「ヌボォ……」「ヌボォ……」
「あぁ!! あれも違うぅぅ!!」
「一縷さん、来ますよっ!?」
壁に大量張り付いて居るナニか。部屋自体はそこまで広くは無い代わりに、上に高く伸びている。
ブヨブヨだったり岩のようだったり、色も多い。つまり、よく分からない。
ルフィスが先制攻撃で一体を破壊した。が、その場所からまた産まれるし、反撃をしてくる。
その結果から、正しい敵を倒さなければ閉じ込められたままだと推測していた。
「『消滅』!! ルフィス、次の段だ!」
下の段から順にルフィスが攻撃し、反撃を俺が消す。地味でスマートでは無いが、これしか方法が見つからなかった。
「神スフィアの名の元に、邪悪なるモノの存在を私は拒む。天の光をその身に通し、隠されたその存在を顕にせよ。光よ光よ光――『魔拒の天光』」
突如として、部屋を埋め尽くす程の眩しい光の魔法が発動された。魔物達からの反撃は無く、上から地面へと壁に張り付いていたナニかが落ちてきた。
「今の……は?」
「ふぅ……一縷さ~ん、やっちゃってくださ~い」
「あ、うん……」
いやいや……まさか。そんな事ってあるのか? いや、確かにそういう存在ではあるけどさ……今までほとんど何もしてなかったよね?
「次の道が開けた……な」
「聖女様すごーい! すごーい!」
「今のはエルフの使う魔法とはまた別の代物ね……爪を隠してた事に驚きですけど!」
聖女をよく見ると肩で息をしている。それほどに魔力を消費する魔法だったのだろうか?
何はともあれ……助かった事に違いは無い。補助する様な魔法を使う聖女はありがたい存在だ。
「祈りをしないと使えないですし~、一日に一度しか使えませんけど~お役に立てたなら良かったです~」
「その魔法は私でも無理かしらね……聖女特有かしら? ふ~ん」
最後の『ふ~ん』が意味有りげだけど、聖女だからこそ使える魔法なら諦めるしか無いだろう。敬虔な信徒だからなのだとしたら、俺達には絶対に無理だろうし。
聖女を休ませる為に少し休憩を取り、続く四十九階層のヒュドラとかいう多頭竜を、面倒な相手という事でルフィスがテキトーにダメージを加えた後に……俺がその頭を『消滅』させて、このダンジョンをほぼ制覇した。踏破と言った方が正しいかもしれない。
◇◇
「ここが最下層か……」
帝国のダンジョンの最下層。まだ誰も到着していないらしい。それはまぁ、あのボスの連続を体験すれば無理もない話ではある。この場所に来ないといけない理由がある人以外は無理はしないだろう。
「はえ~何にも無いみたいですけど?」
「確かに……。ここには居るはずなんだけどな?」
詩葉さんの仲間の人達。この防具をくれたり、ルフィスにアクセサリーをくれたり。皆、生気の無い感じだけど意識はちゃんとあった。姿が見えない事は無かったから、居るはずなんだけど……。
――――いや、確実に居る。どこかに居る。
今、僅かだが武器の金属音が聞こえてきた。
「気を付けろ……どこかに居るぞ! 背を合わせて周囲を警戒!」
「は、はいっ!」
「ほぅ……初めてだれか……が、来た……と、思ったら……」
正面から声がする。だが、足音は後方からしている。
どういう原理かは分からないが、迷ったら斬られる事だけは分かる。
「ルフィス、攻撃が来たら一瞬で良いから止めてくれ」
「一縷さんは、前だけ警戒しててください」
迷ったなら、頼れば良い。俺は声のする前だけに注意して槍を構える。
「会いたかった……ぞ、シラガネ」
「久し振りね、アーガス」
「――――っ!?」
詩葉さんが俺の前に飛び出して、剣を止めてくれた。
気付いたらそこに刃があった。早さだけじゃない。それ以外の何かの技術があったんだと思う。盲点を完全に突かれていた。
「刀を納めなさい」
「ふむ……だが、俺はまたお前と斬り合う為に……この刀を預り……この姿になっても……待っていた」
その姿は汚れに汚れているが、強さは変わらないのだろう。そして、きっと……今、この剣士と斬り合えるのは詩葉さんくらいだと直感でわかる。
鋭い眼光が歴戦の戦士を思わせる。それに、俺じゃまだ太刀打ちどころか、即死待った無しだろう。
「アーガス……そうね。貴方にはそっちの方がよさそうね」
「あぁ……その男じゃ……弱すぎる……」
「…………」
ぐうの音も出ない。弱い。弱すぎる……か。
確かにそうだ。俺は弱い。だが、勘違いして欲しく無い“まだ”弱いだ。
弱いよ? 弱いけど……弱いままで居続ける程、弱くは無い。
「アーガスと、言ったな。視させて貰うぞ、盗ませて貰うぞ。そして、お前より必ず強くなってやるからあの世で待ってろ! バーカバーカ!!」
「一縷さん……ちょっとは、悔しかったんですね……」
(強くなる為に必要なイメージを作るには視させて貰うのが早い……と、思ったけどこの二人、視えるかなぁ?)
詩葉さんとアーガスとの戦闘が開始された。
アーガスは剣士だったらしい。詩葉さんのパーティーで同じく前に出て戦うタイプだ。その強さは本物だった。俺じゃ対処出来ない詩葉さんの攻撃を回避して、反撃までしていく。
今俺が抱いている気持ちは“嫉妬”だろうな。詩葉さんを本気にさせられない、自分の弱さからくる悔しさ。
「前より……強い……か?」
「土台は貴方達が作ってくれたから……私はまだまだ強くなるわ」
「そう……か。あの男……強く……してやれ」
何か話している気がするけど……とりあえず分かった事がある。
「どっちも槍じゃねーからあんまり意味ねーな!!」
「間合いも違いますしね……足捌きというか、回避の技術くらいですか?」
というか、動きが速すぎてもう……ね、って感じだ。
それから決着は着く事は無く、お互いが満足した所で勝負が終わった。
「この刀……返しておこう……」
「えぇ、感謝するわアーガス。後の事は任せておいて……妹さんと仲良くするのよ?」
「妹……か。だいぶ待たせてしまった……な。では、頼む……」
詩葉さんが魔法を唱える。光に包まれてアーガスさんがゆっくりと浄化されて、消えていく。
だが、消える前にハッキリと口にした事は忘れない。こっちから約束した事でもあるからな。
『――槍の男。あの世で待っている。強く在れ』
アーガスが言ったのは『強くなれ』じゃなくて『強く在れ』。その微妙な言葉のニュアンスを間違えない様にしないとな。
完全に消えた後にゲートが現れた。最後に聖女がアーガスの為に祈りを捧げて、俺達は帝都のダンジョンを後にした。
◇◇◇
ダンジョンから出ると、太陽が真上にあった。時間の感覚が無かったが、お昼頃という事を意識するとお腹が空いてくる。
「んーっ!! 長かったなぁ~」
「日数にしたら短いのだけどね。だけど時間は無いわ、明日……いや、明後日には帝都を出るわよ?」
次は……もう一つの勇者召喚をした国、エルミック王国へ向かうのだろう。また移動に時間を割かれてしまうが仕方の無い事だ。早めに行動に移すのも当然だな。
「あのぉ~、お腹空いたんですけど?」
「喋んな! とりあえず宿に戻ろう。コイツが本当に厄介過ぎる!」
「言い過ぎなん……むがっ!」
学習しないエルフの顔に、大雑把に手を当てて静にさせる。
街中を怪しまれずに何とか宿まで戻ってきたが、俺と詩葉さんはこれからお昼の買い出しに向かう。街に出られない人が多いからな。
「リコルも行く!」
「あっ、ズルいですよっ! リコルちゃん!?」
出れない人その一であるルフィスが何か言っているが、当然止める人は居ない。おとなしく待ってろ……という話だ。
聖女は端から行く気が無いのか横になり、エルフも疲れたのか横になっている。
「じゃ、昼飯買ってくるから大人しくしてろよ」
「行ってくるね、ルフィス姉!」
俺達が買い物に行って戻ってくるまでに三十分くらいは掛かっただろうか? ゆっくり歩いて行ったとはいえ、真っ直ぐ帰って来たつもりだ。何気なく、普通に、普段通りに。
だから、戻って来た時に自分達の泊まっている宿が燃えていた時に……どうすればいいか分からなかった。とりあえず、笑えばいいのだろうか?
「ふはははは……じゃないな。ルフィス達、ヤベーぞ」
「……燃え方が異常ね。私達がここに居ると知って狙ってたんじゃないと思うわ。燃えてる部屋も違うしね……」
「でも、ルフィス姉達居ないよ!?」
どういう事だ? 愉快犯に狙われたのか? 可哀想な。
でもたしかに、リコルの言う通り……ルフィス達の姿が無いのが気になるな。俺達を探しに行って、スレ違いでもしたのだろうか?
「最悪の場合だけど……炙り出す為に手当たり次第宿屋を狙っていたら最初に当たってしまった。という事もあり得るわね……」
「ルフィス、聖女、レーロ……誰が狙われたのかも分からないしな。その最悪の場合を想定して動こう。……嫌いだわぁ、帝国」
つい、本音が溢れてしまう程に精神が疲れてきていた。
もしかしたら俺達が狙いかもしれない場合も想定して、行動は共にする。詩葉さんが居れば見付ける事くらいは簡単に出来そうだし、捕まってはいないだろうから、遠くまで行っていない事を願うばかりだ。
「どこかでデカい魔法を使ってくれればわか――――」
「おい! 何か上がっているぞ!?」
空に『火の砲弾』が放たれていた。
距離はだいぶありそうだが、居場所が分かっただけでも今は良しだ。
どうしてこう、上手く行かないのかを本気で考えながら、魔法が上がった方向へと走り出した。
「お姉ちゃん達大丈夫かな……?」
「大丈夫だ。大人数に囲まれても防御に徹すれば負けないだろう。ほら、リコル……おんぶするから乗って」
リコルには安心させる様な事を言ったが、道具、脅迫、人質、その他諸々……反撃出来ない状況になっているかもしれない。そもそもの情報が少な過ぎて、展開が全く読めないけど決まっている事はある。
――俺達を狙っているのだとしたら……迷わず潰そう。
俺は人の味方じゃない。魔王の敵なだけだ。人の心に魔王の様な考えがあるのだとしたら、当然……倒すべき相手だ。
「強く在れと言われたからな。仲間を守れなくてどうするってんだ。詩葉さん、俺を止めないでくれよ」
「この国をぶっ壊してやるわよ!! 一縷君!!」
「いや、俺より強い決意出すのやめて!?」
まさかの味方に勢いを止められてしまったが、まぁ……良いよ。詩葉さんだもん。心強いしな。
「帝国に勇者の力を見せてやるわ……ふふ……くははははは!!」
「誰よりも魔王じゃんか!! 詩葉さん……冗談はそこまでにして、ちゃんと一矢報いる方法を考えておこう?」
「……分かったわよ。一度、悪役キャラをやってみたかっただけじゃない」
俺は何も言わずに、ただ頷いて分かってますよと伝えた。
人混みのせいで思ったより進むのが遅い。目的地に着くのは、もう少し掛かりそうだ。
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